色弱をかくして生きている11 

August 07 [Sun], 2005, 23:54
クラスに入った。

気になる彼女は、ほぉ〜苗字があいうえお順の席のために、かなり前のほうだった。
僕は、一列6席あるなか、うしろ8列のちょうど真ん中だから、まぁ、彼女とはかなり離れていた。

席票をみて、彼女の名前を確認した。
「百合子」という名前だった。
席は離れているけど、教室がおなじというのは、それはそれは嬉しいものだ。

そんな雰囲気とざわつきの中、高校生になってはじめての担任が現れた。

見るからに「たこ」みたいな赤い顔つきだったので、クラスのほとんどが「たこ」と思ったに違いない!
そのたこ先生が、最初の自己紹介でこう語りだした。

「みなさん、高校生になった以上、もう義務教育の甘い気分は捨てるんだ」

クラスが一瞬ピリッとした。
しかし、次の瞬間、クラスが大爆笑に包まれた。

「私がこのクラスを担任する、多胡といいます」

え!名前からして「たこ」!!!!

やはり、クラスのみんなの意識は同じだったか。
“このクラスの連中とはうまくやれそうだな”
と思った。

悪いと思いながらも照れくさそうにクスクスと笑う彼女の横顔が視界に入ってきた。
嬉しそうな顔つきに、僕もドキドキしていた。

しかし、どうでもいいが、隣にどうして山崎がいるんだ!
あ・・・奴も苗字が「後ろのほうだ」。
「ちぇっ」・・・ま、百合子ちゃんが同じクラスだ。お前は勘弁してやると・・・そう思っていた。



色弱を隠して生きている10 

August 04 [Thu], 2005, 0:12
早速、彼女の名前を名簿から探した。

でも、体育館で座る席が自由席だったこともあり、なかなか思うように見つからない。
とはいっても、同じクラスだ。慌てることはない。

そう思って、今度は案外リラックスしながら入学式を過ごした。

しかし、ついつい目線は彼女のほうを見てしまう。
卒業の頃、彼女に「あの言葉」を言われるなんて、思っても見ないくらいの衝撃的な恋心。
僕の高校生活が一瞬にして、楽しいものに「なろう」としていた。



「なんてな、今思うと懐かしい話だよ」
そう、僕は妻に振り返りながら話した。
「まぁ、高校の入学式なんてそんなものだったのかもしれないね」
「で、その女の子とはどんな風に知り合ったのよ」
と、完全に興味だけで質問攻めにする妻。
僕は、こう答えた。
「いや、実は話しかけたのは、1ヶ月もして新入生のキャンプのキャンプファイアーのダンスのときだったんだよ」
「え?それまで、ずっと彼女と同じクラスでいたのに、話しかけもしなかったの?」

今の女子高生くらなら、「きもい」という表現をするのだろうが、当時の高校生なんてそんなものである。
好きな女の子になかなか話しかけられない。
だから、つい思い余った語り方になってしまう。
だから、つい懐かしさがにじみ出てしまう。

手も握ることが恥ずかしかった僕が、ダンスで彼女の手を握ったことを、妻に話すのは、もう少し後にしておこうかな、、、と、思った。

色弱を隠して生きている9 

July 30 [Sat], 2005, 13:40
体育館で、入学式が始まった。
隣の席には、どうにもこうにも冴えない男子がいた。
名前は山崎という。
「あぁ〜なんて覇気がない顔しているんだろう。こんな奴と同じにみられてたまるか」
と一人で思っていた。
しかし、後に山崎とはお互いの夢と将来を語るような仲になろうとは、このときは全く思えなかった。
それほど、彼は元気のない奴だったからだ。

校長先生が、なにやら入学式マニュアルで仕込んできたかのような訓辞をいつまでも話している。
「あぁ〜めんどくせぇ〜。こんなことはどうでもいいんだよ。」
と思いながら、小学生の頃からの癖で、まわりを見渡すように暇を潰していた。

そうしたら、どうだろう背の丈150センチメートル程の小さな女の子が、僕の少し前の席でとなりの女の子と、ひそひそ話をしていた。
名前はまだわからないが、同じクラスの女の子のようだ。

ちょっと注意深くみてみよう・・・と、思っても、15歳の春はまだまだ人目が気になるもんだ。
チョット見ては、またすぐに周りを見渡したり、爪の甘皮をめくったりして、とにかく悟られないように彼女をみた。

髪の毛は天然パーマがゆるくかかっているのだろうか。それとも、入学式に併せておしゃれをしてきたのだろうか。とにかく肩にかからない程度の短めの髪の毛が少し巻いていた。
しかし、驚いたのは彼女のその目だった。
とっても、静かな涼しげにもかかわらず、目だけはホリの深い印象をもった。
とにかく、ドキドキしてしまうほどの衝撃を受けた。

彼女との想い出は、実はこれから高校生活を終えるまで絶え間なく続くのだが、この点は恥ずかしいので、今は書かないでおこう。

彼女がふと振り向いた。
そのときに、目線があった。
つい目線をそらす仕草をする彼女のうつむいた顔をみて、僕ははっとしてしまった。
優等生の彼女に恋をした。

色弱を隠して生きている8 

July 29 [Fri], 2005, 15:55
体育館に入った。
正面の舞台には、おそらく校長先生が新入生に退屈な訓辞を垂れるためのマイクと机が用意されていた。

その奥の横断幕には、「第34回 都立古郷高等学校新入生入学式 」と記載されていた。
体育館に椅子がたくさんならぶ。
後方には親が座っているのだろう。どうもあの化粧の臭いが嫌だった。式となるとこの臭いはつき物だから。

そんな中、僕は聡子とは別々のクラスになったので、彼女と別れ、一人自分の組の席についた。

いつのまにか、体育館は一杯だ。
ドキドキしていた。

この3年間、僕はこの体育館のみんな誰にもばれないで卒業できるのだろうか・・・と。

色弱を隠している7 

July 24 [Sun], 2005, 18:48
自転車置き場は、第一グランドの脇のクラブハウスの横に隠れるようにあった。
すでに、両親や新入生や、先輩らでごった返している。
あちこちで おしゃべりが繰り広げられ、とても自分の自転車を何処にとめたらいいのかわからない。

なんとか裏門近くの壁際にとめて、下駄箱があるエントランスホールに向かい、そこで自分のクラスがどこかを確認しようとむかった。

そこで、中学時代のクラスメートの聡子に出会った。
聡子は、受験当日に一緒にでかけた幼馴染である。

「あ、おはよう!伊智郎君!」

明るい声で挨拶をしてきた。

「あぁ〜おはよう。今朝は少し暑いね」
自転車でこいできた僕は、少々けだるそうに答えた。

聡子は幼馴染で、子供の頃から知っているので、恋愛の対象というわけではない。
が、高校のエントランスホールであったときに、普段いつも顔を見合わせている彼女の姿が、すこし大人びて見えた。
女性を感じるこの雰囲気は、自分には認めたくなかったが、彼女と僕が別々のクラスになったとわかったとき、やや戸惑いを感じる自分がいた。
しかし、これは絶対に恋愛ではないと自分で言い聞かせていた。

僕のクラスは、H組だった。
どうやら、受験の成績があまり芳しくなかったらしい。
成績順にクラスを決めているという噂がながれていたから、入学式初日に現実を知らされた格好になり、ちょっと恥ずかしい。

あ、ちなみに聡子はB組。
あいつに、英語を教えてやっていたのになぁ〜・・・、なにもかも、やるせない気持ちで、H組みの教室をさがすために、上履きに履き替えた。

色弱がばれないように隠れている6 

July 23 [Sat], 2005, 18:39
色弱ということには、幾つかの分類があるらしい。
僕がそのどれに当たるのかは、正直わからないが、とにかく幼稚園の頃は、木の葉っぱと幹の色を間違えて塗り絵をしていたので、緑と赤の区別がつきにくいのだろう。

周りの景色が自分の見えている世界ではない・・・

という気持ちは、年齢を重ねる毎に自分の頭の中で拡がっていった。

この何とも言えない自分だけが・・・・という孤独感が、高校に入学してから爆発するのだが、自分の進路、そして将来・・・もしかしたら結婚も・・・という不安感は、徐々に人との競争という社会の中で、「最初からまける戦」と定義して、人生まさにやる気なし!という堕落感に繋がっていった。

誰が悪いわけではないが、昭和のカラー時代には、自分は必要ない人種であるという身勝手なやり場のない怒りと諦めが、自分の本来の競争力を見失っていったのだろう。


入学式が目の前である。

周りは、高校生の新しい制服をきた同級生になるであろう連中が、たくさん明るい満面の笑みを浮かべている。
同じ中学校同士の友達と話して入学式を待っている姿が、あちこちでみられる。

とても楽しそうだ。

それに比べて、僕はどうか。
すでに、人生の挫折と二度と這い上がれないと思う、嫌悪感が充満した入学式。
そして、その後に待ち構えている身体検査での、あの「踏み絵」。

そう、高校生活に何の期待もしていなかった。
あの子と出会うまでは。
彼女は、同じ体育館にいることなんて、まだ全然気が付かない午前9時だった。

隠れている5 

July 22 [Fri], 2005, 12:03
自転車をすすめている登校のとき、ふと思ったのは、その高校を受験するときだった。

「僕は、この高校が好きで入ったのかな・・・合格したときはとっても嬉しかったけど」

考えてみれば、実に情けない話でもある。
僕は高校受験で、本当は行きたかった高校があった。
とっても頑張って勉強した・・・とは思わないが、それなりに勉強しているつもり。
もちろん、恋愛もそれなりに経験して、高校受験中の中学3年の頃の交換日記が、今も部屋の机の引き出しの奥にしのばせてある。これは秘密。また機会があれば話すことにするよ。

僕が数学が好きで、高校も理科系進学が強いところを受けた。
もちろん、今となってはお笑い種だが、僕の不勉強でもあったろうが、色弱障害者の理科系進学は、昭和50年代半ば頃って、事実上困難だったんだんだ。
そんなことを知らない僕は、今考えてみれば、無知だったとしか言いようがない。

受けた理科系進学率を誇る高校・・・みんな落ちていた。

「まぁ、学力が足りなかった」というのが、実は真実であったとは思うが、そこはまだ15歳。
そう感じるだけの許容力はない。

決して人には言えないが、「僕が生まれもった障害のために進学が出来なかったんだ」と、思い込むことにした。
自分の事前の調査や不勉強を棚に上げる絶好の言い訳をみつけた。。
単なる独り言だけども。
ついでに、「こんな面倒な身体にあと何十年付き合っていくのか、本当にやっかいだ」と、両親への静かな抵抗も示しておくことにした。

というわけで、自転車は新しい高校生活の門出になるべく、こんな僕を許可してくれた高校の正門に近づいてきた。

「僕がどうしても入りたかった高校ではなかったかもしれないけど、これからよろしく」

といって、正門を通過した。
いよいよ、僕の高校生活が始まった。

隠れている4 

July 21 [Thu], 2005, 11:55
通学路が、桜で満たされている。
少し散りかけているものもあるが、満開という名にふさわしい。
自転車で走ると、桜の花びらが身体を通り抜けるような感覚に思われる。
が、僕にはこの綺麗で短い間しか見られないソメイヨシノの花びらが、真っ白に見える。
とても綺麗な桜の花びらは、白い花だと思って育っていた。
でも、世間では、薄いピンク色の花びらだと言う。
僕にはそう感じる力がない。
だから、自転車で駆け抜けて登校する僕の気持ちは、決して晴れやかではなかった。
入学式の前から、試されていた。
みんなにはわかるであろうことが、僕には決して生涯わからない。

桜並木は、どこかそんな心の引っ掛かりを感じる通りでもある。
その通りを、はやく駆け抜けて、商店街の通りに自転車をすすめた。

3 

July 21 [Thu], 2005, 0:32
朝のメニューは、いたって素朴な食事だと思う。
他の家で朝ごはんなんて食べたこともないから、「普通の基準がわからない」けど。
「ご飯粒をたべなきゃ、力が出ないから」
というのが、うちの母親の口癖。
そんな毎朝のテープレコーダーを聞きながら、朝ごはんを食べる。
時間を確認するのは、徳光さんが出ている「ズームイン朝!」の左上に出てくる時間。
テレビを流しっぱなしにしながら、でも結構お天気予報なんかちゃんと朝からチェックしている。

普通の朝の風景が流れる。
3歳年下の弟は、まだ中学に入ったばかりで、制服が今ひとつ似合わない。
そんな弟は、夢が膨らむ中学生なのか、母親にたくさんと学校の英語の教科書をみせながら、なにやら楽しそうに話している。
もちろん、家の中で、僕が普通の人と違うことはタブーだ。
だから、弟も知らないし、僕だって両親と正面きって、この問題で話し合ったことがない。

だから、今日という日が毎年くることを、僕がどんな気持ちの朝を迎えていることを、母親は知っている。
でも、そんな話はせずに、静かにいつもの朝ごはんを食べた。

僕が言う。
「いってきます。」
母親が言う。
「しっかりとね。今日から高校生なんだから。入学式には行けないけど、しっかりね。」
僕が答える。
「うん。」

家の扉が閉まるとき、ふとため息が出た。

ドキドキしている自分がいた。
もう、学校にいく自転車に乗り込むときは、別の事を考えるようににしている自分がいた。

普通の人には、この見上げた青空は、何色に見えているんだろう・・・・。

自転車のペダルをこいだ。

隠れているA 

July 20 [Wed], 2005, 12:23
朝 目が覚めたとき、ドキドキしていた。
入学式がある。高校の入学式は今日あと3時間後に迫っていた。
でも、入学式特有の あの桜の匂いがまじる春の匂いに 自然と沸き立つ高揚感という高校生としての自覚・・・ではない。
初めてのクラスの中で、一番可愛い子をみつけて、一応その子を その年の「好きな女の子」として認定証をあげる儀式の軽い興奮・・・でもない。
毎年、入学式が終わったあとにある、あの身体測定が、僕のそんな青春の興奮をさえぎり、常に現実に引き戻すんだ。
悪魔の身体測定。
目が覚めて、入り混じった興奮が、僕を押しつぶす。
毎年経験しているのに、「また今年も隠しとおせるか」と思う気持ちが嫌だ。
毎年検査と称して、「あんたは、異常だ」と言われるのが嫌だ。
治りもしないものを、毎年検査する意味がどこにあるのだろう。

つらい、と思う4月。青春を謳歌できない春。

朝はお母さんが作ってくれるご飯を食べる。

ドキドキしている。
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