投資顧問会社AIJに預けられていた中小企業の年金資産約2000億円が消失したという事件。
私が注目したのは、事件そのものではなく、マスコミ各社が「企業年金」についてどのように報じているか。
朝のテレビで複数の番組を見たが、いずれもきちんとしてなかった。
まず、企業年金だとして説明しているところと、厚生年金基金だとして説明しているところがある。事実関係が抑えられていない。
可能性としては両方の混在も考えられるが、企業年金として説明する方がまだ一般的にはなる。
何より多かったのは
国民年金、厚生年金以外に企業が独自に上乗せする年金
という紋切り型の説明。
あまりに教科書的だ。
年金という言葉が出てきたから並べてみました、といった感じ。
さらには、給料明細のサンプルを出し、「企業年金掛金」という項目で給料天引きされている、という事例で“わかりやすく”説明しようとしている。
実はこういった説明がミスリードとなる可能性がある。
年金と対比させると、未納問題だとか税金補填とか今の年金問題とかぶせて理解してしまう人もいる。
給料天引きがなければ自分は大丈夫と思ってしまうかもしれない。
企業年金の「部分」は説明しているが、企業年金とは何かをまったく説明できていない。
本質はこうだと思う。
「年金という言葉を使っているが、要するに退職金のこと。会社が退職金として支払うお金を外部に積み立てすることによって支払いを平準化している。」
上乗せの年金というと、そういうことのできる余裕のある会社だと思ってしまうが、退職金だというと、普通の会社なんだと思うだろう。
退職金制度があれば、それを外部積立するのは決して珍しいことではない。
特に外部積立というのは、社員の退職金の受給権を確保するという側面もあるので、社員の立場にたてば基本的には好ましいことであるのだ。
自分のところの人事部にでも聞きに行けはわかるであろう話を、おそらくはそんなこともせずに、さもわかったようにわかりにくく説明するのを見ていて、なんかがっかりした。
そういうことができていないから、次の段階の疑問が生まれてこない。
「では厚生年金の原資は消失していないのか?」
厚生年金だって、お金をたんす預金しているわけではない。
それなりの運用をしているのだ。
運用のしかたは同じである。ローリスクローリターンの商品とハイリスクハイタリーンの商品の組み合わせだ。
ということは、当然のことながら投資顧問会社を使った運用もしているはずだ。
投資顧問会社がすべて悪いわけではないから、それ自体は問題ではない。
しかし、ハイリスクの選択をする中、実質的に消失してしまった資産がないといえるのだろうか。
年金資産が、
宿泊施設などに流用され、しかもその価値を失ってしまったケース、
年金事務にかかわる人の人件費やその果ては「福利厚生」と称してマッサージチェアに化けてしまったケースなど
これまでも資産が失われてきている事実がある。
それだけに、本質である運用そのもので資産を失っている可能性はないとは言えない。
今回のAIJの事件を見た時に、そこにまで懸念が及ばないとしたら、
マスメディアは勉強不足すぎる。
【追記】
追加の情報が得られた。
84団体がAIJに委託をしており、そのうち74団体が厚生年金基金だったとのことだ。
対象となる人は受給者を含め88万人。
厚生年金基金についてはまた新たな記事を起こしたい。