ヒトラー最後の12日間

2005年08月29日(月) 18時55分


とても見応えのある力作です。
でも観終わった後、あれ?これって「スターウォーズ」シリーズで言うと
「ジェダイの帰還」、つまり最後の「エピソード6」だけを
観た感じでないの?と思ってしまいました。
怪物ヒトラーがもう「終わってる」頃のラストエピソードで、
人間的な弱い面を見せている。そして戦争は終わっていく。
となるとやはり気になるのはこの怪物の少年期を描く
「エピソード1」、
そして如何にして、歴史上最悪とまで言われる凶行を振るった
支配者になったかを描く「エピソード3」が観たくなります。
どうしてダークサイドに落ちたのか!?(笑)
ひょっとしたら一番有名な「エピソード4」「5」
はこのキャラクターで言うと「シンドラーのリスト」や
「戦場のピアニスト」になるのかもしれません。
イゥオークの映画みたいにスピンオフとして「ライフ・イズ・
ビューティフル」とか。いや、例えば「踊る」シリーズで
言うなら「容疑者室井慎二」のようにサブキャラメインにして
「宣伝大使ヨゼフ・ゲッベルス」なんて映画観てみたいですね。

ごめんなさい、脱線ですね。
出来はかなり良いと思いましたが、この監督の視点で
ヒトラーをとりまく過去の話も観てみたいと思ったんです。

それにしてもこれだけ共感出来る人物が出てこない映画も
珍しいかもしれません。
あまりヒトラーや取り巻き達については詳しく無かったので、
勉強になりました。

ヒトラーの秘書だった女性がかなり最近になってから、彼の最後の
日々を述懐した本を元にした脚本。
ドイツ人によるヒトラーを描いた作品って、意外にタブーになって
いるのか、これまでも数少ないらしく、
この題材に取り組むのはかなり大きなチャレンジだったと思います。
ドイツ以外の作品でホロコーストや第二次大戦でドイツが
出てくる作品って山のようにありましたけど、
大抵はステレオタイプのヒトラー像しか描かれていなかったですよね。
そういう意味では今回の映画化は意義あるものだと思いますが、
やはり気になるのはドイツの監督が描くその頃の話は
自国の黒歴史を客観的に見れているのかどうか?

↓下に続きます
正直な所、やはりやや「甘い」視点が気になりました。
これは意図的なものなんですが。
まず、劇中ドイツ軍が600万ものユダヤ人を殺した「事実」
やそれ以外の殺戮の事は会話の中でほんの少し出てくる
程度です。彼らにとってはそれほど大した事じゃないかのよう。
この事実を仮に知らないで観たとしたら独裁者はちょっと
キレ易いけど、人間的な面がある人物として見えますよね。

また、あくまでもヒトラー周辺からの目線で描いているので、
同胞でも反逆とみなされ処刑されたりするものや、ヒトラーが
市民の被害の事など「自業自得」だと思っている描写など、
「身内の迫害」がかなりクローズアップされています。
ドイツの一般市民や兵士たちも被害者であるという描写。

ドイツで大ヒットしたらしいですが、上記のこういう視点の
映画なので、他国が作る見るも無残なホロコーストを直接
糾弾したような作品で無いから受け入れられるのかなぁと思いました。

ラストに原作者である秘書の実際の独白映像が流れます
「その頃はそんな恐ろしい事が行われていた事は知らなかった
でもそれではいけないと気付いたんです」
という彼女の言葉が何となくそれでも自己正当化っぽく感じ
られたのは自分だけでしょうか。
ホロコーストの犠牲者のご家族とかが見るととても
腹立たしい映画になっているのでは?とも感じました。

ヒトラーが自決する間際の、もうどうしようもなくなってる
状況だけをあえて描いています。
よけい映画に出てこない恐ろしい「他者」への凶行について
この作者はどう思ってるのが知りたくなりました。

ヒトラーのブルーノ・ガンツはこれ引き受けるの考えた末
だったと思いますけど、人間の二面性をよく出していたと
思います。キレてるヒトラーの方はちょっとモノマネ演技
(実際知ってるかどうかは別にして)になってる感じで
ああいうアプローチで無くても良かった気がしますが。

映画を観ていて感じたのは「人間が人間を崇拝する」って
気持ちってどういうキッカケで培われるものなのかなぁ
って部分です。
彼の周りの人間も、客観的に見えてるものは少数で、
死も厭わないくらい狂信的に彼を崇拝している側近や
家族たち。
日本の某新興宗教をダブらせてしまったんですけど、
なんで、あんな「弱い」人間に人は惹かれてしまうのか、
はたまた騙されてしまうのか。

この映画、大阪ではミニシアター中心なんですが、
シネコンで観て良かった!と思いました。映像と音響は
かなりのド迫力!
でもドラマが中心で、監督の特徴なのかもしれませんが
かなり丁寧に描いてて、(あのゲッペルスの子供たちを
毒殺する場面なんて一人一人描写してて長っ!と思って
しまいました) 2時間半の映画が4時間ぐらい
あるように感じました。といってつまらなかった訳では
ないんですが。。

そういえばあの「ハイルヒットラー!」って敬礼や、
身上のものがそばを通ると靴で「タン!」って音を
たてて敬意を表すしきたりって客観的に見るとものすごく
滑稽ですよね。 元は誰かが考えたものを「統率」
の意味で強要していくのでしょうけど。。
子供の頃、意味も考えず「前へならえ!」とか「休め!」
とか号令でやらされてたけど、よく考えると
軍隊式統率法の流れだよなぁあれ。。
なんて関係ない事まで考えさせられました。

この映画をキッカケに、上の話じゃないけどドイツ側から
見た戦争やホロコースト。しかも正直に描いてくれる
作家が出てきたらとても観てみたいと思います。

kazuponの感想ー★★★1/2

http://www.downfallthefilm.com/

Der Untergang(2004)@imdb

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