三連休の合間に、なんとか『シュアリー・サムデイ』(以下SS)を観に行けました。
どんな映画に仕上がっているのか、ドキドキでした。知らず知らずのうちにファン心理丸出し、祈るような気持ちで公開を待ってたような感じです。
監督も、ずっと早く観て欲しいような、観られるのが怖いような複雑な気持ちでいたとのこと。初日舞台挨拶がとても良かったみたいですね。主役五人と小西さんは当然としても、吉田剛太郎さんと横田栄司さんまで登壇したとは。監督の胴上げまであって。
今は、プロモーションに忙しいながら、どこかホッとした気持ちでいることでしょう。
以下、ネタバレ配慮は多分できてるつもりの感想です。
【青春映画の佳品】
で、映画なんですが、最初の5分くらいで不安はほとんど吹っ飛びました。
「よっ、松竹」「さすが、角川映画」という監督のかけ声(?)から始まるのはご愛嬌として・・・。最初から、テンポ良く面白くわかりやすく、話にすぐに引き込まれた。
主人公五人の気持ちよく躍動感あふれる演技。奇を衒わないけれどカメラワークはとても確かで、五人の表情や動き(止め絵も含め)がとても生き生きと撮れてる。
画面上の旬君は警官B役。友情出演の妻夫木君と同僚の交番勤務警官(それもアップにはしていない)以外何も見られない。でもそれもなくたって構わなかった。
見ている画面すべてに監督の愛情、思い入れがすべて詰まっていて、それがとてもとても良かった。こんなに愛情を注いで作り上げられた映画だったら、むしろ主演作を見るより多く彼を「観た」と言えるかも。
ストーリーは、思ったより登場人物の絡み合いが複雑で、伏線を引いたミステリ的な部分も多かった。けれど普通に見ていればついていけないところはない。もっと単純な話だとナメてかかってたら、時系列に混乱する可能性があるけれど。
旬君の頭の中でこれだけのアイデア、ストーリーが熟成されてたなんて・・・お見それしました。
脚本の武藤将吾さんが監督の原案を聞き、「回想が長いのはタブー」と思ってそうだが、結構うまくまとめてくれて、違和感はほとんど感じない。
ニギヤカでスピード感あふれるストーリーは、緩急もつけられていて、「ワッ!」と驚くような展開もあり、飽きることなくついていけた。
サラッとしたエンディングの後もちょっと凝った趣向があり、やられた。
観終った後も気持ちいい。そしてどことなく鼻の奥がツンと来るようなせつなさみたいなものも感じる。
かつて青春時代をすごしたことを覚えている、大人たちの鑑賞にだってきちんと耐えられる映画でしょう。
けして暗い終わり方ではないけれど、彼らが「希望や目的を見つけてどこかに歩き出す」と言うわけでもない。そこが個人的に好み。(特定の価値観を押し付けてこないから)
カッコ悪くもがいてもがいて、それでもまだ走っていていい自分たちを見つけただけのような。
【評価はいろいろだけど】
ちょっと気になるのが評価。
初日やファンの反応がいいのは当然として、やはり映画批評サイトには、厳しい意見もあった。
けれど・・・・むしろ厳しい批評を見つけて安心した感じもある。
初監督作品が手離しで褒めちぎられることの方が、はるかに怖いと思っているから。
しかし、否定的な意見のほとんどが「人気俳優小栗旬の初監督作品」にこだわりまくっている。
肯定的な自分の気持ちにしたところで、「旬君がずっと撮りたかった映画」という意識を外すことができない。
どちらにしても「単なる映画」としては観てもらえない。仕方のないことだ。
しかし当の旬君はもうそんなこと気にしていないみたい。
いろいろあっただろうけれど、監督経験を終えた彼には、まったくブレを感じない。自分のずっと撮りたかったものを、チャンスと多くの人の助けを得て、愛情をかけて撮りきった。
高評価を狙おうとか、ましてや日本映画に一石を投じようとか、そういうことは全く意識していないみたいだ。やりたいことをやりきった後の肩肘張らないすがすがしさがまぶしい。
それに、シロウトっぽさなどはそんなに感じなかった。少なくとも個人的には『踊る3』より、『トリック3』より、『アリス』より面白かったし、気持ちが良かったですよ。
私が感じた最大の欠点は・・・・女性が全然描けてないことかな。重要な役美沙は小西真奈美さんに任せっきり?カズオの妹の井上真央もなんとステレオタイプで面白みもない。
まあ『SS』では下手に女性の内面など描かず「少年視点から観た素敵な大人の女性」だったからそれでも良かったけれど、監督が(最近朝の情報番組で言ってたように)今後女性心理などを撮ろうとしたら、笑っちゃうような出来になる可能性も・・・・。
監督の可能性は無限ですからあまり型にはめるようなことは言いたくないけれど、私の希望的観測としては、意味や心理をつきつめず、「男の子の群像劇」を原点にした、三池崇史作品みたいな「映画らしい映画」になっていきそうな感じがします。
それにしても、原点となる作品として『SS』はいろんな意味でなんて最適なんだろう!!
【キャスト陣について・・・ワキ】
キャストについて。
旬君の人脈が実現させたキャスティングに唸らされた。
なんといっても、舞台でしか演技に接することのできない、吉田
鋼(誤字訂正しました)太郎と横田栄司を映画スクリーンに引っ張り出したのは功績。
ハデハデなヤクザの親分吉田さんは、「亀の頭と書いて亀頭」。「股間が疼くねぇ」を初め、エロと暴力のオンパレード。よくぞ大先輩にこの役を振れたね。またそれを吉田さんが楽しそうに演じるんですよ。『ムサシ』での共演が記憶に新しいですが、常にそれだけの関係にとどまらない、旬君の「人たらし」ぶりはたいしたものです。
また、横田栄司さん、この映画で一番シリアスで悲劇的な役、弾き語りの宮城さん。この人を中心とする物語があるため、この映画全体にとても深みが出た。素晴らしく雰囲気のある美形ですね。
公式ブログを持ってらして、『SS』メンバーと撮った写真や初日の裏話を公開してらっしゃいます。http://blog.livedoor.jp/russety/
旬君はじめ若い俳優さんに対して、とても愛情深い。
チョイ役かと思われた竹中直人さんやモト冬樹さんも重要な役で登場。
お母さん的な役割では原日出子さん良かったですね。
共演歴のない大竹しのぶをチョイ役で使って笑いまで取るなんて・・・なかなかやるもんです。
「大人立ち入り禁止」どころか、疲れて頑張っている大人に対してリスペクトのようなものもありまして、そのあたりが「理由なき反抗」の時代とは変わった現代の青春映画らしさかな。
他、上戸彩をああ使うとは・・・。ナイナイ岡村さんも活躍。秀吉笹野さんも元気に登場。
監督の交渉だけでキャスティングが実現したわけではないでしょうが、小さなプロダクションで後ろ盾もないのに、これだけよく集まってくれたものです。