食べることで自立する、日本の食。

January 13 [Mon], 2014, 8:39


 農林水産省の新聞広告で、株式会社博報堂プロダクツの制作によるものだ。3連作になっており、2008年2月25日、27日、29日の朝刊に掲載された。「海外へ依存する食卓のリスクをおさえ、日本にある食材を見直そう」というキャンペーンのようだ。当時、農林水産省では「食材の未来を描く戦略会議」を開催して、国民の意見を募集していたようだ。あれから数年経ったが、どうなったのだろうか。

  Vol.1 未来の食のために、今、できることがあります。
  Vol.2 和の食材だから日本産、というのはほぼ思い込みです。
  Vol.3 おいしいものは、近くにもあります。

 このキャッチ・コピーもそうだが、ボディ・コピーにも選ばれたのは「さくらぎ蛍雪M」である。一読者としてみて、ここは明朝体でもゴシック体でもしっくりこない。「さくらぎ蛍雪M」は肉筆に近く、かつ冷静に訴えかけてくる書体だ。強さもある。いい選択だったと思う。
 この書体、筆書系というカテゴリーに分類されてしまうことがある。そのカテゴリーは、一般的には古くさいというイメージでとらえられている。ところがこの新聞広告のボディ・コピーから、古くさいというイメージは感じない。
 和字書体「さくらぎ」は、ずばり大正時代の木版教科書の書体である。漢字書体「蛍雪」はさらに古く、中国・清の時代、日本で言えば江戸時代に生まれた書体である。活字書体として再生したものが、そういった時代性を超えて受け継がれていくというのは心地よい。
 日本産の書体を、食材として「文字の食卓」に多く提供できればと思う。栄養豊かな本文書体の選択肢を増やしていきたいものである。

 仮に、このキャンペーンのCFが作られるとして、このボディ・コピーがナレーションとして朗読されるとすれば、誰が起用されるのだろうか。
 正確さを要求するならアナウンサーだ。アナウンサーだったとしても性別や年齢によっても違ってくるだろう。俳優やタレントの方が、感情たっぷりに読むのかもしれない。もちろん彼らもプロだから、基本はしっかりと踏まえている。
 新聞広告の場合の書体の違いも同じことなのだと思う。ナレーターが選ばれるように、書体が選ばれている。「さくらぎ蛍雪M」をあらわすナレーターは誰なのだろう。どのナレーターが「さくらぎ蛍雪M」にあっているのだろう。
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欣喜堂は活字書体設計をおこなっている会社です。日本・中国・欧米の書写と印刷の歴史にはぐくまれた活字書体の開発をめざしています。
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