記憶 1.1 

2005年09月18日(日) 21時17分
ワタシが家を飛び出したのはいつだったのかもう覚えていない。
少なくても、一ヶ月以上前だ。
これが一週間ぐらいだったらそれはそれは濃い内容の一週間だったって胸を張って言える。
とりあえず、着の身着のまま飛び出してきたワタシは何日も街をふらついた。
いくつかの電車を乗り継いで、東京の盛り場に付いたのは日が沈む頃だった。
私がよく利用していた駅とは違い、東京の駅は人の移動が早かった気がする。
ツカツカツカツカとどの人も早足で歩いていた。
耳に聞こえてくるのは携帯電話のコール音と無機質な場内アナウンスの声だけだった。
線路も何本もあり、初めて来たワタシにはどれが山手線でどれが丸の内線だかわからなかった。
あてもなく駅をフラフラしていたら鉄道警察官に声をかけられた。
「君、高校生か?こんな時間までこんな所にいちゃダメじゃないか」
「え、えと……19歳です」
「とりあえず、事務所まで来なさい。親御さんに連絡をとるから」
いくらワタシが「19歳です」と言っても信じてはくれない。
ま、本当は14なのだから通じないのもある意味仕方がないといえるのだが。
袖を捕まえられて引きずっていく様に連行される。
「離して」
その声もむなしく、グイグイとひっぱられる。
ワタシはここで東京の怖さの洗礼を受けた様な気がした。
テレビとかでは犯罪に手を染める若者を特集しているけれども、この人達もやっている事はほとんど拉致のようなものだ。
いやがるワタシを無理矢理連れていこうとしてる。
すく近くでどこか懐かしいチャイムのような音が聞こえて来た。
「八番線、ドア閉まります。ご注意下さい」
ワタシがふと見上げると、そこにはきみどり色の看板に8の文字が書いてあった。
止まっている電車のドアも開いている。

「離して!」
ワタシがそう大きな声をあげて服をつかんでいた手を振りほどくと、ドアの開いている電車に飛び乗った。
それまで神妙だったワタシがいきなり暴れ出したものだから、その鉄道警察官の人達も一瞬面を食らった様に止まり、つかんでいた手を緩めてしまったのだろう。
ワタシを再度捕まえようと手を伸ばしたけれど、その手はしまったドアに立ちふさがれていた。
そして、ワタシを乗せた電車はゆっくりと動き出した。
車窓から見える暗闇に包まれた街並みは先の見えない私の生活を暗示しているかのようだった。

日常 1 

2005年09月09日(金) 20時48分
「ねぇ…、こうしているのも暇じゃない?」
「無為な時を過ごすのも心地よいものだ……」
「お腹すいたんだけど」
「冷蔵庫のモン、勝手に食ってていいぞ」

何時もと同じような平日の午後。
太陽の暖かさが私達を包んでいる。
その暖かさに精一杯包まれながらワタシ達は過ごしていた。
ワタシと宗さんはそんな事を言いながら、宗さんのアパートの部屋でたたずんでいる。
何もやる事もなく、窓の外を見ながらボケっとしているだけだ。
やや汚れた窓の外には細長い木が緩やかな風になびかれている。
その先には、赤っ茶けた外装の家が見える。
その家は空家なのか、夜でも電気がつく事はなかった。
宗さんの部屋の窓から見える景色は限られていて、それくらいしか見えない。
もっとも、高級マンションから都会を一望できるほど見えるとははなから期待していないけれど、この景色はあまりにも狭すぎる様な気もする。
ま、この部屋を借りている本人がそれで納得しているのだから、ワタシとしては文句をつけようもないのだがね…。

ワタシと宗さんはここで一緒に暮らしている。
でも、部屋の名義は宗さんの名義だし、冷蔵庫の中の物だって宗さんが買ってきた物だ。
ワタシの持ち物と言ったら、洗面用具と服一式、それにそれらを入れている少し大きめで真っ黒なボストンバックだけだ。
平日の昼下がりにアパートの一室に二人でいるからといっても、ワタシと宗さんが特別な間柄――恋人関係や男と女の関係――というわけではないのだ。
現に数日前まではお互いに顔も知らない者どうしだったのだから。

ワタシが私でいるために-エピローグ 1- 

2005年09月02日(金) 7時42分
宗さん、元気してますか?
私はなんとかやっております。
この手紙を宗さんが読んでもきっと宗さんの事だから、「そうか」の一言で済まされるのかもしれないけど (笑)
少しでも、私が居た事を懐かしんでくれると、個人的にはとても嬉しかったりします。

あれからどのくらいの月日が経ったんでしょうか?
一年じゃきかないか…。
私は今、普通の女の子と同じように学校に通っている日々を送っています。
学校って結構面白い所だったんですね。
国語も数学も、歴史の授業もどれもこれも私には新鮮な感じがして面白いです。
そうそう、この前テストで100点をとっちゃったんですよ。
そのおかげかどうか知りませんけど、それ以前よりぐっと知り合いが増えました。
みんな「ここわかんないんだけど・・・」って教科書持って私の所に来るの。
私はそれに「はいな」って答えて一緒に解いてみるんだけど、たまに解けない所もあるんだなぁ、これがw
そういう時はこっそり先生に聞いてから教えたり(ナイショ)
それが理由なのか、なんと大学を視野に入れるくらい成績が上がってるんよ、私。(えっへん)
桜花大学っていう大学を受けるつもり。
お金とかは奨学金を借りるんだ。そのメドも一応ついてる。
だから、後はさらなる努力・・・かな^^;

そちらはどうお過ごしですか?
真面目に頑張ってますか?
いや、元不良娘の私が言っても説得力がないね^^;
地元の皆さんも元気していますか?
揚物屋の時江さんやダンナさん、あの背中にいた赤ちゃんなどは元気でしょうか?
私を宗さんの奥さんと間違えた八百屋や魚屋のオジさん達も元気でしょうか?
たった少しの間暮らした街並みですが、今の私にはとても懐かしく思えてなりません。
きっと私はあの街と宗さんがスキだったんでしょうね、きっと。
い、いやだなぁ、スキって言ってもそういう意味じゃないよ。
こういう風に言うと、宗さんは「そうか」っていう一言で済ましちゃうんだろうなぁ。
でも、その「そうか」っていう声がなんだか懐かしいというか、また聞きたいというか……。
なんだか湿っぽくなっちゃったかな?
また手紙書くね。
かしこ。

PS:宗さんからも手紙送ってよ。一方通行じゃ寂しいからさ。

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