うら弦(コルダ×BLEACH)

August 31 [Tue], 2010, 22:43
『La corda decolorante〜脱色のコルダ〜』   第767楽章


 皆がここに来た理由を聞こうとした時、香穂子の持っている伝令神機が鳴った。

香穂子「黒崎君?」

 (ディスプレイに映った番号と登録した名前で香穂子はかけてきた相手を知った)

香穂子「もしもし」
一護《日野、無事か?》
香穂子「無事だよ?……あ、もしかして霊圧が消えたから心配したとか?」

 (何故いきなり一護からそんなことを聞かれるのかと香穂子は不思議に思ったが、皆の姿が視界に入ったことですぐに理由に思い当たった)

一護《そんなとこ。電話が繋がる所に居るならいいんだ》
香穂子「ごめんね。なんかみんなに心配かけちゃって」
一護《みんな?》
香穂子「こっちに月森君達も居るの。この部屋に入ってるってことはみんなの霊圧も感じないはずだけど、それは気が付かなかった?」
一護《ああ。近くに居るならともかく、あんまり離れた場所に居ると俺は日野の霊圧しかつかめないんだよ。ただ、霊圧の消え方があまりに変だったから逆に変なことに巻き込まれたのとは違うって思ったんだけど、金澤と王崎が心配してお前に連絡取れないかって聞いてきたもんだから》
金澤《あっ、こら馬鹿。言うなって言っただろ》
王崎《いいじゃないですか。心配するのに間違いなんてありませんよ》

 (電話の向こうから弁解する金澤と、それを宥める王崎の声が聞こえる。心配をかけて申し訳ないと思いながらも、そのような気遣いが感じられるのは嬉しいとも思う)

香穂子「私は本当に大丈夫。すぐに戻るからって伝えておいて。うん、それじゃ」

 (香穂子は要点を伝えた後、伝令神機を切った)

火原「黒崎君もわかったんだね、日野ちゃんの霊圧が消えたこと」
柚木「それより、伝令神機は繋がったんだ?」
香穂子「はい。電源はずっと入れてましたから」
柚木「じゃあ、最初から日野さんの伝令神機に電話をかければ走ったりプールに落ちたりしなくても無事は確認できたっていうこと?」
香穂子「……そういうことになりますね」

 (香穂子はしばらく考えた後、柚木の意見に頷く)

志水「でも、今日は僕持ってませんけど……」
土浦「俺も持ってないぜ」
月森「俺もだ」

 (皆の視線は答えていない火原に向けられる)

火原「えーと……」

 (火原は苦笑しながら懐から伝令神機を取り出す)

火原「俺?」
月森・柚木「「火原(先輩)」」
火原「ごっ、ごめん。ホントいきなりでビックリしてそこまで気が回らなくて!」

 (火原は弁解しながら常盤の後ろに隠れる。一番責められないのは香穂子なのだろうが、この状況で香穂子の後ろに隠れるのは流石に恥ずかしい)

土浦「……まあ、伝令神機のことに気が付かなかったのは俺も同じですけどね」
火原「でしょでしょっ?」
柚木「全く。仕方ないね」
月森「………………」

 (月森はあからさまに嫌そうな溜息をつくが、月森も伝令神機のことに気づかなかったのでそれ以上火原を責めることはできない)

常盤「なんだかよくわからないけど、解決したのかな?」
香穂子「だと思います」
火原「そういえば、勝手に侵入したのに俺達が日野ちゃんの知り合いってよくわかったね?」
常盤「弓親殿に彼の写真をみせてもらったんだよ」
志水「僕…ですか?」
常盤「そう。その写真と同じ不思議な霊圧のようなものがカメラから伝わって来たから同一人物だとわかったんだよ。そうでなければあのまま放置していたかもしれないね」
土浦「笑い事じゃないっての」


つづく。

うら弦(コルダ×BLEACH)

August 30 [Mon], 2010, 22:52
『La corda decolorante〜脱色のコルダ〜』   第766楽章


 罠に嵌まってプールに落とされた月森・土浦・志水・火原・柚木。
 もう駄目だと思ったその時、水が抜けて床に降りることができた。

火原「あそこにドアがあるよ。外に出られるかも」

 (よく見ればそこは部屋のようになっていて壁にはドアも付いている。皆がそこへ向かうおうとすると、ドアは向こうから開いた)

常盤「すみません。大丈夫でしたか?」

 (開いたドアから現れたのは家の主である常盤だ)

土浦「あんた、ここの家のヤツか?」
常盤「はい。常盤と言います。この度はとんだ失礼をしてしまって申し訳ない。まさか一番のトラップを引くなんて」
志水「ある意味大当たり…ですね」
柚木「もう少しソフトなものなら良かったんだけどね」
土浦「それよりも、ここに女が……死覇装を着て小っこいのを連れた女が来なかったか?」
常盤「ああ。やはり香穂子殿の知り合いだったんだね」
火原「やっぱり日野ちゃん来てるんだね。どこに居るの?」
常盤「すぐに案内するよ。でも皆ずぶ濡れだ。早く乾かさないと風邪をひいてしまう。ささ、こっちへ」

 (まず常盤に案内された部屋は、穴の開いた壁に囲まれた部屋。5人で入るとかなり狭い)

常盤「では」

 (5人を部屋に入れた後、常盤はドアの外でスイッチを押す)

月森「っ……」

 (すると、壁の穴から温風が吹き出して皆を包んだ。砂埃が舞うわけではないがかなり強めの風なのでコンタクトをしている者は目を開けていられない)

常盤「はい、ご苦労様です」

 (数分後、風が止んで常盤が再びドアを開けた))

火原「あ。髪も乾いてる。もしかして全身ドライヤー?」
常盤「そう。洗濯物を乾かすには水分を飛ばすことがポイント。風だけでも充分効果は得られるけれど、熱を加えることによって水の蒸発を促してより早く乾かすことができます。また、水が蒸発した際にはわずかながらエネルギーを発します。この部屋の壁にはそのエネルギーも吸収することができる素材を使用している為、余計な電力を抑えてエコロジーに……」
火原「難しい話は苦手だなあ」
月森「理屈はわかりますが、そういうものであると先に言ってください。こちらにも準備が必要です」
柚木「それで、日野さんはどこに?」
常盤「ああ、そうだったそうだった。つい話に夢中になってしまって。どうぞ、こちらです」

 (皆は常盤の後ろをぴったりついて廊下を歩く。香穂子のように直接注意されたわけではないが、離れるのは危険だと判断しての事だ。何しろ入口からあのような目に遭ったのだ。家の中も当然何らかのトラップが仕掛けられているに違いないという考えには容易に辿り着く)

   コンコン

常盤「香穂子殿。お客さんだよー」

 (常盤はノックをした後、香穂子の居る部屋のドアを開けた)

火原「日野ちゃん」
土浦「日野」
香穂子「えっ?みんな、一体どうしたの?」

 (行き先を伝えていないはずの者達がいきなり現れたことに驚く香穂子に対し、皆は香穂子が無事であることを知ってホッとした)

火原「日野ちゃんの気配が急に消えたからビックリしてさ」
香穂子「あ、そっか。ここは霊圧を遮断する部屋だから……」

 (この部屋に居て霊圧が遮断されるのはハープだけでなく自分もであることに香穂子はようやく気が付いた)

香穂子「すみません。そんなことになっているとは思わなくて……でもよくここがわかりましたね?」
土浦「それは人伝に……」

    ♪♪〜

 (その時、香穂子の持っている伝令神機が鳴った)

つづく。

うら遙(遙か×薄桜鬼)

August 29 [Sun], 2010, 23:25
『遙かなる薄桜の中で』   十二章


 気晴らしの為に京の町へ出た新選組組長達は、追われて逃げている窃盗団に遭遇した。
 犯罪者を放っておくことなどできないので捕縛にかかる。


盗人「どけっ!」
土方「ふっ」

 (向かって来る集団の前に立ち、土方はそのうちの一人を片手で捻り上げる)

盗人2「ちっ」

 (他の者は捕らえられた者を助けようともせずに道の先へ逃げ続ける)

永倉「おいおい。冷たいんじゃねえの、かっ!」

 (逃げようとした別の盗人の背中を永倉が蹴る。蹴られた盗人はそのまま転んで地面に突っ伏した)

原田「あんまり乱暴にやるなよ、新八。盗られた物が傷つくだろ」

 (原田はその盗人の腕から零れ落ちた品を拾い上げて永倉に言った)

永倉「悪い悪い、つい」
平助「こっちも片付いたぜ。思ったよりあっけなかったな」
沖田「烏合の衆だった、ってこと?」

 (真っ直ぐ走っては同じ目に遭うと判断して散り散りに各方向へ逃げようとした他の盗人達もあっと言う間に捕らえられた)

盗人「は、放せよ、このっ」
土方「人の物盗んでおいて逃がすわけないだろ」
沖田「そういえば、この世界にも守護職って居たんだっけ?」
土方「まだ話には聞いてないけど居ないわけないだろ。問題はどこに居るかだ。ここに来るまで屯所らしきものも見なかったし……」
町人「ああ、助かった。ありがとうよ、お侍さん」

 (そこへ、やっと物を盗られたらしい町人が追いついて来た。土方らを見て『侍』と言ったのは、腰に刀を差しているだけでなく身なりも整っていることからそう判断した為だ)

町人2「全くこの盗っ人が。よくもやってくれたね!」

 (町人の一人は捕らえられていた盗人の頭を叩いた)

盗人「馬鹿野郎。いいじゃねえかちょっとぐらい。こっちは生きていく為にそんな悠長なことしていられないんだよ」
町人2「何だって?よくも偉そうに。こっちだってこの京の町で生きていくのにどれだけ苦労していることか。この品物の一つ一つだって大事な物なんだよっ」

 (盗人の言葉に怒りを覚えた町人は、再び盗人を叩こうとした)

斎藤「やめるんだ。痛みを痛みで返しても何も生まれない」

 (町人の手を斎藤が止める)

町人「けど、お侍さん……」
盗人2「はっ、同情か?いいよなあ、『お侍様』は」
盗人「けっ。侍だからって威張ってんじゃねえぞ。ちょっとばかし腕っ節が立つからって人の金を貪りとってのうのうと生きているくせに」
土方「………………」

 (盗人の言葉を否定できない部分はある。威張っているつもりはないし他人の財をむさぼってもいないが、新選組も守護職に認められなければどのような道を辿っていたかわからない。立場を隔てているのはほんの少しの差なのだ)

??「たとえ力を持っていても、武士はそれを私利私欲には使いません。そして理性を持って大切な者のことを想い、無闇に傷つける真似もしません。義を重んじながらのうのうと生きることは不可能ですよ」

 (土方が返す言葉に詰まっていたところ、眼鏡をかけた青年が割って入って来た)

盗人「………………」

 (筋の通った青年の言葉に、盗人らも返す言葉が無いらしい。そのままおとなしく検非違使の者達に連行された)

??「ご苦労様でした」
土方「ああ。悪いな。あれくらい言い返せれば良かったけど」
??「いえ。誰でも他人の全てをすぐに否定することはできませんよ。それに助けていただいたのはこちらの方ですし。最近は怨霊の影響で都の情勢も乱れ、人の心も荒んでいます。通常の警護だけでは民の平穏を守るのに人が足りないところでしたから」
平助「やっぱそんなに厄介なのか……」

 (話は聞いたし、襲われもした。けれどそれが町全体に広がっていることは触れてみなければわからない)

??「ところで、あなた方はどちらの武士団の方でしょうか?一応調書を取っておきたいのですが」
永倉「どこって……」
原田「なあ?」

 (この世界には皆が属している場所が無い為、答えに詰まる)

天真「こんな所に溜まって何してんだよ、お前ら」
土方「天真」
??「天真殿」
天真「鷹通も一緒だったのか。まさか尋問?言っとくけどこいつらなら別に怪しい奴じゃないぜ」

 (天真は事情を悟る前に土方らの身の潔白を証明する)

鷹通「いえ、この方々には先程盗人を捕らえられていただいたんです。それでどちらの方かと尋ねていたところなんですよ。しかし、天真殿がそう言われるような方々なら特に問題はありませんね」
沖田「へぇ。天真って怖そうな見た目の割に信用あるんだ」
天真「どういう意味だ、コラ」
土方「こちらのことをわかってもらったのは助かったが、あんたはどこの者だ?」


来週に続く。

舞台裏(Lovely Voice)

August 28 [Sat], 2010, 21:17
『まねっこティアラジ』   第132回


宮谷「皆様ご機嫌いかがですか。管理人が『Lantis web radio』内の『ティアラジオ』にハマったが故に始まった『まねっこティアラジ』へようこそいらっしゃいました。この番組では本家本元に近付くように上品かつ大人なBとLの世界を御案内します」
総二朗「あーもー暑〜。いつまで続くんだ〜?」
彰也「あと1週間ぐらいだろ」
宮谷「そんなクールドライにあっさりと……彰也さんの中ではもう秋が来てるんですか?」
彰也「秋というか、もうあとは静かに老後を過ごすぐらいのものだし」
総二朗「いや、『もう』って、『老後』って。彰兄は父さんより若いじゃん」
壱郎「息子が父より年食ってるはずないだろ」
彰也「駄目だよ、父さん。そこは『年を重ねる』って言わないと」
総二朗「どっちでもいいよ。父さんは介護保険料払う年だけど彰兄はそんなんじゃないじゃん」
壱郎「生々しいな、オイ」
宮谷「俺としては総二朗さんがそんな難しい言葉を知っていた上に払い始める年齢の事もわかっていた方が驚きですよ」
壱郎「保険料は義務だからな。というか、払っておかないとこっちが困る」
彰也「総に心配されるようなほどではないぞ」
総二朗「じゃあちゃんとしてよ。彰兄の声を待ってる人はたくさん居るんだから」
彰也「はいはい」
宮谷「ではそろそろ未だに続く『受け攻めどっち?』のパクリのコーナーに行きたいと思います。今日のお題は『豆』」
彰也「抽象的だな」
総二朗「何で?豆は豆しか無いじゃん」
壱郎「種類がいろいろあるだろ。同じ『豆』とされていても小豆と大豆とピーナツとでは主成分から違うんだ」
総二朗「違うけど、みんな美味いよね」
壱郎「結局お前はそれか」
総二朗「おいしく食べることは食べる側からできる最大の感謝でしょ。忘れる方がいけないことだよ」
宮谷「理屈は通ってますよね」
壱郎「食い意地が張ってるっぽいのが難だけどな。それに、多分智安も同じこと言うだろうな」
宮谷「食い意地はともかく、豆は確かに美味しいですよね。栄養もありますし」
彰也「栄養は健康のサポーター。それだけが全てを作るわけではないけれど、『少しずつ』が集まって一つのことを成し遂げるのはいいことだと思う」
総二朗「他に豆のイメージって何だろ?」
壱郎「『小さい物』の代名詞に使われるんじゃないか?鋼のみたいに。ただ、小さくても豆の栄養のように何かに影響する可能性は詰まってると思う」
宮谷「ということは、攻め?」
総二朗「小さいのに?」
彰也「小さいからこそ無駄も無い。余すことなく伝えられる」
総二朗「なるほど」
壱郎「んじゃ、豆は攻めってことで」


つづく?

うら弦(コルダ×BLEACH)

August 27 [Fri], 2010, 23:04
『La corda decolorante〜脱色のコルダ〜』   第765楽章


 家の中へ入るのに必要であろう三本のロープ。
 どれが正解なのか全くわからなかった為、火原は勘に任せて三本のロープのうちの一本を引っ張った。

柚木「……何も起こらない、ね」

 (いきなり引っ張られて皆ビックリしたが、しばらく待っても何も起こらない)

柚木「しかも誰も出てこない」
志水「ハズレだったんでしょうか……」
土浦「火原先輩、気をつけてくださいよ。ハズレだったから良かったものの何かあったら……」
月森「……既に何か起こっているようだが?」
土浦「どういうことだ?」
月森「何か歯車のようなものが回る音が聞こえる」
志水「そういえば」

    ガコン

 (その時、足元の床が開いた)

火原「うわあっ」

 (為す術も無く皆は開いた床から下に落ちた)

    ザバンッ

火原「ぷはっ」
土浦「何だ?水?」
志水「プールみたい、ですね」

 (落ちた先は水の中であった為、特に怪我をするようなことは無かった。しかし、月森と柚木が浮かび上がってこない)

土浦「ちょっ……」

 (驚いた土浦と火原は潜って二人を探しに行く。上に上がろうとしても沈んでいく姿を見つけ、腕を掴んで引っ張り上げる)

火原「危なかったー。柚木ってば泳げないの?」

 (火原は柚木を肩に捕まらせながら立ち泳ぎをして尋ねる)

柚木「恥ずかしながら」
火原「そっか。体育の授業出られないぐらいだもんね。今度教えてあげるよ」
土浦「月森まで泳げないとはな」
月森「そんなことはない。少し驚いて身体が対処できなかっただけだ」

 (月森は土浦から手を離し、一人で水に浮く)

月森「人の家を訪ねて服のままプールに落ちるだなんて誰が想像するんだ」
土浦「そりゃまあ、確かに」
志水「それより、なんだかだんだん上に上がって行っていませんか?」
柚木「本当だ。落ちてきた穴は塞がってしまったし、天井があるからこのままだと泳いでいても結局溺れてしまうね」
火原「そんな、どうしよう。楽器が無いから何もできないし」
月森「この状態で楽器を持っていたら濡れてしまうのでかえって大変だと思いますよ」
土浦「どうしようもできないのかよ」

 (迫る水と残された時間に焦ってしまい、結局答えは出ない)

常盤「おや?お客さんでしょうか?」

 (その時、ハープの服の研究に没頭していた常盤はようやく侵入者を知らせるランプが点灯していることに気がつき、専用ディスプレイに間取り図を映し出した)

常盤「おかしいな。トラップは作動しているのに霊圧の反応がほとんど映っていない」

 (次に常盤はカメラ画面に切り替えた。しかし、カメラの先は既に水の中で何が映っているのかよく見えない)

常盤「……ん?」

 (しかし、その画面の端に一瞬だけ黒いものが映った)

常盤「こ、これはいけない。早く切り替えないと」

 (常盤は排水ボタンを押した)

火原「あれ?今度は下がってきてる?」
土浦「助かるのか?俺達」
柚木「そうみたいだね」

 (水位はゆっくりと下がり、皆は無事に床に降り立つことができた)

志水「ずぶ濡れになってしまいましたね」
土浦「一体何だったんだ?」
月森「歓迎されていなかった、とも考えられるな」
柚木「まあまあ。怪我がなくて何よりだよ」
火原「あそこにドアがあるよ。外に出られるかも」


つづく。

うら弦(コルダ×BLEACH)

August 26 [Thu], 2010, 22:39
『La corda decolorante〜脱色のコルダ〜』   第764楽章


 五人は瀞霊廷の商店街から少し離れた場所にある森の中の家へと辿り着いた。
 声をかけても返事は無いが、インターホンらしきものも見当たらない。

土浦「あの三本のロープが思い切り怪しいですね。パターンからすればどれか1本が正解、ってところでしょうけど、どれなんでしょうね」
柚木「色も長さも全部同じだから見分けるのは難しいね」

 (柚木はロープをじっと見つめて言う)

志水「正しいのを選ばなければ入れないんですよね、きっと」
火原「ただ入れないだけならいいけど、上から何か降って来たり床が抜けたりっていうパターンも考えられるよね」
柚木「確かに。これだけ大きな家だから侵入者防止の為の罠の一つや二つあってもおかしくない」
志水「どこかにヒントや暗号が隠されていたりしないでしょうか?」
火原「実は一本だけじゃなくて全部一度に引っ張るとかいうのもアリかなあ?」
土浦「いずれにしても日野の無事が確認できればそれでいいんだが……」
月森「………………」

 (どの方法が正しいか皆が話し合う横で、月森は黙ったままだ)

火原「月森君もどんどん意見言っていいんだよ。何気なくちょっとしたことから解決することもあるんだからさ」
月森「すみません。こういうことはよくわからなくて」
火原「そりゃあ日常ではあんまり無いけど、テレビのバラエティとかでならよくあるじゃん」
柚木「僕もだけど、月森君もそういう番組はあまり見ないんじゃないかな。テレビは無くても本とかで読んだことは無い?」
志水「冒険小説や推理小説でこういうの時々ありますよね……」
月森「読む本は楽典や音楽史が多いので、小説もあまり」
火原「ええっ?月森君が真面目なのは知ってたけどそんな楽しみが少ない中でどうやって生きてきたの?」

 (火原は月森の答えに驚き詰め寄る)

土浦「火原先輩。その言い方はいくら何でも失礼だと思いますよ」

 (普段月森とソリが合わないことの多い土浦だが、流石に言い過ぎだと思ったので今だけは月森の味方になる)

火原「だって、音楽も勿論楽しいけど、おいしいものとか楽しい漫画とかお祭とかいっぱいあるのに」
志水「楽しみ方はひとそれぞれですよね。日野先輩の演奏の解釈も、僕達と違っていることがあります。それでもその音楽を『楽しくない』とは全く思えない……それと同じじゃないでしょうか」
火原「なるほど、そういうことか」

 (志水のたとえで火原もようやく理解できたようだ)

火原「ごめん、月森君。俺つい自分の感覚だけで見ちゃって」
月森「いえ、構いません」
柚木「それより問題はこっちだよ。どれを引っ張ればいいと思う?」
土浦「引っ張りやすいのは右側?ああ、でもこの家の主が右利きとは限らないか」
柚木「間を取って真ん中というのはどう?」
志水「毎回ランダムで変わる、っていう可能性もありますよね」
火原「あーっ!考えれば考えるほどわかんなくなるよ」

 (火原は頭を抱えて天井を見上げた)

月森「あの……」
火原「どうせわかんないなら勘で行こう。これっ!」
土浦「ちょっと待っ……」

 (月森が言おうとした言葉も土浦が止めようとしたのも届かず、火原は目を瞑って三本のロープのうちの一本を引っ張った)


つづく。

うら弦(コルダ×BLEACH)

August 25 [Wed], 2010, 23:47
『La corda decolorante〜脱色のコルダ〜』   第763楽章


 気配の消えた香穂子の手掛かりを掴んだ火原は全てを聞く前に走り出す。
 本当はもっと速く走りたいのだが、先程月森を振り回したことからややペースを落とそうと思い、その時間ロスを埋める為に早く弓親の前から走り去ったのだ。

火原「森ってあれかな?」

 (瀞霊廷の商店街から出ると、前方やや右手に森が見えた)

志水「弓親さんが言っていた方向からすれば合っていると思います」
土浦「思ったほどの怪しさは無いみたいだな」
火原「おーい。柚木ー。月森くーん。大丈夫〜?」

 (スピードを落としてもまだ追いつけない二人を心配し、火原は手を大きく振って呼びかける)

月森「何故今日はこんなに走らなければならないんだ……」
柚木「走るのはあまり得意じゃないって、話したはずなんだけどな……」

 (あまり大丈夫ではない月森と柚木だが、この先に待つものを考えると立ち止まることもできない)

土浦「道…ってのはこれだよな」
志水「他にも入口があったとしたら、それでも目的地に辿り着けないことになりますよね」
火原「手分けする?」
土浦「初めて行く場所ですよ。それで誰かが迷ったらまたどうやって探すんですか」
火原「あ、そっか」
志水「全員で同じ道を行った方が良さそうですね」
柚木「ああ、やっと追いついた」

 (森の手前まで来たのは良いが、どこから入るべきか考えていたところに柚木と月森が追いついて来た)

月森「入らないのか?」

 (月森は荒く息をしながら草が踏み拉かれている場所を指して言った)

土浦「この入口が正しいとは限らないんだよ」
月森「ならば一度入ればいい。行き止まりかどうしても辿り着かなさそうならまた戻って別の入口を探せばいいだけのこと」
志水「なるほど……それなら時間はかかりますけど確実ですね」
柚木「まさかとは思うけど、森の中は走ったりしないよね?」

 (先に息を整えた柚木はやや牽制しながら言う)

火原「でも、早く行って確認しないと」
志水「走るのは危ないと思います。転んで手を怪我したら大変ですし」
土浦「ああ。足場も悪そうだしな。グラウンドならともかく、こういう場所で全く転ばないって自信は正直俺にも無い」
柚木「じゃあゆっくり行こうか」

 (五人は目の前にあった入口から森の中へ入ることにした。人が通ったことでできた道に沿っていくらか歩いて行くと、木陰から建物のようなものが見えた)

火原「あっ。あれかな?」

 (火原は少しだけ速足になって先へ進む。ここまで来たらもう迷うことは無いので他の者らも迷わずに屋敷の前まで辿り着いた)

火原「ごめんくださーい!」

 (大きな声で呼びかけるが、返事は無い)

柚木「火原。これだけ大きい家ならインターホンじゃないと中まで届かないんじゃない?」
土浦「インターホンらしきものは見当たりませんけど……あの三本のロープが思い切り怪しいですね。パターンからすればどれか1本が正解、ってところでしょうけど、どれなんでしょうね」



つづく。

うら弦(コルダ×BLEACH)

August 24 [Tue], 2010, 22:47
『La corda decolorante〜脱色のコルダ〜』   第762楽章


 香穂子の行方の手掛かりを知っている弓親を掴まえる為、乱菊は香穂子を心配する者達を連れて先程まで居た呉服屋へ戻った。

乱菊「ほら、居た」

 (呉服屋に入ると、そこには反物をいくつか手にとって生地を選んでいる弓親の姿があった)

乱菊「ちょっと弓親。あんた……」
弓親「桂一、ちょうどいいところに。やはり美しい者は美しい者を引き寄せる力があるに違いない」

 (声をかけたのは乱菊だが、弓親は乱菊と共に居た志水の方へ駆け寄った)

弓親「桂一の死覇装のデザインを少し新しくしようと思っていたんだ。この生地はどうかな?それともこっちの方が映える?」

 (弓親は持っていた反物を志水に当てて見映えを確認する)

乱菊「待ちなさい。あんた香穂と一緒だったんじゃないの?」
弓親「さっきまで一緒だったよ」
乱菊「さっきまでって、どこで別れたの?この子達が香穂の気配が消えたことを心配してるのよ」
弓親「僕の古い知り合いの所だよ。彼なら大抵の事はできると思ってね」
柚木「『彼』…とういことは男性ですよね」
火原「えっ?じゃあその人と二人きり?」
弓親「香穂子にくっついてる…君達の世界で言うところの妖精だっけ?あのちっちゃいのが一緒だよ」
志水「それって、限りなく二人きりに近いですよね……」
月森「その知り合いという人は信用できる人なんですか?」
弓親「信用できるよ。約束はちゃんと守って口も堅い。戦闘力が高くないのが難点だけど、その分力任せで事を運ぶことはしないからね」
土浦「だから日野をそこに放ってきたって言うのか?ふざけたことしてるんじゃねえよ」
弓親「人聞きが悪いよ、土浦。僕は預けてきただけ。それを選んだのも香穂子だ」
月森「それを証明することはできますか?」
弓親「本人が居ないのにそんなのできるわけないじゃないか。全く。君達は大袈裟だね。香穂子だって子供じゃないんだ。自分の事ぐらい自分で決められる。そんなに大勢で気にかけなくても大丈夫だよ。……ああ、桂一にはこの飾りも似合うね。美しいから何でも似合って迷ってしまうよ」
土浦「説得力無いな、オイ」

 (要点を話しながらも次々に志水の服を気にかける弓親の姿に土浦は苦笑する)

火原「行けばわかるんだよね。その人の家ってどこにあるの?」
弓親「向こうの森の奥だよ。本人を含めてある程度人通りがあるから道もできているはず。ただ……」
火原「わかった!」

 (火原は弓親の言葉を全て聞く前に指した方向へ走り出し、他の者達もは知らないまでもその方向へ向かう)

弓親「やれやれ。せっかちだな。さて。邪魔者は居なくなったしゆっくりと……」
乱菊「居ないわよ、志水」
弓親「えっ?あれ?」

 (目の前に居た志水が走り出した様子に気づかなかった弓親は驚く)

乱菊「あの子達の中で志水だけは瞬歩が使えるってやちるが言ってたじゃない。もう忘れたの?」
弓親「桂一の美しさは全ての柵を忘れさせるほどのものなんだよ」
乱菊「はいはい」



つづく。

うら弦(コルダ×BLEACH)

August 23 [Mon], 2010, 23:01
『La corda decolorante〜脱色のコルダ〜』   第761楽章


 香穂子の『音』が途切れたことに慌てる火原。
 月森の冷静な判断で霊圧がわかる死神を探していたところ、乱菊に出会った。

火原「それより乱菊さん。日野ちゃんのこと知ってるの?」
乱菊「さっきまで一緒だったわよ。でも弓親がどこかに連れて行っちゃって」
火原「弓親さん…って、志水君のこと気に入ってる人だよね。何で今日は日野ちゃんを連れて行ったの?どこかってどこ?」
乱菊「さあ?理由までは聞かなかったから」
火原「そんな……」
乱菊「一体どうしたの?」
月森「日野さんの音…気配のようなものが突然消えてしまったんです。俺達では霊圧がわからないのでどこに居るのかもわからなくて」
乱菊「香穂は弓親の好みじゃないから何かしたとは考えにくいわね。でも、香穂の霊圧は私もちょっとわかんないのよね。特殊とは言え量としては低いものだから」
火原「黒崎君はわかるって言ってたよ?」
乱菊「一護はまた特別なのよ」
火原「じゃあ黒崎君に聞いた方が早いのかな?」
乱菊「そうかもね。でもそれよりもっと確実なのは連れて行った本人に聞くことでしょ」
火原「日野ちゃんを連れて行ってどこにいるのかわからないのに聞けるはずないよ」
乱菊「犯人は犯行現場に戻るのがセオリーよ」

 (乱菊は火原と月森を連れて先程まで居た呉服屋へ戻る道をとった)

土浦「月森、火原先輩」

 (その途中、二人の姿を見かけた土浦が声をかけてきた。志水と柚木も一緒である)

火原「土浦」
月森「日野さんのことならこれから話を聞きに行くところだ」
土浦「気づいてたのか」
火原「そりゃ気づくよ」
志水「なんだか、寂しい気持ちでいっぱいです…」
柚木「話を聞きに行くって、何か手掛かりがあるの?」
月森「弓親さんという人が最後に日野さんを見たということなので、話を聞きに行くんです」
土浦「それなら俺達も一緒に行くよ」
火原「いいよね?乱菊さん」
乱菊「それは構わないわよ。それにしても、香穂ってば随分愛されてるのね」
火原「あっ……?」

 (乱菊の言葉を聞き、あからさまに表情を変えたのは火原のみ。軽く眉を動かした者らも居るが、香穂子のことを指摘されていることへの動揺を隠す為に周りの者にまで気が回らない)

月森「大袈裟な表現は控えてください。彼女が居なければ俺達は元の世界に帰れないから困るんですよ」
志水「そうですね……でも、それ以外でもやっぱり……」
柚木「とにかく話を聞きに行こうか。もしかしたら日野さんの霊圧が突然変わっただけで僕達が勘違いしているだけっていうこともあるんだし」



つづく。

うら遙(遙か×薄桜鬼)

August 22 [Sun], 2010, 22:51
『遙かなる薄桜の中で』   十一章


 土方らを飛ばしたという鬼の一族の術を調べるには詳細は星の一族の文献を繙くのが残された方法。
 それが見つかるまで時間がかかる為、新選組組長らはしばらくこの京の世界に留まることとなった。

土方「平安時代に鬼に怨霊、そして龍神の神子…か」

 (あかねは頼久・詩紋と共に四方の札の手掛かりを探しに、天真は放免のバイトで屋敷から出かけた。事情は理解できたとは言え、この京ですることのない者達は縁側に屯する)

土方「まさかこんなことになるなんてな」

 (土方は空を見上げて溜息をつく)

沖田「そう悲観的になってもしょうがないよ。あの小さい姫様が調べてくれたら帰る方法もわかるかもしれないんだし、一生ここで暮らさなきゃならないってこともないでしょ」
斎藤「土方さんが気にしているのは俺達の世界に残されたままの千鶴の事だ」
土方「斎藤。余計なこと言ってんじゃねえ」

 (斎藤を睨みつけて反論する土方だが、千鶴を気にしていることは否定していない)

原田「ま、気になるのはしょうがない。あいつは女だし剣の腕だって並以下。守るのに傍に居なくちゃならないってのにどうしても手の届かない場所にいるのがこんなにもどかしいなんて、離れてみて初めて気づくもんさ」
永倉「……あー!じっとして考えてもしょうがない。何か気晴らししよう!」
平助「気晴らしったって、俺らこの時代の金なんて持ってないぞ?酒も呑めないし店にも入れない」
永倉「無かったら何か売ってでも作ればいいんだよ。俺らが持ってる金目になるものといえば……刀?」
土方「武士の魂を売り払おうなんざいい度胸してるな、新八。何ならここで全部まとめて無くしてやろうか?」
永倉「じょ、冗談冗談」

 (土方の気迫に押され、永倉の中にあった少しだけ実行しようとしていた気持ちも萎えた)

沖田「ここって貴族の屋敷なんだし高級酒の一つや二つあるんじゃない?」
斎藤「確かに貴族の屋敷ではあるが、中心となって住んでいるのは幼い藤姫だ。用意していることはないだろう」
永倉「何だ。気晴らしの方法まで無いのかよ」
土方「気晴らしなら街中歩いてこの京都の様子見るだけでも充分だ」
原田「なるほど。観光ってわけか。俺それに乗った」
平助「でも、この屋敷には入ってこないけど外にはまた昨夜のヤツみたいなのが居るんだろ?危なくないか?」
斎藤「天真の話では、昼間は怨霊が住処にしているような一定の場所にしか出現しないということだ。下手な場所に近づかなければ大丈夫だろう」
沖田「へえ。夜だけ行動するなんて、普通のオバケや羅刹と同じだね」
平助「けどさあ……」

 (平助はまだ渋っている様子)

原田「何だよ、平助。1回追いかけられたぐらいでそんなに怖いのか?ホントにガキだな」

 (原田はそんな平助を嘲笑する)

平助「なっ、誰もそんなこと言ってないだろ。馬鹿にするな」

 (平助は怒って言い返した)

平助「町中ぐらい行ってやろうじゃん。時代が違っても俺達は新選組だ。町民の平和な生活守ることが役目なのにそんなことでいちいちビビッてられるか」
原田「よし、決まりだな」
斎藤「そうでなくては組長は務まらない」
土方「じゃあ、出かけるか」
沖田「迷子にならなきゃいいけど」
土方「これだけ大きな屋敷だ。道すがらの者に尋ねりゃ誰だって場所ぐらいしってるだろ。それと、羽織は目立つから脱いだままでもいいが、刀は忘れるなよ。新八以外は」
永倉「根に持たないでくれよ。本当に冗談なのに」

 (土御門の屋敷を守る門番に出かけることを告げ、皆は京の町へ出た)

永倉「これが平安時代の町か……」
沖田「町並みは俺達の時代に似ているような気もするけど、やっぱりところどころ古いところがあるね」
平助「昼間はホントに普通の町なんだな。とても怨霊の恐怖と隣り合わせとは思えない」
土方「見えるところしか見ていない証拠だ。まだ甘い」
平助「甘いったって……」
土方「そもそも、怨霊なんて俺達の世界には存在しない恐怖。当たり前にある恐怖だって転がってるんだよ」

 (その時)

町人「盗人だー!誰か捕まえてくれーっ!」

 (そんな叫び声が聞こえてきた。見れば、数人の男が勢いよく逃げている)

土方「盗人…それも集団か。治安はあまり良くないみたいだな」
沖田「御託はいらない。さっさとやっちゃおうよ」
斎藤「ただの盗人相手だ。殺しはするなよ」
沖田「一くんは相変わらず真面目だねえ」
斎藤「俺達が下手に事を起こせば俺達を招き入れた源殿に迷惑がかかる。恩を仇で返すような行いは武士道に反する」
沖田「はいはい、わかりました。手加減する」
土方「行くぜ」

来週に続く。