幸福 

January 22 [Sat], 2005, 18:23
 幸せとはなんだろう。一体どうすれば手に入るのだろう。
 なにかの壁にぶつかるたびに、このことを考える。
 僕にとっての幸せとはなんなのだろう。
 そもそも幸せの定義がわからない。多くの人はそれを愛だとかいって、なにか抽象的なものに例えるけれど、僕にはどうしてもそうは思えない。この世界中で誰からも愛されていない人間なんているのだろうか。もしいるとしたら、それは愛などという言葉では計れない、別の意味で本当に不幸な人間なのだろう。それに、僕は確かに愛を受けている。人からは幸福と呼ばれる、一般的な家庭に育った。でもその惜しみない愛のなかに幸せを感じたことなんて一度もなかった。幸せになるためには愛されることは重要であるけれど、それがつまり幸福であることにはならないのだ。そして僕がこう考えるからには、僕の思う愛というものは、幸せを構成するためのほんの一部分であるか、そうでなければその根底にあるものなのだろう。しかし、そのことも僕の中にあるただの漠然としたイメージでしかない。

 夏空の下、ぼんやりとそんなことを考えていた。ふらつくような暑さで、太陽がアスファルトをじりじりと照らし、その熱がもやとなって空へと還っていく様子が見える。それを追って空を見上げると、そこにはまるで綿菓子のような積乱雲が広がり、その隙間から青空が見え隠れしている。
 なんて大きな空だろう、と僕は思った。考えてみれば、こうしてじっくりと空を見上げることなんて何年もなかった。
 ふいに雲のうえに隠れていた太陽が顔を出し、思わず視線を落とす。まぶしさにやられた目を細めながら前を見ると、少し先のほうに大きな水たまりが見えた。この炎天下、雨も降っていないのになぜだろうと思い近づいてみると、それはまるで幻であったかのように消え、また少し先に姿をあらわした。それを見て、僕はなぜかたまらなく悲しい気持ちになった。

幸せ 

January 22 [Sat], 2005, 15:45
 民家の庭先には朝顔が植えられ、地面から伸びている竹の棒にツタを絡ませている。すぐ横を流れる小川では、子供達が水遊びに興じ、無邪気な笑顔を見せている。そんな景色を見ながら歩いていると、ちいさな公園に出た。
 そこにある水道で水を一口だけ飲み、日陰にあるベンチに腰掛ける。木々の間から差し込む光に目を細めている僕に、まるで嵐のようにセミたちが声を浴びせかける。
 ふとその声のなかになにか違う音が混じったような気がした。不思議に思いその音がした方へ目を向けると、小さな猫が実に愛らしい顔でこちらを見て鳴いている。どこかの飼い猫が迷子にでもなったのかと思い首を見てみる。しかし、そこに首輪はなかった。

二十歳 

January 17 [Mon], 2005, 6:50
 その日、僕はテスト前だというのになんとなくやる気が起きず、パソコンでインターネットをしていた。特に知りたいことがあったわけではなかったが、なにか意識を外に向けなければ安定できない体質になってしまっていた。けだるい気持ちで画面に映し出されたニュースの見出しをみる。適当にそれらを読み漁りながら、この世界から不幸がなくなることはないのだろうな、と暗鬱とした気持ちになった。
 他人の不幸を集めることも面倒になり、見出しのみが並べられたページに戻ってさっと画面をスクロールしてみる。すると一番下にある中学生の非行に関する記事が目に留まった。――中学生――このキーワードが僕にある事を思い出させた。
 中学校の卒業式、僕は手紙を書いた。それは未来へ届くはずの手紙であった。担任の先生の提案により、五年後の自分へ向けたメッセージを書いたのだ。しかし、五年の歳月は僕の記憶からその事実を奪い去っていた。五年前の僕は、二十歳の――つまりいまの――僕に対してどんな言葉を綴ったのだろう。
 いてもたってもいられず実家の母親に電話をかけてみた。自分からの手紙が届いていないかを確認するためだ。すると、確かにその手紙は実家に届いていた。そして、それはすでに昨日、僕のアパートに転送したそうだ。
 僕は迷わずポストへ走った。ドアを開けると一月の冷たい風が頬をさした。外に出るのにはあまりにも薄着であったが、過去との邂逅を目の前にした僕にとっては、そのことさえもどうでもよかった。そもそも玄関からポストまでの距離など、取るに足らないものであった。
 駐車場まで降りて、そこにあるポストを確認する。光沢のある薄い金属で作られたそれの中には、ピザ屋のメニュー表や風俗のチラシなどがあふれていた。僕はそれらをひとつひとつ確認して目当ての手紙を探す。しかし、全てを確認し終わっても、あの手紙に出会うことはできなかった。
 五年前に僕が未来へ送りだした時の使者は、わずか一日の時の洗礼を僕に浴びせた。そしてそのことは、長い間その手紙の存在を忘れていたのにもかかわらず、僕をひどく落ち込ませた。
 五年前、僕の人生は確かに愉しかった。
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