舞台版『PLUTO』感想

January 23 [Fri], 2015, 12:13
舞台版『PLUTO(プルートゥ)』観てきました。
「原作 浦沢直樹×手塚治虫」とあります。

手塚治虫『鉄腕アトム』の中でもっとも有名な『地上最大のロボットの巻』を浦沢直樹が大胆に自分の作品としてリメイクしたもの。
今回はその作品をベルギーのシディ・ラルビ・シェルカウイが演出・振付した。この方の舞台は観たことがないが、自身もダンサーであり、今回と同じく森山君を使った『テヅカ(手塚)』という作品もあり、その上に立った新作であるらしい。

私はアトムで育った世代。連載当時は読んでいないものの、白黒アニメとカッパコミクス(シールのついた大きな単行本で、父がいつも買ってきてくれた)をボロボロになるまで読んで手塚作品に親しんだ。

アトムの中で一番愛読したのはやっぱりこのエピソードだったので、浦沢さんの『PLUTO』の連載が始舞った時は感慨があった。実際に読んだのは単行本になってからで、それもあまりハマれず2巻で中断していたのだが・・・(ゴメン)

配役を紹介させて頂きます。
手塚原作にはなく、浦沢オリジナルの登場人物に※をつけときます

森山未來・・・アトム。(主演だが、浦沢原作通り、ゲジヒトの方が登場率もセリフも多い)
永作博美・・・ウランと、ゲジヒトの妻ヘレナ(※)の二役。
柄本明・・・・天馬博士(アトムの生みの親)と、ブラウ1589(※初めて人間を殺したとされるロボット)
吉井一豊・・・お茶の水博士とDr.ルーズベルト((※世界最高の人工知能。テディベアの姿で登場する)
松重豊・・・・アブラ―博士(手塚原作にも出てきますが、浦沢作品ではキーとなる悪役)
寺脇康文・・・ロボット刑事ゲジヒト

主要人物はこの六人。そのほかに8人のダンサーが登場し、役もダンスも黒子的な仕事も、いろいろ多彩にこなしてます。

会場はBunkamuraシアターコクーン。申し込み遅かったんですが、一階前席の脇にしつらえられたS席。舞台が近くて役者の表情も見えて遮るものもない、とってもいい席でした。(音響バランスが悪いのは仕方ないけど)。

ということで、あとは感想。
若干ネタバレありますので、これから舞台を見る方は、その後で読むことをお勧めします。













面白かった。
けれど不思議な舞台作品だった。
非常に多彩な要素が、何かバラバラに入っているように感じる。

いくつかの要素は、ため息が出るほど素晴らしく、満足感が高かった。
いくつかの要素は、私の思う「演劇」のあり方を軽々と凌駕し、アップデートを迫られた。
しかしながら、あるいくつかの要素に関しては、現代から見ると古臭かったり、失笑を招くのではと懸念した部分もあった。

【舞台装置が最・先・端!!】

凄かったのは、舞台装置。
一見シンプルなアート風の舞台装置でありながら、開演後は変幻自在。

開演前、舞台の前部は、機械やロボットの残骸にびっしりと覆われて廃墟のよう。森山君が演じた『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の《震災版》を思い出した。
舞台の上には、漫画のコマ割を思わせるような枠線で幾何学的に分割された、大きなボードが載っている。白くてシンプルでアートっぽい。しかし開演後は、この超高機能な「装置」が千変万化の様相を見せる。

前景に使えば漫画のコマ割から背景のドラマが見えるようでもあり、モンドリアンの絵のようでもあったり、日本の場面では日本家屋っぽく見えたりもした。
それがバラバラになると、ユニット住宅のように、ツーバイフォー(高さ2×幅3)のパーツがが自在に舞台構成を変える。ゲジヒトの瀟洒な二階建ての住宅になったり、スラム街になったり、地下牢とパース画面のようなルーズベルトの部屋を上下に配したり、全部で何十通りを観たのかわからない。
またはボードを分割・連結させて空港の通路になったり長い壁になったり、墓地に変わったり・・・・

それをスムーズに動かすのは、8人の黒子(とはいっても超絶ダンスをこなしながら複雑に舞台構成を変え続ける、白いダンサーたち)

白い装置は、スクリーンとしても優秀。
最新のプロジェクション・マッピングかと思うくらいの精巧なCGが多用される。
アトムとゲジヒトが出会うシーンでは、浦沢原作通り沛然たる暗い雨を降りしきらせたり(あのウェットさと暗さが浦沢っぽい)、頭の中のお花畑を舞台全体に広げたり。
白い立方体オブジェの面にそれぞれ違う映像を映して立体感や質感を出す技法はなんというんだろう・・・。サハドやアトムが描いた絵や数式がたちまち動き出して舞台中を踊りまわったり・・・もう見ているだけでうっとりするし目もまわる。

これは舞台ではあるんだけど、かなり「映像作品」な部分もあるわけで・・・。
「舞台の後ろにスライド上映する」次元とは、ずいぶんかけ離れたところに来たものだ。

ラストの、プルートゥやボラーと、アトムとの戦いのシーンは、なんだかわけがわからないほど凄かった。
映像でのボラーの表現は、浦沢原作のボワ〜〜っとしたあの感じに近いと思う。「あのぶよぶよした球体(ボラー?)に巻き込まれ、埋没しながら戦う森山アトムのシーンは、この世ならぬ感じ。これからの舞台美術の可能性を見た気がした。

でも、CGがみごと過ぎて、実際の舞台部分がちょっと・・・。
生身の人間が舞台で巨大ロボットの戦闘シーンを演じるのは、やはり無理があるのでは・・・。巨大なはずのプルートゥのサイズ感はどうしても小さいし、アトムがダンサーたちに担ぎ上げられて「あれでアトムが飛んでるってことになるのね」と気づいたときはちょっと笑ってしまった。あれだけCGが使えるんだから、もうちょっと何かできたように思うのだが・・・。
・・・。『PLUTO』はそのうち映画化されそうな感じがするが、その方がこの作品の媒体としては向いているようには思う。

またもう一点。
漫画の原画(浦沢版)そのままを、固定映像として非常に多用している(オブジェに投影する形で)。
ブレが全くなくきれいに収まるテクニックが素晴らしいのだが、やや多過ぎるし、浦沢の世界観を表すためとはいえ、別ジャンルの表現作品として、原画にこれだけ頼るのはどうなのかなあ・・・と思った。世にたくさんある「漫画原作実写映画」だって、通常エンディングでしか使わないのだが。
特に最後、ラストの見開き画面の絵(アトムとお茶の水博士が空を見上げてテーマを口にする場面です)をそのまま(もちろん止め絵で)ラストシーンで映しちゃうのはどうなのかなぁ・・・位置的にも「紙芝居っぽい」と一瞬思ってしまった。

【森山君のダンスに惚れ惚れ】

さて、こちらを先に書くべきだったかもしれないが、ダンス。
ダンスと振り付けは、シェルカウイの本職でもあるし。

森山君のダンスを一番楽しみにしてました。
イスラエルでの1年間の文化交流使を終え、帰国後第1弾ということ。
素晴らしかったです。なんて軽くてしなやかなんだろう。身体を半分に折りたたむようなことも平気でできる。プルートゥに初めにやられた時の頭頂部倒立とかおみごと過ぎてちょっと笑ってしまった。(拍手するべきか一瞬迷ったが、誰もしてなかったのでスルー)

森山君が少年ロボットアトムを演じることについて。どうなのかな・・・と思ったけれど、全く問題なし。
少年に見える。アトムに見える。動きも、セリフも、表情もちょっとしたしぐさも。
しかし(ここが森山君だが)「子役っぽい演技」は一切していない。
もちろんアトムを演じるのと普通の少年を演じるのとは違うのだけれど、そのあたりも演じ分けていたのか、または内面からアトムにシンクロしたのか。違和感がないのはすごい。

2015年1月期ドラマスタート後半戦(『ウロボロス』他)

January 22 [Thu], 2015, 11:12
前半戦に続きまして、スタート後半戦

月9・フジ『デート』★★★(今後も観る)
日9・TBS『流星ワゴン』★★(検討中)
月8・TBS『警部補・杉山真太郎』★★
木22・フジ『問題のあるレストラン』★★
金22・TBS『ウロボロス』★★★


【『デート』は大人可愛い物語】

♪ふりむかな〜ハハ〜イイイで〜〜〜〜〜イェイイェイイェイイェイ
♪おねがいだ〜ハハ〜カアアら〜〜〜〜〜イェイイェイイェイイェイ

オープニングの杏と長谷川博美さんのダンス、最高!
次の日、ふと鼻歌で「ふりむかないで」が何度も出てしまって困った。
あのPOPな歌詞とメロディと、「ザ・ピーナッツ」のハリがあって粘りつくような強烈な歌声、恐るべし。
「中田ヤスタカが『なんでリメイクしてPerfumeに歌わせなかったのか!』」と悔しがってるんじゃないか、とかマジメに考えてしまった。くらい、POP。
こちらで観られますよ!
http://blog.fujitv.co.jp/date/index.html

月9『デート〜恋とはどんなものかしら〜』
内容も、明るいね!楽しいね!面白いね!
さすが『リーガル・ハイ』の古沢良太。
ああいう男も女も、珍しいけれど絶対「いる」感じがするし、「デートが全く楽しくない、むしろ苦痛でたまらない」というのも、わかるわかる。

東大卒リケジョの杏の「理屈」が面白い。アヒル口もファッションも雑誌を読んで勉強した結果なんですね。
杏、何をやってもなんかいい。DNAなのか本人の努力なのか。
「高等遊民」とか言っちゃう気取ったニートの長谷川さんも可愛い。長谷川さんやっぱり、コメディも行けるね。「こ・こいつは・・・あれだ、そうだ、イタイ女だ・・・」と尻もちをついて脅える姿が、たまりません!」
ヨコハマ、また行きたくなりました・・・。

流星ワゴン

重松清原作。一時重松さんをよく読んでて、これも既読。
TBSが力を入れてるようだし、『MOZU』に続いて西島×香川のタッグ。第一話は観ようと思いました。
話はともかく・・・・・。
う〜ん、もしかしたら、これを観たことでお二人へ思いがまた下がっちゃったかも。

冒頭の悲惨極まりない西島さんの家庭状況。身につまされて引き込まれるのですが、コンビニ前のベンチで目の中を赤くして座り込む西島さんの顔は、「家庭に絶望している平凡な父親の顔」というより「冤罪で追い詰められて命からがら逃亡している男」に見える。はじめて西島さんの演技に「引き出しの案外な少なさ」を感じてしまったのでした。(魂はすごくこもってるんだけど、込める魂がいつも似てたような・・・)。
ゴメンナサイ。この印象には、昨年末の「20歳以上年下のプロ彼女」との報道が関係ないとは言えません。役者へのフワッとした思いは、無責任な幻想バブルにすぎないのです。『八重の桜』の現場にいつも素敵なスイーツを差し入れていた、という惚れエピも、「プロ彼女」がプロ視点で選んできたのかと思ってしまい(根拠はないです)・・・。

香川さんの演技は、上手いんだけど、『龍馬伝』『坂の上の雲』を頂点に、私の好みは下降線。本人があえて嫌な役をやってる、という部分もあるけど。今回、うるさくて粗暴で、それも前ならチャーミングさを感じたのだけれど、うるさくしか感じなかった。二時間長かったし。

2015年1月期ドラマスタート(前半戦)

January 15 [Thu], 2015, 13:56
さて、『ウロボロス』は明日から〜〜〜!

今夜から小栗君と斗真君の、TBS番宣祭りが始まります。くわしくはこちら。
http://www.tbs.co.jp/OUROBOROS/info/

今ここの下の方にある「GUEST」バナーをクリックしてみたんですが、中村蒼さん達が紹介されているゲストページのタイトル画像に、なんとモリリン(森下能幸さん)らしき人が!!居るじゃないですか!キャスト表にもゲスト欄にもまだ載っていないのに・・・刑事の一人かな?なんかすごくうれしい。

1月期のドラマの一番の楽しみはコレなので、ゆったり萌えられるよう、その前にここまでのスタートドラマ状況を、マーク付きでちょこっと書いておきます。

★★★(今後も観る)
★★(検討中)
★(多分もう見ないかも)
もちろん、今の気持ちなので、変わるかも。

『山田孝之の東京都北区赤羽』★★★(今後も観る)

テレ東快進撃はまだ続く。
どーゆードラマかわからないまま見始めたら、面白かった!!
『東京都北区赤羽』『ウヒョッ!東京都北区赤羽』という漫画があるのは知ってたけど、それを普通にドラマ化するわけではなかった。

第一回の冒頭、山田孝之が山下敦弘監督と映画を撮っている。
『己斬り』という映画で、武士(浪人?)が立ち回りの後、自分の刀で自分の首を切って自殺するクライマックス、何度もトライした後、「できない」と演技が止まってしまう。「役になりきっていて、自分を(模擬刀でも)斬ることができない」のだそう。
それをきっかけに、「赤羽に引っ越すことにした」という経緯。そのドラマを山下敦弘監督が手持ちカメラで撮る、というドラマだ。

撮影のシーンがあまりにリアルなので、『己斬り』という映画の企画が本当にあったのかどうか調べてみたけどわからない。でも、あったのかも。山田が自分を斬れない、というのは、本当に自分を殺す気概でなければ、演技として切り離して斬ることはできない。ということか。本当なら怖い役者。でもウソだったら寒すぎる話だから、部分的には本当なんだろう。
赤羽の風景は漫画の通りでとても楽しい。役場の人もとても不思議。作者の清野とおるさんが大きなマスクをかけて登場し、山田を歓迎する(なぜかポニーを連れて)のもわけがわからず面白かった。
これは先が読めない。「新しいドラマ」を観たい方は、是非。

『怪奇恋愛大作戦』★(もう見ないかも)
赤羽と同日、直前の時間帯。眠いから逆にしてくれないかなあ。ケラリーノ・サンドロヴィッチが脚本・演出を手掛けるというので、これも録画。
麻生久美子、坂井真紀らアラフォー女子三人組のラブ&ホラー&コメディなんだって。あまり趣味ではないけれど、面白い。ハマる人はハマる。

『学校のカイダン』(日テレ)★★★

既視感いっぱいなんだけど、結構面白い。
ヒロインの高校生役、16歳の新鋭広瀬すず。カワイイし度胸もありそう。
金持ちの子女が集まる有名私立校で、プラチナ8と呼ばれる男女4人ずつがスクールカーストの頂点にいて、転校してきた特待生(一般生徒受け入れ枠)のツバメ(広瀬)は底辺に落ち、見せしめのように生徒会長にされ、苛めを受ける。
ツバメの様子を謎の男・神木隆之介演じる雫井彗が見つめていて、スピーチによって学校に革命を起こせと働きかけてくる。

どう見ても『花より男子』設定なんだけど、隠しもしないところが興味を引く。制服も似てるよね。
しかし『花男』は最下層の女の子つくしが、F4の道明寺に惚れられて上に上がっていく古典的なシンデレラストーリー。カーストをひっくり返すことはない。
花男と見せかけて、「アンチ花男」を目指したら面白いけど、どうなるかは不明。
神木君の語りは『リーガル・ハイ』の古美門さんを想起させるような毒舌長台詞。しかしスピードが半分くらいなのは、堺さんの超絶技巧もあるけど、スピードまで同じにしたらモノマネになっちゃうからかも。
杉咲花、浅野温子、須賀健太などもいい。教頭の生瀬さん、また似たような役が続きますね。

『ゴーストライター』(フジ)★★★

「第一回」くらい見ようとタラタラ見てましたが、思わず引き込まれたのが『ゴーストライター』。
予告で見たとおり、売れっ子小説家中谷美紀とゴーストライター水川あさみとの確執を描く作品なんだけど、演技やストーリーが濃密で面白い。出版界の裏話も聞けて、興味津々。

特筆すべきは、文芸誌の編集長田中哲司。『SPEC』や『ATARU』ででのコミカル演技もとても面白いけど、野心家で悪くてエロい、こちらがストライクかもですよ。中谷美紀との絡みはエロ過ぎる。悪いけど、『ファーストクラス』の青柳君とは演技の桁が2つくらい違います。
キムラ緑子さんも、三浦翔平君も好きだわあ。スタンダードに面白いドラマが一本あるのは嬉しい。

妄想:「12人のオリエント急行忠臣蔵」(←ウソです)

January 14 [Wed], 2015, 23:05
フジテレビ開局55周年特別企画『オリエント急行殺人事件』感想

【寝落ち・・・】

三谷さん脚本の二夜連続スペシャルドラマ、『オリエント急行殺人事件』観ました。
すごく楽しみにしていたので、1月11(日)、12日(祝)の2夜、9時から3時間ずつ、わざわざ時間を空けて、リアルタイム視聴。

わくわくして観たし、いろいろと面白かったです。
しかし長い。
一夜目も二夜目も、10時半あたりからどうにもこうにも頭と瞼が重たくなり、11時頃から断続的に記憶がなくなり、最終的にはTVの前で「寝落ち」状態になったのでした。(夫も)

いかに「面白い」と言いたくても、この事実は受け止めざるを得ない。
もちろん録画もしていたので、翌日寝ていたところを見直して・・・計何時間このドラマに時間をつぎ込んだのか。

《寝落ち余談》
関係ないけど元旦の『相棒13スペシャル ストレイシープ』も眠かった・・・。
帰省中「今夜は絶対『相棒』スペシャル観ようね!」と、きょうだい甥姪に焚きつけた責任があるのに、みんな(五人)次々に眠ってしまい、私も相当コックリコックリで・・・。(そればかり覚えてるってアンタ・・・!)
昨年の『ボマー』や『ピエロ』『聖戦』はどれも良かったけれど、時々今回や『アリス』みたいな眠いのもありましたな・・・。

帰省から帰って、暇な夫が「何を観てもあんまり面白くない」というので、去年観なかったらしい『影武者徳川家康』の録画をつけてあげた。関ヶ原の冒頭部からいきなり引き込まれずるずる最後まで見た。「これ、去年の正月時代劇だから」と言ったら、絶句してました。・・・いや、もう一回見てもとっても面白かったです。長いのに。

・・・眠気は正直です。

【野村萬斎さんは最高】

探偵ドラマ界のニューヒーロー誕生!!
ポアロ役、野村萬斎さんの「勝呂武尊(すぐろたける)」最高でしたね。

まあ「喪黒福造」かと誰でも感じたのではと思いますが(特に目をつぶってるとまさに喪黒福造)・・・あの怪演は、癖になるほど楽しい。
『古畑任三郎』や、『刑事コロンボ』の流れにも確実に乗っている探偵。

『任三郎』の大ファンでしたが、年齢的に若返った萬斎さんは、パワーもテンポも素晴らしい。
またあの声。慣れないと奇妙な発声に聞こえるかもしれないけれど、広い音域すべてが小気味よいほど張りがあって響く。早めのスピードも気持ちいい。(もちろん古美門研介ほどのスピードではないが、速さだけを競うわけではないから)
性格は、「正確には名探偵の勝呂です」と自分で言っちゃうような変人型だけれど、粘っこすぎないので鬱陶しくない。あの微妙に厭らしくちょっと神経質な部分も、絶妙なバランス。よくできました!!!(結末の「判断」は気に入らないけど、別な問題)

勝呂さんで続編下さい!!
「昨日までの小倉の事件」とか言ってたから、連続を見越してるのかな。
昭和10年前後っていうのも、いい時代設定ですね。
是非、是非、年一回くらいシリーズ化を!!!

【最近の三谷作品は・・・】

けど、褒めたいのは萬斎さんくらいで、あとはあんまり・・・。
やはり、脚本です。
三谷さんの最近の作品には、衰えと言っては失礼だけれど、なんだか切れ味が悪いというか、あんなに好きだった以前のように私のハートにヒットしてこない。

昨年の『大空港』は、『オリエント』より眠かった。地方の空港を舞台に、一族がうろうろしてるだけで、カタルシスとか何も感じなかった。オダギリさんのニセパイロットしか鮮やかな記憶がないかも・・・。

『清須会議』は、ずっとイマイチだった最近の三谷映画の中でも一番つまらなかった。ギャグははじけず、音楽や効果音もいかにも古色蒼然の歴史ドラマ風。『12人の優しい日本人』みたいな「会議」中心のディスカッション劇を期待してたのに、外れた。
あれなら、この前の『信長協奏曲』のぶっ飛んだ設定、音楽、衣装の方が、賛否はあってもずっとワクワクした。

なんかね、2011年の「三谷生誕50周年祭」(だったかな?)の中盤くらいからガックリきたような気がしている。
舞台では『ろくでなし啄木』『国民の映画』が個人的に大好きで「これぞ三谷劇!」と思った。しかしその後、ぬるくなったように思う。「震災後、暗いものを書きたくなくなった」ような発言があり気になっていた。何かを封印したように感じるのだが、私だけだろうか。

2011年「三谷感謝祭」では、舞台四本すべてに感想を書いたので宜しければ。
『ろくでなし啄木(BS感想)』http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1008
大震災下に『国民の映画』を観て感じたことhttp://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1005
『ペッジ・パードン』ちょい辛感想http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1034
『90ミニッツ』辛口感想http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1093
この年は映画『ステキな金縛り』http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1073もあったが、ドラマでは『short cut』
http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1074
が出色だったと思う。これはいろんな意味で面白かった。
その後自分の三谷熱がやや落ち着き、舞台は『おのれナポレオン』(これは大好き)しか見ていない。けれどドラマや映画で何かやる、といえば観ずにはいられない。
(だって、私の人生を変えた『新選組!』の三谷さんですから・・・)

一番気になるのは来年の大河『真田丸』で、その為の試金石として、今回の『オリエント急行』に注目していた。来年の今頃は、三谷×堺雅人の『真田丸』がスタートしてるんだから・・・。

【役者がちょっともったいない】

>ときどき、三谷さんは自分にも他人にも甘いあたりで作品を着地させてしまっているように思えるときがある。それらの作品が私にはややつまらない。
と、自分が『ペッジ・パードン』の感想に書いた。
この作品は、野村萬斎さんが夏目漱石役で出演した。三谷さんが初めて満載さんと組んだ作品(だと思う)。この時も萬斎さんは良かった!映画『のぼうの城』より前のことだ。

今回も萬斎さんは素晴らしかった。
しかし他のキャストは、そんなに輝いていた、とは言えないだろう・・・。
悪かったと思う役者は誰もいない。けれど、「取り換えが効かない役者」が、一人でもいたかなぁ・・・?
それだけでなく、役柄として「取り換えの効かない役」だって半分もなかったような。

萬斎さんのアシストコンビである笹野高史さん×高橋克実さんも、豪華すぎ老成しすぎ。古畑の今泉君と西園寺君の立場なら、もう少し軽くても・・・。
松嶋菜々子は化粧の色が濃すぎて美しさが減殺。沢村一樹も大事な役なのにキャラが埋没。
西田さんは実力と予算の無駄遣い。コバさん存在感がない・・。
三谷さんが嵐を使うのは珍しいけれど、二宮君は微妙な演技が割とよかった。
安藤夫妻はビジュアル担当かなぁ・・・玉木外交官、帽子の持ち方からカッコよかった。杏は終始軽くかわいく、微妙なバランスも行けるんだなぁとちょっと感心。
剛力大佐の石丸幹二もビジュアル最高だけど、ピストル自殺の場面は、顔が似ている飯田基祐さん(この人も『組!』仲間)が『SP』で自殺したシーンを思い出した。
佐藤浩市は、一片の情状酌量もなく憎むべき存在と感じねばならないのだろうが、どこか憎み切れない奴と感じさせる部分もあり、結末までもやもやしていた。

個人的に一番よかったと思うのは、侯爵夫人草笛光子と、事件の中心人物となる「大奥様」富司純子。
この老女二人の貫禄、演技、凛とした美しさには、何度もハッとさせられた。昭和初期の時代感や、当時の上流階級の一本背骨の通った雰囲気は、この二人が醸し出してくれた部分が大きい。

萬斎さんは一人突出して素晴らしかったが、かつての三谷さんの脚本なら、突出した主役は必要とされなかったように思う。それぞれのパートをアドリブなしで演じていれば、通して見た時完璧に面白い芝居になるのが三谷マジック。
傑作である『12人の優しい日本人』や『ラジオの時間』や『新選組!』などみんなそうだった。特に前『12人』は、均整の取れた完璧な脚本。12人同じウェイトでありながら、緊密に関係して取り換えが効かない。役者がバトルロワイヤルする場ではないのだ。
ところが脚本が信用ならないと、役者が力量でなんとかしようとバラバラに突出する。視聴者をつかむのが上手い役者のパートだけ面白いけど全体はサッパリな作品になっちゃう(例:『平清盛』)。
三谷作品で言うと大泉洋が走った『清須会議』。大泉は面白くしようと頑張ったのだろうけれど、見てると笑えなかった。三谷劇の面白さはそういう個人技じゃないと思う。
作品自体に仕掛けがあって、役者も視聴者も手玉に取られる楽しさ。

平成27年正月帰省つれづれ

January 08 [Thu], 2015, 11:34
あけましておめでとうございます。
いろいろとありまして、すっかり、ご挨拶のタイミングが遅れてしまいました。
今朝門松外しました・・・。

本年もよろしくお願いします。
皆様にとっても、良い年でありますように。

ツイッター、フェイスブックなどSNSの興隆のためか、ブログ人口は減りつつあるらしいです。アクセス数が相当減ってるのにランキングが下がらないというのは、ヤプログ!の利用者そのものが減ってるってことですよね。
サービスがなくなったらどうしよう・・・。

私はFBやツィッターを利用することもあるし(観たばかりの演劇の評判など聞けるのが面白い)一応アカウントも持っているけれど、発信ツールにしてません。140字(かな?)で勝負することも潔いと思うけれど、長文を許してくれる、長めのコメントでディスカッションもできるブログ形式の方が好きなので・・・。
・・・今読んでくださってる方、今後ともよろしければ、よろしくお願いします。

◆◆◆

年末年始は結婚以来ずっと変わらず、私の方の実家で一族集まります。
例年通り紅白も観ました。(女たちはいつものように台所でおせちの準備しながらね)。
「妖怪ウォッチ」も楽しく聞けたし、出ないかと思ったサザンが登場して嬉しかった。中島みゆきも・・・。しかし、いつもより画面を熱心に見なかったかも。

話の方が盛り上がってたからなあ・・・。
私の父親をてっぺんにした自分たち一族、特に(父から見ての)「孫世代」が続々と成人しては大学を卒業して就職(含むフリーター)していきます。一昨年には大学生が5人、という状況で学祭めぐりを楽しませてもらっていたのに、来春以降は学生は一人だけ。

特に驚いたのは、昨年甥っ子(まだ24)に子供が生まれたこと(デキ婚だけど)。誰が一番先に結婚するか・・はオバサン3人(私と姉と妹)の大きな興味だったけれど、全員ハズレました。
また、我々「子世代」に、本年ついに還暦を迎えるメンバーが現れる(姉の夫)。
65までの継続雇用の道を選ばず、「体力があるうちにやりたいことをやる」のだそうだ。
働くにせよ遊ぶにせよ、下の夫たちの手本になってください!

還暦かぁ・・・と一瞬驚いたけど、後約10年の間に我々子世代全員が打ち続いて還暦を迎えるんですよね(夫の弟たちはまだだけど)。
・・・と書いてから、「五十路の雑考」カテゴリに入れ直しました。

2014年連続ドラマメゾン・ド・キノコ’sベストテン

December 31 [Wed], 2014, 8:23
ブログのテーマにしても、日々の「基本的な生活習慣」にしても、どうも続けられないキノコです。
一年が終わってしまう今頃は、なおさらその気分が強くなる…情けない。

これだけはどうやら毎年やっているので、今年も書きましょう。

2014年連続ドラマメゾン・ド・キノコ’sベストテン

ひところほど多くのドラマを見てないきのこですが、今年も満足感の高いドラマはいくつもありました。「これはイマイチ・・・」と思うと早めに見なくなってしまうので、いつもにぎわっていたワーストドラマ部門が書けないかも・・・。

以下、毎年書いてますが・・・。
基本的に、あくまで自分が見たドラマの中のベストテン。視聴率も専門的評価も関係なしで自分が「面白かった!」「毎週待ち遠しかった!」「ついつい夢中で見てしまった・・・」という観点のみです。
また自己ルールとして、見た回数が全体の半分に達しなかったドラマに関しては、ランキングに入れません。(「あのすばらしいドラマがなぜ入っていないの?」という疑問の答えはだいたいこれかと思います)

第10位『ごめんね青春!』(TBS)
日曜劇場最低の視聴率を記録してクドカンが落ち込んだという逸話のあるドラマ。
面白かったです。でも、視聴率につながらなかったのも十分わかります。
一声かければ出てくれそうなクドカンファミリーをほとんど使わず、無名の高校生役を多数出したのですから。
主演の錦戸君がハマっていて一番よかった。満島ひかりは声や演技の質があってなかった。生瀬さんの校長兼ラジオDJが素敵。

第9位『闇金ウシジマくんseason2』(TBS)
なんだかテレ東だと思っていたらTBSだったのね。
続編やシリーズものに点が辛くなるきのこですが、これを入れたのにはいろいろわけが。
Season2では、フリーター君の宇津井役の永野宗典、G10(ゴト)役の藤本涼らが好演(怪演)。これにピンときて、映画も見て、なおかつついに原作に手を出したら衝撃を受けてどっぷりハマった。ここ10年くらいで一番心に残る漫画になった。だけどドラマも好き。
原作の感想はこちら。http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1333

第8位第『花咲舞が黙ってない』(日テレ)
明るくて見やすくて面白かった!さすがは池井戸潤。
杏と上川隆也、コメディすごく行ける。シリーズ化希望。

第7位『家族狩り』(TBS)
第6位『ペテロの葬列』(TBS)
どちらもTBSお得意の小説原作ミステリー(宮部みゆき、天童荒太)。
ペテロは長塚京三の第一回に惚れすぎ。話も秀逸。家族狩りは重い話をよくぞドラマ化したと。松雪泰子と伊藤淳史も好演。

以下、五位以下の発表。
また、単発ドラマ、ワーストドラマ、期待外れドラマについてもちょっとずつ書いてます。
大晦日。用事を済ませてからお読みくださいませ・・・。

『信長協奏曲』最終回に思うこと

December 31 [Wed], 2014, 1:53
月9『信長協奏曲』最終回(11話)と全体の感想

忙しくて全然更新できず・・・覗いてくださってる方いらっしゃったらスミマセン。

大みそかの朝0:20です・・・
書きかけのこの記事だけでもアップしておこうかと。

その前にいくつか・・・
○全日本フィギュアでの羽生君の優勝、町田君の引退声明は驚いたけど、若手の宇野昌磨(17)・山本草太(14)の台頭は嬉しい。羽生君もグンと大人びて、厳しい表情もするようになった。この三人で世界に出る日が楽しみ。

○西島(向井、竹野内)ショックに続く、佐々木蔵ノ介の結婚も驚き。46歳で26歳一般女性との熱愛・・・。「アラフォー女子最後の砦」(一部アラゴもね)と言われ、一部報道では「残された人類の希望」(なんじゃそりゃ)と言われてましたが・・・(カッコいいもんね)。

○そうそう、さっきようやく観たTBSのオムニバスドラマ『このミステリーがすごい』面白かったなあ。二時間で四本も観たとは思えないほど内容が濃くて。『オヤジの背中』から続く良質オムニバスへのチャレンジ、応援。

何といっても一番手(ラストかと思ってた)の『ダイアモンドダスト』にグイグイ引き込まれた(耕史君出演だからというわけではなく)。今冬の全国的な大寒波を思うと、東京都心でもありそうな話。臨場感が凄かった。AKIRAと耕史君の二人芝居の部分が多く、耕史君のうまさが十分引き立ったのも嬉しく、最近の彼の出演ドラマでは一番満足感あり。(正月の秀頼以来)。
イッセー尾形の、コロンボと古畑がチラチラする刑事ぶりも面白かった。『黒いパンテル』も『世に奇妙』っぽいけど面白かった。藤原紀香のはイマイチ。

【批判の嵐?感動の嵐?『信長協奏曲』最終回】

さて、先週に最終回を迎えた、月9『信長協奏曲』に関して、書きかけで放っておいた記事を仕上げてアップしときます。ここまでこのドラマに付き合ってまいりましたので・・・・。

視聴率は最後も厳しく10.7%。
最終回のために渋谷ジャックして宣伝したのに・・・(一部の人しか見られなかったのが逆効果?)
けれど10%切らなかったことに、正直ちょっとホッとした。
評価は結局、賛否両論という感じ。

つらつら感想を見ると、「浅井長政の最期に泣けた」「サブローと帰蝶の夫婦愛に泣けた」「最後の終わり方がひどすぎ」「ドラマはドラマで終わらせてほしかった」という感じですね。やっぱり。う〜ん。

ちょっと気になるのが、あちこちのネット記事で「最終回が物議を醸している」「大炎上」とか書かれていること。
http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20141226/Cyzo_201412_9_12.html
ちょっと引用。

>「まさか」は最終回に起こった。
>信長の最期といえば、ご存じ、本能寺の変だが、そこへたどり着く前に放送は終了。続きは来年冬公開の劇場版で! というオチだったのだ。これには視聴者も激怒。放送終了後からネット上では「視聴者を完全にナメてる」「結局、映画の宣伝ドラマかよ」などと批判が殺到した。

????
この記事、ドラマ観ないで書いてるんじゃないのかなあ・・・?
批判はわかる。観てれば感じる。いろいろボロボロあるだろう。

けれどずっと観ていた視聴者が怒った、というか衝撃を受けたのは、最終回最後のあのシーン(秀吉、ミッチー、半兵衛)のこと。
続き(多分本能寺)が映画になるだろうなんて、最初から見えてた、というより発表してたことじゃないですか。なにをいまさら・・・・。
観ていた人なら、あの最終回15分拡大で本能寺までやることは不可能、なんて当然わかる。小谷城での浅井長政の最後をしっかり描いたことで最終回にしたのは良かったと思う。
まあ、「あのシーン」はいったんドラマエンディングの後に切り離した形にすべきだったと思ったけれど。

記事の中で「今回はあざとすぎた」とあるけれど、私の愛する『SPEC』なんて最終回で「映画化とか、絶対ねえから」とヒロイン当麻に最終回後に言わせてた(結局映画も続編もたくさん作ったけれど)。それと比べればまるきりわかってたことだし。『S』とか、『赤と黒の捜査ファイル』(ちゃんと見なかったけど)とかもそのパターン。もちろんそれがいい傾向だとは思わないけれど、ドラマの赤字が映画で取りかえせるなら、テレビ局も商売だからやって構わない。作品が良ければ許せる。

特に『信コン』だけがあざとい、ひどいとも思わないのだが、「大炎上」みたいな書き方には、なにか「小栗叩いてオッケー」指令が出たのではないかとちょっと怖くなった(Jと違い弱小なので常にその危険には晒されている)。
ただしリアルで放送直後の評判を読んだ限りでは、内容への「感動」とラストへの「ショック」が半々。良くも悪くも「炎上」というほどの話題にはなってない気がする。

私は、このドラマのPOPさに期待していたので、「泣ける」という方面で評価されるのはあまりうれしくはないのだが、最終回に関しては、もう仕方がないかな・・・。

最初の方でのサブローのセリフ「憎しみは、新しい憎しみしか生まないって。傷つけられたから傷つけ返す。それでまた大切な人を失っていく。(中略)・・・だから、俺たちの手で終わらせよう」
は、あまりに現代人的で歯の浮くような正論かとも思えるけれど、サブローが戦国で生きてきて最終的に(現時点で)たどり着いた確信として納得。語る小栗サブローの言葉に本気が感じられた。
(「軍師官兵衛」は最初から「いくさのない世を」と言ってるけど、この点に限っては信コンの方が説得力がある。)

【登場人物も生き生きとしてた】

○帰蝶、最後まで涙を見せず、泣き崩れも縋りつきもしなかった気丈さが良かった。サブローが出ていったら本気で元信長(ミッチー)と暮らせるのかな、という疑問もあるけど、戦国の女性ならそれがリアルかも。
最終回、笑えるシーンはとても少なかったけれど、「にぎりめしこちゃん」「にぎりめし男です」のギャグは、思い出すと鼻の奥がツンとするような効果が。まだプラトニックなのかなあ?
柴崎コウも評価上げた。当初の「原作の帰蝶の方がいい」の大合唱を黙らせた。少なくとも帰蝶に関しては、ドラマの方がずっと魅力的。

○浅井長政高橋一生、見せてくれました。(評判めっちゃ高い)
サブローとの間に「友情」を持ってきたのはどうかと思ったけど、結果的に非常に良好な着地。長政だけは織田家中の人々よりも、一番サブローの思いをわかってくれたんだなあ・・・。
それでも「友情よりも大切なものがある」「死んでいった家臣たちのためにも、この戦をやめることはできぬのです」と言う長政くん。
現代人サブローと戦国の人々。最後の最後には貫くモノが違う、という結論に達したのも最終回の良かったところだと思う。

○お市も、お涙シーンが少しダレたけれど、「お市っちゃん、ごめんね」とあやまるサブローに気丈に答えた様子は、戦国女らしくて良かった。お市がいつまでも兄を恨んでいるように描かれる作品群より、私は好き。

○前回からそれこそ「物議を醸した」の恒ちゃんはねえ・・・・。
帰蝶のセリフでまた裏がえった!
ああ、恒ちゃんはこういうキャラなんでしょう・・・。悪気はないけど、他人の考えに引きずられて、目の前の旧知の友を疑ったり追い出したり、また元のさやに戻ったりする。
こういう「凡人」、いるよねえ。
「正しい」だと思ってやってるからタチが悪い。「間違ってるかもしれないけれど、俺はこの道を行く」というものがない。こういうキャラもきっちり演じれば面白いけれど、向井さんはそこまで表現できないし顔もよすぎるから変な感じが残る(ゴメン)。
でも、最後にサブローを迎えに来てくれた時の恒ちゃんの笑顔にはホッとさせられたし、正直に嬉しかった。

○秀吉がますます黒々として・・・・ぶれない山田孝之、おみごと。視聴者に思いっきり「厭え!」と啖呵切ってるようなもんですね。
にしても、浅井との戦の火種をことごとく作ってきて、ドラマの前半ではよく失敗してきた(桶狭間とか)けれど、最終回に近づくにつれて悪事の精度が上がってきたのが凄い。
戦では、他の武将たちはなにもしないでほとんど秀吉の一軍だけが戦功をあげたように見える。どうした柴田丹羽池田!・・・でもそれが史実に近い?

最後の藤木半兵衛の殺し方はすさまじかった。一瞬の決断。
今回、なんとなく半兵衛は死ぬだろうと感じていたけれど、病死か毒殺かとぼんやり思ってたけど、半兵衛が「あなたさまは、信長さまではない・・・」と目を丸くした途端にあんな・・・。唯一、秀吉の正体に気付いて調べていたオトコなのに・・・。

そのシーンを淡々と見つめていたミッチーの目、怖かった。ずっとキャラがぼんやりしていた分、秀吉より怖かったかも。この二人(サブローと三人か)、どうなっていくんだろう。やはり映画を観ないと。と思わされるから、このシーンは必要だったんだろうけれど、最終回としての後味は悪すぎる。

ひどいよ恒ちゃん・・・『信長協奏曲』(10)

December 16 [Tue], 2014, 6:18

GPスペイン大会での羽生君の完全復活、鮮やかでしたね。あの美しすぎるジャンプやスピン、彼にしては珍しいはじけるような笑顔とガッツポーズ。すっかり魅せられたし、安心しました。

一方、大会直前の数々の発言。「僕は課題大好き、試練大好きなんですよ」という言葉に、感じ入りました。
「ギリギリでGPの最下位に滑り込んだチャレンジャーとして」試合に臨む、という言葉も、とても楽しげに聞こえました。
彼が言うと、全く強がりな要素は感じられず、正直そのまま。そういえば少年漫画、スポ根のひとだとかも言ってましたね。

なるほど若くして誰にも来れない高みに一度到達してしまった、天才とはそういうものなのか・・・・。「課題や試練を一つ一つ乗り越えて上にあがっていく時」の充実や楽しさが好きだったのに、気がつけばみんなライバルが足元に居る。
今回の試練は非常に短い期間で克服できてしまったけれど、今後の羽生君はどこへ向かうのか。楽しみにしたいです。

失敗ジャンプを繰り返した町田君のドラマにも心惹かれました。フェルナンデスの演技、楽しくてキレがあって、純粋に好き。
16歳でジュニア優勝を遂げた宇野昌磨君、出場しなかったけれど、大阪大会で驚きの優勝を果たした村上大介君にも注目。羽生君のハートに火をつけて欲しいな。

◆◆◆

と、書きつけておきたかったスケートの話は前ふりで・・・。
総選挙の話は例によって飛ばして・・・・。

今回(第十回)の『信長協奏曲』がショックで、番組終了後何もできずにふて寝してしまいました。

この楽しいファンタジーでポップだった月9時代ドラマに、こんなつらい状況が訪れるとは・・・・。

あ、ちゃんとした感想は書けないんです。見返す気力もまだでない。
今のショック状況だけ書きつけておきたくて。

駆け足連ドラ最終コーナー(2013年10月期)+『信コン』ネタ

December 12 [Fri], 2014, 9:53
書きたいことはたまるけど書く時間がないので、ごちゃごちゃまとめます。

【『すべてはFになる』に耕史君】

『すべてはFになる』、第三エピ(5,6回)第四エピ(7,8回)になったら、安定して面白くなってきた。原作でも真賀田博士の登場する『すべてはFになる』と、『数奇にして模型』というメインどころ。

で、第四エピのメインゲスト出演者が耕史君でしたね。最近ドラマ出演が減ってたので、もはや懐かし感すらあった!
30代後半になっても、耕史君はクリンとしたお目目も、つまんだような鼻も唇も可愛くて、オデコは半開で割といい感じ。やっぱり足が長いですねぇ〜〜。
役柄は、モデラーと聞いて思い浮かべるようなタイプじゃないんだけど、今ならあんなモデラーも居そう。

なんといっても、綾野剛との演技対決が楽しみだったんですが・・・。
耕史君は、想像の殺人の部分(紐で恋人の首を絞めるところ)から歯を剥き出して熱演(しすぎ)。貼りついた笑顔を浮かべ、美学論を犀川先生(綾野)にさえぎられるところなど、対決と言うより綾野君を立てる役割に徹してたように見えます。その綾野君もこのドラマでは彼にしては役作りが苦しいようで無表情先行。あまり「対決」感はなかったです。
犀川が萌絵(武井咲)の身代わりを買って出るところすらイマイチ胸キュンできなかった。

耕史君より印象に強いゲスト出演者が二人。
○小松和重さんが演じた犀川先生の元同級生オカマ、大御防安朋さんがキュートすぎ!!美人でなくても、あんなにカワイくてリアルなオカマさんになれるなんて、小松さんなんでもできるんだ。小澤征悦とのコンビもグーッ。

○そして、中島歩演じた狂気の芸術家が強烈過ぎた!なんなんだこいつ・・・と思ったら、『花子とアン』の仲間由紀恵の駆け落ち相手でした。あの時は若干浮いてた感じがしたんですが、今回は楽しそうに異常嗜好を演じてたような・・・。なんでも美輪明宏に見出された新人らしい。上手いとかじゃないけれど、この独特さは、若手俳優の中で特殊な存在感になるかも・・・。
この人が耕史君に向かって「気づいてましたよ。僕の身体(の形)が欲しいんでしょう?」なんて言うエロいシーンはゾクゾクしました。

気になったのは、この手のイベントにしては来場者が少なすぎ。人気のない大学の学園祭並み。話は面白いのに作りがところどころ雑なのが惜しい。

【『ごめんね青春!』ラス前盛り上がる】

低視聴率なれど、気分的には安定しきっていた『ごめんね青春!』。
みしまるくん、みしまるこちゃん、三島コロッケパンなどの既存(だと思ってたがそうかしら?)の地元グッズに加え、ドラマ内のラジオ番組のキャラ、「ごめんねウナギ」グッズも大展開。販売も始まってるけどドラマ内でも出演者がみんなグッズを持ってる!!
地元のラジオ番組を多くの地元民が聞いてて、そこで告白やら懺悔やらしまくっちゃってるのが面白すぎ。生瀬さんも心から楽しくDJと校長をやってます。

今回は、平助の父原平太と死んだ母親とのラブストーリーが、泣けた。と言うより、こっちが泣く前に風間杜夫さんがあんなにマジ泣きしてる!!私も「面白かった」って言って死にたい。
それでもってかれているうちに、屋上ではいよいよたれかっぱ(錦戸くん)が、蜂谷先生(満島ひかり)に罪の告白と愛の告白をしてしまう。いつも割とダラダラ見てる(ゴメン、子供たちのところは時々退屈なので)んだけど、一瞬も目が離せなかった。

ところでこのドラマ、ふと思うととことん後ろ向き。過去に縛られまくって生きてる人々なんですね。「前を向け」と言われまくっているような世の中で、存分に後ろを向かせてくれる。過去の罪、死んだ人との思い出とか、クドカンは大事にしてるみたい。いろんな人が生き返ったり魂が顕在化しているお話(『ごめんね』『11人もいる!』など)も多いです。

最終回は選挙のため、一週間遅れの21日。あらら。

【素敵な選タクシー】

このドラマ、一回見て面白かったから続けて見ようと思ったのに、結局録画し忘れてボチボチ観てる感じ。全部観ればよかったよ〜。
今回の高橋務と梶原善ゲストのやつも面白かった。結局タイムスリップしないのも、見えてたけどそれが楽しかった。三人の男達に芽生える、利害とは別に生じる友情にも似た連帯感。それを裏切るのは・・・。
バカリズム、今後脚本家としてもっと活躍するかも。ていうか『選タクシー』もシリーズ化できそう。
(誰でもいうことですが)竹野内豊の声はいいですねぇ・・・・。あの、真っ青なタクシーの衣装でへっぴり腰で構えてても、なんだかサマになってしまう。本人が楽しんでやってるのがとてもいい。

【Nのために】

こちらも終盤。昔の事件も含めて、着地点がピタッと決まるといいなあ。
「野バラ荘」での青春模様がツボに入って、一時夢中で褒めまくったけれど、野口夫妻の話になってから、今ひとつ乗れない。DV亭主はなあ。
小説家志望の西崎さんは、愛と依存的な癒着と同情との峻別ができてるはずなのに、奈央子への思いはその辺が納得いかない。傷跡を見て衝撃を受け、命がけで救いたい、と思うのはわかる。けど、それが即肉体関係になるかなぁ・・・。プラトニックであって欲しかったのは、小出西崎ファンだからだけじゃないよ。

【見なくなったモノ】

『ファースト・クラス』、面白がって見てたんだけれど、やはり内容があまりにもくだらなくて耐え難くなってきた。沢尻と若手男性キャストの演技もあまりにもヒドい。女優陣の維持の張合いはみんな面白いんだけど、もういいや。
好評の『今日会社休みます』も『ディア・シスター』も次々脱落。ツボを押さえてよくできてるとは思うものの、女子ドラマがあまり面白く感じられないのは、私がオバサンだから・・?
『ぬ〜べ〜』は見れば「丸山君かわいいなぁ〜〜」と思うんだけど、実際はあまり見てないのは時間帯のせい。

【やっぱり見てるモノ】

好評と言えば、『ドクターX』が全話20%越えの完全一人横綱状態。
プロ意識に徹したドラマ作り。タラタラ見てもじっくり見ても面白い。
『相棒』は最初見て「今日はスルー」となることもあるんだけど、ドクターの方は権力争いの動向も面白いからついつい見ちゃう。
もちろん米倉涼子と、岸部一徳以下ピッタリはまったキャスト陣(特にエンケン、勝村、鈴木浩介らが楽しい)もいいけれど、脚本がいいんですよねえ。あえて大時代的な音楽もナレーションも、ワクワクする。
最終エピは晶さん(岸部一徳)の難しい手術を未知子が請け負う話。盛り上げてくるなあ!

『軍師官兵衛』、竹中秀吉が死んだ後はつまらないかと思ったら、岡田官兵衛が天下を狙う展開になってなかなか面白い。老官兵衛、太兵衛(速水もこみち)、善助(濱田岳)、九郎右衛門(高橋一生)とのチーム男子っぷりに、腐女子ざっくり取り込みのドラマだったのかな?(今頃言うか)九郎右衛門の戦場シーンとか、ちょっとやられました。
今年早々にリタイアしかかった大河にしては復活した・・・。ピュアで青臭い時代より、黒官兵衛が入るようになってからが良かった。
あれ?これも選挙のため一週休み?

【『信長協奏曲』8,9話 もりりん・みっちー】

さて、『信コン』。

『カルメギ』観劇。(ますます多田淳にハマりそう)

December 07 [Sun], 2014, 10:34
Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메 カルメギ』


『奴婢訓』以来、多田淳之介の紡ぐ重層的でトリッキーな「世界の見せ方」がどうにも気になって、神奈川芸術劇場に『カルメギ』を観に行った。

今回も重層的だ。
チェーホフの『かもめ』を、韓国人脚本家が舞台を1930年代の朝鮮の農村を舞台に置き換え、それを演出家多田淳之介が韓日の役者を使って演出した。
〔(宮沢賢治+スウィフト)×寺山修司〕×多田淳=『奴婢訓』
チェーホフ×ソン・ギウン×多田淳=『カルメギ』・・・?
いやいや、やっぱりうまく説明できないので、KAATのページから抜粋します。

【カルメギとは】

>韓国で最も歴史と権威のある東亜演劇賞にて三冠(作品賞・演出賞・視聴覚デザイン賞)を受賞し、外国人演出家として初の正賞受賞となった2013年韓国演劇界の話題作『가모메 カルメギ』がついに日本初上演。
【原作】
アントン・チェーホフ「かもめ」
【脚本・演出協力】
ソン・ギウン
【演出】
多田淳之介
【出演】
夏目慎也、佐藤誠 、佐山和泉 、間野律子
ソン・ヨジン 、イ・ユンジェ 、クォン・テッキ、 オ・ミンジョン、 マ・ドゥヨン、 チョン・スジ 、チェ・ソヨン、イ・ガンウク
(と写しても、『奴婢訓』に出ていたオッペル(夏目)とよだか(佐山)さん以外初見です・・・)
【作品紹介】
気鋭の韓国人作・演出家ソン・ギウンがアントン・チェーホフの名作「かもめ」を1930年代の日帝朝鮮に翻案。帝政から革命への過渡期にあった19世紀末 のロシアを描いた「かもめ」。1930年代の朝鮮というしばしば政治的な議論となる、そして人々の心の内にも様々な記憶を呼び起こす繊細な時代を日韓の演劇人が手がけ、ソウル初演は大きな注目を集めた。戯曲の古典ともいえるチェーホフを用いながら、多田演出らしいサブカルチャーの転用や現代の社会情勢の引用が、作品に複数の解釈への視座を与える本作。(中略)
韓日・日韓の歴史、現在、未来から、私と他という人間の根源を描いた全ての現代人に捧げる世界演劇にどうぞご期待ください。

ワクワクしますね〜〜。
やっぱり、もう一つの観劇動機は近頃日本で強まっている嫌韓感情。
このネトウヨ的ヘイト意見に接するたびに、非常に不快で不安で不吉な気分になるので、そのモヤモヤを少しでも晴らす糸口が見つかれば・・・。

パンフレットを見ると
>今回ばかりは俳優たちとも歴史の話をたくさんしました。去年も今年もしました。そして、いまだにお互いを理解しあうということはありません。しかし、人間同士の関係はお互いの違いを認めることからしか始まりません。(多田)

素晴らしい試みだなぁと思う。
と同時にこういう「ごく普通のこと」が、特別な勇気がないとできないような今の韓日関係(=日韓関係。自分としてはどちらでも一緒なのだが、それを言い訳せねばいけないような関係のことだ)を思ってやりきれなくなる。

ちなみに、『カルメギ』とはチェーホフ原題『かもめ』の直訳。
無知ゆえ、「カルメギ」でまず検索したが、上位はほとんど韓国焼き肉店がヒットした。「カモメの肉を出すの?」と驚いたら、肉店では豚肉の一部位のことを言うらしい。形がカモメに似てるんだそうで・・・。

【舞台が始まる前から、たまらなくそそられる】

とても面白かった。
それは間違いない。許されるならもう一度見に行きたかった。

ただ、この舞台の感想を書くのはやや難しく感じる。
まあ、正直に感じたことを書くしかないか。

観たのは、初日だった。
ヨコハマクリスマス気分もおまけ。ランドマークタワーに上って夕暮れから夜景に移る横浜の風景を眺め、そこからイルミネーションを楽しみながら遊園地を抜け、赤レンガ、山下公園と海辺のナイトウォークで神奈川芸術劇場(KAAT)へ。

KAATは三回くらい来たけれど、中スタジオは初めて。
中に入ると、舞台は細長い「中洲」状で、その両側に客席が3〜4列ほど並んでいる。客はどちら側の席で観るべきか一瞬迷うが、なんとなく流れで入って右側に行き、前から二番目の真ん中という最高の席。
後で逆側の端っこの一番上で観た人に聞くと、「自分の席が一番よかった」と感じていたそうで、それは私も同感だった。
急こう配なので、どの席からでもよく舞台が見える。前ももちろんいいが、後方(上)も、字幕との視差が小さく、全体が見られていいかも。

『奴婢訓』の時も思ったけれど、すべての観客にとってベストな観劇の位置を考え、その外側には席を置かない(ロープで区切ったりしているなど)ように配慮している感じがする。今回は観客参加スタイルではなかったけれど、「舞台と同一の場所に居る感じ」が強い。
「入場者1人=○万円」と考え、大きな舞台に三階席の端っこまで客を詰め込む今の人気演劇状況(もはや「客畜」だ)を考えると大きな違い。
大舞台に反発するとアンダーグラウンド的空間を求めがちなのだが、多田さんは設備の整った新しい公共の建物(どこでもいいわけではなく、きちんと演劇に適した空間を追求した施設)も堂々と活用している。(「デスロック」なのにさ!)カッコいいなぁ!

細長い舞台の上は、チラシで見た以上に、非常に乱雑。
新聞、雑誌、日用品、家具などで足の踏み場もないような状態。そして、家具類・・・中央の大きな洋服ダンスは、あとあと重要な「ルート」になるのだが、斜めに土(砂?)の中に埋まっている。いすや机も、多くのものはやはり土に半分埋まっている。そして、漁業で使うようなロープや、網カゴも散乱している。

たいていの日本の観客は、一目で想起するだろう。
この光景は、東日本大震災で津波にさらわれた町の残骸ではないかと。
昨年韓国で上演された舞台写真には、津波の跡っぽさ(漁労道具など)はあまりなかったよう見える。日本バージョン?

または持ち主に去られて荒れ果てた、「部屋」の廃墟のようにも見える。下手奥(こちらから)にある主人公が執筆するためのデスクのせいかもしれない。
そのほか、蓄音機や鳥かご、額に入った写真、なぜかタブレットなどもある。
四隅にはブラウン管のテレビが客席に向けて置いてあって、最初は舞台の出入り口の入場者を映していた。上演中は反対側の舞台を映すのかな、とも思っていたが、両側から眺める舞台でも隅々までよく見えたので、テレビモニターに目をやることはほとんどなかったのでちょっと意図はわからない。

この舞台装置に、期待と緊張が高まる。
舞台の縁取るように大きな木枠が建てられており、その上の横バー部分に、韓国語の時の字幕が映される。もちろん両側から。(セリフ以外に「1940年 東京オリンピック中止」 などのように、歴史上の年表が出ることもある)。

開演前から、カジュアルな現代の衣装を着たボーイッシュな女優さんがチョコチョコしている。この場面ではラストにつながる現代の存在なのかもしれない。舞台の中に過去を探しに行く我々みたいな・・・?
とか先走ったことを考えるが、「私は朝鮮の少年、ミョギです」とはっきり自己紹介をする。(もしかしたらこの瞬間が、舞台の始まり)

◆◆◆以下、ネタバレありの感想になりますので、ご了承ください◆◆◆




【セリフの精巧さ、舞台の仕掛け】

黒いチマチョゴリを着た少女エジョンが現れる。
「演劇って、いったいどこでやるのかしら?舞台らしきものも見当たらないし」。
次に日本人の「御手洗先生」が現れる。
その会話で、村の青年、作家志望のリュ・ギヒョクが演劇を始めるらしいこと、舞台は特になく、「ここでやる」ことが観客に明らかにされていく。

先生「あなたは、なぜ、いつも、チマチョゴリが、黒いのですか・・?」
エジョン「これは人生の喪服です」
ついで、不吉な黒いカラスや、吉兆であるカササギについての話が出る。

内容も日常会話の中に象徴的な内容が入っていて引き込まれるが、この日本語と韓国語の入り乱れた会話が実にスムーズで驚かされる。こんなの見たことない!(韓流ドラマあまり見てないからかもしれないけど・・・)
韓国語部分は、上のバーの字幕を見ながらの観賞だが、楽で自然で、なんのギクシャクも感じなかった。これにはかなりの細かい技術や気遣いがあったことだろう・・。

芝居見物のため、登場人物がどんどん舞台上にお目見えする。ヒロインであるソン・スニムと言う美少女、主人公の母親である女優ヌンヒ、その兄である老ヌンビョ、その元部下で猟仲間のジュング、ジュングの長女でエギョンの姉エギョン。日本の小説家塚口、主人公の母親である女優ヌンヒ、ドクトル姜、看護婦いさ子などが現れる。

要するに、みんな親戚知人で顔なじみのような顔ぶれ。

登場する人物は特殊な場合を除き下手前から登場し、上手奥に去っていく。
(逆側から見れば、上手奥からやってきて、下手手前に去っていくわけだ)
これは、この舞台の最も大きな仕掛け(ガジェット)だと思う。このパターンは舞台全体を貫き、後半ではハイスピードの追いかけっこがこの一方向で目が回るスピードで繰り返され、笑いと徒労感を産んでいく。
逆側から人物が現れるのは非常に少ない。日本からソン・スニムが帰って来たときとか、ミョギが志願兵とされて徴兵されて行く時とか、特別に異質な場面でのみ使われたように思う。

面白いのは、基本動線である舞台の対角線上の真ん中に、例の半分埋まった洋服ダンスがあること。動線をたどると、みんな斜めのスロープでタンスを上り、高いところで地面に降りる。タンスの角のてっぺんで、安っぽいラブシーンが行われたり、服毒自殺が行われたり、なかなか使われるのだ。(老人はタンスを上らずに迂回することが多かった気がする)

【「喜劇」だったんですね・・!】

勢い込んで見始めたものの、正直なところ前半、やや退屈したものである。
人間関係を覚えきるのに時間がかかったし、またその登場人物のやってることがすべてどこかで見聞したことのあるような陳腐なものであり、「1930年代、日本統治下の朝鮮」という特殊で緊張した感じがしない。登場人物たち自身になんら危機感がない。

私の気持ちがパッと温まったのは、日本の小説家、気障で女好きの塚口(佐藤誠)がマイクを手にセリフをしゃべり始めた時。
バックに「Surface Pro 3」のCMでいつも流れているあの曲・・・・娘に聞いたら韓国の2NE1(トゥエニィワン)の『I AM THE BEST』と言う曲なのだそうだ・・・が大音量で流れ始めた。

塚口は、日本の文学はある意味で壁にぶち当たっていると言い、白々しいことを言ってスニムの心をつかもうとする。
塚口「だから今はみんな朝鮮半島や外地に関心を持ってるんですよ」
スニム「私たちはみんな東京に行きたがってるのに・・・」
塚口「朝鮮の人達は、自分たちが持っている宝物の価値に気付いていないんだなあ」

これを、めちゃくちゃインパクトの強い『I AM THE BEST』が流れる中、マイクを持って語る。

遅まきながら、「なあんだ!これ、笑って観ていいんだ!!」と気づき、あとは舞台に楽しんで乗っていけました。

チェーホフの『かもめ』、まともに読んだことないんですが、あれ作者が「喜劇」としてるんですね。悲劇的な終わり方をするのに、なぜ?
『100分で名著』等によると、本人たちにとって重大事でも俯瞰すると喜劇。みたいな意味。
それはそうですねえ・・・。
『ロミオとジュリエット』だって、恋人が死んだと早とちりして後追い自殺をするバカバカしい話。本人たちが大真面目だからこそなんだか可笑しくて、「これって喜劇にしたらいいのに・・・」と思ってました。

多分観たのが初日だったせいもあり、不発だった笑いのネタが多かったのかも・・・。
最終日近くで観た友人に聞くと、もっと受けていたらしい。
韓国公演でも、『冬ソナ』や『雪の華』(中島美嘉の曲で、韓国で大ヒットしたという)がかかると、(ベタですが)ドッカンドッカン大受けだったそうですから・・・・。

笑って終われない内容も含まれているのですが、「おはなし」の部分では大笑いして、その後ラストにもつれこまないとイケない舞台だったと今では思います。

前半も、ラブシーンが見られていて中断するとか、母親のおせっかいな「マクアキコージョー」に腹を立てて公演を中止してしまう「本格芸術病」の息子とか、もっと笑わせてくれた方があとあと効果的だったと思う。
笑っちゃうような思い出がよみがえると余計悲劇が強まりますから・・・。

アフタートーク(また聞きです)の多田さんの弁によると、ところどころ「マイクを使って話す」理由は「強制的にものを聞かせる、権力的なイメージがあり、また見た目がバカっぽいから」という、実に過不足のない説明があったようです。

プロフィール
  • プロフィール画像
  • ニックネーム:きのこ
読者になる
最新コメント
きのこ
» 2015年1月期ドラマスタート(前半戦) (2015年01月27日)
nemo
» 2015年1月期ドラマスタート(前半戦) (2015年01月25日)
バナー(持ち帰りOK!)
陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜
陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜
2015年01月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
P R
旧館
としずきん妄想:「新選組!」再鑑賞日記
月別アーカイブ
ブログポリシー
コメント・リンク・トラックバック大歓迎です。過去記事へのコメントにも喜んで飛んでいきます。スパムに関しては予告なく削除させていただくことがありますのでご了解ください。
トピック別索引
居眠り磐音
サルとバイオ
聖書・宗教
岸田秀関連
帰ってきた時効警察
風林火山
華麗なる一族
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
ダイエットスルルティー
期間限定特別キャンペーン中!
お友だちのお店です
サンウィッチハウス チーズアンドオリーブ