SEEDER - 第九話:滲む染み。

April 11 [Fri], 2008, 10:03
そうだ、父の話しをしようか。

- 西暦5240年 冬・帝都:ヴェリカ -

父を探し求め、当てのない旅路の果てにやっと辿り着いた父。
私が40歳に差し掛かろうかという頃だった。

空はもう真っ暗で、街灯に映る雪が印象的な夜だった。

長い間夢見た再会は、冷静すぎて正直、あっけない結末のまま幕を閉じた。

その頃、父は不治の病で衰弱していた。

- 帝都:ヴェリカ中央区・ニア -

L≠iqid達の住む、超高級居住区である、このニアに、まさか私が自ら足を運ぶ事になろうとは…。

中央区に入るには、7つのゲートを越えなければいけない。
その1つ1つが厳重に警備され、外部の進入を許さなかった。

当たり前である。

ここはヴェリカを仕切る、ヴェリカ最高幹部達の、皇族達の居住区だ。

何かあってからでは遅い。

ヴェリカの持てる最高のセキュリティがなされた街、ニア。
そして、娯楽に官能、国の持てる全てを惜しみなく注がれた街。
眠ることのないその街の姿はまさに不夜城である。


一介のE:liteでは、例えL≠iqidと同伴していても入ることさえ許されない街へ、
私が入ることが出来たのは、至極簡単、そう、あの男…、父の力だ。

父はどうやら、風の噂で私が捜している事を知り、極秘裏に私と会う手はずを整えた。
今まで音沙汰の無かった父が、ここにきて動き出したのは理由がある。

彼はもう、長くはない。

自分が死ぬ前に、一度、息子に会っておきたかった、、、とでもいう、所謂、親心ってやつだろうか?

その本心はわからないが。


彼の職業はヴェリカL≠iqid…レベル5、つまり…紛れもなく皇族であり、
このヴェリカを仕切る力を持つ者の一人だった。
正式には、L≠iqidレベル5、甲・景式、銃鋼騎隊:ヴァルハラ、隊長のド=ノヴァ。
そしてルチアの参謀、つまり軍師だ。

そして、父はL≠iqid。
私の家系はE:lite。

察しの良い人ならもうおわかりかも知れないが、父にはL≠iqidとしての幸せな家庭があった。


元々ヴェリカの最高幹部クラスで多忙な毎日を送っていたわけだが、そりゃそうだ、帰って来れるわけもない。
そして、E:liteには似つかわしくない程の私の家系の莫大な資産もここにきて、頷けてしまった。


母は愛人だったといえ、父を…軍に二人と居ない軍師である父を、誇りに思っていたのだろう。

そして、私に、父を重ねたまま、死んでいったんだろう。


ベッドで横になったまま、ろくに会話もままならない父に対して、私は可笑しい程冷静で。
むしろどこか客観的に見れていたのかもしれない。

だから、父を恨むこともなかった。
その代わり、愛情も、芽生えることもなかった。

母さん。

きっと私は母さんの期待に応える事はできそうにありません。

そう、思ってしまった。

父に背を向け歩き出した私は、この先訪れる大きな闇を無意識の中で薄々察知していたのかもしれない。


さようなら、父さん、母さん。


ずっと滲んでいた、私の心の染みが、今、やっと白に戻った。

明日から、私は何を想い、生きればいいのだろうか?

津々と降り注ぐ、雪の闇へ、私と私の想いが溶けていく。
溶けて流れたその先に、鳥の囀るような春は待っているのだろうか?

何もわからないまま、闇に消えた。

SEEDER - 第八話:白い反乱分子。

April 07 [Mon], 2008, 13:30
- 西暦5513年 スタウト半島: 死者達のゆりかご-


あの出来事から10年の月日が流れた。
切り立った崖は、今日も生者の呼吸を拒む。

この10年間、息を潜め、覚醒種の改良と研究に精をだしていた。

だが、ただ、息を潜めていたわけではない。

着実に、脈々と、準備は進んでいた。


歳も300歳を越えたというのに、衰えぬ身体。
全て、命のカードと覇王の種のお陰だろうか。


Mistとなってしまった今、迂闊に歩き回るわけにはいかない。
今は、まだ『その時』ではない。

今は…、まだ……ではない。



- 西暦5539年 ヴェリカ直轄:ジェイド城-

この年の春、ロアが何物かにより殺害された。
死因は毒殺。

犯行に及んだのは…


アイドだった。


ロアは国民を虐げるルチア5世の悪政に、異を唱える事もなく、
そして更に激しくS;;eed達を虐げ続けた。


アイドはE:lite家系だったが、そこまで裕福ではなかった。
そしてアイドには2人の妹が居た。

一番下の妹は、鋼鉄の心臓を持っていなかったのだ。

虐げられることを恐れ、アイドの家族は、ただ、それをひた隠していた。

それが他Eliteに気付かれ、虐げられた挙げ句、殺されてしまった。

ロアに助けを求めたアイドだったが、所詮S;;eedの事。

ロアが相手にする訳もなく、逆に愚かだと罵られ、更には家系まで馬鹿にされ、逆上した上での犯行だった。

いや、アイドは常々、この階級制度への疑問は持っていた。
弱者だからこそ、抱える痛みを、アイドは知っていた。

ラドゥバス部隊のアイドへ寄せる信頼は厚かった。
私も厚い信頼を寄せる一人だ。

この事件以降、ラドゥバスは、ヴェリカへの反旗を翻し、ジェイド城を占拠。


アイドは『全ての国民に自由と平和を』と掲げ、独立国家、ラドゥバスを立ち上げた。
以降、ジェイド城は、ラドゥバス城と名を変える事になる。


ヴェリカへ住む、多くのS;;eed達が、数多の危険を顧みず、ラドゥバスへ亡命したのは言うまでもない。


だがしかし、帝国からすれば、ほんの一つの弱小国家にしかすぎず、

ラドゥバスが建国した直後から風前の灯火であった事には変わりはなかった。


そして、私は意を決し、アイドへ会う事を決めた。



- 西暦5540年 独立国家ラドゥバス-

久方ぶりに訪れたセイクリッド・ヒルは、懐かしく。
完全にあの頃の色彩を取り戻していた。

何かが違うと言えば、もうこの街に、ジェイドの民達は居ない。
忙しなく動き回る、あの奇妙な風体も、もう今となっては、過去のモノなのだろう。


私はあまり目立たぬように、城へ向かう。

が、やはり、門番に止められてしまった。

門番『何者だ!!』

『流浪いの種売りでございます。』

門番『…種?花屋が城に何の用だ!?ん…待て、あんたは…』

どうやら、門番は私に気付いたようだ。

門番『誰か至急、王へ通達を!!マロゥが来たと伝えるんだ!!』


この謁見は私にとって、賭であった。


乗るか、反るか。


反れば、私はまた、孤高の志士だろう。
だが、アイドは必ず乗ってくれる。
そう、信じているから、ここまで来たのだ。


5分とせず、城へ案内された。


まず、第一段階クリアだ。


長い廊下を歩き、謁見の間へ通された。


玉座に鎮座していたのは、紛れもなくアイドだった。

アイド『遅ぇな。すぐ城へ向かえと言ったじゃないか』

久しぶりに見るアイドの目には、うっすら涙が滲んでいた。


私は、反逆者となった経緯を話そうとしたが、アイドは首を振る。

アイド『私はマロゥ、お前を信じている。お前は義に厚い奴だ。義を通したんだろう?』


何故だろう。


この男の前では、私は全て見抜かれているようだ。
私の方が何百年と長く生きているというのに、人の心を動かす力を、やはりこの男は持っているのだ。


私は、全て包み隠さず、話した。
自分の身体に埋め込まれている4つのカードの事、
エリフという男と創り上げた、覚醒種の事、
自ら埋め込んだ、覇王の種の事。

アイドは私の話しに驚きながらも、少しずつ受け入れ、
そして言葉を噛みしめ、私のその一言一言を、真剣に聞いていた。

アイド『もう一度、ラドゥバスへ戻らないか?』


どれほど、その言葉を待っていただろうか。
だが…今はまだ、時ではない。


必ず戻るが、まだ時ではない。そう伝え、アイドへ小袋を渡した。
中には数種類の覚醒種。


種の力を生かすも殺すも、その人次第だ。
植えられる人間を見極めるのは、与える方だ。

アイドはそれが出来る男だと知っている。

これが今のラドゥバスがヴェリカからの侵攻へ耐える為の、唯一の方法だと告げ、私はラドゥバスを去った。


いつの日か、また、あの白装束を身に纏える事を願いながら。

SEEDER - 第七話:贖罪の涙。

April 07 [Mon], 2008, 11:49
私たちがセイクリッド・ヒルの半分を鎮圧した頃、東門と西門が同時に陥落した。
瞬間に雪崩れ込むイグニスとジルドアーム。

フィンレルが相変わらずな口調で皮肉を漏らす。
『おやおや、私達としたことが、どうやら遊びすぎたようですね。ラドゥバスの皆さんもこれでは暇でしょうねぇ。では、私達が城を陥落させますので、ゆっくりと休んでいて下さい』

そう告げると隊は城を目指した。

アイド『気にするな。私達は私達の仕事をするだけだ。全班に通告、継続してセイクリッド・ヒルを鎮圧するんだ!』

そして、私達は『殺戮』を繰り返す。

真上にあった太陽が西に傾き、赤く染まっていく頃、セイクリッド・ヒルはラドゥバスにより完全に陥落した。

残すはジェイド城のみである。

アイド『全班合流だ。遅れるな!これよりジェイド城へ行く!!』

白夜の行進である。

城を目指す途中、私の目をひとつの建物が奪った。

エリフの家である。

…何も想うな。そう、今は何も考えるな。何度も自分に言い聞かせる。
瞬間建物の中で何かが光る。

まさか。

彼は生きているのか?

アイド『どうした?』

私は何も言えなかった。

だが、アイドは何か察したのだろう。

アイド『行ってこい。だがすぐに城へ向かえ』

そう告げるとラドゥバスは城へ向かった。

私は走る。

そして…ドアを開けた。


静まりかえる屋内。


耳鳴りがしそうな静寂を切り裂いて、エリフの名を呼んだ。


『その声はマロゥか!?』

地下研究室への扉が開く、そこに、エリフは生きていた。

『私を殺しに来たのか?』

馬鹿な。そんなわけはないだろう。首を横に振る。
エリフ『外は危ない。早く地下へ!』

セイクリッド・ヒルで地下研究室など作っているのはエリフだけだろう。
生き延びた理由が明白になった瞬間だった。

エリフ『みんな死んだか。大方、残すは城のみってとこだろう?私も見つかったら殺されてしまうな。』

青冷めた顔だ。無理もない。

いくら友といえ、仲間を殺してきた敵が、今、目の前にいるのだ。

エリフ『私は君を信じている。この殺し合いも、国のためだろう?君の本意ではないことくらいわかっているさ。君の望む世界も、知っているつもりだ。そして…逃げ隠れしていたが、もうこれ以上私も生き延びようとは思っていない。私の意志は君に託したつもりでいる。だから…その手で私を殺してくれないか?』

馬鹿な。世迷い言を言うな。

エリフ『何処の誰とも知らぬ者に、志半ばで殺される無念よりは、全てを託し、友に殺される方が幸せだろう。君はもう覚醒種についての知識も得ている。こんな愚かな世界を終わらせてくれ…戦争のない平和な世界を!!』

エリフの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

瞬間、静寂を裂いて響き渡る拍手。
『傑作ですねぇ。ドラマですねぇ。泣けますねぇ。』

…フィンレルだ!!

フィンレルが此処に居るということは、ジェイド城陥落…という事か!早すぎる。

フィンレル『早すぎる、とでも言いたそうな顔ですね。まぁ、所詮こんなものですよ。それにしても…友情ですか。いいですねぇ。ですが敵国の兵に情けをかけるのですか?』

ニヤニヤと嫌らしい笑い方をする男だ。

フィンレル『そんな情など1円にもなりませんよ!!』

私の頬を何かがかすった。

ドスッと鈍い音が響く。

フィンレルの投げた剣がエリフの命を奪った。

エリフ『…マロゥ…私との約束を……』

!!!!!!!!!!!!!!!!

私の中で何かが音をたてて崩れ、そして弾けた。

フィンレル『おっと。失礼、手が滑ってしまいました。お友達は…あらあら…まぁ敵国の兵ですし、此処は戦場ですからねぇ。フフ。』

私は無意識に剣を抜きフィンレル目がけて斬りかかった。

フィンレル『フ…愚かな!!』
軽やかに私の太刀筋を避ける。
『要らぬ情けに溺れたか馬鹿が!!剣を抜いたら反逆者だというのにな!!』

反逆者?だから何だと言うのだ!?
友を殺されて、黙っていられる程、お国万歳なわけではない!!

『E:liteレベル1風情が血迷いやがって!!格の違いを見せてやろう!!』


私は所詮、暗殺者だ。接近戦に秀でているわけではない。
だがしかし、フィンレルもパラディン、平均的に特化しているとはいえ勝ち目が皆無なわけではないだろう。

踏み込んでは斬り続けるも、その太刀筋は完全に見切られていた。

フィンレル『愚かすぎる。』

じりじりと詰め寄られ、壁際へ追いやられる。


もう…後がない。


このまま終わるのか?上意に逆らえず、愛した街並みを人々を殺し、そして友も殺され、仇もとれずに、私まで反逆者として吊し上げられ、死ぬのか!?


…いや、私にはエリフとの約束がある。


…まだ…死ねない。


フィンレル『私は優しいな。そうだ、5秒だけ待ってあげましょう。その間に跪き、私に平伏し、己の愚かさを悔い改めるのであれば、此処での事は水に流しましょう』


馬鹿な。何故私が跪かなければならないのか。

目を閉じる。

エリフとの日々を思い出す。


その意志を、私が守ろう。


その約束を、私が果たそう。


目を見開く。


フィンレルへ向かって告げる最後の言葉となろう『声』を上げた。

『よく見ておけ』

私は自分の胸に剣を突き刺した。

フィンレル『馬鹿な。自害か。愚の骨頂だな』

自害?

馬鹿はお前だ。


胸を切り開き、テーブルに転がる覚醒種を、その心臓に植えた。

─ 覇王の種 ─

異常に脈打つ鼓動。
細胞という細胞が息吹きを上げ、再生を繰り返す。

みるみるうちに切り裂いた胸の傷が癒えていく。

フィンレル『お前…何をした…!?』


エリフの意志を植えただけだ。
脳裏にエリフの日々が過ぎる。
『これは覇王の種と言って、恐ろしい種さ。使う人を間違えたら、きっとこの世界は滅びてしまうだろう。それ程、恐ろしい種さ。研究ってのは面白いもんでね。失敗から突拍子もないもんが出来てしまう事もあるもんさ』


フィンレル『化け物が…、もはや情けも無用だな。死んでもらうぞ!』

化け物か…、お前の方が、よっぽど人の皮を被った化け物だろうが。

フィンレルが斬りかかった。



が、



…遅い。遅すぎる。あの早さは何処へと言わんばかりのスローモーションだ。

太刀筋を見切り横一閃。剣を振り切った。

ゴトッと、転がるフェンリルの身体。


仇はとった。



冷たくなったエリフの身体を抱き、流れる涙を止めることができなかった。

私はエリフの亡骸をかかえ、逃げるようにセイクリッド・ヒルを離れ、スタウト半島を目指した。


翌日には、フィンレル戦死、マロゥ反逆者という通達が大陸全土へ広がった。


ジェイドは滅び、ヴェリカ直轄となる。

城主に任命されたのは、ロアだった。


そして、気の遠くなるほどの長い…長い逃亡生活が始まったのである。
プロフィール
  • ニックネーム:kaito
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この小説はWizardの音源に付属している歌詞カードだけでは伝えきれない、カイトの脳内で繰り広げられている世界を文字におこした物です。
話しによっては、グロテスクな表現や不適切な表現、青少年の育成に対して不適切な表現を含む可能性があります。ご注意下さい。
また、何かあっても一切責任は取れませんので、重ねてご注意下さい。

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