行動は計画的に 

2006年09月09日(土) 0時44分
「雲雀君!ひばりくーん!!早朝に開くチケット売り場知らない?!」
「は?」

案の定、俺の待ち人であるあの人は来た。
唯、いつもと違って廊下の数十メートル離れた先からでも解るくらいの足音で
慌ててこの俺の居る教室に駆け込んできたという点を除けばだけど。
普段なら偏平足の足で上履きを履いていてもペタペタ音を立てて歩いてる人が今日に
限って何故走ってきたのか俺には解らない。
しかも内容が行き成りすぎて思考が追いつかないし。
御蔭で俺は間抜けな声をあげてしまったじゃないですか!
そんな俺の心の声は届きはしない。
っていうか届いてたら怖い…。

「は?…じゃなくてチケット売り場の事!何か知らないの?」

さっき俺が言った「は?」というのを真似しながら「そうじゃなくて!」とか身振り手振りを派手に動かして俺の座ってる机に両手をついて身を乗り出して先輩は俺に訊ねる。
俺は気圧されて吃驚して少し椅子ごと後退した。

「い、行き成り中身のない事言われて答えられる訳がないじゃないですか…。それにいつもより随分慌ててますけど何かあったんですか?…その…チケット売り場に関して」

そう言って先輩を見上げると「よくぞ聴いてくれました!」とでも言わんばかりに両腕を広げていた。
俺はというと肩を竦めて腕を組んで先輩の話を聴く体制を取った。
「で、一体何なんですか?」と俺は先輩を促した。

「あのね、急遽決めた事なんだけど…大阪で行なわれるエキストラに参加してみようかなーと思った訳ですよ」

何か“決まった事”じゃなく“決めた事”という部分が実に先輩らしい。直前まで悩んで今さっき決めましたといったところが俺には真似出来ない部分だ。
先輩は続ける。

「でもそれを決めたのってついさっきで…まぁ大丈夫かなーとか思ってそのエキストラのチラシ観たら集合時間が12時でさー…どう考えても名古屋から出発して集合時間までに着こうと思うと早朝から開くチケット売り場に行かないと駄目そうなんだよね。だから知らない?」

ごんっ!

俺は思わずな内容に額を机にぶつけた。
いい音がしたと思う…痛い。
先輩は「わー!大丈夫?」と俺の肩を掴んで机と一緒にガタガタと揺らした。
俺の額を通して机の振動が身体全体に伝わる。ちょっとした地震疑似体験だ。
そんな事を考えながら俺は片手を机について勢いよく身体を起こす。それと同時に先輩が俺の肩から手を離して離れた。

「そんなの俺が知る訳ないでしょ?切羽詰ったような形相で駆け込んでくるから何事かと思えば私欲関係ですか…。大体、そういうのっていつもは綿密な計画性の上実行してるんじゃなかったんですか?先輩にしては遠征関係の突発的な事って珍しいですよね」
「うん…自分でも珍しいと思う。大概は直前になって諦めがついたりするんだけど今回はそうは行かないみたいで自分が凄く怖いよ!どうしよう!!」

どうしようって俺にどうしろっていうんですか、貴女は。
俺に止めろとでも言うんですか?
内容が内容だったら踏み止まりそうだけど今回のは違うみたいでそれは通じなさそうだし…。

「やらないで後悔するよりやってみて後悔したらいいんじゃないですか?エキストラって参加は自由だけど必ずしも映像に写る保障ってないんでしょ?それでも先輩が行きたいって思うなら行ったらいいじゃないですか。俺は止めません」

それだけ言って先輩を見たら目を見開いて驚いていた。口が「へ?」という形で固まってるし…。
そんなに俺は意外な事言ったっけ?

「雲雀君が珍しい事言った…いっつも無関心で興味無さそうにしてる人からそんなの聴けるなんて思わなかった…」
「ちょっと先輩…人をどういう目で見てたんですか;」
「え…傍観者」

其処まで言われると俺でも凹みますよ、先輩…。
しかも即答しましたね?先輩。
え…とか躊躇いながらもはっきり言いましたよね…。

「自覚はありますからはっきり言わないで下さいよ。で、傍観者の俺からの一言としてチケット売り場は早くても10時には開くんじゃないですか?」

あぁ…自分で“傍観者”って口にすると悲しくなってくる。
虚しいってこういう時に使うんだろうか。

「えー…;10時じゃ遅いよ;」
「知りません。事前に行動しなかった先輩が悪いんですから」
「むぅ…いいもんいいもん。行くだけ行ってやるもん」

俺の言った事が図星だったのか先輩は頬を膨らませてぶぅぶぅ文句を垂れている。
そして一頻り文句を垂れ終わると今度は俺の方を観て

「じゃ、もし行けたらお土産話してあげる」

そう言って笑った。
もし…じゃなくて意地でも行きそうな気がしますよ、俺は。と
内心で毒付きながら

「行けたらのお土産話楽しみにしてますよ」

俺も笑った。

プロローグ01 

2006年09月08日(金) 15時43分

“何を書こう…”
そう毒付きながら数分、俺はレポート用紙を目の前に翳しながら睨めっこしている。
別に何処かの雑誌に投稿しようとか〆切りが迫ってるからという訳じゃないけど唯何となく今の俺の気分は落書きしたいという気持ちでいっぱいなだけ。
何でもいい。簡単に描いた棒人間でもおなかすいたーとかそういう何気ない一文でも構わないのに描く気がしない、いや描けない。何故か描けない。いつもなら描けるのに。
「……はぁ」
手にしてたレポート用紙を顔に当てて深く息を吐く。
吐いた息がレポート用紙の上を滑るように顔全体に広がる。
生暖かい息…はっきり言って気持ち悪い。
すぅっとレポート用紙を顔から退けて机に置いた。
何かの拍子に飛ばされないように文鎮変わりにとシャーペンを添えて。
そしてちらっと入り口の方に目を遣った。
「…今日も来るのか?あの人…」
誰に言うでもない俺の独り言は空気に溶けて消えた。






俺が今居るのは人気がなくなった教室で
今日も来るかどうか解らない人を待っている
でもきっと来ると思う
俺が此処であの人を待つようにあの人も俺に逢いに来るに決まってる




さぁ…今日はどんな話をしてくれるんですか?霧都先輩
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