【跡ジロ】はぐれ羊純情派/伝説の木の下で

November 17 [Thu], 2016, 18:07
「日吉、日吉!これ、見てみそ!」

 図書室で騒ぐ不埒な輩。
 無視しようにも、明らかに呼ばれているのは自分だ。

「…何ですか。騒がないで下さい、向日さん」

 俺は、ゆっくりと、一応、冷たい目で、その人物を見た。

「眼鏡かけてる日吉も、カッコイイぜ?」

 明らかに、呼びかけてきた内容と違う事を言われ、俺は、古典的な表現の、眼鏡がずり落ちる、が実現出来そうな気がした。

「あ…でさ、これ見て欲しいんだけど」

 向日さん(2人っきりの時は、岳人さんって呼んでるが)は「氷帝学園の伝説」とかいう、文芸部だかどこかが作ったっぽい本を出してきた。

「…何ですか、その安そうな本」

「図書室の1番端っこの棚に入ってた。で、これ見てみろって!」

 ぱらぱらとめくって、見出しが「伝説の木」と書いてあるところを俺に見せた。

「……これが?」

「ちゃんと読むと書いてあるんだけどさ、うちの学校、伝説の木があるんだって」

 楽しそうに、笑う。

「この木の下で告白して結ばれたカップルは、永遠に幸せになれるんだって!」

「…それが、どうかしたんですか?」

「…日吉…お前の趣味が、学校七不思議系の本読むこと、っていうから…気に入るかな〜?って見つけたのに…」

 くるっと後ろを向いて、向日さんはつまらなそうに言った。

「…覚えててくれたんですか」

「もちろん。だって、俺お前の彼女だろ?」

 男のクセに、彼女だなんて。
 まぁ、笑いかけたその顔は、女に見えなくもなかったけれど。

「まぁ、そうですね。強引ではありましたけど」

「だって…俺が卒業したら、簡単にお前に逢えなくなっちゃうしさ…今のうちに告白しなきゃって思ったんだよ」

 俺は、図書室の中に、他に人がいない事を確認した。
 机の上に座っている向日さんを抱き寄せて、前髪を掻き揚げて、額にキスをして。

「……!?」

「……もぅ、いいじゃないですか。俺はあなたの気持ちを受け入れたんですから」

 ビックリしている向日さんは、俺の顔をじっと見つめた。

「…日よ…」

「がっちゃん、補習終わったよ!!」

 がらりとドアを開けて、芥川さんが入ってきた。

「…っ!!!」

 びくっとして、向日さんは芥川さんを振り返った。
 俺は、いつもとかわらないように、冷めた目で芥川さんを見る。

「何だよ、ジロ〜!今いいとこだったのにィ」

「…あ、ゴメン」

 芥川さんは、ちょっとだけ申しわけなさそうに謝った。

「……じゃあ、図書室閉めますよ」

 俺は向日さんの頭を軽く叩いて立ち上がった。

「ん…ゴメンな、日吉。図書委員だからって…付きあわせて」

 ぴょん、と机から飛び降りた向日さんは、芥川さんを小突きながら言った。

「…いえ、色々いい思いをさせてもらいましたし」

「……もとはと言えば、このジローが補習なんかに引っかかるからいけないんだ!」

「…だって…寝てるだけなのにさぁ…テストとかは全然問題ないのに、先生が補習出ろって言うんだもんよ」

「お前が寝なきゃ出ろなんて言わないだろ!!」

 芥川さんと向日さんは、親友らしい。
 よく、犬がじゃれているような感覚で笑いあってる。

 俺はそれを微笑ましく思いながら、暗くなり始めた外を見た。

「…秋だから…陽が早く落ちますね」

「…ホントだ。早く帰ろうぜ、日吉、ジロー」

 俺達は図書室を出た。




「…がっちゃん、その本何?」

「あぁ、これか?図書室にあったんだ。読む?」

「マジマジ?面白そ〜!」

 芥川さんは、向日さんから本を受けとって、楽しそうに笑った。

「…そういえば、今日、跡部部長は来てましたか?」

 廊下を歩きながら、2人に尋ねると、向日さんは首を振った。

「俺はクラス違うからわかんねぇや。ジロー、同じだろ?」

「ん〜…来てたよ。生徒会の引き継ぎが何とか、って忙しそうだったけど。そういや、今日は話してないな…亮ちゃんとは話してたみたいだけど」

 芥川さんは、首をひねっていた。

「今日は、いつもと跡部が何か違ったんだよね…」

「そうですか…」




 歩いていると、跡部部長が向いから歩いてきた。

「…あ、跡部〜!」

 芥川さんが、嬉しそうに跡部部長に近寄った。

「…ジロー…」

 跡部部長は…何だか、嬉しそうな、嬉しくなさそうな顔で芥川さんを見る。

「生徒会で残ってたの?」

「…あぁ……お前は補習だろ?」

「うん」

 俺と向日さんが近付くと、跡部部長は言った。

「月曜、部活に顔出すからな」

「はい。ありがとうございます」

「…じゃあ、俺はミーティングルームに忘れ物をしたから…」

 跡部部長は、そう言って新館に向かった。

「…じゃあ、帰りますか」

 向日さんは、歩き始めた。
 芥川さんは、少しだけ跡部部長の後姿を見つめていたが、すぐに歩き始めた。




 ……芥川さんは、跡部部長が好きなんだと思う。
 跡部部長もそうだと、俺は思う。
 周りから見てそう思うのに、あの2人は付き合ってはいない。

 常識的に考えて、おかしい事だとは思うが…でも、俺は受け入れられた現実。

「……伝説の木の下、か」

 俺は、小さく呟いた。
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