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美女 第6話 奈美 / 2005年10月14日(金)

電車に揺られながら、
奈美は引越しの事ばかり考えていた。
思い立った事を即、行動に移さないと、
また昔の様に引き篭ってしまいそうで怖かった。

『まずは…家だよね……』

頭の中でいろいろと考えていた。
(寂しいトコは嫌だなぁ……)

(交通の便も悪いのもちょっとね……)

奈美は考えだしたら、キリがない性格だった。
幼い頃から親に全て従ってきて、
自分の意見など通した事がなかった。
しかし最近、自分が変わりつつあると実感していた。


『よし!考えたって物件は見なきゃわかんないっ!!』


電車を降りた奈美の足は駅前の不動産屋に向かっていた。

『すみませ〜ん』


『はーい』

店の奥からは、いかにも不動産屋という感じの男が出てきた。


『あのぉ〜わたしに合いそうな物件を紹介して下さい!!』


『じゃぁ予算と場所と……ぇー…』


『そういうのはどーでもいいから、
お兄さんがわたしに合いそう!って思う物件を教えて!!』


かなり困惑した表情の不動産屋が差し出した紙には、
五反田ワンルーム三階と書かれていた。


『決めた!ココにします!即、行動しないと進まないからっ』


困惑顔を横目に、奈美は、また一歩進む事が出来たと、
成長した自分を褒めていた。


(もぅ……あんな日々に戻りたくない…絶対に戻らない……)


外は日が落ち出して、だいぶ涼しくなり、
奈美の目には夕日が反射して見たことがないくらいキラキラしていた。

それなのに―――。

奈美の決意とは裏腹に、
運命の歯車は音を立てて崩れ始めていた……。


 
   
Posted at 15:51 / 奈美 / この記事のURL
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美女 第5話 五反田 / 2005年10月13日(木)
 
心地よい気分の中で いつの間にか眠りに落ちていた。
ふと、誰かの気配を感じて目を覚ました。
見知らぬ女が、こっちを見てほほえんでいる。

「・・・・・・。」

「ずいぶん疲れてたのね。」
「よく 眠れた?」

「・・・うん・・・。」
(誰だっけ・・・?)
「ずっと ここに?」

「そうよ。あんまり気持ちよさそうに寝てるから、
つい、みとれちゃったわ」
「あなたに 聞いて欲しいことががあるのよ」

「うん・・・。」
「なに?」

「私、堕胎を決意したわ」

「え?」
(何のことだ?)
「何のこと?」
(どうなってるんだ?)
(こんな女見たこともないぞ)

「だから、産むのをやめたの。」
「あなたは、反対すると思ったけど、
私、もう決めたの。」

「・・そう・・・。」

「あら、怒らないのね。」
「あんなに喜んでくれてたのに。」

「怒るも何も、君はいったい・・。」
「だれなんだ?」

「アハハ、何いってるのトシカズ?」
「さっきから、ぼーっとして。
どれくらい私をバカにすれば気が済むのよ。」

「・・・・。」
「君の事しらないんだ」

「挙句の果てには、バカのフリ?」
「冗談じゃない!!いい加減にしてよ!!」
「あんたのせいよ!」
「あんたのせいで私の人生はボロボロだわ!」
「私の人生返してよ!」

(なんだこの女・・・。)
(・・・うるせー女だ。)

「口先ばっかりで。」
「私の前では、嬉しいっていいながら、
こそこそ、他の女と会っては、いつでも
ここから、逃げる準備をしてたんでしょ!」

「それはないよ」
(だって、しらねーもん)

「ウソばっかり!」
「もうたくさんだわ」

(あっそ・・・。)
『痛っ!!!!』

「あなたが悪いのよ、もうおしまいだわ
あなたが全部悪いのよ」

胸に鋭い痛みを感じてトシカズは目を覚ました。

「はぁ はぁ はぁ・・」
「なんだ この夢・・・。」
「俺刺されたのか?・・・」
ハハハ!
「こんな夢見るなんて!」

「腹減ったな」

空腹を感じて、近くのコンビニまで
出かけようとドアを開けた瞬間、
301号室の女が、ドアの前を横切った。

アッ
(夢の中の女だ・・・。)
 
   
Posted at 22:53 / 五反田 / この記事のURL
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美女 第4話 五反田 / 2005年10月08日(土)

タバコを買い終えて部屋に戻ると、
隣の部屋の前には例の変なモノがまだ置いたままだった。
トシカズはちらっと見てすぐ部屋に入った。

『……眠っ…。』

タバコをふかしながトシカズはベッドに横になった。

昨日も朝まで客に付き合っていたので全然と言っていい程、
寝ていないのだ。


ガガガガガガ……


3日前から始まった道路工事のせいで、
昼間に睡眠を摂るトシカズの生活は妨げられていた。



ホストという職も、昼間に寝るという生活も、
本来心地よいはずの陽射しにムカついている自分にさえも、
嫌気がさしていた。

吸いかけのタバコを消し、ぼーっと天井を見つめていた時、


〜♪ぉさかな〜 くわえた〜どらねこっ〜♪〜

工事の音の合間に、壁の向こうから陽気な歌が聴こえてくる。


『……隣のオンナ…サザエさん歌ってるよ…』


トシカズは、たかがそんな事で、久々に腹の底から笑った。





 
   
Posted at 10:59 / 五反田 / この記事のURL
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美女 第3話 塩浜高原 / 2005年10月06日(木)
この場所に来るのは、3回目だった。
初めての時は、記憶にも遠い幼少の頃、
2回目は、遠い知り合いの婚約パーティーで。
当時は、「こんなところでパーティーなんて、センスうたがうわ」
と否定的だったが、こうして一人でゆっくり来てみると、
そう悪いものでもない。
 2年前、婚約していた彼とケンカ別れをしてからというもの、
奈美はすっかり、やる気を失っていた。
「そろそろ、本気出さなきゃね・・・。」

「めんどうだわ」
奈美の口癖だった。

ここへ来たのは、自分を奮い立たせるためだった。
幸せな人たちを見れば、自分も幸せを望むだろうと。
だが、その考えは全く裏目だった。
カップルたちを見れば、やがて来る決別の一幕が見えるし、
幸せそうな家族には、大衆的な汗臭さを感じるだけだった。

「とりあえず、引っ越そうかな・・・。」
 
   
Posted at 21:21 / 塩浜高原 / この記事のURL
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美女 第2話 五反田 / 2005年10月05日(水)
『なんだ?コレ?』
昨日、新しい住人が入った301号室の前に
不思議なものが置いてあった。

気にはなったが、あまり詮索するのが好きではないトシカズは
足早にマンションを出た。

『ったく、なんでこんなに暑いんだよ…』

ぶつくさ文句を言いながら、近くの自販でタバコを買った。

ホストをしているトシカズには、
昼間の陽射しはキツいものがあった。

ホストという夜の仕事を始めて1年が過ぎていた。


もともとルックスがいいので
トシカズの携帯のメモリには女の番号がびっしりだった。

今日もトシカズのうわべだけを知ってる女達が
トシカズに酒を浴びせに来るのであろう。


考えただけでトシカズはうんざりだった。
 
   
Posted at 19:39 / 五反田 / この記事のURL
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美女 第1話  五反田 / 2005年10月04日(火)

うだるように暑い、夏の午後だった。
なにやら、隣が騒がしい。
3年間、空いていた301号室にようやく
住人がくるらしい。

「チッ・・学生は勘弁してくれよ・・・」
自分の学生時代を想像してトシは
不機嫌そうに顔をゆがめた。
作業員と住人との会話が、窓際から聞こえる。
「・・・おん・・な・・?・・か・・・」

トシカズは、特定の女と交際するタチではなかった。
いつだって違う女を連れてたし、連れている女が女全て、
最高の女だった。
だが、全ての女たちは本当のトシカズを知らなかったし、
トシカズには女が幾人もいることを、彼女たちは
重々承知していた。
それでも女たちは、トシカズにむちゅうだった。

全てがトシカズにとって、順調だった。
この日までは。
この、わけのわからない”もの”をみるまでは・・・。

引越しの翌日、301号室のドアの前に、
キレイに手入れされた、スケールが
おいてあった・・・。

 
   
Posted at 20:58 / 五反田 / この記事のURL
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