トランジスタアレイ「TD62083AP」のホントの使い方

April 20 [Tue], 2010, 21:03
トランジスタアレイ や TD62083AP のキーワードでググると、かなり上位にヒットするサイトで誤りを発見し、気になったのでまとめてみました。
(私自身が電子回路の専門家ではありませんので間違いがあるかもしれませんが、その場合はご指摘のほどよろしくお願いいたします。)

さて、ではなにが問題なのか。

ざっと検索した結果を見て感じたことなのですが、トランジスタアレイを論理ゲートICのNOT回路のように考えている人は意外と多いのではないでしょうか。
実際、データシートにもこんなふうに記載されているし、PICや論理回路から入ってきた人がそのように解釈するのも無理はないと思います。
「ただの電流バッファなんだし、とにかくここにPICの出力を繋いだらリレーが動くんだ」みたいに。
でも、論理ゲートICとは違って、ただInに入力しただけではOutに電圧は出てきません。



それでは、どうすれば使うことが出来るのか?

TD62083APは8chのトランジスタ”アレイ”というくらいなので、8つの回路が入ってますが、全部を図に書くのは面倒なので、入出力の1番だけを書き出してみます。



このままでは解りにくいので、ICの中のトランジスタを書いてみました。
めちゃくちゃ省略して書くと、だいたいこんな感じになってます。
FAの世界では、シンクタイプのトランジスタ出力ユニットと言えば通じます。流し台=sink のように電流を吸いだすのでこう呼ばれています。
いわゆるNPNオープンコレクタです。


普通の論理ゲートICと違って、このICにはVcc入力がありませんので、これを使うには外部に出力用の電源を用意してやる必要があります。
トランジスタを考える際に必要な電流制限抵抗などはあらかじめ内蔵されていますので、増幅率などの計算をする必要はありません。(デジタルトランジスタというやつです。)
電源を接続した後、入力端子に5Vを印可するだけでONすることができます。
ただしGNDはVCCの電源と共通である必要があります。

素子にリレーを繋ぐ場合の回路を書いてみました。
負荷(この場合はリレーのコイル)に電源の+を繋いで、コイルのもう一方の足をO1に繋ぎます。
ここでI1に電圧をかけるとトランジスタのQが導通し、O1からGNDに向けて電流が流れます。

繰り返しますが、呼び方としての端子は「出力」ですが、実際は電流の吸い出しをしています。
負荷のマイナス側のスイッチをON/OFFして制御しているので、マイナスコントロールという言い方もします。
O1の端子電圧に注目すると、I1がHiになった際にはOVに、Loになった際には+Vになっているので、論理が反転していることになります。
つまり、上の論理ゲート図も嘘ではないですね。よかったよかった。


ここで皆さん疑問に思うのが、各々の出力端子からCOMMONに繋がっているダイオードではないでしょうか。
これは何なのでしょう?論理ゲートに出来た寄生ダイオード。。?〜ではありません。

これは、フリーホイルダイオード
トランジスタの保護のためにわざわざ設けられたものなのですが、ネットで見る例では、コイルなどの誘導負荷に対してこのフリーホイルダイオードを使わずに実装してしまっているものがとても多いような気がします。
また、負荷が誘導負荷でなくても、配線が長くなるとコイルと同じです。

FA業界に身を置く自分から見ると、これはかなりマズイです。
保護回路無しで、それもメーカーがせっかく用意してくれたものを無視するのですから、仮に作った直後にうまく動いていたとしても、「それはマグレ。たまたま動いているだけ。」と言われてもしょうがないくらいマズイです。

というのも、電気というものは一旦電流として流れ始めると、ずっとそのままの勢いで流れ続けようとする性質があるからです。(これを慣性電流といいます。)
なので、トランジスタが突然OFFになり、回路が遮断されると、コイルには行き場を失った慣性電流が発生します
以前扱った(今も進行中ですが)イグニションコイルと同様に、慣性電流は回路が切れたところを無理に流れようとするので、そこでものすごい高電圧が発生します。
ちょうど勢いよく流れいてる水路の水門を突然閉めると大波が発生するような現象です。
これをそのまま放っておくと、O1の電圧が電源電圧を遥かに超えてトランジスタを破壊してしまうほど高くなってしまうので、ダイオードを通してコイルの電源の+側に繋いでやります。電流をコイルの入口に戻してやるんですね。
すると、慣性電流はコイルとダイオードのループの中をくるくる回ってくれるわけですが、そうしているうちにコイルや配線の抵抗のおかげで熱になって消えてくれます。
この、電流の逆流を防止しつつ、コイルの端に(電源から見ると)逆に発生した電圧を安全に逃がすために設けられたダイオードをフリーホイルダイオードといいます。
コイルとダイオードのループの中に電流を一方向にのみに流すのですから、自転車のFree Wheelと同じ意味ですね。
フリーホイルダイオードの端子にはダイオードの順電圧Vf(=0.7V程度)の分しか電圧が乗りませんから、トランジスタはこれで守られます。
(余談ですが、この慣性電流をフライホイル(フライホイール、Flywheel)電流と呼ぶそうです。ちょっとややこしいですが、このフライホイル電流用のフリーホイルダイオードをフライホイルダイオードと呼んでしまっている例がかなり多く見られます。慣性をつけるためのダイオードではありませんから、フライホイルダイオードは用語の使い方として正しくないと思います。)


ところで、ICの入力用の電源とリレーを駆動する電源が異なる場合はどうすればいいでしょう?
例えばPICは5V駆動なのに、リレーのコイルが12Vや24Vでしか使えない場合とか、定格が5V以上の白熱球を点灯させるような場合ですね。
回答はこちらになります。


トランジスタの保護のためには、要するにコイルとダイオードのループを作ってやればよいので、COMMON端子は負荷のコモン線(電源線の+線)に繋げばOKです。
ただし、やむをえずトランジスタアレイと負荷との距離が大きくなってしまうような場合、コイルに直接ダイオードを接続して配線を少しでも減らしたほうがいいということもありますし、実際、FAで使われるDCリレーやソレノイドは最初からダイオードやツェナーバリア(バリスタ、サージキラーともいう)を内蔵しているものがほとんどです。(ノイズは発生源のより近くで取るというのが基本だから。)
配線も長くなるとキャパシタンスやらリアクタンスが発生してややこしくなりますので、トランジスタを守るという目的からするとIC内蔵のダイオードを使うにこしたことはありませんが、そこは実装方法との相談になります。

※謝辞
実は他人の成功例をみるより、失敗のプロセスを見た方が勉強になるという一例だったりします。
嫌味を言うわけではなくて、本当に感謝。自分のミスを認めてかつ公開し続けるというのはかなりの勇気が必要なことだと思うのです。
以前、舞鶴高専の学生さんが作ったサイトでMOS-FETのゲート回路やドライブに関してかなり勉強させてもらったので、この機会にお礼をば。(一時見れなくなりましたが、2010.07現在、復活しているようです)

※参考
トランジスタアレイ「TD62083AP」の使い方
Robocon2003 回路設計資料〜パワーMOSFET編〜




※関連記事
トランジスタアレイ「TD62083AP」のホントの使い方
トランジスタアレイ「TD62083AP」のホントの使い方(その2)
(↑フリーホイルダイオードが無い場合にどうなるかを検証してみました。)

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奈良泰明さん
お役に立てたようで何よりです。(・∀・)
February 17 [Tue], 2015, 20:37
奈良泰明
リレーに何故ダイオードをかませてたか分かりました、ありがとうございました。
February 14 [Sat], 2015, 8:35
かずい
拙い文章を粘り強く読んで頂けたようで光栄です。
続編では実際にサージが発生する様を観察してみましたので、よろしければ併せてご覧ください。

>ところで、高専で学んでいる人は生徒ではなく、学生ですよ。
本当ですね!高校生と同じように考えていました。
ご指摘ありがとうございました。勉強になりました。(*´∀`*)
February 10 [Tue], 2015, 16:54
私は「ダーリントンシンクドライバ 使い方」で検索をかけたのですが、ここのページがヒットしました。
Googleってすごい…。
わかりやすい解説でとても助かりました。

ところで、高専で学んでいる人は生徒ではなく、学生ですよ。
January 22 [Thu], 2015, 0:37
maru
早速の返答ありがとうございます!
大変参考になりました!

伊藤健一氏の本も調べさせてもらいました。
当方オーディオが趣味でアンプをよく自作するのですが、それに関連する興味深い本ばかりでした。
少しずつ購入して読んでみようと思いますo(^▽^)o
December 09 [Sun], 2012, 10:40
かずい
maru さん コメントありがとうございます。(・∀・)
「トランジスタアレイ」「使い方」のキーワードで当ブログにいらっしゃる方が多いので、皆さん共通の関心事なのかもしれませんね。

すみません、私も専門的にやっているわけではない(むしろ下手の横好き?)ので、あくまでも想像の世界なのですが

>素人からみると、開放しっぱなしだと発振してしまいそうで。。。

FETと違ってトランジスタの入力インピーダンスはそんなに高くないので、発振に至るというのはそうそう起こらないと思いますが、周波数が高い場合や安全を考えるのなら、おっしゃるように入力をGNDに落とすか出力をオープンにしておいたほうがいいでしょうね。

>他に気をつける点があればご教授お願いします。
ご参考になるかどうか判りませんが、制御盤の実体配線をする際には、私は次の3点を常に意識しています。ノイズなどで機器が誤動作したり、壊れたりしないようにする対策でごく一般的なことだと思うので、トランジスタを使用した回路にも同じことが言えるのではないでしょうか。

1.負荷の大きさにもよりますが、GNDに変な抵抗があると、GNDを流れる電流で電位が持ち上がってしまって変な動きになる場合がありますので、できるだけGNDに使う線は太く短く。
2.負荷に行く配線で余計なリアクタンスを作らないように電路のループが作る面積を最小にするように工夫する。
3.高圧や高周波の近くにはなるべく配線を通さない。どうしても通さなければならない場合はできるだけ距離を置くか、静電または電磁シールドを置く。

このあたりは伊藤健一氏のノイズに関する著書でも度々書かれていますので、機会があればぜひ御覧ください。(型破りな表現で面白いですよ^^)
December 08 [Sat], 2012, 22:56
maru
はじめまして。
トランジスタアレイの使い方を調べていたらこのサイトにたどり着きました。
いやーとても分かり易い解説で感謝しております!

早速使ってみようかと思ったのですが、ひとつ質問させてください。
私が使おうとしているトランジスタアレイは7素子入っているのですが、使用するのは6素子だけです。
余った1素子はどうすればいいですか?
素人からみると、開放しっぱなしだと発振してしまいそうで。。。

入力をGNDに落としたほうがいいのでしょうか。
他に気をつける点があればご教授お願いします。
December 08 [Sat], 2012, 21:28
かずい
づつ さんこんにちは(´∀`)

件の場合、LEDから電源を見るとトランジスタが2個直列になっていると思います。
ということは、電源電圧からトランジスタの電圧降下分を引いた分がLEDにかかる電圧ですね。
通常、トランジスタは1個あたり0.6Vの電圧降下を見込みますので、3V-0.6V×2個=1.8Vとなり、LEDによってはVfを割り込んでいるのではないでしょうか。
これはLEDのVf/If[Ω]相当の抵抗を付けて両端の電圧を測定すれば確認できますが、この場合はそこまでする必要はなく、電流制限の抵抗無しで直結すればなんとか点灯しそうですが、やはり電源電圧の3Vというのは厳しいと思います。
電源電圧を上げるか、トランジスタをMOS-FETやリレー接点に置き換える必要があると思います。
December 06 [Thu], 2012, 23:33
づつ
トランジスタ「TD62083AP」を使おうと考えているのですが、
データシートを見てもやはりよくわからないためこのサイトに辿り着きました。

ですが、やはりよくわからず・・・。

3Vの電源をつなぎ、TD62083AP、TD62083をしようし、ドットマトリクスLEDを制御しようと考えています。
ですが、抵抗の計算が上手く行きません・・・。

前回ドットマトリクスLEDの回路を作ってみた際に、
何も考えず単純に3Vだからと抵抗を計算してみたのですが
LEDがついてるのかも分からないくらい暗くなってしまいました。

トランジスタアレイを2つ使った場合に、抵抗はどう計算すればいいのか、
電流がどれくらい流れているかの計算方法を教えていただけるとうれしいです。

よろしくお願い致します。
December 06 [Thu], 2012, 19:09
P R
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