今夜は映画評論(112)ー『海峡』 

September 26 [Mon], 2016, 20:00
【粗筋】
京大で地質学を専攻し、国鉄に入社した阿久津(高倉健)は、「津軽海峡地質調査事務所」勤務を命ぜられて青森県・龍飛へ赴任する。漁師の協力を得ながら調査を進めるが、厳しい気候に阻まれる。ある日、台地の地質調査をしていたところ、自殺しようとしていた多恵(吉永小百合)を助ける。
青函トンネル事業は中々進まず、阿久津は明石海峡への転勤を命ぜられる。調査も残っており、青函トンネルにこだわる阿久津だったが、一旦は転勤を受け入れる。そのような中、国鉄総裁の交代もあり、青函トンネル事業が前進することになり、再び龍飛へ着任することになった。

結婚しても別居が続く阿久津の妻(大谷直子)、満州からの引き揚げ中に娘を失ったトンネル屋・源助(森繁久弥)、洞爺丸台風事故によって親を失った過去を持ち鉄建公団へ入った青年(三浦友和)、そして密かに阿久津を思い続ける多恵を軸に、仲間を失い、家族を犠牲にしながらもトンネル貫通に賭ける人々が描かれている。

【感想】
映画公開は1982年、映画の主題となった先進導坑(パイロットトンネル)が実際に貫通したのは1983年1月。東宝50周年を記念した作品ということもあり、映画の完成が急がれたのかもしれない。
だが、CGや特撮無しの映像は迫力で、斜坑・導坑・作業抗の掘削場面、特に出水場面が凄い。最近は吉村昭の記録小説にはまっているのだが、時代が違うとは言え『高熱隧道』や『闇を裂く道』で描かれている山の恐ろしさ、これを乗り切ろうとするトンネル屋の執念が同じように漂っている。
家族を犠牲にし、25年間青函トンネルに関わり続けた阿久津は、何に取り憑かれていたのだろうか。
貫通後、彼は青函トンネルの軌道工事への転任を伝えられるが、トンネル掘りの現場から離れることを拒み、海外でのトンネル工事現場へ向かうシーンで映画は終わる。妻は離婚を漂わせる発言をするが、彼の耳には届いていない。知らぬ間に成長した息子とあわせ、大変残酷な描写でもある。歴史的事業の裏側にいたトンネル屋の生き様を描いた傑作として、もっと広く知られるべきものだと思う。



ブックレビュー(289)ー『深海の使者』 

September 24 [Sat], 2016, 20:00
太平洋戦争勃発した直後の1942年4月22日、建造後2ヶ月の新鋭潜水艦伊30号が秘密任務を帯びて出航した。インド洋からアラビア海周辺での作戦行動を行った後、アフリカ南端を経由してドイツまでの3万キロの航路を確立するためだ。やがて双方の人材や日本からは海図や南方の物資、ドイツからは最新の電探(レーダー)などの機材が交換されるために、幾たびか行き来が行われた。徐々に日独が不利となっていく戦況に影響される、危険な航海の様子を描いた記録小説が本書。

吉村氏特有の淡々とした筆で、息詰まるような水面下の航海の様子が目の前に広がってくる。荒天の続く海域での故障、敵機との遭遇・・・欧州からの帰路、日本軍占領下にあったシンガポールにたどり着いた伊30であったが、触雷によって沈没してしまう。結局、5回の航海のうちで往復に成功したのはたったの1回という過酷な旅だった。
日独の潜水艦運用の違いや、日本軍がソ連を刺激することを恐れていた実態(事実、日本陸軍は中国東北部においてソ連の対日参戦を警戒していた)、ドイツ降伏時にUボートに同乗していた士官の運命、そして日本降伏にあたって伊401艦内ので第一潜水隊司令の自決といったエピソードも絡めて、戦争の断片を知ることができる。
インド独立運動の闘士チャンドラ・ボースを潜水艦で連れてきた話は知っていたが、恥ずかしながらこのような連絡航路が設定されていたことは知らなかった。吉村氏が丁寧な取材をとおし、知られていない歴史を浮かび上がらせる作業を続けてきたことに、改めて感服した。

ブックレビュー(288)ー『戦艦武蔵』 

September 21 [Wed], 2016, 20:00
戦艦武蔵と聞けば、世界最大の戦艦「大和」の姉妹艦であることを知っている人は多いと思う(さすがに3号艦「信濃」の存在を知る人は少ないだろうが・・・)。
だが、「武蔵」の具体的な航跡については広く知られていないのではないだろうか。2015年、フィリピン沖の海底で「武蔵」の艦体が発見され、注目を集めた。1942年就役、1944年沈没この短期間に散った「武蔵」が、同型艦「大和」と違って注目されなかったのは何故か、そういった問いかけから日本人の戦争観を分析している。

「大和」との対比については、「大和=明、武蔵=暗」としている。それは森下・大和艦長と猪口・武蔵艦長の評価と結びついているという。レイテ沖海戦当時、森下艦長は在任期間が長かったため操艦に慣れており、巧みに魚雷をかわした。そもそも巨体ゆえに運動性に問題のあった大和型に苦労した猪口艦長指揮の「武蔵」は被弾、沈没していった。敵艦隊を引きつける囮だった「武蔵」はその役割を十二分に果たしているものの、結果として明暗分かれてしまったことも、後世への影響大なるところだったのだろう。
また、「武蔵」は乗員の半分弱が生還しているが、その後は情報漏洩防止という名目で一部はフィリピン守備隊へ組み込まれ、本土へ送還されたメンバーも輸送船が撃沈されるなど、悲劇がつきまとった。沖縄への海上特攻時、「大和」の生存者は1割にも満たず、その後すぐに敗戦を迎えたのとはまた対照的であった。

著者は「艦これ」に始まりサブカルチャーから戦記まで広く資料にあたっているのであるが、肝心のテーマである「なぜ武蔵は忘れられたのか」という点について、答えは示されていない。時折、決めつけとも思えるような強引さも見受けられ、全体的に違和感を覚える。無論、「武蔵」自体に興味がある向きには良いのかもしれないが、「大和」との比較をしっかりと書いて貰いたかった。

ニンニク入れますか?(107)ー『大勝軒まるいち 渋谷店』 

September 19 [Mon], 2016, 19:00
上野にあるワイン酒場で飲んだ帰り、銀座線で帰る途中に渋谷駅の工事進捗状況の観察、発売当日だった『こち亀』200巻の購入を兼ねて渋谷で下車。そのまま〆の誘惑に駆られ、閉店間際のここを目指した。
多少は混んでいるのかと思いきや、三連休初日のせいなのか先客ゼロ。結局、後から1人やってきたが店員に時間ですと断られていた。なんとも寂しい。


空腹感はさほどでもないので、軽めに「つけ麺」(770円)の食券を買って提示すると、大盛りか茹で卵のサービスがあるというので、茹で卵にする。冷房の効いた店内で少し待ち、着丼。
見た目は大勝軒系らしい、刻みネギとナルトの浮いたスープであるが、麺が思いの外しっかりしている。また、スープもサラサラ系かと思いきや、少しとろみがあり大勝軒直系とは違った印象。そもそも「もりそば」でないとおかしい訳だが・・・

スープは出汁を感じられるものの、味が濃い。大勝軒だと思わなければ問題ないのであるが、大勝軒のさらっとした甘酸っぱいスープを期待した状況なので、評価はイマイチ。
麺は普通でもかなりの分量で、300gくらいだろうか。大勝軒でよく見られる水切りの甘さだけは共通しており、底は水たまりになっていた。何とかならないものか。


【住所】渋谷区渋谷3-8-7
【最寄駅】JR渋谷駅から徒歩5分
【営業時間】10:00〜23:00
【定休日】不明

ブックレビュー(287)ー『約束の海』 

September 12 [Mon], 2016, 20:00
『白い巨塔』、『沈まぬ太陽』、『大地の子』と丹念な取材をベースに、それぞれの世界を克明に描いた大作を送り出してきた、山崎豊子の「遺作」になってしまった作品。全3部のうち原稿としてできていた第一部で、終わっている。だが、その後の展開について構想があったようで、メモを基に粗筋が追記されている。

物語としては、海上自衛隊の潜水艦「くにしお」の船務士である花巻二等海尉を主人公に、「くにしお」が釣り船と衝突する事故により苦難に直面する姿を描いている。これだけでピンとする人も多いだろうが、1988年7月に発生した潜水艦「なだしお」と「第一富士丸」の衝突事故がモデルになっている。また、花巻の父は真珠湾攻撃時に特殊潜航艇で出撃するも捕虜になった酒巻少尉がモデルらしく、その後の経歴も史実に沿った形になっている。

最近、記録小説と呼ばれる吉村昭の作品にはまっているが、山崎豊子の作品に共通するのは緻密な描写と、それによって世界観が目の前に広がる感覚であると思う。潜水艦という特殊な職場で勤務する主人公の様子が、生き生きと描かれており、彼が「自衛隊とは何か」という重い問いに悩む姿に、感情移入してしまう。そしてここから著者は「戦争とは何か」「平和を守るとは何か」といった問いを、読者に投げかけたかったのだろうと思う。第2部以降では、訓練のためハワイへ派遣される主人公が、捕虜となった父親の足跡を探す旅に出るという構想になっていたようだ。続きを読むことができなくなったことは大変残念であり、日本にとっても損失だろう。それだけに読後のモヤモヤ感があり、手に取る際は覚悟して頂きたい。


ブックレビュー(286)ー『わしらは怪しい雑魚釣り隊 マグロなんかが釣れちゃった篇』 

September 09 [Fri], 2016, 20:00
旅行中、時間つぶしを兼ねて益田駅近くの本屋で購入。
小さな住宅の1階を利用したような本屋で、冊数だけで言えば私の書棚の方が多そうにも見えた。

椎名誠が釣り雑誌『釣り丸』に連載していたエッセイをまとめたもので、「怪しい探検隊」の延長上にある。すなわち、いつものメンバーで日本各地へ赴いてキャンプをし、そのついでに釣り糸を垂れ、獲物は調理して食ってしまうのだ。
「怪しい探検隊」は椎名誠の学生時代・会社員時代の友人が名を連ねていたが、こちらはアウトドアを通じて知り合った仲間、といったところ。ただ椎名が隊長であることは変わらず、ドレイ制度も健在だ。

いつものごとく賛否あるだろうシーナ調の文章で、個人的にはしっくりくるのだが、「新宿赤マント」の頃から雰囲気が少し変わっているように感じた。特に、騒ぐ外国人グループとの喧嘩未遂のくだりや、新潟での講演会に車を飛ばす話は、コンプライアンス的にどうなのか・・・と少し醒めた目で読んでしまう。
シーナ隊長も年を取ったのだろうか、とちょっと悲しげな気分になってしまった。シリーズとしては「怪しい探検隊」が健康的で面白いと思う。


ブックレビュー(285)ー『昭和史』 

September 07 [Wed], 2016, 20:00
この著者が書いた『昭和天皇』を大変興味深く読んだこともあり、期待をしていたのだが、端的に言えば期待ハズレの書だった。書名のとおり、歴史的な事実関係が網羅されているのかと思ったのだが、著者による価値判断的記述が散見され、一方的な見解の披露が行われている点が気になる。

例えば、満州事変について「日本一連の行動を侵略とは呼べないという議論もあるようだが、これも全くの誤りである。」と断定している。なぜ誤っているのか、その理由は「満州事変における日本の行動を自衛とは認めないという国際連盟の勧告が、ほぼ全会一致で承認された事実」によるそうだ。国際連盟が無謬である、とでも言わんばかりの論調だ。この理屈では、イラク攻撃は正しかった、ということになるのだろうか。余りにも乱暴な話だろう。
また、「押しつけ憲法論」への反論も述べているのだが、幾ら日本に戦前から戦争放棄の概念があったとしても、文章自体は国連憲章をベースに作られたものであり、紙幅の関係があるのかもしれないが、短絡的な記載ではないだろうか。

結局、本書を読んでも昭和に生きた人々の考えや、まして「なぜ戦争を始めたのか」といった問いへの答えを探すヒントは無い。年表代わりにつまみ食いする程度がよいだろうか。


ブックレビュー(284)ー『大本営が震えた日』 

September 04 [Sun], 2016, 20:50
ほとんど取り憑かれたように読んでいる吉村昭作品。
今回は、太平洋戦争開戦間近に発生した民間機墜落事故と、搭乗者していた人物が所持していた機密文書を巡る事件を取り上げた人間ドキュメントで始まる。墜落機から這々の体で脱出した将校は、機密文書の処分に成功し、これによって真珠湾攻撃を始めとする戦端が開かれることになる。
マレー半島での進撃作戦、真珠湾攻撃へ向けた周到な情報収集活動など、事故から数日の間の起きた出来事が地域別に描かれる。
相変わらず吉村作品特有の臨場感で、緊迫した日々の様子が目の前に広がる。どこで何が起きていたのか、歴史を学ぶうえでも大変有用な書物であると思う。


ニンニク入れますか?(106)ー『ラーメン二郎 会津若松駅前店』 

September 01 [Thu], 2016, 20:00
583系寝台特急型電車を利用した、磐越西線の臨時快速「あいづ」の撮影をしに福島県まで遠征する。
どちらが目的なのか判然としないのだが、撮影後はいそいそと会津若松駅へ移動して駅からすぐの黄色い看板へ向かう。
土曜日とは言えお昼時という事もあり、店外に並んでいる人もいるが、数名程度。場所も場所だしこんなものか、と思って近づいていくと店内にも待機用の椅子が5つほどあった。県内には喜多方、白河のようにラーメン文化が根付いているようで、繁盛しているようだ。内装は洒落ており、このままバーになりそうな風情。しかも座敷がある。

30分ほど待ち、ようやく着席。新規店舗の常で「小」にしておく。

ヤサイニンニクのコールをしたものがこちら。磐梯山のような荒々しいヤサイタワーが形成されているではないか。これは食べがいがあるというもの。
麺は太く茹では柔らかめ。スープは乳化しているもののくどくない。ヤサイがモヤシだらけなのが残念なのだが、総合的にはかなりの実力。最近行った蒲田より上だ。
わざわざここまで来るのは大変だが、旅の途中の乗り継ぎ待ちを見付けて立ち寄りたい。次に行くとなれば新潟か・・・!?


【住所】福島県会津若松市駅前町6-31
【最寄駅】JR・会津鉄道会津若松駅から徒歩2分
【営業時間11:00〜14:00、17:00〜L.O.20:30。(土日は11:00〜L.O.17:30)
【定休日】月曜日(祭日の場合は火曜日が定休)・第3日曜日・祝日は不定休

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ニンニク入れますか?(105)ー『ラーメン二郎 環七新代田店』 

August 29 [Mon], 2016, 20:00
目下戦線拡大中の「二郎攻略作戦」。最近始めている"東京週末温泉"という一人企画ついでに、新代田まで足を伸ばす。と言っても、下北沢から歩けるので自宅から登戸で小田急に乗り換えればさして遠くもない。冬場であれば、玉川通りから環七づたいに歩く方法もあろうだろう。二郎として7番目の"老舗"である。

下北沢が近いせいか、少し洒落た若い女性の姿も列にある。かんかん照りで日焼けも厭わず並ぶとは、人の事は言えないが物好きだ。一時間弱並んでから、「小」(700円)の食券を求め着席。


しばらくして登場した丼はずっしりとしたもので、やや乳化したスープに、しっかりとした極太麺と辛くて美味い豚が沈んでいる。美味い!
これは並ぶ価値があるだろう。汗をかきながらやってきた甲斐があった。帰りは小田急線世田谷代田駅へ出るが、こちらも環七沿いに10分程度歩けばついてしまう。いずれの駅も優等列車が止まらないのが玉に瑕か・・・


【住所】世田谷区代田5-29-5
【最寄駅】京王井の頭線・新代田駅から徒歩1分
【営業時間】11:001〜14:00頃、17:00〜20:30頃 (土日祝は11:00〜16:00頃)
【定休日】月

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