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March 14 [Mon], 2005, 0:33
古都アルテの広場にそびえる何層もの城壁の一番外堀に、
兄が高く紀律として立っているのを遠くから認めた。
大勢の兵を眼下に勇ましい言葉を投げる兄は、こちらに背を向けている。
その後姿を横目で見つめながらレイは、思わず駆け出して
兄と共に立ちたい欲望につかれていた。
もっともいつでもその欲求は未遂に落ち着くのではあるが。

―――兄と己とでは、身分が違いすぎる。

その思いがいつの間にやら「事実」に摩り替わってレイを君臨したのは、
まだ個性や言動が他者に与える影響、それが微小であった時分とあったと思われる。
そうでなければレイの取り巻きの驚きと噂は免れなかった筈であろう。
唯一の肉親、傍らにいて仮面を外すことの出来た存在であった兄にまで、
レイは突然距離をおき、絶対不可侵の領域を広く設けたことに、
気付き気遣う者がもっといた筈であるのだから。
ともあれ御年19となる頃には、レイは輝かしい兄からでさえ
すっかり遠ざかるようになっていた。
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