【健康オタク、末路へ】第42回:怪しいファミレスウエイター
2009年05月21日(木) 18時35分
「あ〜、喉が乾いたし、肩もこってきたなぁ・・・」
ハンドルを握りながら、森さんは左肩をいからせ「もめ」と言わんばかりにタケオに近づける。「眠いし、缶コーヒーかなあ?」
ついにタケオは切れた「いい加減にして下さいよ!」これ以上調子に乗らせてたまるもんか。
森さんはうすら笑いを浮かべて「そんなに怒んないでくださいよ社長。こうやって付き人兼運転手を引き受けたのも、オレの器の大きさがあってこそなんスから」
嘘をつけ。どうせあのハゲ社長に良い条件を出されたからだろう、カネの亡者め。
早起きも、積み込みのキツさからも解放されてオマエが得したんじゃないか・・。
「で社長、次は何処でしたっけ?『ファザーズ』って、え〜と本社の住所は?」
「地図は僕が見ますから、森さんは前を見て運転してくださいよ」
やれやれ、何でこんな奴がオレの運転手なんだ。判っていたなら断って、電車で移動するよ・・・。
助手席に収まるタケオの右手には地図が、左手には自然食品の販売を手がける有名企業のリストが握りしめられていた。
「ちょっと待ってください森さん、港区に向かうなら『E&E』の本社の方が近いですよ。とりあえず『ファザーズ』は飛ばしましょう」
森さんは苛立ったのか、急ブレーキを掛けた。クラクションを鳴らしながら追い抜く後続車に「うるっせええ!」と窓を開け叫んでいた。
「なぁ、タケオ社長よぅ」細い眉毛を逆ハの字につり上げながら、森さんはタケオに振り向いた。
「こんな事繰り返してもムダじゃねえか?」
急ブレーキに驚き、脈拍が上がりっぱなしだったタケオは、自身も感じていた思いを言い当てられた気分になり、更に心拍数が上昇してゆくのが判った。
「もう7軒目だぜえ。考えてもみいよ?俺らみたいな零細運送会社の営業を、誰がまともに相手をするかっつーの。あのハゲはそこんとこ全く判ってねえよな。お前もそう思ってんだろ?」
タケオは努めて冷静を装い「ムダじゃないですよ森さん、まだ半分も廻ってないんだし。それに、社長の指令を引き受けたんでしょ?そんな簡単にケツ割らないでくださいよ・・・」
森さんの細い眉毛がピクッと片側だけ動いた。「ケツを割る」がむかついたのか、アクセルを空ぶかし始めた。「わかったよう。でも、今日なんにもアポとれなかったら、お前あのハゲになんて言い訳するんだ?」
今度はタケオが返事に窮してしまった。ネガティブな会話を断ち切るべく、携帯を見る。「まあ12時近いし、森さんも疲れたでしょ?いったん休憩しましょ?」
*
2人が入ったファミレスは、居酒屋のチェーン展開している大手上場企業が「オーガニック&エコ」を掲げて、新たにフランチャイズ展開をしている和食レストランだった。
「でもよぅ、どーせ夜は居酒屋なんだろ?」ウンザリ顔で、野菜料理ばっかり載ってるメニューを閉じて、森さんがつぶやく「喰うモノねえや、よそ行かねえか?」
まだ都内では増えていないこのお店を見つけ、密かに喜んでいたタケオは「喰うモノ、あるでしょ森さん。有機枝豆だって旨そうだし、アグー豚のカツ丼何て旨そうじゃないすか」
その時、注文のボタンを押してもいないのに、タケオは背後にウエイターの気配を感じた。「ごご、ご注文宜しいでしょうか・・・?」
ン?聞いたことある声、そっと振り返る。
「あっっ!」「ゲッッ!」ガチャ〜ン!ジョワ〜・・・。
トレーを真上に挙げたウエイターは、乗っていた2つのコップを1m程舞い上がらせて、そのままホールの床に真直に落としてしまった。
ガラスの破片は飛び散り、コップ2杯分の水は1.5平米ほど床に広がっていった。
「す、すいません!お怪我はないですか!ズボン濡れましたか?」
「いや、良いけど・・。そんで、何でお前がここで働いてんだよ?」森さんは以外にも冷静だった。
近くにいたウエイターが持ってきたホウキとちりとりを受け取り、ガラスの破片をかき集めながら「来るなら、連絡下さいよ・・・」と、やっと聞き取れる程の声でグチりはじめた。
「そんなの知んねえよ轡田!お前、貿易会社の事務はどうなったんだよ?」
「リストラされました。でも、辞めたかったんで丁度いいです」ガラスの破片を片づけ終わった轡田は、立ち上がってタケオと森さんを改めて見た。
「ところで、お二人ともスーツなんか着て、営業活動ですか?」
「うるっせえよ!」慣れないスーツ姿を馬鹿にされたと思ったのか、森さんが声を荒らげた。
そんな森さんを轡田は相手にせず、タケオに振り向き「いや実は、ここで僕が働いてるのも、タケオさんの為なんですよ」
「はああ?オレの為?何でだよ」タケオは驚いた。「このファミレスになんかあるんか?」
「実はですね」轡田はタケオに近づき、小声で話し始めた。
「このお店はフランチャイズじゃなくて、直営店なんですよ。知ってました?」
「知らないよ。ソレがどうしたの?」
「あの有名な創業者の息子が経営してるんですよ。これ、どうゆう意味か判りますか?タケオさん」
「意味?」タケオはしばし考えた。でもサッパリ判らない。
コイツ、一体何を企んでいるんだ?オレの為に・・・。
(つづく)
ハンドルを握りながら、森さんは左肩をいからせ「もめ」と言わんばかりにタケオに近づける。「眠いし、缶コーヒーかなあ?」
ついにタケオは切れた「いい加減にして下さいよ!」これ以上調子に乗らせてたまるもんか。
森さんはうすら笑いを浮かべて「そんなに怒んないでくださいよ社長。こうやって付き人兼運転手を引き受けたのも、オレの器の大きさがあってこそなんスから」
嘘をつけ。どうせあのハゲ社長に良い条件を出されたからだろう、カネの亡者め。
早起きも、積み込みのキツさからも解放されてオマエが得したんじゃないか・・。
「で社長、次は何処でしたっけ?『ファザーズ』って、え〜と本社の住所は?」
「地図は僕が見ますから、森さんは前を見て運転してくださいよ」
やれやれ、何でこんな奴がオレの運転手なんだ。判っていたなら断って、電車で移動するよ・・・。
助手席に収まるタケオの右手には地図が、左手には自然食品の販売を手がける有名企業のリストが握りしめられていた。
「ちょっと待ってください森さん、港区に向かうなら『E&E』の本社の方が近いですよ。とりあえず『ファザーズ』は飛ばしましょう」
森さんは苛立ったのか、急ブレーキを掛けた。クラクションを鳴らしながら追い抜く後続車に「うるっせええ!」と窓を開け叫んでいた。
「なぁ、タケオ社長よぅ」細い眉毛を逆ハの字につり上げながら、森さんはタケオに振り向いた。
「こんな事繰り返してもムダじゃねえか?」
急ブレーキに驚き、脈拍が上がりっぱなしだったタケオは、自身も感じていた思いを言い当てられた気分になり、更に心拍数が上昇してゆくのが判った。
「もう7軒目だぜえ。考えてもみいよ?俺らみたいな零細運送会社の営業を、誰がまともに相手をするかっつーの。あのハゲはそこんとこ全く判ってねえよな。お前もそう思ってんだろ?」
タケオは努めて冷静を装い「ムダじゃないですよ森さん、まだ半分も廻ってないんだし。それに、社長の指令を引き受けたんでしょ?そんな簡単にケツ割らないでくださいよ・・・」
森さんの細い眉毛がピクッと片側だけ動いた。「ケツを割る」がむかついたのか、アクセルを空ぶかし始めた。「わかったよう。でも、今日なんにもアポとれなかったら、お前あのハゲになんて言い訳するんだ?」
今度はタケオが返事に窮してしまった。ネガティブな会話を断ち切るべく、携帯を見る。「まあ12時近いし、森さんも疲れたでしょ?いったん休憩しましょ?」
*
2人が入ったファミレスは、居酒屋のチェーン展開している大手上場企業が「オーガニック&エコ」を掲げて、新たにフランチャイズ展開をしている和食レストランだった。
「でもよぅ、どーせ夜は居酒屋なんだろ?」ウンザリ顔で、野菜料理ばっかり載ってるメニューを閉じて、森さんがつぶやく「喰うモノねえや、よそ行かねえか?」
まだ都内では増えていないこのお店を見つけ、密かに喜んでいたタケオは「喰うモノ、あるでしょ森さん。有機枝豆だって旨そうだし、アグー豚のカツ丼何て旨そうじゃないすか」
その時、注文のボタンを押してもいないのに、タケオは背後にウエイターの気配を感じた。「ごご、ご注文宜しいでしょうか・・・?」
ン?聞いたことある声、そっと振り返る。
「あっっ!」「ゲッッ!」ガチャ〜ン!ジョワ〜・・・。
トレーを真上に挙げたウエイターは、乗っていた2つのコップを1m程舞い上がらせて、そのままホールの床に真直に落としてしまった。
ガラスの破片は飛び散り、コップ2杯分の水は1.5平米ほど床に広がっていった。
「す、すいません!お怪我はないですか!ズボン濡れましたか?」
「いや、良いけど・・。そんで、何でお前がここで働いてんだよ?」森さんは以外にも冷静だった。
近くにいたウエイターが持ってきたホウキとちりとりを受け取り、ガラスの破片をかき集めながら「来るなら、連絡下さいよ・・・」と、やっと聞き取れる程の声でグチりはじめた。
「そんなの知んねえよ轡田!お前、貿易会社の事務はどうなったんだよ?」
「リストラされました。でも、辞めたかったんで丁度いいです」ガラスの破片を片づけ終わった轡田は、立ち上がってタケオと森さんを改めて見た。
「ところで、お二人ともスーツなんか着て、営業活動ですか?」
「うるっせえよ!」慣れないスーツ姿を馬鹿にされたと思ったのか、森さんが声を荒らげた。
そんな森さんを轡田は相手にせず、タケオに振り向き「いや実は、ここで僕が働いてるのも、タケオさんの為なんですよ」
「はああ?オレの為?何でだよ」タケオは驚いた。「このファミレスになんかあるんか?」
「実はですね」轡田はタケオに近づき、小声で話し始めた。
「このお店はフランチャイズじゃなくて、直営店なんですよ。知ってました?」
「知らないよ。ソレがどうしたの?」
「あの有名な創業者の息子が経営してるんですよ。これ、どうゆう意味か判りますか?タケオさん」
「意味?」タケオはしばし考えた。でもサッパリ判らない。
コイツ、一体何を企んでいるんだ?オレの為に・・・。
(つづく)
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