麦の穂をゆらす風

2006年11月22日(水) 1時56分


若者がハーリングを楽しむごくありふれた情景。
一転して女性が涙を流すやりきれない事件から始まるこの映画は
同じ女性の涙でエンディングを迎えます。
どの時代の争いも、泣かなければいけないのは
自分の家で家族と平和に暮らしたいとただ望む人たち。

「麦の穂をゆらす風」って詩的なんで
間違って恋愛映画だと思って観てしまう方もいるかも?
観たらびっくりですね、かなりヘヴィーな映画ですから。
この当時よく歌われた抵抗を歌う「レベルソング」
といわれる曲のタイトルだそうです。
公式に歌詞が掲載。↓

"The Wind That Shakes The bearley"


まさにこの詩、そのままのイメージの映画だと思いました。
「わたしは彼女に告げた 
 明日の早朝あの山へ行き、勇敢な男たちに加わると」

1920年、南側の街コークでアイルランドの独立を願う若者たち。
英国王立警察隊のブラック・アンド・ダンスが威圧的に
地元民を監視していた。
仲間の幼い少年ミホールは彼らに反抗的な態度をとったため、
家族の目の前で殺されてしまう。
そんな毎日に嫌気がさしていたデミアン(キリアン・マーフィ)
は医者になるべくロンドンへ赴こうとした矢先、列車の
運転手が殴られる現場に居合わせた事がきっかけで、リーダー格の
兄テディとともに独立をめざす戦いに身を投じることに。
やられたらやり返す、そんな報復合戦の毎日が続くが、その後
イギリスと講和条約を結ぶことになる。しかしそれは
アイルランドを完全な自由にするものではなかった。
受け入れて権力を持ち始めた兄と妥協は許せない弟。
兄弟は対立する立場になった。

王家衛(ウォン・カーウァイ)が審査委員長だった
カンヌ映画祭今年のパルムドール作品でしたね。
アカデミー賞やカンヌ映画祭で作品賞を取る作品はお気に入りに
なる事が少ないほうなんですけど、まずビジュアルありきで
ストーリーや人間ドラマは二の次!みたいな映画が多い
王家衛が中心になって選んだのは骨太のケン・ローチ作品。
「明日へのチケット」を観たばかりだったので、
ちょっと軽めの作風になったのかな?なんて思ってましたが
いやいや、重い重い・・激重の映画でした。

「父親たちの星条旗」とこの作品を続けて観ましたけど、
こういう作品は視点がどちら側にあるのかが気になってしまいます。
冒頭のブラック・アンド・ダンスの典型的に高圧的な男が
弟を惨殺する場面は誰が見ても悪魔にしか見えない鬼畜な描写。
その後拷問を受けるシーンなんかも
「シンドラーのリスト」のナチのような恐怖を感じさせます。
報復の襲撃で無差別に殺されるブラック・アンド・ダンス側の
兵士の日常や家族は全く描かれないので
ある意味不公平な映画かもしれません。
でも映画は戦いに身を投じる主人公たちが、行くところまで
いってしまう狂った面もちゃんと見せていきます。

やむを得ず密告した同郷人や友達を処刑する場面の
強烈にやりきれないシーン。身内を殺さないと前に進めない。
美しいアイルランドの自然を背景にしたケン・ローチの映像が
詩的になればなるほど残酷に感じられていきます。

デミアンとテディの精神的な信頼や尊敬を前半で強調させる事が
後半の矛盾を感じるケンカ別れを象徴させているのも
興味深かった。
デミアン、あの列車での事件に遭わなかったら、こんな人生に
おそらくならなかったんですよね。運命とは残酷です。

キリアン・マーフィくらいしか知りませんでしたが、
兄テディのポードリック・ディレーニーとダンを演じた
リーアム・カニンガムは特に印象に残りました。
あとあのシネードの母親とお婆さん!は地元の人を
使っているとか。彼女が焼かれたのに家から離れない!
という場面はリアルに悲しい場面。

映画のベースになっている20年頃のアイルランド問題は、
サワリくらいの浅い知識しか無いので、こういう映画の感想を
書くのは毎度書いてますが難しいです・・。自分なんて
どうしても客観的にしか見れていないと思いますし。
暴力には暴力で対抗しないと、ずっと負け続けたままで
貧しさを脱却するには戦うしか道がないというのは悲しいです。
こういうメッセージ性の強い映画を観ていると、
「目には目を!の争いごとは今も世界中で起こっていて
報復する事は何の解決にもならない」
ってまぁ月並みに思ってしまうんですけど、
ほんとにその身になるとどうなんだろうと。

例えばですけど、仮に自分の家の玄関の前に他人がゴミを意図的に
捨てていったとしたら多分すごく腹が立つだろうなと。次の日もまた次の日も。
警察に相談してもとりあってくれない。それでも同じ事を
数回やられたらついには、同じ目に合わせてやろうと思うかもしれない。
身近な問題におきかえると、
そう簡単に割り切れないのかもしれないと思ってしまいます。
もっと簡単に映画館のひじかけはどっちのモノ?とか(笑)
あれ、何書いてるんだろう・・。

精神的にヘヴィな場面が続いて
正直、途中逃げ出したくなりました(苦笑)
再度観るのはツライかもしれません。
でも観た後もいろいろと考えさせられる
素晴らしい作品でした。

kazuponの感想ー★★★★

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