閉じ込められる

August 17 [Sun], 2008, 21:08
トマス・ピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』を読む。


カバーはぜひとってみてくださいませ。装丁、凝ってます。
亡くなった元恋人の資産家から遺言執行人に指名された主人公のエディパが、遺された切手コレクションについて調べるうちに、闇の郵便組織「トライステロ」と遭遇する。エディパは、トライステロの謎を解こうと奮闘するが、触れるものすべてが、トライステロにつながっていくようになる。

それが、元恋人の仕掛けたいたずらなのか、偶然なのか、妄想なのか・・・・エディパの迷いが読んでいるうちにぐっと重くのしかかってくる。

登場人物同士の会話も、見えている景色も、手にとるものも、全てがほんのちょっとずつずれている世界。ずるずる、ずるずるっと、何かにひっぱりこむような文章は、かなり怖い。

さて、この作品の重要なモチーフとなっているのが、レメディオス・バロの「大地のマントを織りつむぐ」という絵だ。

バロは、私の大好きな画家。この大地のマントの絵は、ナンバー49の本の口絵になっているのでご覧いただきたい(下図)。



高い塔の中で女の子たち(何かの術か魔法にかけられていると思われる)が、布に木や街の刺繍をしている。その絵は塔から外へあふれ、地に着く頃には立体化している。遠くに見えるのは、帆船。この船に乗っているのは・・・?

誰もが自分の中に、守りたい自我を入れた塔を持っているとすれば、誰か、何かと出会ったとき、塔から出るのは自由であるはずだろう。

でも、塔に閉じ込められ、出られなくなってしまったとしたら、どうだろう。塔が壊れてしまったら?

エディパは、今塔に閉じ込められそうになっている。世界は、自分が見たようにしか見えない。奇妙に歪んだ世界にいるエディパの塔は、どんなものなのだろう。

■ピンチョンの施した様々な謎については、訳者志村正雄さんの解説に詳しい。読みながらむむっと思っていたことが少し腑に落ちる。でも、原文で読めたらもっと楽しいに違いないとも思うわけです。

■ナンバー49には、音楽も多く出てきます。菊地成孔と大谷能生対談が面白かったです。→2007年音楽と文学を巡る新春放談

■バロについては、明治学院大学社会学部の稲葉振一郎先生のHPがおススメ。ギャラリーもあります。
→ http://www.meijigakuin.ac.jp/~inaba/varo/index2.htm
  • URL:http://yaplog.jp/kisendo/archive/239
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