あつーい!三島です
夜中は風があったのに、夜明けと共に去りぬされました
というわけで、レイフレ新刊のサンプルです。ぴくしぶにあげたのと同じです
ひびかなはもっとケンカしてくれというのが最近の夫婦に対する願いです。エレン挟んでイチャイチャしてるのも良いけどね
ラノベっぽくしてやんよ!って意気込んだらすげー恥ずかしい話になりました。何がいけなかったんだろう…
盆休みは奈良と大阪行ってました
後半はほんとずっと遊戯王ばっかやってました。まじデュエルおもしろいよ!みんなやろうよ!!
アニメの最終話も見せてもらいましたが、うっかり涙ぐんでしまったのは秘密です。王様ァァァァ!!
あと友人の持ってた海外グッズ見せてもらったんですが、なぜこれを日本で売らぬのかと恨みたくなるぐらい出来がイイのばっかですね。遊戯さんのプレイマットとスリーブわたしもほしい
盆休み今日で最後なので、コミケ四日目とか洗濯とかしてきます
■ 君の名前を呼ぶときは
このところなかったから、すっかり忘れていた。
どうして、忘れられていたのだろう。勢いのついた言葉が、それが悪意のあるものだったときが、どれくらい、人を傷つけるものなのか。どれくらい、自分にもはね返ってくるものなのか。
◇
「響なんて、いなくなっちゃえばいいのよ」
引きつったように歪む、あの子の顔。悔しくて悲しく憤って、すぐに感情が顔に出るから、本当にわかりやすい。わたしの顔は、どうなんだろう。たぶんきっと、とても醜い顔をしている。笑ってるかもしれない、泣きそうになってるかもしれない。けど鏡でたしかめたいような顔でないことは、たしかだ。
どろどろする。むかむかする。熱く真っ黒く渦巻く何かがどっと胸を突き破りそうになって、わたしは息を吐く。
顔を会わせれば、つまらない意地の張り合いで、ひどい言葉をぶつけ合った日々。それはもう過去のことで、今はそうじゃなくって、そうじゃないはずで、伝えたいことは、こんなじゃないのに。
「もう見たくない」
喉が痛い。いっそ嗄れちゃえば、いいのに。
◇
薄く、口元だけで笑ってるように見える、あの子の顔。あたしの言葉なんて痛くも痒くもないって、平気そうにしているけど、本当はそうじゃないって、あたしは知ってる。だって昔から、そうだった。どんなにさびしくても苦しくても辛くても、奏は絶対に泣いたりしなかった。笑う顔を作るのが、とても上手くて、巧妙で、それがあたしは面白くなくて、その面白くなさだけが今異様に込み上げて、唇を噛みしめる。こぼれそうになる、のを、こらえる。
はずが、あたしのばかな舌は、あたしを裏切る。
「奏なんか、死んじゃえ」
顔色。元々白い肌が余計に白くなって、あたしは自分の舌を噛みちぎってやりたくなった。
「最低」
なんて。逃げ出したわたしが、最低だ。
◇
風にざわつく木々のきしみに、わたしはのろのろと顔を上げた。
さっきまで広がっていた青空は、いつの間にどこへ消えたのだろう、すっかり厚い黒雲に覆われて、重たげな夕立の気配を濃厚に漂わせていた。一人残された路地から大通りの方をすかして見れば、忙しげに歩く人たちの姿がいくつも行き交っている。
帰らなきゃ。
そう思うのに、足はその場を動かない。おろしたてのサンダルで擦れた足指の痛みが今さらのようにやってきて、先ほどの出来事を嫌でも思い出させる。
雨雲はゆっくりと、けれど確実に、この町を覆うように近づいてきている。帰ろう、と身体に念じてみせるのだけれど、結局わたしはつま先一つ動かせずに、その場に立ちつくしたまま、唯一自由に動かせる首をめぐらせて、大通りとは反対の方へ目を向けた。
響が立ち去ってから、どれくらいの時間が経ったのだろう。いやそれよりも前、朝に広場で待ち合わせをしてからは、どれくらい? たったどれくらいの時間で、わたしはこんなにも感情の両極端を行き来したのだろう。
まるでタイムマシンに乗ったみたい。朝、ちょっと眠たげな響におはようって声をかけようとして、でもいつものラフな服装じゃなくって、大人びた服だったからはっとしちゃって、息を飲んだこと、でも口を開けば「もうおなか空いちゃったよぉ」っていつもの響で思わず笑っちゃったこと、なんかが、もうずっとずっとむかしのことみたいに思える。むかし過ぎて、夢みたいに思える。いっそ夢だった方が、マシかもしれない。
実際のわたしたちはいまだにケンカしつづけていて、仲良く二人で買い物に出かけるなんて、ありえない。
その方が、こんな不幸のどん底からさらに飛び降りたような気持ちには、ならなかったんじゃないかしら。どん底もどん底、空っぽになっちゃったような、気持ち。
空っぽ。今のわたしにあるのは、たぶん心とか感情よりそういうものに近いと思う。痺れたような空洞がぽつんと胸に広がって、頭から足の先まで、しわしわにさせていくみたい。
「見ーちゃった」
そんな状態だったから、油断していた。
聞き慣れた、少女の声。酷薄な笑みを含んだ、いやらしい、声。
「わたしがあんたたちの願い、叶えてあげる……!」
「セイレーン!」
わたしが振り向くのと、強い光が周囲を包んだのは、同時だった。
びり、と鋭く電流が走ったような痛みが全身を覆う。そして耳障りな高笑いを最後に、わたしの意識はあっけなく途切れた。
◇
重たくなった足を引きずりながら自分の部屋に帰ると、出かける間際まで選んでいた服たちがベッドの上に残っていて、余計に気を滅入らせた。ハミィたちが出かけていて不在なのが、幸いだった。こんなひどい顔見られたら、どうやって取りつくろおうか、そんな気力もない。
いつもは服になんて頓着しないあたしだけど、今日は、念入りに着ていく服を考えたのだ。ハミィに愛想を尽かされるくらい、鏡の前でばかみたいに何度も何度もいろんな服を合わせて合わせて、結局待ち合わせの三十分前になって決めた黒のサマーセーターは、前に奏が、響は黒が似合うね、って云ってくれたから。
この服を着ていくときは、まさかこんなみじめな気持ちで帰ってくるなんて、思ってもみなかった。
どうして、こんなことになっちゃったんだろ。
ベッドに身体を放り出すようにして寝ころがりながら考えてみる。散らばってた服が下敷きになったけど、構ってなんかいられない。
待ち合わせして、しばらくは、いつも通りだったのだ。奏の新しくおろしたっていう編み上げのサンダルはかわいくて、むこうもあたしの服が素敵だって云ってくれて、お互いに照れくさそうに笑いあったりとか、天気が良くてよかったねとか、海の方でお祭がやってるらしいからちょっと見に行こうか、とか。気忙しいあたしを奏がとがめたり、逆にのんびりし過ぎな奏をあたしが急かしても、それらはいつものことだったから、ケンカの原因になんてならない。
一つ。思い当たるのは、奏が街頭で演奏しているエレクトーン奏者の前で、じっと聞き入っていたときのことだろうか。聞き入る、というか、まるでその演奏をきっかけにして他のことで頭がいっぱいになってしまったみたいだった。
あのときから様子が変だなと思っていたら、そのうち、笑って聞き流していたことにも突っかかってくるようになって、それが積み重なって、結局あの口論まで発展してしまった。
「嘘だよ」
つぶやいてみる。さっき云ったことなんて、全部全部嘘に決まってる。そんなの誰よりもあたしがわかっているのに、どうしてあんなことが云えちゃったんだろう。今はこんなにも簡単に云えるのに。今は誰にも伝わらないのに。
しんと静まり返った部屋。ママは海の向こう側、パパは防音室にこもりきりだから、家の中は本当に静かだ。小さい頃はそれが嫌で、さびしくてたまらなくて、でも子ども心にさびしいなんて駄々をこねて両親を困らせてはいけないというのはわかっていたから、あたしは口をつぐんだ。さびしいんだよ、ってその一言が云えないなら、全部だまっていればいいんだって、自分にそう云い聞かせたら、何も云えなくなってしまったのだった。ほんの短い間のことだったから、これはたぶん、パパもママも知らない。
奏はすぐに気付いた。どうしたのってびっくりしていたけど、あたしがあいまいに笑うと、それ以上は何も聞いてこなかった。ただあたしがひとりにならないように、いっしょにいてくれた。今では信じられないけど、幼いころは奏の方が活発なところがあったから、冒険にいくのよ、なんて大まじめに云って、町中を探検してまわったりした。調べの館を知ったのも、このときだった。
やねがあるから、ここ、住めるね。
ピアノの下にもぐりこんで、家から持ってきたお菓子を食べながら、奏は小鼻をふくらませた。
住む?
頓狂な思いつきにあたしは目を丸くしたけど、奏は生真面目にうなずいて、
そしたらずっといっしょでしょ。
って答えた。何の疑いもなく、確信しきって。あたしは胸がつかえて、猿みたいに赤い顔で口をぱくぱくさせた。ちがうよ、って思った。ずっといっしょなんて、ありえないんだよ、あたし信じられないんだよ、って。
でも、どうしようもなく、うれしかった。そのうち涙がぽろぽろあふれて止まらなくて、奏はあわてて、うたおう、ってあたしの手を取って、歌いはじめた。うたってたらね、かなしいきもちなんてどっかいっちゃうんだよ、って、それは幼稚園で先生が云ってたのとまったく同じだったから、あたしは噴き出しちゃって、泣き笑いの顔で、いっしょに声を張り上げた。
結局その声で所在が知れて、行方不明騒ぎになりかけていたわたしたちは奏の親御さんにみっちり怒られた。怒られたけど、あたしは知らせを聞いたパパが大事な仕事があったにも関わらず、いつも洒脱に着こなしているスーツを乱しながら迎えに来てくれたことで、自分はいらない子なんじゃないのかなって思っていた不安をぬぐい去ることができた。奏は主犯扱いにされて、夕ごはんも抜きにされたけど、よかったね、って云ってくれた。
そうだ。思い出す。
ごめんね、って謝り倒すあたしに、奏はだいじょうぶだよっておなか減ってるのやせ我慢して笑いながら、指と指をつないで、云ったのだ。
いいのよ。ひびきがさびしいときは、わたしすぐそばにいく。やくそくする
……あたしもやくそくする。かなでのこと、これからはぜったいぜったい、まもるよ
身震いしてはね起きた。約束、守らないといけない。じゃなくて。守りたいんだ、あたしが。その気持ちは、ずっと変わらない。
「ただいまニャ〜、ってあれれ? もう帰ってきたのかニャ?」
開けていた窓から、ハミィがフェアリートーンたちを連れて、顔を出す。
「ううん」
あたしは首を振って、ドアのノブをひねった。
「もっかい、お出かけ!」
ほんとに響はせわしいニャ、ってハミィの声を背中で受けながら、いっこ飛ばしで階段を駆け下りる。家の外に出たら雨がぽつぽつと降り出してきたけれど、気にしてなんかいられない。
謝ろう。謝って、許してもらえないかもしれないけど、でもまず奏に会いに行こう。
全部は、それからだ。
だけどあたしが奏に謝ることは、できなかった。
「姉ちゃん、まだ帰ってきてないんだ」
不安そうに見上げてくる奏太に、あたしは何の言葉も返せなかった。