読書-下川裕治著「1両列車のゆるり旅」

February 16 [Fri], 2018, 18:09
さて今回は本の紹介。
下川裕治著「1両列車でゆるり旅」 双葉文庫・2015年6月初版発売

下川裕治氏の本の紹介が多い気もしますが・・・、今回の本は2014年度の夏から冬にかけて、日本国内で駅前旅館に泊まりながらローカル線(地方交通線)の旅をするという趣旨の本。
「1両列車の」というタイトルですが1両かどうかはあまり関係ありません。下川氏の紀行は海外とくにアジア圏が主体で、沖縄以外の日本国内は珍しいです。



この本の内容としては
身延線から大糸線
水郡線から只見線
日田彦山線から肥薩線への九州
鳴門線から内子線への四国
陸羽東線から津軽線(江差線)の東北
留萌線から宗谷線の北海道
の6回の旅が章立てされて紹介されています。

また各章の合間にコラムとして台湾と韓国の鉄道旅や駅前旅館的な安宿に関するエピソードが登場。台湾や韓国では地方ならまだ駅前旅館的な安宿が健在のようで・・。こちらも興味深いです

旅の話の他に本文中各所で折に触れて、出身の松本の高校の山岳部での話や紀行作家としてではない、下川氏の思い出話が登場するのも下川ファンには注目点かも??

以前の「東南アジア鉄道全制覇」の本を紹介したときに私は下川氏のことを「鉄道ファン」と称しました。
ここまで乗りまくっていれば「鉄道ファン」と呼ばずになんと呼ぶ。ということで評したのですが、本書では下川氏は自身を「鉄道マニア・鉄ちゃんとは思っていない」と評しています。
また席取り合戦で「若い撮り鉄達には脚力でかなわない」というような記述も登場します。

一方でこの本の紀行の「地方交通線の旅」をするという趣旨。
現在日本のJR鉄道において、地方路線では幹線も地方交通線も差がなくなってきている(同じぐらい落ちぶれてきている)という中で、
私は地方交通線とは「運賃計算上幹線とされた路線に較べて多少割高な賃率で計算される路線・区間」というような運賃計算上の便宜的な区分。程度にしか認識していなかったです。
その中で敢えて「地方交通線に拘る旅をする」という本書の趣旨はどこか旧来的鉄道ファンにはない発想のようで、実に鉄道ファンらしい発想のようにも思える。この微妙さ加減がまた味を感じます。

旅の中で期間外の一部の旅を除き青春18きっぷを使っています。
この青春18きっぷ、自称大人の鉄道ファンの間では青春18きっぷやそれを使う人を冷めた目で見ることこそが優良鉄道ファンの作法。仮に使うにしても堂々と使うべきでない。のようなある種、馬鹿みたいな空気感があります。
下川氏は、津軽海峡線で18きっぷで特急に乗るシーンなど、その鉄道ファンの作法とはまた違ってそうな意味でうしろめたさを感じているようなシーンもまた面白いなと。


本書の旅の中で印象的なシーンはいくつかありますが、「冬の四国は思っていた以上に雪が降る」というものありますが、やはりもっとも印象的なのは北海道の旅。
冬の北海道を留萌線から宗谷本線に旅をするシーン。運休が心配になる吹雪の中、早朝の深川駅を出発。終点増毛では帰りの列車までの午前中の5時間。駅から街に食事に出るのも難しい吹雪に見舞われ、国道は通行止めに。増毛から帰れなくなる不安の中、通常運行でやってくる列車。
実に頼りになる存在に見えますが、鉄道は住民には殆ど相手にされてないような描写には昨今のJR北海道の経営危機問題と合わせ「なぜそうなってしまったのか?」と思わずにいられません。
その後の宗谷本線の旅でも鈍行列車に揺られ続け稚内に着いてみれば、特急は5時間遅れ、都市間高速バスや予約した飛行機も運休。やはり稚内では「各駅停車だけが普通に動いている」という状況に遭遇します。

それにしても北海道の旅には色々と惹きつけられるものがありますね。
北海道では既に多くの路線が廃止されバス転換されていますが、廃止路線転換バスの旅とかも楽しいかもとか、色々思ったりしますね。費用を考えなければ・・・ですが


ローカル線と並んでこの本の2大テーマの駅前旅館。
いわゆる商人宿とも呼ばれる、観光客向けの温泉旅館とも異なる昔ながらのスタイルの旅館。
家族経営も多く民宿との境界も曖昧な宿ですが、現代日本では都市ではビジネスホテル化と地方では過疎化衰退の波で絶滅危惧的な存在のよう。

「駅前旅館」という言葉、今ではなかなか聞かないですが、そういえば一昔前の鉄道作家の種村直樹氏の本でよく登場したなぁと・・。「駅前旅館に泊まって」という記述がよくあることから、読者からのお便りで「駅前旅館という名前の旅館・チェーンがある」と誤解されたエピソードとかもあったような。
当時、まだチェーン系ビジネスホテルをネット予約して・・という時代ではなく、特急や急行を使うにしても鉄道乗り歩きの旅をすると必然的に駅前旅館に泊まるしかなかったという時代ですね。

今思えば私も家族旅行をしていた20歳ぐらいまでの頃はなんだかんだ駅前旅館に泊まったな・・と。当時は事前予約なしでそこそこの街に着いたら観光案内所で手配してもらってとか普通でした。ただ必ずしも快適な宿ばかりではなかった思い出もありますが・・・

本を読むと次の国内旅行は私も駅前旅館に泊まるローカル線の旅をしたいな・・・とだんだん思ってきます。
1泊6000〜7000円クラスで2食付きが一種の相場のよう。
国内旅行では税込み4000〜5000円台ぐらいのビジネスホテルに泊まることが多い私には一見高めですが、ちょっと豪華な食事が出て2食付きということを考えるとそうでもない??
また主な客層が工事関係者や出張客なことから必ずしも週末がピークではないのは注目点ですね。
今でも駅前旅館を探すには観光協会や地元役所が頼りになるようです。

ただ女性1人で泊まるとなると・・下手したら予約の段階で断られるかも的な不安もありますが・・。よく聞く「自殺されたら困る」みたいな都市伝説混じりの話というよりも、男性客メインの商売のようなので、管理上とか安全上とかそっちの方でですね。
ちなみに駅前旅館は調べると神奈川県西部には意外にあって、鶴巻温泉・秦野・渋沢・新松田駅にはありますねまぁ私が泊る必要性がないけど(だったら実家に帰った方が・・)


本書の旅はカメラマンの中田浩資氏との二人旅。巻頭のカラーページに他に本文中の白黒も含めて写真が多く使われているのも旅情を誘います。

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2018/2/16 18:09(JST)
  • URL:http://yaplog.jp/kiyop/archive/2815
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