トラブルシューター1 【小休憩】

March 14 [Sat], 2009, 22:33
 改めて2人の住んでいる部屋の説明をしておこう。
 最寄の駅から20分ほど離れた住宅街。その中に比較的新しいマンション。8階建てのこのマンションは3LDKとかなり広い間取りになっている。その2階の端部屋が2人の部屋だ。玄関を開けてT字に廊下がのびていて、突き当たりのドアを開けるとダイニングキッチン。その奥にリビング。その先がベランダになっている。廊下を右に行くと右手にバスルーム。突き当たりはトイレとなっている。廊下を左に行くと左手に2つ並びに部屋がある。手前から、猛、大和の部屋となっている。左手にある部屋は殆ど使われないが客間になっている。

 高校生2人が住むには贅沢過ぎるほどの住居だが、彼らの仕事〈トラブルシューター〉での稼ぎはそれだけ良いという事だ。今回のような危ない目に遇う事もこれが初めてではない。危険な仕事ほど報酬は良いからだ。

 今のところ高校に行っているようには見えないだろうが、一応高校には通っている。2人の通う瞬明(しゅんめい)高校は地元でも有名なおバカ(というと御幣がありそうだが)学校で、最低限出席していれば卒業できるという何ともいい加減な学校なのだ。

トラブルシューター1 【痛みとコーヒー】

March 14 [Sat], 2009, 22:27

 まだはっきりしない意識の中で記憶を辿ること数分。ドラの開く音に視線を向けると、見慣れた顔の男が立っていた。
 「気分はどうだい?」
 ベットの隣にあるデスクチェアーに腰をかけ、横たわる男の顔を覗き込む。
 「最悪やぁ」
 悪態の中にも少し申し訳なさそうな表情を忍ばせながら答えた。
 猛の表情の変化に気づいた大和はポケットから1枚の紙切れを取り出して、申し訳なさそうに頭を下げた。
 「今回は僕のミスだ。すまなかった。」
 大和の持ってい紙にはこう書かれていた。
     
     トイレに行く振りをして外に飛びだしてくれ
     タイミングは僕がカップに口をつけたのを合図にする
     猛に気を取られた隙に僕はテーブルの下に身を隠す
     猛は追ってきた車を自分のテリトリーにおびき出し片付ける
     その後僕に連絡して合流する

 少し端に血が滲んだ紙を猛に向けながら返ってくる言葉をじっと待つ大和に猛は目を背ける。
 「大和に非はないから気にすんなや。今回の失態は俺の油断や。」
 大和も猛もそれ以上何も言わなかった。終わった事をあれこれ言っても何も変わらない事を知っているからだ。
 大和は持ってきたコーヒーをペッドの近くにあるテーブルに置くとそのまま部屋を出て行った。
 コーヒーの温かな薫りと自分に対する苛立ちが部屋中を満たした時には、猛の悔しさが枕を水浸しにしていた。
 負ける事を嫌い、守る事を誇りに頑張ってきた猛にとって、先程の大和の表情は何より痛かった。

トラブルシューター1 【予感的中】

March 14 [Sat], 2009, 5:26

 待ち合わせ当日。時間は約束の20分前。なだらかな坂の上にある一軒の喫茶店に二人はいた。
 依頼人との待ち合わせは決まってこの場所。住宅街の一角にあるこの喫茶店は、取り分け繁盛している風でもなく、時間帯によっては客1人いない時もあるほどだった。
 だがそれは大和達にとっては都合が良かった。依頼によっては人に聞かれたくない事もあるからだ。

 時計が約束の時間を指してからコーヒーを飲み終わる程の時間が経ったが、依頼人らしき姿は現れないままのんびりと時間が過ぎる。
 「やっぱ悪戯やったんちゃう?もうえーかげん帰ろうやぁ?」
 退屈に嫌気が差したと言わんばかりに猛はぐったりした体をテーブルに突っ伏しながら言った。
 その姿に呆れ顔を見せながらも大和はお代りのコーヒーを注文した。つまりまだ待つという意思表示である。
 「どうせ帰ってもする事ないだろう?何なら晩飯もここで済ませればいい。僕も作る手間が省けて助かるし。」
 日頃からご飯を作る係になる大和からの皮肉を込めた返事に、言い返す言葉を持ち合わせていない猛は目を背けるように外を向いた。
 「なぁ大和。あの車何時から止まってた?」
 外を見ていた猛が大和に疑問を投げかけた。
 「僕達が来る前から止まってたよ。」
 外を見ずさらっと大和は答えた。
 猛が今気づいた事を大和はこの店に来たときから気づいていた。住宅街の一角。この喫茶店ぐらいしか近くに店はない。なのにこんな所に止めている車。それも窓はカーテンで仕切られている。喫茶店には、自分達以外お客はいない。店員はマスター1人。マスターの車は店の裏のガレージに止めてある。何から何まで不自然なのである。
 その不自然さに猛が気づくまでの間も大和は外の車を警戒しながらこの店にいたのだ。
 「大和。どうする?」
 目つきの変わった猛が大和に問いかける。が既に猛は臨戦態勢に入っていた。カーテンで仕切られた車の中に人影が見えたからだ。
 「猛。そう慌てるな。相手が何者か分からない以上、下手に動くのは得策ではない。」
 そう言いながら、胸ポケットから出したペンでテーブル隅にあったナフキンに何かを書き、猛の前に置いた。
外からは気づかれないよう細心の注意を払いながら以上の動作を行う。なかなかに大胆な策士である。

 「ちょっとトイレ」
 そう言って猛は席を立ち店の奥にあるトイレに向かった。その間横目で外の様子を伺いながら、大和はコーヒーにそっと口をつけた。
 その瞬間猛はダッシュで店を出た。車の中の人影が慌てて動いた。次の瞬間、店にいた大和も姿を消していた。
 猛は後ろを気にする素振りも見せず、ただひたすら走る。暫らくして車のエンジンをかける音が聞こえた。
 「ビンゴ」
 猛は自分を追いかけてくる車に、驚くどころか嬉しさすら感じさせる表情をしていた。
 そして十分に引き付けた車を横目に近くにあった路地に飛び込む。車の急ブレーキ音にもたじろぐ事なく路地裏の方へと駆け出していく。車から何人かの男が降りてきたのを確認し、角を曲がるふりをして息を殺した。
 「ぐおっ?!うぐぅ!ぬぉ!!!」
 曲がってきた先頭の男の顔面に渾身の一撃を食らわせた猛は慣れた足取りで二人目の腹部に一撃。続く三人目の頭に踵を落とした。人体急所の鼻、みぞおち、頭を捉えていることもあり誰一人起き上がれないようだ。

 一仕事終えた猛が携帯を手にし、大和に連絡しようとした矢先。後から来たもう一人の存在に気づいた。だが既に遅かったようだ。
      ガオォォォォォォォォォォォォォォン
 路地裏に響き渡る轟音。左肩から腕にかけて激しい痛みが襲う。
 「ぐっっっ。痛ぅ?!」
 傷口から吹き出る血を抑え,痛みに顔を歪ませながらも相手を睨みつけ
 「なめんなよ。クソがっ!!!」
 まるで挑発するような啖呵を切った。
 相手が今一度引き金を引こうとした瞬間、猛は路地裏の奥に向かって走り出していた。
 あわてて追おうとするも、既に猛の姿は無く、携帯にて何か会話をした後仲間を連れて車は何処かに走り去っていた。
 少しして携帯の音が路地裏に響く。血まみれの携帯を握った血まみれの男が電話の相手に一言・・・
 「回収よろしく。」
 そのまま意識を失った猛が、目を覚まして初めて見たのは3日後の自宅の天井だった。

トラブルシューター1 【変な依頼】

March 14 [Sat], 2009, 5:13
 5月も中頃になり、ジワジワと暖かくなるある日。いつものように大和がリビングでメールチェックしていた。脇に置いてあるコーヒーに手を延ばし、ゆっくりと一口飲みカップを置くと、少し考えるような仕草。
 「うーん。どういう意味だろう?」
 横で漫画を読んでいた猛がそれに気づき声をかけた。
 「大和が悩むなんて珍しいやん。どうしたん?」
 猛の問い掛けに、見事なほどのスルーを決めこ・・・
 「スルーすんなや!!」
 何故か理不尽なツッコミを受けた気がしないでもないが、気を取り直していこう。猛の問い掛けに大和はPCのモニターを見せ、そこに映し出されているメールを指さした。
 「ん?このメールがどうかしたん?」
 ため息混じりに脱力しながらも、大和は至極丁寧に説明した。
 「このメールおかしいと思わないか?タイトルの欄に”La fleur qui est morte ne devient pas il comme avant”と書かれている。因みにこれはフランス語なんだけど、これを和訳すると、”枯れた花は元には戻らない”となる。意味不明だろう?」
 少し困ったような顔で、猛に問いかける。
 「そんなもん簡単やん。つまり”花を枯らしたんやけど、どうにかならへん?”って依頼やろ?」
 自信満々に答える猛にとても冷たい視線を送る大和が、マウスをクリックしメールを開く。
 「ならこれはどういう意味だよ?」
 そこに映し出された内容は、日本語で”鍵を開けてください”と一言だけだった。流石に猛も頭をひねり黙ってしまう。
 フランス語のタイトル”枯れた花は元には戻らない”と日本語の内容”鍵を開けてください”何の共通点も見出せず悩む二人。コーヒーカップを口に運び、一口飲むと大和が静かに言葉を発した。
 
 「会ってみようと思う。」
 虚を突かれたように猛は目を見開いた。
 「やめといたほうがええんちゃうん?こんな変なメール送ってくる奴なんて絶対マトモちゃうって!それにもしかしたらただの悪戯かもしれへんし・・・な!やめときや!!」
 少しうろたえながら猛は制止する言葉を投げかけた。だが大和の目はモニターを見つめたまま首を横に振った。
 いつもリスクが高いと思った依頼は問答無用で断ってきた大和が、この依頼に興味を持ったことは猛にとって意外の何ものでもなかった。それと同時に危険かもしれないこの依頼人に会うという大和を心配していた。
 「どうしても行くってんなら俺もついてくかんな!それでもええなら俺は何も文句は言わへん!!」
 ビシッと指をさし、無駄に胸を張った猛を見て大和はクスリと笑いながらも
 「頼りにしてるよ。」 
 何かバカにされたような気がした猛も、取り合えず納得してくれた大和を見て胸を撫で下ろした。
 そしてお互い頷いたのを合図にしたかのように、メールに待ち合わせと時間、日時を書き依頼人に送信した。

トラブルシューター1 【トラブルシューター】

March 14 [Sat], 2009, 5:10
 「終わったでぇ」
 繁華街の路地裏。倒れている人。その真ん中で気だるそうに男は言った。
 暗い路地裏にも関わらず、その男の赤い髪は居様に目立っていた。
 「ごくろうさん」
 男が持っていた携帯から爽やかな声が聞こえた。
 「どーでもええねんけど、今回の仕事・・・ワリに合わんと思うねんけど?」
 気だるさを払拭するどころか、更に悪態をプラスして電話の相手に話しかける。
 「そうでもないよ。君の力量から計算して、適等だと判断した。それに仕事に正当な報酬なんて期待してちゃ立派な大人になれないよ。」
 なだめているのか、小バカにしているのか、分からないような返答をする相手に眉をひそめたが
 「分かったよ。ほな今から帰るから飯頼むわ」
 諦め顔とため息混じりにそう答え電話を切ると、少し大げさに肩を落としながら帰路へと向かった。

 比較的新しいマンション。エレベーターを降り、”木島・村上”と表札に書かれた部屋。211号室。その扉を開け、疲れきったサラリーマンのように靴を脱ぎ捨て、習慣的に声を吐き出した。
 「ただいま〜」
 すると奥から電話で聞いた爽やかな声が労いの言葉を投げかけながら、夕食の準備に勤しんでいた。
 美味しそうな匂いに少し元気を取り戻したのか、男はリビングのソファーに座りながら、エサを待つ子犬のような目でキッチンに立つ男の背中を見ていた。一見すると女の子に間違えそうなほどに伸びた髪は腰の辺りまであり、背丈も男にしては小柄な方で、振り返る瞬間になびく黒くて長い髪は男でも見とれてしまいそうなほど美しい。
 「なぁ大和ー。髪切らへんのか?」
 赤髪の男がふと質問した。だが既にこの質問は何回も行い、その度適当な言い訳で誤魔化されてきた。
 「僕の髪は世界遺産に認定されたから簡単には切れないん・・・」
 大和が言い終わる前に
 「んなワケあるかい!!」
 慣れたツッコミが鋭く撃ちだされた。正に使い古された二人の日常会話も終わり、食卓に並び終えた大和が
 「猛。飯出来たよー。」
 その言葉に重かった腰をあげ、ダイニングに移動する。
 向かい合わせに食卓に座り各々に食べ始めた。
 大和は食べるペースは遅いものの、とても丁寧な食べ方で食事をする。対して猛は早食いに出れば優勝出来そうなペースで、味わうというよりも詰め込む事を優先した食事をする。

 さてこの対照的とも取れる二人。この二人は現在高校3年の男子。赤い髪の長身な男”木島 猛”と小柄で長髪の男”村上 大和”は、とある事がキッカケで〈トラブルシューター〉という仕事を始めた。
 仕事内容は、色々なトラブルに対してサポートから解決にいたるまでを行う。簡単に言えば〈なんでも屋〉である。
 主に仕事はネットのH.Pのメールフォームから受け、待ち合わせ場所をメールにて返信し、大和が直接会って依頼内容を確認する。そこで報酬などを照らし合わせ、納得する内容なら依頼を受ける。という流れとなっている。
 猛は主に実行役として仕事をこなす。これはお互いの能力に応じた役割分担で、”元不良”の猛が肉体労働を担当、”元引き篭り”の大和がPCから得た知識を生かすという事になっている。
 これまでに猫探しから、ストーカー撃退、借金取りからの逃亡など色々な仕事をこなしてきた。
 その実績は確実に広がり、今では〈トラブルシューター〉の名前は少なからず有名になっていた。

終焉

September 03 [Mon], 2007, 17:16
主張したのはpain
涙なんかじゃ誤魔化せない
胸が裂けてshaut
血の色は黒ずんでいる

捕まりたくて逃げたくて
闇と光に抱かれ飲み込まれ
僕の形と心は壊れた

燃え尽きるまで生きた訳じゃない
下らないと思ったから止めたんだ
狂ったのは誰のせいでもない
自分が望んだ結果だから

もう幕を下ろそうか
終焉は必ず来るから

塗りつぶした絵を
ボクハココニステル
僕の中身と想いを
ボクハココデキエル
方舟のない小さな僕の世界

さよなら

愛の唄

August 25 [Sat], 2007, 15:18
大切な人に優しくしてますか?

何かを表現する事
それは簡単だけど
それを伝える事は
とても困難

本気の恋してますか?

愛と憎しみ
喜びと悲しみ
相反する事なのに
混在してしまう感情

何もかもをまとめて
今の気持ちを声にして
今の思いを音にして
歌い続けよう

そこが例え
小さな舞台だとしても
愛する者の為の唄
叫び続けよう

いつか誰かに
伝わるまで

創造する力

August 19 [Sun], 2007, 17:37
何かしても
何もしなくても
それは君の歴史になる

振り返った時
あの時こうすればと
後悔するか
あの時は楽しかったと
懐かしむかは
君に与えられた自由

君の行動次第で
未来も過去も変わる
君の見方次第で
今も世界も変わる

存在自体は不変でも
君自身を変える事は容易な事

それは今動き出す事
それは誰かに触れる事

怯える気持ちに打ち勝った時
そこに新たな君が生まれる

何かを信じようとした時
そこに新たな希望が生まれる

全ては君次第なのさ

空の表情

August 18 [Sat], 2007, 20:58
今日はとてもご機嫌だね
何処までも澄み渡っていて
気持ちの良い笑顔

朝と夕方にはお化粧して
少し照れながらピンク色に染まり
黒と青が交代する

今日は何だかご機嫌斜めかな
灰色の雲に隠れていて
今にも泣き出しそう

涙を流した次の日には
いつもの素敵な笑顔見せてね

大人として 人として

August 17 [Fri], 2007, 16:03
大人になるにつれて
諦める事が多くなる

少しずつ世界が狭くなり
出来る事を見つける事に必死で
いろんな事を
疎かにしてしまう

余裕がないんだね
生きる事に精一杯で
立ち止まってる暇もない

負けるのが怖いんだね
二度と立ち上がれなくなりそうで
虚勢を張って強がって

誰かに認められて
誰かに褒められて

満足した気になって
自分を誤魔化して
そんな事が立派な事なのかい

もう一度考えてみよう
本当に自分がしたい事を

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