恋物・・・第1章:出会い 風林会館前の小悪魔 

June 10 [Sun], 2007, 23:40
俺がお前に初めて会ったのは、去年の今頃。

従業員と酉の市に行った帰りやった。

飯を食いに行く予定やったけど客に呼び出された俺は一人で区役所通りを歩いとった。

しばらく歩いとると風林会館のあたりで変な女がうずくまっとった。

めっちゃ寒い日やったのにドレス1枚しか着とらんくてめちゃめちゃ震えとった。

俺は思わず…

『大丈夫か?』

と声を掛けてしまったんや。

するとお前は俺の事をにらんで言ったんだよな?

『死ぬから…あたし今から死ぬから』

ほんまにびっくりしたで。

今まで3年間ホストやってきとって何百人と声を掛けてきたけど、いきなり死ぬからって言われたんは初めてやったからな。

『何で?何かあったんか?とりあえずこれ着とき?』

って俺のジャケットを羽織らせようとしたら、お前はいきなり立ち上がって…

『死ぬって言ってんじゃんバカッッッ!!』


バカッて…

こいつ頭おかしいんかなと思ってほっとくつもりで、地面に落ちたジャケットを拾いもう一度だけあいつの顔を見てみた。

そしたらさ…

捨て犬みたいな顔して唇噛み締めて目に涙いっぱいためて華奢な肩小刻みに震えさせながら俺の事にらんどるわけよ。

もう…何かほっとけんかった。

ほっとける訳がなかった。

今思えば、

あの時に俺はもうお前に惚れてしまってたのかもしれんな…

『なぁ、風邪引いたらアカンやろ?これ羽織っときや?けっこう高かったから暖かいで?』


俺はそう言いながら、今度はジャケットを差し出してみた。

するとあいつは一瞬悩んだ顔をしてから、細い腕を伸ばして受け取りそのまま肩にかけるように羽織った。

俺はすぐそこにあった喫茶店に入ろうとうながしたんやけど、あいつはなかなか首を縦に振らんかった。

客との待ち合わせの時間が近付いとったけど、あの時の俺は目の前の訳わからんこの小悪魔に夢中でそれどころではなかった。

ジーパンのポケットで鳴る携帯に気付かないふりをしながら、俺は歌舞伎町のど真ん中で変な女と二人でカタカタ震えとった。

30分ぐらい無言が続いた。するといきなりあいつが口を開いた。

『ねぇ…今いくらある?』

(やっと喋ったと思ったら、こいついきなり何言うとるんや?)

『何やって?』

『あんた耳聞こえないわけ?今いくら持ってる?』

『……はっ!?』

『だぁから、今お金いくら持ってんの!?って聞いてんの!何度も言わせないでよね』

(何なんや?)

俺の頭は理解不能地域に達しとった。

『いやいや、いきなり何なん?何かさ、もうちょっと何か、普通の会話できんの?』

俺はひきつりながら笑顔で言った。

するとあいつは俺をじっと見つめて一言。

『ぶっさいくな顔…』

初対面でここまでずだぼろに言える奴は初めて見た。

むしろそこまではっきり言える性格が羨ましくなるぐらいやった。

俺がしばらく動揺して何も喋れないでいるとあいつがまた口を開いた。

『あたし今お金必要なの。ねぇ、今いくらある?』



続き・・・その後の・・・。 

June 10 [Sun], 2007, 23:53
(こいつやっぱり薬中かなんかなんかな?)

俺は素でそう思った。

でも、あいつの顔は真剣そのもの。

『さっき、酉の市の屋台でいっぱい従業員におごってもうたから…今は5万くらいしか財布に入っとらんわ』

(……は?俺、何素直に答えとるんやろ?)

ほんまに謎やった。

そんなこと言うつもりなんてこれっぽっちもなかったのに…

あいつの真っ直ぐで茶色いきれいな瞳を見っとたら、いつの間にか答えてしまっとったんや。
まるであいつの目はメデゥーサみたいやった。

カラコンでもないのにめっちゃきれいな茶色い目…

ずっと見とると吸い込まれそうやった。

『5万しかないの?しょっぼ…まぁーないよりいっか。貸して5万』

俺はこの言葉を聞いて今年最強のオラオラキャラな人間に出会ったとその時確信した。

『いやいや、せやから物事の順序ってのをお前は知らんのか?ん?貸してって…さっき知り合ったばかりの奴にいきなり金貸す奴なんかおらんやろ?』

俺は少し真剣な表情でそう言ってみる。

すると……

『うっ、ふぇ…うわぁぁぁ〜ん。ひどぉい!騙してたなんてひどいよぉぉぉ』

なんとあいつは歌舞伎のど真ん中で大泣きしだしたんや。

それは、はたから見るとまるで《ホストに騙され泣かされた女の子》みたいな図になっとった。

(何でや?何かがおかしいやろ!この女何者や?何なんや一体…)

俺は少しパニック状態に陥っとった。

むしろこの状況で平常心でおられるのは細木数子ぐらいのもんやろう。

そしてパニックの末俺は…

『ちょ、ちょっと分かった。分かったから!せやから泣かんでや?お願いやから一回泣き止んでくれや?』

『……そしたらお金貸してくれる?』

あいつはそう言うと、またそのメドゥーサのような目で俺を強く見つめた。

『あ、あぁ。今は5万しかないけど貸したるわ。せやからもう泣かんでな?』

(……俺は一体何を言うとるんや?頭がおかしいんは俺なんやないんか!?何貸そうとしとるん?しかも5万しかって何や?しかって…お前5万あったらめっちゃいろいろできるで?)

そんなことを思いながらも、使い初めて3年目になる年期の入ったヴィトンの財布から、何故か5人の福沢諭吉を取り出しあいつに差し出してしまう俺。

『ありがとう!すごい助かる!絶対返したいと思ってると思ってるから〜♪』

あいつはそんな訳の分からんことを言い放つと、さっきまで涙目でカタカタ震えとったとは思えん足どりで、俺の5人の諭吉と4万近くしたジャケットと共に夜の歌舞伎町に消えていった…

残された俺はしばらく放心状態だったが、客からの怒りのコールと共に現実の世界に引き戻された。

ブーブーと豚のようになり続ける携帯を見つめながら俺はあることに気付いた。

『返すって、あの女どうやって返すつもりなんや?名前も…聞かんかったな』

どう考えても非日常的でおかしすぎる出来事やったけど、何故かあの時の俺は、消えた5万とジャケットよりもそれを風のように持ち去ったあの小悪魔が気になって仕方なかったんや。

あの後…俺はどうしても客に会う気分にはなれず、結局次に飲み代をおごる約束で客の怒りをおさめて家に帰る事にした。

俺の家は北新宿のとあるマンション。

2LDKの間取りに俺と、いつの日か住み着いた後輩2人…そして俺の可愛い愛犬ミニチュアダックスフントのメメが住んどった。

『ただいま〜』

履きふるした靴が散乱した玄関にため息をつきながらも俺は自分の部屋に真っ直ぐ向かう。

『れいさ〜ん!?飯食ったんすか?俺らなんかまた腹減っちゃったんで出前取るんすけどれいさんどうします?』

惚けた顔でドアから顔を出したのは後輩の光也。

『あ〜俺適当になんか弁当頼んで〜』

ほんまは飯なんかどうでもええ…

俺の頭の中はあの女でいっぱいやったんや。

一体あいつは何者で、何であんな恰好であんな所にいて、そして何で見ず知らずの俺から5万も借りて俺のジャケットを着たまま消えていったんか……

答えが出そうなのは最初の三つだけやった。

髪型や雰囲気からあいつはキャバ嬢で、きっと時間的に店で何かがあってドレスのままあそこおった。

こう考えるのが無難なはずや。

でも、何で俺にいきなり金を貸せと言い出したんか…

そして何で俺も素直にお金を貸してしまったんか…

これは謎やった。

むしろ訳が分からん。

『顔は〜可愛かった、よな。スタイルもよかったし、5万円…何に使ったんやろな』

俺は取り付かれたかのようにブツブツとつぶやきながら、愛犬のメメと遊んどった。

それから15分後…

俺は疲れとったのもあり、いつの間にか静かに眠りについとった。]

一章終・・・次につづく・・・
プロフィール
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  • アイコン画像 ニックネーム:♪コノミn♪
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 誕生日:1994年6月6日
  • アイコン画像 血液型:B型
  • アイコン画像 現住所:国外
  • アイコン画像 職業:小中高生
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私は、
ドイツにすんでいます。
小さいながら、
一人暮らしです。
おやがこいしいときもあります。
今は、医者の(教授)
指導を受けています。
教授は女性ながらも
りっぱなことをなしとげてきた
ひとです。
今、私は
その教授にように
なりたいと
おもって
医療のことについて
熱心に指導をしてもらってます。
みなさん。
どうか、よろしく
お願いします。!!
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