人は二度しぬ(前編)

January 25 [Sun], 2015, 13:49
私はここに立っている



冷たい風吹く汚い街の、

冷たく汚いビルの前


私はここに立っている。


ある目的を胸に抱き、

冷たい鉄の扉を開く。

ギイイと音鳴り

開いた先は、


張り付く笑顔と白い部屋








…そう、ここは脱毛エステサロン。


エステサロンとは、言わずもがな、

トップクラスの美意識を持つ猛者達が美を磨き、鎬を削る場所。


そんな危険地帯に、

あろうことか、美意識の最下層に分類される私が今まさに足を踏み入れようとしていたのである。

それは、ロールプレイングゲームで、レベル1のままラスボスを倒しに行く主人公さながらの暴挙であった。




しかし、私には信念があった。


正月の一件(剛毛ゴリラへの転落)に続き、なんやかんやで心に傷を負った私は、


絶対綺麗になって見返しちゃる☆



というありきたりで浅はかな思いが、私を強く突き動かしていたのである。

この、「綺麗に…」というのは非常に図々しい言い回しであり、首を傾げる方がいると思うので、念のため具体的に説明するが、

「己の不細工を極力こそぎ落とす」という意味である。

私は自分をゴリラにしている1番の原因が、剛毛にあると確信した。

肩幅が異様に広い、握力が強すぎる、ガタイが良すぎるなど、

その他要因をこの時ばかりは一切無視し、剛毛であることが1番私をゴリラたらしめていると、そう思ったのである。


私はこの場所で洗礼を受け、ゴリラを卒業する。



私はニィ…と笑みをこぼし自分を奮い立たせた、震える足に、これは武者震いだと言い聞かせながらその場所へ一歩踏み入れた。





いらっしゃいませ!!!!


その瞬間、原色のごとく明るい声が私の耳に突き刺さり、白い服を着た女性達が私を取り囲んだ。





…戦闘が始まる…!!



白衣の女性達の美意識はざっと1000、2000

私の美意識は盛って3というところだ。


己の敗北を確信した私は、とっさに顔を伏せた。






私がそんな妄想を繰り広げている間に、私は席に座らされ、謎の胡散臭いビューティー機器の紹介がなされていた。

私はジャングルから突然都会にワープしてきた直後のゴリラのような顔で、出された茶をぼんやり眺めていた。


そして一通りの説明が済んだ。



ではこちらへどうぞ

と言うお姉さんの案内の元、私は茶色く怪しげに垂れ下がるカーテンのむこうへと導かれていった…。




たどり着いたのはカーテンで区切られた小さな部屋。

その小さな部屋は、簡素なベッド、棚、そして謎の巨大機器に支配されていた。


服を脱いで、キャミソールはそのままで、これに着替えて、ここに仰向けになってください


そして、お姉さんから新たな指示が下され、

お姉さんは部屋を出て行った。


…ここで脱げと、?



そしておもむろに渡された小袋。


震える手で取り出したそれは、






ブルマーのような見た目の、紙で作られたパンツであった。



その時、一瞬にして私の心に、
大きな不安と後悔の嵐が押し寄せた。




え、これ体験コースだよね…???
ワキだけじゃないの…??

私は携帯に保存されていた予約項目に、もう一度目を通した。




「ワキ+人気部位体験コース(Vライン)」




カッコ内のVラインという文字が私の脳内に飛び交った。


Vラインとは、調べて見ると、ビキニラインの略称であり、つまり下着を着用しても覆われない部分とのことであった。




私は深く絶望した。




私はこの小部屋で、股の周りに何かしらされるのかと。


銭湯や温泉の類も人に見られるのが嫌という理由で大嫌いな私が、見ず知らずのお姉さんに股の周りに何かしらされるのかと。


しかし、もう一度ビキニラインの説明文を読み直した。

「下着を着用しても覆われない部分」ということは、下着を着用して何も漏れ出ない私は何も手を施す必要がないのではないか。


ホッと胸を撫で下ろした私は、こんな物に履き替える必要もないのだけど、などと思いながらブルマーのようなものに着替え、ローブをまとった。


お姉さんが、二つノックをした後、部屋に戻って来た。

ローブのしたにブルマーを纏った私は、緊張に固り、仰向けに寝転び無言のままお姉さんを出迎えた。


すると、お姉さんはiPadを持ち出し、これからお肌を撮影しますね。



という不穏な一言を放った。



私の全身を冷や汗が伝った。

私はデパートや駅などで、お肌を撮影するブースを目にしたことがある。

面白そうだとは思いつつも、私はお肌というものに一切の自身がないために通らないで来た道だ。

その道がお姉さんによって今まさに開かれようとしている…!!!

しかし、無情にもすぐさまその撮影はなされた。

私は引きつりながらも、それを受け入れるしかなかった。

腕や足を、ワキに至るまで、全身の皮膚をパシャパシャと激写され、


地獄の撮影大会は幕を閉じた。


お姉さんは数秒、その結果を見つめ、

私にそれを見せながら解説を始めた。


全体的に毛は細いですね



と言った。

私は予想外の嬉しい言葉に、わぁと顔をほころばせた。



しかし、

この数秒後、私は地獄に突き落とされることとなった。



次は、ワキの写真です




とお姉さんが言った瞬間、


iPadの画面いっぱいに、緊張と焦りによりギトギトに汗をかいたワキがどアップで映し出されたのである。


お姉さんは、それを見ながら、


店内、暑かったですか?

と微笑んだ。




その綺麗な微笑みと供に、私の心は死んだ。



続く……
プロフィール
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