通し狂言『染模様恩愛御書〜細川の血達磨〜』A
さて、前記事
『染模様恩愛御書』についての感想とは若干離れていくと思いますが、この舞台を観た後でいろいろ思ったことを書いてみたいと思います。
この舞台から、久々にインスピレーションを頂きましたので・・・。
BLについての話が苦手な方は、スルーしてください。
読者さんたちの多くにげんなりされるのはまことにつらくもあるのですが、「プラトニック・エロスを求めて迷想する」は、もともとこういうことなので、火に油を(水でも)注ぎこんでくださるご意見大歓迎です。
【二人の恋は衆道か自由恋愛か?】
『染模様恩愛御書』は、100年以上もの間、まともに上演されなかったということです。
4年前に今回と同じ染五郎さん愛之助さんのコンビで日の目を見、好評を得て今回東京公演にこぎつけたものです。
しかし、テーマやストーリー的には若干こなれていないというか、あれこれ分散している感じもするんですね。
衆道、親の仇討ち、命がけの忠義譚。
もちろん一番のウリは「美しき衆道」でしょう。
東西の花形若手役者、染サマ愛サマを迎え、腐っていても腐っていなくても女子には心躍るものがあるのでは。
さて、この「衆道」ですが。
公式やパンフレットの解説等を読むと、
衆道とは単なる男色ではない。武家のたしなみ、少年を一人前の武士に育てるためでもあった。信長が森蘭丸や前田利家に対したように。(また薩摩の郷中教育のように)・・・とか書いてありました。
ふーん、そうなのかなあ・・・と思って虚心に見たのですが、しかし数馬に恋する友右衛門の衆道(恋)は、どう見ても「自由恋愛」です。
江戸以前の『葉隠』にも公認されている日本古来の「美しき衆道の世界」というのは、武士道の中にあってこそ、だと思うんですよ。軟弱を廃した尚武の気風を養うのに役立ったと言うし。
なのに染五郎さん演じる大川友右衛門は、こちらがあっけに取られるほど、ただ純粋に数馬に一目ぼれする。
この時点では友右衛門は数馬の名前も身分も知らず、ましてや自分の思いが受け入れてもらえるかなんて全然わかってないわけです。それなのにこのお小姓に恋焦がれ、何もかも捨ててしまう。
なんと主家も捨てちゃう。家族(妹)も、武士の身分も捨てちゃう。
「えっ?ウソ!いいの?バカじゃん??!!」
・・・と、正直私は思いましたね。そう思った方も多いのでは。
でも、その底抜けの明るさが、純粋でいやらしさを感じさせない。
チャーミングで温かい笑いを誘ってました。
私のイメージしてきた「衆道」の発端は、
●主君と草履取り(小姓)との間などに自然に生まれてくる。
●武家集団、また藩の子弟教育のための少年集団のなかで、自然に美少年がもてはやされ、それを争奪戦の末に得る。
・・・ような感じでした。
衆道を男の勲章、武家の嗜みのように感じる気風があるのではと。
しかし友右衛門は一般的なら、愛する男のそばに居たいがために武士の身分を捨ててしまう友右衛門は浅草寺の参詣の折りに見かけ、雷に打たれたように恋に落ちる、「ボーイ・ミーツ・ボーイ」型。
この時の友右衛門は、性的意図(数馬をモノにしてやろう)はあまり感じられないんですよね。ただ好きで好きで、いつもそばにいたい、できれば気持ちを伝えたいと、それだけ。
【『真夜中の弥次さん喜多さん』にリンク】
よく知っているわけではないのですが、これは数多ある「衆道物語」のなかで結構異色じゃないでしょうか。
衆道のメリットしてよく言われる「年長者による年少者の教育」などという側面はまずない。
「めっちゃすっきゃねん」で「恋は盲目」。
時代に合わせたのかもしれませんが、武士を捨てたのは原作段階でも一緒ですし。
これひとつでも、「ちょっと休憩」の総裁副長対談で語られていたように、「衆道歌舞伎」と言うよりは「ボーイズラブ歌舞伎」に近いような気がしました。
そして瞬間的に想起したのは、映画『真夜中の弥次さん喜多さん』の二人(弥次さん=長瀬友也、喜多さん=中村七之助)です。
私の最も愛するクドカン映画。
東海道をお伊勢参りのために旅する、弥次さんと喜多さんはホモだった、という話です。
しりあがり寿の原作漫画も読んだのですが、映画の方がずっと好き。
この弥次さんは強烈におバカで純な江戸っ子で、友右衛門にピッタリ。
(染五郎さんもずいぶん友右衛門のおバカっぷりを披露してくれましたからね。)
喜多さんは、一見おとなしめの「受け」なんだけど、結構魔性のオトコでもあります。ホモ一本槍の弥次さん(かつて妻帯していたが)に比べ、時々バイセクシャルで女にも惚れるし、精神不安定な破滅型でもある。
愛之助さんの演じた印南数馬は、そこまで複雑なキャラではないけれど、どこか合い通じるような気もする。
はっきり描かれてはいないけれど、腰元あざみに狂恋されるだけでなく、細川公にも愛されていたんじゃないか、また色悪の横山図書も数馬を狙ってたんじゃないか、などと私は思ってしまった。
無垢で初々しいのに、その美貌に誰もが道を踏み外しそうになる・・・かも。
【恋愛進行のプロセスを仔細に見る】
ここで、『染模様』の筋に沿って、その後の二人の恋愛の進行を紹介させてください。
いくつか疑問に思うところがあるんじゃないでしょうか。

武士を捨てた友右衛門は一介の小者として、細川家の玄関番(かな?)に就職し、数馬にラブレターを渡して思いを告げる。

しかし数馬も実は「一目見たときからお慕い申し上げておりました」ということで、「部屋に忍んで来てください」というのはお小姓数馬のほうなんですね。純に見えてもなんという魔性を秘めた役。

ここにおいて、二人とも未体験の世界であろう衆道の交わりに進んでしまう。
口を吸われ、胸に手を差し入れられ、うっとりと数馬が友右衛門に身を預けるところまではエロティックですが、ふんどし一丁で抱き合うシルエット・・・は、もう笑いどころです。
とにかくアッという間にあっけなく相思相愛の恋が最終段階まで成就してしまう。