パンズ・ラビリンス

2007年10月06日(土) 15時35分


2006年度私的ナンバー1映画だった「トゥモロー・ワールド」
の凄まじい撮影、アカデミー賞撮影賞取らなきゃウソだろーって
思ってましたが、見事に逃して賞を持っていったのがこの作品。
いったいどんな凄い映画なんだろ?って心待ちに待つこと半年・・長い!
ようやく公開されたので初日に観てきました。

少女が魔法国の迷宮に誘われるファンタジーと聞いていたのに、
本作はPG−12指定。ん?
観たら納得、ものすごくヘヴィーなスペイン軍事抑圧の描写の
ウェイトが高い作品。その暴力描写がなかなかキツイ。
ファンタージ&バイオレンスという相反する要素のものが
展開上必然となっている構成がとてもユニーク。
独自の世界観による映像はとても素晴らしかった。
めちゃくちゃオリジナリティのある映画だと思います。
でも幻想的な映画を期待して行ったらうわぁ・・あちちっ!って
火傷しちゃうような重い作品です。
とても悲しい映画でした。

1940年代のスペイン。
童話が大好きな少女オフェリア(イバナ・バクロ)は母親に連れられて
新しい父親であるビダル大尉(セルジ・ロペス)が統治している
山奥の駐屯地に連れて来られる。母は妊娠しており、
自分の生まれた地でビダルが産ませようとして無理に呼んだのだった。
その地では軍が農民たちを抑圧しており、抵抗組織は山に籠って
チャンスをうかがっていた。
優しくしてくれるビダルの世話係の女メルセデス
(マリベル・ベルドゥ)と医師はそのレジスタンスの仲間だと
オフェリアは知る。
ある夜、大きな羽虫が彼女の前に現れると、突然妖精に変化して
彼女を村はずれの森の中へ誘う。そこには迷宮の入口があり
パンという名の半獣人からオフェリアは実は魔法の国の王女で、今から
課す課題をこなせば王女として国に戻れると言う。

どんなファンタジー展開なんだろ?って思って間もない冒頭、
ビダルが罪もない農民二人を残酷に殺してしまう場面で
まずドキリとさせられます。
もうとにかくこのビダル約のセルジ・ロペスが凶悪キャラなんですよ。
はっきり言って主演のオフェリア役の女の子よりも彼がメインの映画。
人間味ありそうだけど、めちゃくちゃ冷酷。
「さぁこれからいたぶるぞ」的な拷問前場面が何度も登場して
観客に緊迫感をつきつけられていく演出。そんなに直接的な場面は
無いものの、痛さを想像させるのがコワイです。
観てる人は誰しも彼に怒りを覚えるように作られている。

しかし口裂けた所縫うシーンとか普通だったら
手前で止めるような場面を延々描写するあたりが監督の
趣味なんだろうな〜。痛そうすぎて目そむけてしまったわ。
ロペスの強烈な怪演があるから、オフェリアのイバナ・バクロ
の儚げな女の子により一層感情移入してしまいます。
勿論彼女も素晴らしかった

ビダルの極悪非道な振舞いの現実をどんどん見せていって、
そこから抜け出せる唯一の道として明示される魔法の国への入口。
虫が変化する妖精のヴィジュアルがとても幻想的で楽しい。
そこだけでも見てて満足するような出来でした。
魔法の迷宮がらみの面々はかなりぐっちょぐちょ
な感じ。
自分虫たちがやや苦手なんで、
カエルの場面とかかなりキツかった。

オスカーと同時期の「インデペンデント・スピリットアワード」
(こちらも「トゥモロー・ワールド」もノミネートありで本作が
撮影賞を受賞)
の中継に監督のギレルモ・デル・トロが何度か登場してた
んですけど、見事にオタクっぽい感じのややキングコング以前の
ピーター・ジャクソンみたいな風貌。

宮崎駿監督にかなり影響を受けてるらしく、「千と千尋」あたりとの
類似性も指摘されてるようですけど、観ていて自分は去年の
テリー・ギリアムの「ローズ・イン・タイドランド」にテーマ的な
ものが似てるのかなぁと思いました。そうそう、
「タイドランド」+「麦の穂を揺らす風」みたいな印象。
「タイドランド」の現実逃避ファンタジーと、「麦の穂」のような
悲しくやりきれない現実。
二つの対比するものが上手く混在しています。
ひどい現実からの逃避によって浮き上がってくる夢の世界。
映画の中ではほんとに彼女の現実逃避なのか、それとも
それが真実なのかはあまり大きく明示されません。
ラストにちょっとそれと判る、いや解釈はどうとも取れる場面が
ある程度で、その辺は観客の見方に委ねている気がしました。

デル・トロ監督ってテリー・ギリアムやティム・バートンみたいに
自己のオタク趣味全開監督の第二世代って感じですよね。
彼らには無かったRPGゲームなんかの影響あるかなって思ったり?
アイテムのカギ探して扉開けたり、パンが「クエスト」を与えてそれを
クリアしたら次のステージに進めるとか・・まさにゲーム感覚だなぁと。
でもクエストは中ボスと戦わないであっさりクリア出来ちゃうんですよね。
そして映画のラスボスであるビダル大尉、これがどう考えても
スキだらけなのになかなか死ななず、クリア出来ないでイライラ
する作りになっております。(笑)
その割にはタイトルにあるような迷路、ダンジョンはほとんど
登場しなかったですね。むしろ
現実の世界と迷宮への入口全てが不思議に繋がっている感じというか。

ここ数年はメキシコが来ているのか、前述の「トゥモロー・ワールド」
のアルフォンソ・キュアロンは本作のプロデューサーでもあって仲良し
だとか。そして「バベル」のイニャリトウの3人でプロダクションを
作ったとか。メキシコ勢当たり年だったんですね。
アカデミー賞は結局作曲賞しか取れなかった「バベル」
撮影賞はゼッタイと言われたのにダメだった「トゥモロー・ワールド」
なんだかんだで3部門もダークホース的にさらっていったこの作品。
楽屋裏でキュアロンとイニャリトウが「なんだよお前!」
ってデルトロを羽交い絞めしてる絵が浮かびます。

個人的には、「バベル」よりこの映画の音楽の方が良かった気がする。
サントラ欲しいなって思ってます。
あの子守歌の物悲しい旋律なんて最高でした。
(米オフイシャルのトップページでほぼ全編聴けます。)
撮影賞はコレも最高でしたけど、やっぱり
「トゥモロー・ワールド」だったなぁ(まだ言ってる・・)

kazuponの感想ー★★★★

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