貨物列車 

2006年08月20日(日) 15時30分
 どこまでも続く草原を、どこまでも続く一本の線路が延びていた。
遠く地平線の向こうまで、緑の絨毯に描いたキズのように、それは果てしなく続いていた。
 貨物列車が見える。窓のない、長く続く車輛。ひどく汚れた鋼鉄の車輛。大きく裂かれたまま、中には天井すらないものもあった。しかしそれはその巨体にも関わらず、驚く程軽快な速さで草原を東に向って走っていた。
  
 イワノフは吹き飛んだままの天井を見上げていた。空は青く澄み渡り、雲が後ろへと流れていく。嵐の前の静けさ。否、後と言うべきか。そう、後であった。貨車の中に充満する血と鉄の臭い。低いうめき声、嗚咽。中には何故生きていられるのか不思議に思えるような状態の者も。

 そう、負けたのだ。祖国に帰れる。それだけでも十分に幸せなことだ。それ以上は望んでも仕方がない。とりあえず今は帰ることだ。あの懐かしい我が家へ。たとえそこが今はどうなってしまっているのか分からなくなっていたとしても。
2006年08月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
最新記事
最新コメント
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:kongou-haruna
読者になる
Yapme!一覧
読者になる