むかつく。と、素直にそう思ってしまう自分が憎かった。でもさ、でも、だけども、やっぱりむかつく。だってほら、今もまた、日番谷隊長は雛森副隊長のことを気にしている。
そんなソワソワしないでください。
してねーだろ。
…コーヒー零れてますよ。
…!
わかってます隊長。隊長は雛森副隊長のことが好きなんです。だから気になるんですよ。
雛森副隊長のご様子を見に行かれたらどうですか?
…。
大丈夫です。ここは私が見ていますから。
……そうだな…。
(あーあ。ほんとに行っちゃうんだ。)なーんて、行ったらどうかって誘ったのは私じゃない。
ばっかみたい。
日番谷隊長は眠っている雛森副隊長のもとへ、やや急ぎ足で向かっていった。
なんという不毛な会話を仕掛けてしまったんだろう。
でもそんなの後の祭りだ。
こうしてあの二人の距離は狭まっていき、私と隊長の距離はただの上司と部下という関係のままなんだ。
ああ、もう。こういうのを何て言うんだっけ。…そう、報われないってやつだ。
そりゃあ最初から階級も身分も違ったけど、だけど――
何泣いてんだてめーは。
た、隊長…!雛森副隊長は…
何時の間にやら隊長は帰ってきていて、不機嫌そうな顔で私を見ていた(というより睨んでいた?)のだった。
あいつならもう大丈夫だろ。体力も回復してきてるみたいだし、あとは睡眠をとれば、な。それより…、なーにやってんだよ。
日番谷隊長は椅子に腰掛けながらなんとなく優しい口調で(!)問い掛けた。
な、なんでもないです。
なくねーだろ。
ないです!
…。
すみません、私、ちょっと、と○はふいと顔を背け、俺を避けるように出ていった。しかし部屋から出る前、礼をするのは忘れなかった。
…ちっ。
(ちょっとやきもち妬かせようと思ってやったが、やりすぎたか)
1時間後、失礼な態度をとってしまったのを謝ろうと日番谷隊長の元へ向かうと、いつもやりすぎなのよ隊長は!という蘭菊さんの怒鳴り声と、それをしょんぼりとして受ける隊長の姿を見つけてしまってなんだか怖くなって逃げてしまった。
結局謝れなかった…。でも何を怒られてたんだろ?
その頃――○が自室に戻った頃、
隊長!二度と○に涙を流させないでくださいね!じゃないと私、許しませんから!
と怒り狂う蘭菊を前に日番谷は、もう二度とこんなことはしまい…と心に誓ったのだった。