直木賞のひとつ前に 『リアル・シンデレラ』より

January 21 [Tue], 2014, 8:12
作者の姫野カオルコは、直木賞の候補に何度も名前があがっているよく知られた作家である。『リアル・シンデレラ』(姫野カオルコ、光文社、2010年3月19日)も、2010年の直木賞(第143回)の候補になっている。それほどの作家なので、近くの小さな書店にも置いてあった。
 最初は、カバーのデザインに「さよひめM」が使われていたことを見つけた。ただそれだけだったので、手に取ることもなく、買い求めもしなかった。ただ、「さよひめM」の使用例として、記憶にとどめていただけだったのだ。


●『リアル・シンデレラ』

 つねづねカバーに欣喜堂書体が使われていたら、「もしかして本文でも…」と思って手に取ることにしている。ほとんど肩すかしだったので、おそらく「さよひめM」が本文に使われることは想像しなかったのだろう。本文書体を確かめることを怠っていた。
 しばらくしてから市立図書館でこの本に再会した。そのときもまだ本文書体を気に留めることはなかった。なにげなくパラパラとページをめくってみた。多くの書籍と同じように、本文は近代明朝体なんだなと思った。
 ところが、途中から「まどか蛍雪M」が本文に使われているではないか。一冊丸ごとというわけではないが、半分ぐらいのページは「まどか蛍雪M」で組まれていたのだ。近代明朝体で組まれたページと「まどか蛍雪M」で組まれたページが交互にでてくる。ちょっと驚いた。そしてうれしくなった。



私がはじめて「まどか蛍雪M」が本文に使われているのを見つけたのは、この『リアル・シンデレラ』だった。約物を近代明朝体と同じものにし、見た目の文字サイズを同じにするためにか「まどか蛍雪M」を均等に詰めていることに書体設計者としては違和感があるが、それでも「まどか蛍雪M」のページのほうがしっくりくると思ったのは私だけだろうか。



 私はこの本を借りてかえった。でも記念に現物を持っていたいという衝動にかられた。その日のうちに、この本を注文していた。

姫野カオルコは、2014年1月、5回目の候補となった『昭和の犬』によって、ついに直木賞(第150回)を受賞した。
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