アヴェ・マリア-1- 

March 02 [Thu], 2006, 23:52
しみひとつない世界を望んで、僕は何を手に入れようとしたんだろうか??

見上げた天井の隅から、じりじりと影が迫ってきて、何時しかがらがらな僕の部屋を黒く塗りつぶしてしまっていた。

濃い闇。
それはもしかしたら、カーテンの向こう側にあったはずの陽の光が姿を消してしまったせいなのかもしれないけれど、僕にははっきりとしたことが分からなかった。

何故かなんて、話せば情けなさがこみ上げてくるだけだから、僕はぎしりとベッドを軋ませて寝返りを打った。
僕のいちにち、いちにちの中に唯一存在しているような活動。

ふと、呼吸をしていることを思い出して、残酷な気分になった。
胸がきゅうと音を立てて、喉が焼け付くように痛くなった。

この部屋に―僕の世界に闇が訪れた瞬間。
僕はその時だけ、自らの目から、感情以外の何者でもない泪を流した。

さようならを言い忘れて、置いていかれたような気分だった。
自分が此処にいると言うことが、曖昧な割には、酷く辛い。

僕の体に残った、淋しさの中に残るわずかな温もりを抱きしめ、固く目を閉じた。

未だ闇は、僕の世界を覆う。


翼も何もない僕は、窓辺に立つ希望も感じていない。


部屋を満たすのは、聖母の歌声だけ。

蒼い針金月<予告編> 

February 18 [Sat], 2006, 22:19
君のいない世界と言うものは、あまりにも冷たい色をしている。
誰がそうしたのか分からないほど、蒼い。
どうしてなのか、深く考えた日もあったけれど、いつの間にか諦めに似た感情が胸のうちを支配して、僕を能なしにしていった。

『如月』

彼が笑って僕の名を呼ぶのを思い出すと、少しの間、温かい思いが溢れるけれど、気付けばそれはひどく切ない泪を誘って、胸を強く引き絞った。
もう何も、必要ないと思うんだ。
特に、僕が生まれ持ったこの余計なチカラ。
“いる”って誰かかが言って“いいよ、あげる”で簡単にこのチカラが何処かへ行ってしまうなら、僕は躊躇わずにこのチカラを捨てるのに。
一度だって、そんな場面は訪れなかった。

「結城....」

この声は、悲鳴にもならなかった。
喉の奥で、熱い感情がヒリヒリと痛みを生み出した。
腕でぬぐっても、ぬぐっても、溢れる泪は止まらなかった。

「逢いたいよっ......」

そう。
僕は、君に逢いたい。


寝そべった床の上から、丸い大きな天井についた窓を見上げた。
漆黒の空に浮かぶ、きらきら光る無数の星。
それがふ、と音もなく姿を消した。
残ったのは、今にも切れそうな、細い細い月だけだった。

ただ蒼く。
星たちとは対照的な、冷たい光を内に宿した月は、誰かが哂っているようにも見えた。


君に逢いたいとは望んではいけない。
その時僕は、君に告げなくてはならないから。
御伽噺のように、僕は君の命を救ってやることなんてできない。
ただ冷酷に、君に無慈悲な真実を宣告するだけ。
だから、逢いたいなんて、言ってはいけない。


けれど僕は、どうしようもないんだ。
君に逢いたくて、どうしようもないんだ。


フローリングの床の上に流れ落ちた泪は、月の光を吸い込んで、鈍い蒼に染まっている。

君を愛そうB 

January 06 [Fri], 2006, 12:01
リビングに行くと、厚ちゃんが大あくびをしながらテーブルについていた。
可愛いvV
どうしてこうも小動物のように愛らしいんだ!!

『お、ゆう!!飯だ、飯』

「あ、うん。すぐ用意するから」

テーブルの上に両腕を伸ばしてぐんと身体を伸ばすその姿は、猫そのもの。
窓から差し込む柔らかい陽がさらさらの髪を映えさせて、とても絵になった。
俺はそれをついつい目を細めて眺めてしまった。

『おい、おっさん。飯は、飯。早くしてくださいよ〜』

「はいはい、ただいま。」

おっさんはアンタだろうよ、と思いつつ、俺はキッチンへと向かった。
テーブルの上で、いまだ突っ伏したようにごろごろしている岩沢は、やっぱり猫だった。
耳とか尻尾とかつけたら、さぞ可愛いだろうな、と思いつつ、朝食を準備する。

『今日こそは逆転勝利だかんな』

「厚ちゃん、なんか言った??」

『いいや〜??』

悠仁のるんるん気分を傍目に、厚治はひとり、楽しそうに呟いた。

続く!!

君を愛そうA 

December 31 [Sat], 2005, 13:59
何かほっぺが痛いなぁ〜、何て思ってる頃には、眠気が吹っ飛んでた。
あ、ほっぺジンジンする。
コレってもしかして…。

『やっと起きたか』

「こうひゃん??」

『お前が呼んだんだろ??何寝てんだよっ、』

段々と焦点を結んでいく視界の中で、超絶不機嫌な相方が腕を組んで立っている。
うわっ、なんか、やばい状況じゃないですか??コレは。

『ホント、襲うぞ、コラ』

「いえ、あの...呼んだっ??」

朝特有の掠れ声が、俺の情けなさを増大させている。
多分顔に作った笑いは、相当引きつってると思う。

『そんな甘えた顔しても駄目だかんな。ちゃんと理由を言えよ、理由を』

俺に困ったように言葉を返す岩沢。
何となくだけど、顔が赤い。

「あのぉ、理由って??」

『は!?俺が呼び出された理由だよっ!!』

「えっとぉ、岩沢さん??」

『なんだ??』

「なんだろうな〜、きょうね〜、おきたのはさ〜、いまが〜、はじめてで〜」

『だ、か、ら』

戸惑う俺に、岩沢が詰め寄る。
あ、朝からアンタの可愛いドアップはなしでしょ!!

『はっきり言えよ。俺を呼んだ覚えはないんだろ??』

「うん。まぁ、悪気はないのですがぁ〜」

『ふぅ〜ん』

俺の目の前で、岩沢がにやりと笑った。
ホント、アンタ、朝から刺激強すぎっすよ!!
なんですか、その小悪魔な微笑みは!!

『いい口実ができた』

「へ??」

『なんでもない。おい、朝飯』

「あ、うん、」

『顔洗って歯は磨け』

「は〜い」

俺はひとまず許されたようで、もそもそと布団から這い出た。
う〜ん、岩沢を家に呼んだ記憶がない。
どうなってるんだろう??

俺は不思議顔で鏡に向かった。


続く...??

君を愛そう@ 

December 31 [Sat], 2005, 13:17
『悠仁...』

耳をくすぐったい声が掠める。
誰か、俺の耳元で囁いてるんだ。
その人物はどうやら俺を起こそうと、名前を呼んでこの体を揺すっているけど、その甘く柔らかい声と、小さな揺すり方では、俺を眠りの中に余計引きずり込んでしまっている。

「あと...もう...ちょっ、と」

『おいっ...』

俺がむにゃむにゃと言葉をこぼすと、声の主は少し焦ったような声を上げた。
カーテンが開けられているのだろうか、視界が明るい。
それに温かな光が頬の方へ差し込んできている。
これでは、眠気が更に増す。
春の木漏れ日の中で日向ぼっこをしているようだ。

『起きねぇと、襲うぞ、お前』

「いいよぉ、別にぃ...」

まさに、どうでも良かった。
この幸せな眠りは、誰にも邪魔されないものだ、という妙な錯覚に陥っていた。

『ほぉ〜...本当にいいんだな??ジンちゃん??』

「むに〜...」

『この、馬鹿仁〜っ!!』

「ほへっ??」

眠る羊。@ 

November 05 [Sat], 2005, 18:57
―君の頭についているそのわっかは誰から貰ったの??

近所に越してきた山寺由宇都は、僕を見ていきなりそんなことを言った。
意味が分からない。
“わっか”ってなんだ、“わっか”って。
彼がそんなことを言ったものだから、僕は由宇都に話しかけるのをよそうと心に決めていた。
けれど、そんな決心も、またしても由宇都に打ち砕かれてしまう。

「ねぇ、榊くん」

スタスタと夕暮れの通学路を行く僕の後に、しつこく声をかけながら着いて来る由宇都。
いい加減、諦めたらどうなのだ?
僕はずっと無視を決め込んでいると言うのに。

「ねぇ、ねぇってば」
「うるさいな!!」

ついに僕は返事をしてしまった。
ああ、どうしようもない。

「やっと、僕のこと見てくれたね」
「どうでもいいから、用事は何?」

僕は自分に嫌気がさして、思いっ切り荒い口調で由宇都に言った。

「僕、お腹がすいてるんだ。早くして」

一気にまくし立てれば、誰だってひるんだりする。
その隙に話なんて聞かずにさっさと帰ってしまおう。
そう考えていた。

けれども、僕の前に立つ由宇都は余裕綽々の表情で、僕に応えた。

「ねぇ、前みたいにわっか見せて?」
「は!?ふざけないでよ。僕はわっかなんてなんのことだかさっぱり分からない。だから、さよなら」

僕はとにかく、この由宇都という少年が、すこし頭のおかしな子に見えていたから、ここは逃げるしかないんだ。
そう思って、捨て台詞とともに駆け去った。
なんだか、よく分からない。

「綺麗だったのに」

由宇都は夕日の中、くすりと笑った。



眠る羊は、迷子になってる。

rit.A 

November 05 [Sat], 2005, 12:40
「おっと、ゆっくりだったね、厚ちゃん??」

オレは頷く。

彼の後ろで、さっき貰った飴を放り込んだ。
少し苦めな少し甘めなのど飴。

「あ、アメちゃん舐めてる♪」

でも、案の定気付かれた。

「ちょ〜だい♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は??」

そして突拍もない台詞。

「厚ちゃんの舐めてるアメちゃん。オレにプリ〜ズv」
「無理。やだ。駄目。断固拒否」
「ケチ〜。じゃ、オレはオレのアメちゃんを舐めますか」

そういってまたポケットから出てきたアメちゃん。
あ、悠仁の言葉がうつった…。

ヤベ、オレ病気??


ritardando

さぁ、だんだんと、回ってゆく世界で、ふたりで。


幸せを繋ぎ合わせながら。


--------------------------------------------------------------
甘いですか!?
どうですか!?
なんつーか…ねぇ??
すごいイタイのを書いてるもんだから、こういうのを書いてみたくなったわけです、ハイ。
どうも、お目汚しを…。

rit.@ 

November 05 [Sat], 2005, 11:50
もっと遅く、もっと遅く。
さぁ、立ち止まるほどに、ゆっくり、ゆっくり。
歩くのさ。

「岩ちゃ〜ん!!!」
「ん??」
「はい、これあげる♪」

何だ、と思いつつもソレを受け取る。
手の中に握り込まされたソレは…。

ゆっくりと手の平を開く。

「飴??」
「そ、アメちゃん♪」
「ふ〜ん」
「ふ〜んって…」

ソレはただの飴じゃなくて、のど飴。
君が微かに僕を気遣うのど飴。

顔がにやけぬように、またのど飴を手の平の中に隠した。

「舐めないの??」
「今はいいや」
「ふ〜ん…」

少ししゅんとしたでっかい犬を見上げ、オレは笑った。

「悠、散歩行かない??」
「行く!!!」

最近オレが“悠”と呼ぶことが弱いらしいと気付いたから、オレは何かねだるとき、悠仁をそう呼ぶ。
このでっかい犬を飼いならせるのはオレだけ。

「ゆっくり歩こうな」
「何??昨日の夜腰使いすぎたから痛っ…痛いよ厚ちゃん!!」

オレはでかいばか犬の頭をひっぱたいてやった。

雰囲気を呑め、雰囲気を。
甘いも苦いもあったものではない。

「ゆっくり、歩こうな」

同じ言葉を繰り返す。

「ゆっくりね」

オレの言葉に、悠仁はにっこり微笑んだ。
なんだ分かってるじゃないか。

その笑顔はとても綺麗だった。

不覚にもドキッとさせられる。

「さ、いこう」

そう言って手を引かれた。
何だかんだ言って、先頭を歩いてるこいつが好きだったりする。

こんな感じ。 

November 03 [Thu], 2005, 22:13
「うわっ、時間ない!!!」

「え??もうそんな時間??」

「うん!!ごめんね、また明日にしよ!!!」

「あ、うん。別にいいよ。早く行きなよ。電車来ちゃう」

「うん。ホントごめんね!!!また明日」


―また明日


明日なんてないのに。
私はそう思って、寒々とした黒色の空を見上げた。
吐く息は白く、そこへ溶け込んで消えた。
まるで、明日の私みたいに。


―明日なんてないのに


繰り返せば繰り返すほど、笑えてくるその言葉。
残酷で、残酷で。
でもそんな言葉を、人々は毎日毎日繰り返す。
滑稽で、滑稽で。
本当に、明日があるなんて言える人は…


「今更、未練がましい…」


私はポツリ、夜空に呟いた。
無論、聞いている人などいない。
私は、少し早めだったけれど、羽織ったコートに手を突っ込んで「また明日」と声がしていたほうに背を向け、歩き出した。


―未練がましい


そうなんだよ。
明日なんてないのに、それに執着するなんて。
女々しい自分の気持ちが嫌になった。
でも、嫌になったって今更。
明日なんてないんだから。


ふと、腕時計に目をやる。
時刻は11時59分。
私の、おやすみの時間。


「そろそろ寝ようか」


今日はいつもより疲れたから。
夜の中に身を投げ出そう。
そして眠ろう。

夜に身を埋めて、死んだように眠ろう。
時計の針が回り続けるなら、朝は夜を殺してしまうだろう。
そうすれば、私は陽の光に名前を与えられて目覚めるのだ。


私は生まれたて。
産声を上げる代わりに、大きく欠伸をして。


そして歩を進めれば私の心を傷つける残酷な言葉。


―また明日


明日なんてないんだよ。


目覚めれば今日。
いつもだいたいそんな感じの私の日常。

僕が生きた、この街で。 僕は死んで、目を閉じる。 そして僕は、歌いだす。 

November 02 [Wed], 2005, 19:11
「お誕生日おめでとう」

慶竜が私に優しく微笑んだ。

「ありがとう」

私はぺこりと頭を下げた。

「お誕生日おめでとう」

慶竜の横で、にこりと綴さんが微笑んだ。

「ありがとうございます」

私はまた、ぺこりと頭を下げた。

「この世に生まれてきてくれてありがとう」

「僕たちは君が生まれてきてくれて幸せです」

ふたりが私の手をとって、椅子に座らせてくれた。

「これからも一緒に歌いましょう」

「これからもずっと一緒にね」


「もちろんですとも」

私は目の前のケーキをじっと見つめていった。

「ホールだぁ…」

もちろん、というように慶竜が笑う。
オレの手作りよ、と。

綴さんは、小さく笑って、私の頭をぽんぽんとした。

「はい、照明落とす」

「照明…」

慶竜が綴さんの台詞に笑い、明かりを落とした。
すると、綺麗なロウソクの灯りが暗闇の中で浮かび上がった。


HAPPY BIRTH DAY TO UTAKA


「綺麗や」

「ホント??リュウちゃん嬉〜vv」

「作りがいがあったってもんだね」

ふたりが妙に頭を撫でてくる。
まぁ、こんな日は心地いいし、素直になろう。

「よっしゃ、消す」

「消すって歌さんいうと怖いな…」

「む」

「まぁ、まぁ」

何時のものにらみ合いになりそうなのを綴さんが止めて、私はまたケーキに向き直った。

「”フー”がいい、”フォー”がいい??」

「「いや、普通で」」

ふたりの突込みが被って、私は声を立てて笑った。


フー…


私、この世に生まれてきて、ホンマ幸せや。
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