プラトニック・エロスを求めて迷想する「きのこ御殿」

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「46億年の恋」 / 2006年09月06日(水)
結局観に行ってしまいました。
初めて大江戸線に乗って、六本木シネアートまで。
かつて都心には年に数回しか出なかったのに、ずいぶん行動的になったものであります。

この映画、松田龍平と安藤政信の演技が評判で、最近雑誌でも新聞でも関連記事をたくさん目にする話題作だし、上映館は極めて少ないし・・・。
映画館の前に長い行列ができて何時間も待たされるのではないか、飲み会までに帰れるのかと不安だったのですが、ロビーの人影すらまばら、行列などは全くなくて簡単に入れてしまいました。

公開中の映画についてはなるべくネタバレになるようなことは書きたくないので、感想は印象程度に留めておきたいのですが・・・。
なるべく事前情報(印象でも)を持たずに見たいという方は、以下は読まずに。

まず、朝日新聞連載していた三池崇史のシネコラマが面白いので引用します。(なおみちゃんアリガト)

夏に撮影した映画がやっと完成しました。タイトルは、「46億年の恋」。
 ……どうよ。奇麗なタイトルでしょ。そして、タイトルに負けない美しい作品に仕上がりました。とっても悲しい恋の物語(もちろんプラトニック)なのですが、宇宙と人類の仕組みもなんとなくわかったような気にさせてくれる素敵(すてき)な映画です。

 原作は、昭和の巨人・梶原一騎先生と空手界の重鎮・真樹日佐夫先生が執念と兄弟愛で書き上げた、「少年Aえれじい」という小説だ。それを平成の天才脚本家・NAKA雅MURAが大胆にアレンジしたわけさ。それを現代日本映画界の奇人スタッフが寄ってたかってやりたい放題……。 出演は、松田龍平と安藤政信というしびれるダブル主役。いぶし銀の石橋蓮司に、素敵に危険なアルコール王子・遠藤憲一。アンニュイな窪塚俊介にKEE改め渋川清彦(このふたりはプラトニックではない)。とどめの石橋凌がすべてを受け入れすべてを否定する。
 ……女性はいないの?
 いない。強烈な個性とDNAを持った男たちが繰り広げる熱く切ない究極のラブストーリーなのでございます。この映画は、男だけの「愛と誠」なのです!でも、そんじょそこらの映画ではありません。でも、その道の人にも喜んで頂ける映画でもあります。


このナイスな宣伝文、すべてホントです。

また監督は別な記事で、「(素晴らしい映画というより)愛おしい映画」と言ってましたが・・・。
私はとても「愛おしく、面白い映画」だと思った。無論、funではなくinterestling(興趣深い)の意味で。出会えて良かった、観に行って良かった。

非常に感性を揺すぶられるような映画です。見ている間中、映画が面白いのか、映画に掻き立てられて自分の心の中に湧いてくる思いが面白いのか、わからなくなったくらい。

【全般】
万人にお勧めできる作品とは思わないけれど、何らかの意味で孤独感に打ちひしがれている人がいたら、「男同士の恋愛に偏見があろうとなかろうと」是非お薦めしたい。
自殺直前の人を思いとどまらせるのなら「THE有頂天ホテル」よりこちらかな。

罪を犯し、これ以上ないほどの(46億年の?)孤独の中で、心と心が巡り逢う奇跡。
結末は傷ましいけれど、優しい。
心を「抉る」というのではなく、「抱きしめてくれる」。

閉ざされた刑務所の中の、心に傷を負った青年達の愛憎の物語とか、
耽美的な少年愛(青年愛)の世界の物語とか。
そういうものをイメージして観たとしたら、テーマの指し示すものの宇宙的な大きさに茫然とするかもしれない。

しかし難解とか、観続けるのが困難というわけではない。骨格に「誰が彼を殺したのか?」という、シンプルなミステリー構造がある。

既に知られているように、舞台美術や衣裳に「前衛的」手法を多用しているといわれるが、「既視感のある前衛」でもある。70年代の小劇場や前衛舞踏みたいな懐かしさを感じる。

舞台は、外界とのつながりが全く感じられない、火星の流刑地かと思うような刑務所。
外には茫漠たる荒野が広がり、そこには異様な建造物が二つ。外の世界の情報は全く遮断されている。
囚人部屋の個人の壁がなかったり、木箱を散らしただけの部屋だったり、小劇場スタイルを髣髴とさせる。
そして、ゆるい布を巻きつけたような、ギリシア悲劇を思わせるような囚人服。

囚人達の「労働」として「畑仕事」と「洗濯」がある。「洗濯」は、全く意味のわからない永遠に続く行為である。(囚人の中でやや女性的な雰囲気のあるものが当てられているのは、単一性空間の中に異性的なものを配するためなのか、それはよくわからない。)

これは舞台でやるべきかも・・・と思った。
パチンコ屋の地下の廃墟となったボーリング場の空間で撮影されたというが、その空間でそのままこの劇を演じたら素敵なんじゃないかな。

けなそうと思えばいくらでもけなせるかもしれない。
「加害者の動機は何か?」的なテロップが画面を中断して何十回も入るのはどうなんだろうと思ったり。繰り返しの映像が多い上に長かったり。
リアリティとかモラル(青少年健全育成?)の面で、眉を顰める人もいるかもしれない。
後半に突然入るアニメーション画やロケットCGは、違和感がありすぎてかすかに失笑が漏れた。

それでも、確実に何かを触発してくれる、愛おしく美しい映画。
感動・・・というより・・・・新たな世界観と言っては言い過ぎだろうけど・・・・・これまで観たことのない風景(でも、どことなく懐かしい)に出会ったような。

【感想というより散漫なつぶやき(←内容と関係が有ったりなかったりします)】

オープニングで披露される金森穣の舞踏の美しさには圧倒される。男の理想形のようである。
熱帯の、少年が成人になる儀式。「立派な一人前の男になるために」少年は一夜の、またはこの映画全体に関わる旅を始めるらしい・・・。
二つの魂に分裂して?
一人は心から「君みたいになりたい」と思える相手に巡り会った。一人はその相手に心を受け止められた瞬間に生きることが不可能なほど絶望した。

香月(安藤政信)の動かぬ姿は、完璧なほど美しく、誰でもキリストを想起するに違いない。(狂気的に殴り続ける姿も美しいのだが)
彼の首を絞めた有吉(松田龍平)の思いが、切なくて美しくていつまでも心に残る。

これは紛れもなく恋の話だ。
この上なくプラトニックでエロティックで、死の香りに満ち満ちた・・・。

女性が、徹底的に排除された映画だが、たった一人、「回想以外で画面に現れる唯一の女」は、この世界を呪い壊しかねないほど恐ろしい貌をしていた。・・・とても怖かった。

「この世界」は、窒素充填の、46億年変わらぬ世界。
かつて不活性ガス(窒素)に覆われていたころの地球にとって、酸素は毒物であった。酸素は物質を、酸化させ、腐食させる。
酸素は生き物を生みだし、殺し、腐敗させ、再生させる。
酸素のない世界だから、「この世界」は神話のように美しい。
酸素とは、女性(母性)である。
香月を殺したものも・・・。
・・・以上妄想。
監督が「宇宙と人類の仕組みもなんとなくわかった気にしてくれる」とは、このことかな?

三池監督は、「映画なんて考えて観るもんじゃない・・」と言っていた。
だから、心を無にして、考えないで観ようと思った。
それでも、湧いてくる思いは果てしなく。

バイオレンスに「ぶっ壊す」イメージのあった三池作品だが、彼がこんなにポエトリーな、永遠に閉ざされた世界の中の完璧なラブストーリーを描くとなると、やはり世界は滅びに向かっているのかもしれないなあ・・・。

石橋凌の幽霊のような不気味な慇懃さ、「呪い」だという「笑い」も凄みがある。
刑事役の遠藤憲一、石橋蓮司も好演。
窪塚俊介の柔らかさが、何かほっとさせる。生きていく方法があるとしたら、彼の生き方しかありえないかもしれない。

【主演の二人について】

安藤政信は「キッズ・リターン」「バトルロワイヤル」「昭和歌謡大全集」(龍平と共演)が印象に残っている。いずれも同様の暴力的な少年を演じてきているような気がするけれど・・・31歳。彼の少年っぽさは誤解を恐れずにいえば気味が悪いほどである。
無機質な表情に大きな瞳、鞭のようにしなやかな肢体には目を奪われる。
また、滅多に感情を表さない役が多い彼が、心の弱い部分をさらけ出していく過程には心を絞られます。

松田龍平は23歳。多分実年齢に近い役だが、(原作は「少年」のようだが映画では青年となっている)彼にも偏頗なイメージがある。
「御法度」以来「男が惚れる美少年」と言われて来たが、吊り目で目が細くてあごが貧弱で口がおちょぼで丸顔(失礼失礼失礼!)。

好悪も評価も分かれているのではないか。
大らかな破顔もできないし、歯をむき出して闘争心をあらわにするような表情もできない。父親とは演技の幅が違い、モデル顔・体型の安藤と比べても、明らかに分が悪い気もするのだが・・・・ちょっと理解不能なほどの妖艶さがあり、今回は女性(母性)的なるものまでも表現しているのがすごい。

二人は私生活でも心が通じ合っている友人で、撮影中は恋する気分も味わったという。

この二人は、微妙に私の好みと「ずれている」と思っていたのだが、その原因は子役がなかなか大人の顔になりきれないでいるような、「奇妙な美貌」なのかな。
しかしその特異な雰囲気が、この映画の命になっている。

雌雄両性具有のアンドロギュヌスと言うよりも、
成幼(成人と少年)具有のアンドロギュヌスのような・・・またはどちらにもなれないミュータントのような感じがする。

彼らは、「一人前の大人の男」になれたのか?
「長老」や「大人の男」は、一体どこに行った?

宇宙と天国、どっちに行きたい?
一人前の男になるのと、お母さんに抱っこされるのと、どっちがいい?(・・・・という解釈は、私の妄想)

不毛に続く荒野に浮かんだ、虹。蝶。恋。
「意外すぎる結末に、一筋の希望を見出すか、果てしない絶望を見出すか、それはあなた次第・・・」(チラシより)
・・・・一筋の希望があるとしたら、それは「恋(=エロス)」に違いない。
Posted at 00:32 / 映画関連 / この記事のURL
コメント(4)
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コメント

なおみんよかったね。ほっとしました。
また、いろいろおしゃべりできますね。
まだ心配な部分もあるようなので、無理しないで下さい。
「みなさん」には、若い人もいるんだ・・・と思うけれど、いや、若くても、身体には気をつけましょう。(事故にも)
生きてるだけですごいこと・・・本当にそう思います。
Posted by:きのこ at 2006年09月28日(木) 00:08

先週 先輩から六本木で「グループ展」をやるという 案内をもらったので、久しぶりに先輩に会って六本木の映画館で「バナナ」か「46億年」見ようかと思ってたのですが・・・バタバタと急ぎの仕事が入るは、体調はよくないは、(あとちょっとヤナこともあったりして。)で六本木も映画も(太陽も)オシャカになってしまいました。
今日は病院に行って検査を受けましたが、入院も手術も免れることができとりあえず安心しました。ま、通院はするけどね。殿も私も(みなさんも)若くはないので くれぐれも体に気をつけましょう。それではまた。
Posted by:なおみ at 2006年09月27日(水) 13:51

娘さんに見せても多分大丈夫です。(中三でしたよね?)
昨日は男子誕生のニュースにお祝い文の一つも書こうと思ったらめちゃくちゃ複雑な気分になって、ついには気持ち悪くなって寝ました。「太陽」見たら感想教えてくださいね!
旧館はここより早くに復旧したように見えました・・・もうOKですよね?
Posted by:きのこ at 2006年09月08日(金) 00:33

あ!観たんだ いいな〜。私も主演ふたりは好きくないんですが三池監督のキャラは好きなんで 観てみたいんだけど・・・。まあDVD待ちかなあ・・・(娘も見たがってたし。)
ところで旧館はまだメンテ中ですか?
Posted by:なおみ at 2006年09月06日(水) 12:49

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