ワスレラレナイ ヒト ノ コト 9 

July 18 [Fri], 2008, 10:08
 3月。
 私は大学院の試験を受け、なんとか合格することができた。急遽受けることになったところではあったが、勉強したい内容に変わりはない。


 彼はその私を心から祝ってくれた。
「お祝いは何がいい?」
と聞いてくれた彼に、私は
「じゃ、映画に一緒に行こうよ」
と提案した。
 私がK君のこと抜きで彼と二人で会うのは、このときが初めてだった。


 彼はまだK君のことを引きずっていた。
 映画を観て近くの喫茶店でお茶を飲んだが、その時もK君のことが話題になった。
「オレは結局、あいつにとってなんだったんかなぁ」
 彼は寂しそうにそうつぶやいた。
 その彼を見て、私は一つ悲しい事実を悟った。


 彼は、私に会うとK君のことを思い出してしまうのだ。
 私はK君のことについて、いつも相談役だった。
 それは、私が彼のことを好きだから、彼を支えたいから、自分で買ってでた役回りだった。
 でも、K君とのことが終わってしまった今、彼にとって私はつらかったK君とのことを思い出させるだけの人になってしまったんじゃないか・・・そんな思いが心の中に湧いてきていた。


 彼とK君のことが、どんな形であれ一段落したら、私は自分の本当の気持ちを彼に伝えるつもりだった。相談役としてではなく、一人の女性として私のことを見て欲しいと。だけど、彼にとってK君とのことは、簡単に一段落できるようなものじゃなかった。
 彼の中でK君とのことが一段落するのは、K君のことを過去のこととして振り返ることができるようになるときだ。そうなるまで、彼にとって私はK君のことの相談役でしかありえないのだろうか。


 こんなはずじゃなかった・・・


 そう心の中で繰り返している自分に気づいて、私は愕然とした。
 私は彼のために相談に乗っていたつもりだった。
 だけど、その気持ちはいつしか計算に摩り替わり、彼とK君のことが終わった後の段取りを、勝手に算段していた自分がいたのだ。
 これが終わったら、私の物語を始められる。
 これが終われば、彼と私の物語が始まるのだと。


 そう、私は彼とK君が早く終わることを心の底で願っていたのだ。


 彼のため・・・そういう大義名分の下で、私は自分のことばかりを考えていた。さらに始末が悪いことに、私はそのことに気づいてさえいなかったのである。
 そのことに気づいて、私は自己嫌悪に陥らざるを得なかった。
 K君とのことが終わり、自分の院試が終わったから、これでやっと自分の物語が始められると、彼を映画になんか誘った自分が情けなくて、恥ずかしくて、私はその場にいられなくなった。


 私は彼とのお茶を楽しむことができず、早々に帰ることにした。
「用事があったのを思い出した」
彼にはそう伝えた。
 帰りの電車の中、彼は私を気遣ってくれて、
「前の居眠りしてる人の首が、あり得へん角度で曲がってる」
とか
「赤ちゃんを抱っこしてる女の人のシャツに、ナメクジが這ったような跡があるのは、赤ちゃんの鼻水だろう」
とか、小さな楽しいことを見つけては、私に話して聞かせてくれた。
 自分の心がまだ血を流すような思いをしているのに、そういう気遣いをしてくれる彼が、どうしようもなく好きだった。


 別れ際、彼はまた私の手を握ってくれた。
 そして、
「合格おめでとう。次の芝居、がんばろうな!」
と言って手を振ってくれた。
 こんなにも暖かい心にしてくれる彼に、申し訳ない気持ちで一杯で、駅から自転車で家に帰る道すがら、思いっきりペダルを踏みながら泣いた。
 その年の夏、私は劇団の公演に初めて役者として舞台に立つことになっていた。彼と同じ舞台に立つ初めての芝居だった。
 彼とはしばらく会わない方がいいような気がしていた。
 でも、芝居の稽古があるからそういうわけにはいかない。
 私は自分の中の彼への気持ちを整理できないまま、ずるずると彼に会う日を待っていた。

ワスレラレナイ ヒト ノ コト 8 

March 09 [Sun], 2008, 14:50
 急遽受けることになった大学院は、3月が試験だった。
 ちょうどその年、阪神淡路大震災があり、試験勉強をするはずだった私は一気に忙しくなった。ボランティアで神戸にお手伝いに行くことが多くなったからだ。
 必然的に彼との電話は少なくなった。
 しかし、相変わらずK君は彼の家を訪ね、彼は戸惑う日々を過ごしていた。


 2月の中旬。ちょうどバレンタインの頃。
 彼からの電話で、私は彼の家に出向いた。
 K君がいるのだろうと思っていたが、その日はいなかった。
 二人だけで彼の家で会うのは、そのときが初めてだった。


 彼は、K君のことを話すときはいつも、眉間にシワを寄せたような険しい表情になっていた。
 その日もその表情だったから、K君のことで何かあったのだとすぐにわかった。
「K君のこと?」
と聞くと、素直に
「うん」
と返事が返ってきた。


 K君が、同じ劇団の○ちゃんのことを好きらしい、というのは以前から聞いて知っていた。
 そして、彼の前で○ちゃんのことをよく話すことも知っていた。
 そのことで、彼がとてもココロを痛めていることも。


 ところが今度はK君が、彼の家に来た日に、○ちゃんに電話をしたいと言ってきたのだそうだ。
 K君は自宅に住んでいるため、○ちゃんとあまり電話ができないと言う。それで、彼に電話を貸してほしいと頼んだらしいのだ。
「でもな、信じられる?アイツ、俺の家で○ちゃんと2時間も電話しててんで。」
 彼の表情がさらに険しくなった。
「え、その間、自分は何してたん?」
と聞くと、
「もう夜遅かったからな。オレは寝室で布団かぶって寝てた。」
と彼は言った。
「でも、そんなんで寝られへんやろ。」
「うん。布団かぶってても、電話してるKの声が聞こえるんや。そしたら、オレ一体何してるんやろって情けなくなってな。恥ずかしいけど、涙が出てきたんや。」
 無理もない。


 しかし、話は続いた。
「それだけじゃないんや」
「?」
「あいつ、ビデオ持ってきたから見ようって言って、何?って聞いたら、『イチゴとチョコレート』ってキューバの映画だったんや。その映画、かおるん知ってる?」
「知らない」
「あのな・・・ゲイの映画なんや。キューバはゲイなんてご法度の国で、その中にありながらゲイであることを貫いていく男の話なんや。ものすごい楽しそうにその映画を見るんや、アイツ。」


 私はお腹の底がフツフツと熱くなってくるのを感じた。
 嫌な予想が当たったんだと思った。
 K君は、○ちゃんのことを彼の前で話して、反応を見て楽しんでるんだ。
 ゲイの映画なんか借りてきて、彼と見て、反応を楽しんでるんだと思った。
 許せない。絶対に許せない!


「オレ、始めは知らん映画やから黙って見てたけど、映画の主旨がわかったら、もう嫌で嫌でたまらんようになって、ビデオを切って怒ったんや。そしたら、Kが泣きよってな」
「え???」
「Kにとっては、○ちゃんもオレも大切な人なんやて。だからどっちも失いたくない。Kは男の人から好かれたのは初めてやから、どんな風な関係を持っていいのかわからんから、オレの出方を見てたみたいなんやな。」


 私の怒りは頂点に達しつつあった。
 でも、そのK君の反応を見て彼自身がどう思ったのかを聞きたかった。
「それで、自分はどう思ったん?」
「なんか、もうええ加減にしてくれ!って思って、本当にもう二度と家に来るなって言ったんや」
 彼がそう言うのはもっともだと思った。


 あまりにもお粗末ではないか。
 本当に彼との関係を大切にしたいのなら、K君はゲイの映画なんか借りてきて一緒に見るよりも先に、その気持ちを彼に伝えるべきだった。
 そして、○ちゃんとの関係も大切にしたいなら、彼にそのこともきちんと説明するべきだ。
 そのどちらもしないでおいて、彼の家で○ちゃんと電話をしたり、ゲイの映画を見たり・・・彼の気持ちを踏みにじるにも程がある。


 でも、そこでふと気がついた。
 それならなぜ、彼は私をここに呼んだのか。
 K君の態度に腹をたて、もう二度と来るなと言って、気が済んだのなら私を呼ぶまでする必要はなかったはずだ。
 彼の眉間のシワは、相変わらず刻まれたままだった。
 それだけでは済まない何かがあるから、彼は私を呼ばずにいられなかったんだ。
 それは何だろう・・・


「それで?」
「それから、Kは来てない。昨日、アイツの劇団のヤツに会って話してたら、Kは○ちゃんと付き合い始めたらしい。」


 彼は、Kがまた屈託のない笑顔で彼の玄関に姿を現す日を、待っていたのかもしれない。
 そう遠くない先に、K君がまたひょっこりと顔を出すんじゃないかと。
 だけどなんとなく、K君が○ちゃんと付き合い始めたという事実が、もう二度とK君が彼の家の扉を叩くことはないと告げているように感じた。
 彼も、そう感じているようだった。
「なんか、この1ヶ月でオレ10年分生きたようなくらいしんどくてな。なんかひどく疲れたんや・・・」
 彼は本当にひどくやつれた顔で、そう言った。


 彼がどこか遠くに行ってしまいそうな気がした。
 もしかしたら、この人は死んじゃうんじゃないかと思った。
 それくらい、気の抜けた、空っぽな彼だった。


 これからまだ先がある・・・そう思っていた彼とK君の物語は、恐ろしいほどあっけなく幕を降ろした。
 後日談ではあるが、実際、それからもう二度と、K君が彼の家を訪ねることはなかった。風の便りでは、あれから2年後、K君と○ちゃんは結婚したらしい。エキセントリックなK君が、○ちゃんという伴侶を得て、いくらかでも落ち着いてくれていることを願うばかりである。


 私は、空っぽな彼が気がかりだった。
 その夜、私はまた彼の家に泊まった。
 隣の部屋で、彼が寝返りを打つ衣擦れの音が何度も聞こえた。私も、頭の芯が冴えて眠れずに、その音を聞いていた。
 私ができることは、彼の話を聞くことくらいしかない。
 彼がまた、ゆっくり眠れるようになるのは、どれくらい先のことだろうかと、ぼんやりとそんなことを考えた。


ワスレラレナイ ヒト ノ コト 7 

February 15 [Fri], 2008, 2:13
 それから、K君は1週間に1度のペースで彼の家を訪れた。
 K君が彼の家を訪ねた翌日には、彼は必ず私のところに電話をしてきた。


「かおるん、オレ、どうしたらええんやろ。オレちゃんと正直に自分の胸のうちを話たやんなぁ。それでも、うちに来るっていうのは、どういうことなんやろ。」
とか、
「Kは相変わらず、同じ劇団の○ちゃんのこと好きみたいやねん。それなのに、オレのところに来るってどういうことやろ。」
など。


 確かにK君のしていることは、私にも理解できなかった。


 K君のことを好きだという彼の気持ちを受け入れるつもりならば、K君は○ちゃんのことを彼に匂わせなくても良いはずだ。
 だけど、K君は彼の気持ちを知りながら、彼に○ちゃんのことを話している。


「彼の気持ちを受け入れることはできないが、彼と友達としての関係をなくしたくない」


ということだろうか。
 それならそれで、きちんと彼に説明しなくては、彼がK君の行動をどのように理解してよいのか、混乱してしまう。
 今彼が困惑しているのは、私には当然のことのように思えた。


 そして、もう一つ、私には気がかりなことがあった。
 もしもK君が、彼の気持ちを知っていて、○ちゃんのことを匂わせて、反応を楽しんでいるのだとしたら・・・。
 こんな考えはK君に対して失礼だし、悪意を持った推察であることはわかっていた。
 でも、私にはその可能性を捨てきることができなかった。
 もしそうであったなら、私はK君を許さない。


 こんな状態が1週間ほど続いた頃、私は元々予定していた大学院の受験に臨んだ。
 そして、あっけなく落ちてしまった。


 彼に電話でそのことを報告したとき、彼は申し訳ないと言った。
 自分がK君のことでたびたび電話して、私の勉強時間を奪ったのではないかというのだ。


「そんなことないよ。もし、私が今電話に出たくないときだったら、出ないでおくこともできたし、今は話が聞けないときだったら、そう言っただろうし。実際に、今はダメって言った事あったでしょ?」


 私がそう言っても、彼は納得できなかったようだった。
 実際、それはウソだった。
 私はあの頃、何よりも彼からの電話を優先し、電話がかかってきたら、必ず出るようにしていた。
 彼からの電話は、私にとって大学院受験の勉強よりも大切な、今を逃したらもう二度とない大切な時間になっていた。
 ウソなんていうものは、どんなに上手なウソでもそれと気づくものだ。
 本当にだまされるのは、例えウソの匂いがしても、それがウソであって欲しくないと心から願っているときだけだ。


「じゃあ、残念会を開いてよ。メンバーとか少なくていいから」


 そうお願いした。
 試験に落ちた当日、急に声を掛けて来てくれたのは、皮肉にもK君と彼の二人だった。
 その日の残念会のことは、正直あまり覚えていない。
 三人で、おいしい飲茶のお店に行って、中国のお酒を飲みながらアツアツの飲茶を食べて、たくさん話して、カラオケに行ってたくさん歌って、それからもう一度飲みなおしにお店に寄って、それから帰った。
 でも、その間に何があったのか、どんなことを話したのか、ほとんど記憶にない。
 どんなにお酒を飲んでも、記憶がなくなったことはないのに・・・


 今振り返って思えば、きっと私はオーバーヒートしていたのだと思う。
 彼のこと、K君のことできっと私はいっぱいいっぱいだったのだ。そこで試験に落ちて、残念会に来たのが彼とK君。
 残念会とは言え、お酒が入れば私たちはみんな陽気になり、それなりに楽しい時間を過ごしたはずだ。


 もしかすると覚えていたくなかったのかもしれない。
 彼らと楽しそうに過ごした時間を。
 楽しそうな彼らを見ていた時間を。
 本当はとってもつらかった時間を。


 大学院に落ちたので、急遽もう一つ大学院を受験することにした。
 私はまた、勉強する身になった。

ワスレラレナイ ヒト ノ コト 6 

February 10 [Sun], 2008, 20:20
 年を越して1月4日。
 その年、私は大学院を受験することになっていて、勉強するために年末年始に実家には帰らなかった。
 夜遅く、勉強していると電話が鳴った。

「あ、もしもしかおるん?」
「うん」

 彼の声だった。

「あけましておめでとう」
「あけましておめでとう。今年もよろしくね。」
「こちらこそ。ところでな、新年早々悪いんやけど、オレまたえらいことになってんねん」
「ん?えらいこと?」
「昨日な、うちにKが来てん」

 !

「・・・え、えー?」

 次の言葉が見つからなかった。

「どういうことやろ。オレ、あんときはっきりと、もう来んといてくれって言ったよなぁ」
「・・・うん、言った」
「何で来るんやろ・・・」
「・・・」
「しかも、全然何も無かったような笑顔で、おめでとうございますって、酒持って来てんで」
「・・・うそぉ」
「もう、オレショックやった・・・」

 私もショックだった。
 一山越えたと思っていたのは、本当は山ではなかったんだ。
 もっと大きな山の中腹の、ほんのわずかなでこぼこの一つを越えたに過ぎなかったんだ。
 私は自分が下した決断、「自分の気持ちは置いておいても、彼のことを支えていく」ということの本当の意味が、このとき忽然と私の目の前に立ち現れたように感じた。
 落胆と、絶望と、焦りが私の中を激しく渦巻いて、私は彼の話に耐えられなくなるのではないかとさえ思った。



 考えて見れば、男が男を好きになるっていうことは、男としての自分のアイデンティティーを根本から覆されかねない問題だ。
 社会的な偏見も大きい。
 その中でも、自分の中にあるそういう面を認め、その上で自分のアイデンティティーを再構築していくということは、並大抵のことではない。
 もし、自分のそういう面を認めて、抱えて生きる決意をすることができたとしても、当時の日本は彼が生き抜くにはあまりにも窮屈な、偏見と風潮と常識と情報に溢れかえっていた。

 そんな中で、彼はK君に自分の気持ちを打ち明けた。
 K君はまた、ココロが傾いでいる人で、私はそのエキセントリックさに惹かれて付き合い始めたが、そのエキセントリックさに耐え切れずに別れることになった。
 K君が関わってくれば、これからもっと彼を混乱させることが起こり得る。

 これは私の手におえる山ではない。
 ちょっとした感傷や、同情でいい加減に登り始めたら大怪我をすることになる。
 もちろん私だけの怪我で済むならそれでもいいが、彼にも大きな痛手を与えかねないのだ。
 もしこれからも彼を支える心づもりをするのなら、それなりの覚悟を持たなければならない。
 行くか、戻るか・・・。



 そして、私は「行く」道を選んだ。
 どうしてだろう?
 理由は今でもわからない。
 若かったからだろうか?・・・いや、違う。
 彼のことがそれだけ好きだったから?・・・いや、それだけじゃない。
 何か、自分でもよくわからない、自分のもっと深いところが、「行く」道を求めていた。
 ここで行かなければ、きっと一生後悔すると。

 そして、私は彼の話を聞いた。
 もう疲れはなかった。
 この年も、結局、K君の話で幕が開いた。


ワスレラレナイ ヒト ノ コト 5 

January 30 [Wed], 2008, 4:07
 私の手には、彼の手の感触が残っていた。

 実は私は手をつなぐのが得意じゃない。
 変な言い方だけど、「嫌い」なわけじゃないけど「苦手」なのだ。
 私は小さい頃からなぜか手にもの凄い汗をかく人で、そのためいろいろといやな思いをすることも多かった。
 子どもの頃、体育の授業や運動会でフォークダンスなどをするとき、必ず私と手をつないだ人は言った。
「や〜、手に汗かいてる、気持ち悪い〜」
 そういう言葉って、不用意に友達の口からポンと出てくるものだから、あぁこれが本心なんだなぁ、私気持ち悪いのかなぁ・・・なんて思ってしまう。子ども心に傷ついていた。
 だから、私が手をつなぐのは、本当にちょっとやそっとのことで関係が歪んだり壊れたりしない・・・と確信できる人とだけだった。
 親とか兄弟とか親友とか・・・

 私は以前そのことを彼に話したことがあった。
 だから彼は知っていて、私にしっかりと握手をしてくれた。
 私はそれを、彼からのメッセージだと思った。
「これまでのことを通して、俺たちの関係はちょっとやそっとで壊れるようなものじゃなくなったよ」
 そう伝えていると感じた。
 友達として。
 彼の相談相手として。

 K君と彼の関係は、ひとつの終止符を迎えたように思っていた。
 私はとても疲れていた。
 私はやっぱり、彼のことが好きだった。
 だから、その自分の気持ちを横に置いておいて、彼の相談に乗り続けるのは、もうそろそろ限界だと感じていた。
 私が、もしも彼のことを好きだと告白したらどうなるだろうか?
 自分が好きな相手が、他の人を好きだ・・・とか、しかもその好きな相手が男性だ・・・とか、さらにその好きな相手の男性が自分の元カレだ・・・とか・・・聞いて嬉しい人がどこにいる?
 もし私が告白したら、彼はこれまでK君のことを私に相談していたことを悔やみ、そういう話を私にすることを止めるだろう。
 そしたら、彼はそういう悩みをどこに持っていけばいいんだろう?

 そう思ったからこそ、私は自分の気持ちを押さえ、彼の相談に乗ることにした。
 これで、一山越えた・・・これで、しばらくして落ち着いたら、「K君のことを相談する相手」としてではなく、「一人の女性」として、彼の前に立ちたい。
 そんな風に考えていた。
 12月30日はつらい夜だったけど、たぶん私は内心でほっとしていた。


 でも、そんな風にほっとできたのはつかの間のことだった。

ワスレラレナイ ヒト ノ コト 4 

January 26 [Sat], 2008, 7:01
 彼の家に着くと、そこには思いがけずK君がいた。
 私はこのとき、卒業以来初めてK君に会った。
 彼が、力なく不安げな笑顔で
「かおるんに、この場におって欲しくてな」
と言った。
 私はK君との間に流れる、少し気まずい雰囲気を感じていた。
「・・・久しぶりやね」
「・・・ああ、うん。せやな。」
 K君は明らかに不機嫌だった。
 K君からしたら、仲の良い友達の家に来たら、なんかよくわからないけど会いたくない元カノがやってきた・・・というシチュエーションなのだ。
 機嫌が悪くなるのは当然か・・・。

「かおるん、オレ、今日はKに本当のことを言おうと思ってんねん。だから、かおるんにこの場におって欲しかった。オレがいろいろ相談させてもらってて、事情を良く知ってるし、冷静に見れる第三者がいないと、オレ自分自身がどうなってしまうのか怖かったから」
 彼はそう切り出した。

 ――でも、間違ってるよ。
 ――私は冷静にこの場にいることなどできない。

 だけど、私はその言葉を胸の奥に押し込んで、黙って小さくうなずいた。
 K君は、面倒くさそうな顔をして、テーブルの一点を見つめていた。

 そして、彼は話しはじめた。

「オレ、お前の劇団の芝居を手伝って、Kと話をするようになってから、なんだか変な感覚になることがあって、はじめはKのパーソナリティ・パワーでそうなるのかと思って、それで、かおるんにいろいろ話を聞いてもらったり、Kのこと教えてもらおうって思ったりして相談してたんや。
 でも、違うって最近気がついてん。オレ、Kが言う言葉とか、何度も何度も考えたりしてしまうんや。お前がうちに遊びに来たりすると、またいつか来るんかなぁとか、思ってしまう。終電の時間が来ると、そろそろ来るんかなぁとか、今日は来んかったとか、、、、オレ、そんなん考えている自分が嫌で嫌でたまらんかった。絶対嘘やって思いたかったし、自分で認めるのが怖かった。でも、認めんなしゃーないって思うことがあってな・・・。
 ・・・オレ、お前の夢を見てしまったんや。
 お前と一緒に布団に入って、抱き合って眠ってる夢やねん。
 なんか、小さい頃にお母さんと一緒に寝ているような、すごい安心して満たされた気持ちになる夢やった。
 その夢を見て目が覚めて、オレなんでこんな夢を見て、こんな気持ちになってるんやろって、すごいショックやった。
 でも、それと同時に自分の中でこれまでなんでやろ?なんでやろ?って思ってきてたことが、一気に一つにつながってしまって、認めなしゃーないって思ったんや。
 ・・・なんか、オレ、お前のことを 『好き』 になってしまったみたいなんや・・・」

 聞いているのがつらかった。
 これまで、彼と電話で何時間も話してきたけど、そのときのことが、走馬灯のようにぐるぐると私の頭の中を駆け巡った。
 彼が、K君を好きだと認めた日、受話器越しに泣いていた彼の声を思い出した。ふるえたため息も、鼻をすする音も、真夜中で真っ暗な窓から、ぼんやりと入ってきていた街灯の光も、私のにぶいこころの痛みも。

 長い沈黙が流れた。
 彼は、次に何を言いたいのか?
 どうしたいのか、自分でもわからんと言っていた、その彼が、この続きをどのように選ぼうとしているのか?

 沈黙を破ったのはK君だった。
「それで?」
 冷静な声で、相変わらずテーブルの一点を見つめていた。まるで、当たり前の話を聞いているような退屈そうな表情に見えた。K君は、やっぱり彼の気持ちに気づいていたんだと、この時私は確信していた。
 そして、いきなり彼はKに向き直り、突き飛ばすような言葉の勢いで、こう告げた。

「もう二度と、うちに来んといて欲しいんや」

 この言葉を、彼がどんなつらさで口に出したのか、私にはわからなかった。
 これまで、ずっと話を聞いてきて、彼が本当に求めているのは、こういう答えじゃないとわかっていた。
 それでも敢えて、幕をひこうとする彼が、私には逃げているように思えてしまった。

「ちょっと待ってよ、それでいいん?そんな答えを出したかったん?今、ここまで話すことができて、ここまで聞いてもらうことができたのに、あなたが本当に思っていることをぶつけんで、それでほんまにええの?」

 私がそういうと、K君がニヤリと笑い初めて私の顔を見た。
「あんたも変わってないね。ここで、そんな正論ぶつなんて。」
そして
「わかったよ。じゃあ、もう来ない。それでいいんだろ。」
とぶっきらぼうに彼に言った。
 彼は動かなかった。
 正確に言えば動けなかったのかもしれない。

 帰り際、K君は独り言のように、
「なんか、追い出されるみたいやな」
と言って、思いつめたような、切ない表情で私を見た。
 K君と私が同棲していた家を、K君が出て行くときに言った言葉と同じだった。
 これまでのことを、K君がどんな風に受けとめているのか、手がかりがなくて量りかねていた私は、K君もまた、自分の安らげる居場所を一つなくしたのだと、この時初めて気づいた。


 K君が出て行って扉が閉まるまで、彼は動かなかった。
 扉が完全に閉まってしまうと、彼は台所へ行き、暖かいお茶を入れてくれた。
 黙って二人でお茶を飲んだ。
 彼がポツリと
「もうすぐ年が変わるしな」
と言った。
 その日は、12月30日だった。


 彼の家に泊めてもらって、翌日。
 彼は、実家に帰る予定になっていた。
 毎年お正月には、行きつけの温泉に家族ででかけるのだそうだ。
 彼が、かばんに荷物をつめる間、私はテーブルでぼーっと前の晩のことを思い出していた。彼がもし、K君につき合ってくれと言っていたら、どうなっていたんだろう。きっとK君は彼の気持ちに気づいていたはずだから、それなりにうまく行っていたかもしれない。でも、何故彼はそれを言わなかったんだろうか?男を好きになるような自分は、幸せになる資格がない・・・なんて考えたんだろうか?そんなこと考えてたら、私、彼のことをひっぱたいてやる。
 そう思っていたら、まるで私のココロを見透かしたように、彼が言った。

「Kには好きなコがおんねん。そうは言わんけど、なんとなくわかる。Kは、同じ劇団の○ちゃんが好きやねん」

 ニヤリと笑ったK君の顔が頭に浮かんだ。
 そうか、そういうことだったのか。
 でも、そしたらなぜK君はこれまで足しげく彼の家を訪ねていたのか?
 やっぱりK君は、彼の想いには気づいていなかったのだろうか?
 彼が必死で伝えたK君への想いを、K君はあんなに当然のことのように聞いていたのに・・・
「やっぱりK君は私にはわからん。」
 ココロの中で言ったつもりだったけど、口をついて、声になっていた。
「オレもそう思う。だから、オレもかおるんも、結局Kのことを受けとめる港にはなられへんってことや。」
 彼が淡々と言った。

*******************************************************

 荷物の準備ができた。
 彼の家から最寄の駅まで歩いていく。彼が実家に帰るのと、私が自分の家に帰るのとは、途中まで同じ電車だ。

 家から出て、鍵を閉めようと取っ手を見ると、コンビニの袋がかかっていた。
 中には、2本のお茶と「ごめんね。ありがとう」と鉛筆で書かれたメモが入っていた。
 K君の文字だった。

 たぶん、K君がここに戻って来たときには、このお茶は暖かかったのだろう。
 K君が出て行った扉が閉まった後で、彼が入れてくれたお茶の記憶と重なって、胸が切なくなった。
 私たちが、それぞれの思いで黙り込んでお茶を飲んでいたとき、K君は寒空の下で暖かいお茶を3本買い、2本をここに置いて、遠い道のりを歩いて帰っていったのだ。
「なんか、追い出されるみたいやな」
 帰り際のK君の言葉と、K君の思いつめた表情を思い出して、どれほどK君がこの扉を開けたかったかと思うと、やりきれない思いで一杯になった。
 K君は、そういう、何とも不器用な人だった。
 彼は複雑な顔でお茶とメモを見ると、一瞬泣きそうな表情になって、それから無理に明るい声で
「追い出されたヤツが、こんなことすんなよなぁ」
と言い、お茶を一本私に投げてよこした。
 そして、まるで初めて私を見たような顔をして、
「こうやってると、俺たち夫婦みたいに見えるかなぁ」
とおどけて見せた。

 途中まで同じ電車で行き、別々に分かれる乗換駅に来たとき、彼は私に、
「かおるん、手を出して」
と言った。
「え?」
「いいから手を出して」
 恐る恐る手を出すと、その手を大きく包み込むように、大げさに手を握り返してきた。
 とてもしっかりした握手を交わし、私の顔を覗き込むように真正面から見つめて、
「ありがとう。本当に、ありがとう。」
と言った。
 私は涙が出そうで、曖昧な笑顔しか返せなかった。

「じゃ、良いお年を」
お互いに手を振って、別れた。
 それから彼はもう一度私の方へ振り返り、
「来年は絶対いい年にするからなー!」
と叫んだ。
 やっと普通の笑顔ができるようになって、私も手を振りかえした。

ワスレラレナイ ヒト ノ コト 3 

January 25 [Fri], 2008, 5:18
 彼と、元カレ「K君」と、私。
 この奇妙な三角関係。
 普通、男二人に女一人の三角関係だと、女の人を男二人で取り合う形を想像する。
 だけど、私たちは違っていた。

 彼は、自分がK君のことを好きなのだと認めてからかなりの間、とても戸惑っていた。
 無理もなかっただろう。
 自分は男性であるのに、男性を好きになってしまったのだから。
 そして、自分の内にそういう部分があることに、今初めて気付いたのだから。
 だけど、彼は自分を投げ出さなかった。
 自分はこれからK君との関係をどうしたいのか?
 K君だけでなく、自分で自分のことをこれからどのように理解していけばいいのか?
 自分の気持ちも大切にした上で、K君を好きになったことも含めて、必死に受け留めようとしていた。。
 そして私は、彼のそういう姿勢を心から尊敬した。

 しかし皮肉なことに、彼がK君を好きだと自分で認めてからというもの、彼とK君の仲は一層ズレたものになっていった。

 彼は、自分がK君を好きだということは認めたけれど、だからといってK君が自分のことを恋愛の対象として見てくれるわけではないだろうということも、十分理解していた。
 だから、K君のことを好きなんだと自覚してからは、逆にK君と距離を置くような付き合い方になった。
 K君を好きだという気持ちを悟られないよう、そして、彼がK君を好きになったことで、K君に迷惑をかけないよう、彼なりの配慮だった。

 しかしK君の方は、彼の微妙な距離の取り方に勘付いていたようだった。
 そして、せっかく仲良くなれたのに、なぜ距離を置かれているのか、理解できないでいるようで、戸惑い、逆に彼に対して距離を縮めようと躍起になっているように見えた。
 K君が夜中に彼の家をたずね、そのまま泊まることもあった。
 夜早い時間に行くと、彼はなんとか理由をつけて、K君を追い返す。
 だからK君はそのうち、終電で彼の家をたずねるようになり、そのまま泊まれるように準備までしてくるようになっていた。

 もしかしたら、K君は彼の気持ちに気づいていたのかもしれない。
 そして、彼の気持ちを受け入れる準備があることを、そういう形で表現していたのかもしれない。
 でも、彼にとってK君のそういう行動は、返って気持ちを逆なでされ、混乱させられるものだった。

「かおるん、オレ、どうにかなりそうや。Kが来ると、気持ちがすごくざわつくねん。だから、ほんまに来て欲しくないと思ってる。だけど、どこかでオレ、Kが来るのを待ってんねん。そういう自分が許されへん。Kが帰った後、心に穴があいたみたいで、じっとしてられへん。でも、ほっとしている自分もいる。オレ、どうしたいんか自分でもわからへん。」

 彼は本当に純粋に、K君のことを好きなんだと私は思った。
 この気持ちは、成就することはないと、彼も私もなんとなく感じていた。
 この気持ちを、正直にK君にぶつけることすらかなわないだろうと。
 でも、何かよくわからない可能性を、捨てきれずにいた。どうなればハッピーエンドと呼べるのか、それすらもわからないけれど。


 ある日、夜中、彼から電話がかかってきた。
「かおるん?今からうちに来れるかな?終電やけど○時の電車に乗れたら大丈夫やねんけど。」
時計を見たら終電まであと30分しかない。すぐに立ち上がって準備を始めながら受話器を握り締めた。
「え?どしたん?」
「うん・・・とりあえず、来てくれへんかな」
 それで、私は彼の家へと向かった。
 声はそんなに暗くなかった。
 何があったんだろう?そう思いながら、暗い路地を自転車を飛ばしながら、駅へと急いだ。


ワスレラレナイ ヒト ノ コト 2 

January 24 [Thu], 2008, 6:07
 そして、半年ほどそんな状態が続いたときだった。
 彼からいろんな話を聞くにつれて、私は、彼が自分自身でも気がついていない、ある一つの思いを持っていることに気づいてしまった。
 私は既に、彼のことが好きだった。
 だから、気づいたけれども口に出すことはできなかった。
 また、それが思い違いであって欲しいと願っていた。

 彼も自分の中の密かな思いに気づき始めていた。
 話の内容からも、それが伺えた。
「オレ、なんでこんなにKのことばっかり気にしてんねやろ。」
「あいつ(K)はしょーもないヤツって思ってんのに、なんでヤツに振り回されてるんやろ?」


 そして、ついに、その日が訪れた。


 その日、彼は真夜中の1時に電話してきた。
 彼の声は、泣いているような鼻声だった。
「かおるん?ごめん、起きてた?」
「ああ、うん。どしたん?」
「あのなぁ・・・オレ、とうとう認めざるをえんようになったわ。」
「え?なにを?」




「・・・オレ、どうやらKのことが『好き』なんやわ」




 そう言って、彼は受話器越しに鼻をすすった。

 どうして涙が出るんだろう。
 好きな人を「好きだ」と認める、ただそれだけのはずなのに、彼は何故こんなにも傷ついているんだろう。

 私は
(やっぱりそうだったんだ・・・)
 心の中でつぶやいていた。
 私の心にも鈍い痛みが広がっていた。
 だけど、私のこころの痛みよりも、受話器越しに感じる彼のココロの方が痛かった。
 何も言えない。
 それでも何とか、大きなため息をついてから口を開いた。
「・・・そうかぁ」
「・・・うん。・・・なんか、そうみたいや・・・」
 あともう少しどちらかが力を入れたら、ぷつっと切れてしまうような、そんな張り詰めた空気の中で、彼も一つ震える呼吸で大きなため息をついた。

 そして、私はその時にココロの中で一つの決心をした。
 彼のこの思いがどんな形であれ一段落できるまで、彼を支えていきたい。
 私は彼のことが好きだ。
 だからK君のことが好きだという今の彼の気持ちを支えようとしたら、きっとものすごくイヤなつらい思いをすることもあるだろう。
 でも、こんなに大事で、こんなに相手を選ぶ話を彼は私にしてくれた。
 私を 『選んでくれた』 のだ。
 だから、そのことを大切に受けとめて、私はこの役割を全うしたい。
 ・・・そう思った。



 奇妙な三角関係が幕を開けた。

ワスレラレナイ ヒト ノ コト 1 

January 23 [Wed], 2008, 11:59
 オットではない人です
 結婚する前に、好きだった人のこと。

 彼は私より2つ年上で、とても頭の良い、ココロが優しいんだけど、どこか傾いでいて、でも誠実な人だった。私もココロが傾いでいて、そのことを自覚しているけれど、彼もそのことを知っていて認めてくれていた。

 私が彼と話しているときに、逃げ腰になって
「私、あほやからそんなん言われてもわからん」
と言うと、
「そっかー、かおるんあほなんやー。そっかあほなんかぁ、じゃ、しゃーないなぁ」
とあおるように言う。
 そのことに私が不愉快になってきて
「そんなあほあほ言わんでよ、暗くなるから」
と言うと、
「あのな、自分で自分のことを『あほや』って言ったのは、『島根出身や』とか『女や』って言うたのと同じことやねんで。それを繰り返されて、暗くなったり不快になったりするのは、本当は自分のことを『あほや』って思ってない証拠や。ほんまは『あほ』と思ってないのに、自分を貶めたらあかんで。」
と諭してくれた。
 彼はそういう人だった。


 彼と私は大学も違っていたし、学年も違っていたけど、演劇を通して知り合った。そして、大学を卒業した後に同じ劇団に所属して、一緒に芝居を作りはじめた。当然話す機会も増えたけど、いつも、彼でも私でもない、別のもう一人の人のことばかりを話していた。


 仮にK君と呼ぼう。
 K君は、私の元カレだった。
 大学に入学してすぐに入った演劇部で知り合った。
 なんだかんだと腐れ縁のようになって卒業まで4年間付き合っていた。
 大学を卒業するとき、K君は私にプロポーズしてくれた。でも、私はそれまでの大学4年間にK君との間で起こった出来事に憔悴しきっていたから、そのプロポーズを受ける気にはなれなかった。

 出会い・浮気・同棲・別れ・再会・浮気

 だから、卒業と同時に別れた。
 そして別々の路を行くことを選んだ。



 彼は、K君と私が付き合っていたことも、同棲していたことも知っていた。
 K君は大学を卒業して就職した後も、私たちとは別の劇団で舞台に立っていた。
 K君のいる劇団からスタッフの仕事を頼まれた彼が、そちらの劇団に出入りしている間に、K君と知り合い二人の交流が始まったのだ。



 彼はなにかと私にK君のことを聞いた。
「Kがさぁ、こんなん言うんだけど、どう言うことやろ?」
「なんであんなことするんかなぁ・・・」

 元カレのことを、今好きな人に聞かれていい気はしない。
 私は胸をかきむしる様な気持ちで、その問いに応えていた。

 彼にもその気持ちが伝わったのだろう。
「ごめんな。昔の彼氏のことを聞かれて、いい気はせんわな。でも、Kのことを一番よく知ってるのは、付き合っていたことのあるかおるんやと思うねん。せやから、Kのこといろいろ聞けるのはかおるんしかおらんし、オレも話しやすいもんやから・・・ごめんな。」

 彼とK君とは、急速に仲良くなっていった。
 でも、どこか何か大事な所がずれているような関係を作っていた。

 彼とK君と私。
 この物語は、この3人から始まったのだ。


P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:かおるん
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 誕生日:5月12日
  • アイコン画像 血液型:O型
  • アイコン画像 趣味:
    ・ゲーム-ネトゲ「飛天」にはまっています
    ・ハンドメイド-編み物
読者になる
2008年07月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
http://yaplog.jp/kaorun_0512/index1_0.rdf
最新コメント
アイコン画像かおるん
» ワスレラレナイ ヒト ノ コト 5 (2008年02月10日)
アイコン画像かおるん
» ワスレラレナイ ヒト ノ コト 1 (2008年01月24日)