本の現場 永江朗 (ポット出版)

August 28 [Fri], 2009, 22:43


本書は雑誌『図書館の学校』(NPO図書館の学校)2005年4
/5月号〜2007年2/3月号の連載をもとにしている。

毎日、本を読んでいる私は、世界には本があふれていて、読
みたいと思う新刊も続々と登場する。それを簡単にネットで購
入できる。便利な世の中になったものだ。
しかし、本書を読んで、出版界は今、いくつもの大きな問題を
かかえているのだと知った。

大きな問題の一つは、本が売れなくなったということである。書
籍の売上額の合計は97年からマイナスに転じたのだそうだ。
97年、消費税率が3%から5%にアップされて、本の割高感
が浸透したということなのか。
もう一つの大きな問題は「活字離れ」が叫ばれているのに、新
刊点数は30年前の4倍にも増えているという。

出版社は新刊を次々に出し続け、本屋さんでは新刊を置く場
所を作るためにも、少し古くなった本は、すぐに取次店に返品
する。その結果、本の短命化が進み、読みたい本に本屋で出
合える確率はどんどん低くなるという。

著者は出版社、編集プロダクション、書店、読者への取材を通
して流通システムの問題点を浮かび上がらせている。
沢山の統計データーから、問題の深刻なことが一目瞭然であ
る。自費出版事情、ネット発の本、フリーライターの現状、編集
プロダクションの役割、フリーペーパーなどの情報無料化、など、
「新刊洪水」と本が売れないということは、さまざまな事情がか
らみあっている。

11章の「本屋大賞」がとても面白かった。
そもそもの始まりは2002年下半期、書店員の不満が沸騰し
た。それは横山秀夫の「半落ち」や角田光代の「空中庭園」と
いう候補作がありながら、直木賞の受賞作なしという結果に対
してだった。書店員は受賞してほしい作家や作品が選ばれな
かったというショックに加え、売り場が盛り上がらない、売上が
伸びないというショックを抱えて、もう直木賞なんかに頼らず、
自分たちで選びたいとホームページを作った。全国の書店員
によびかけて「自分の店で売りたい本」を選び一次投票で上位
10作を決め、その10作を全部読んだ人が2次投票に参加で
きる。こうやって選ばれたのが「本屋大賞」なのだった。

第1回の受賞作は小川洋子さんの「博士の愛した数式」だっ
た。この授賞式はテレビでも大きく報道され、浜本茂「本の雑
誌」編集長がスピーチで言った「打倒!直木賞」は拍手喝采さ
れたという。この熱気が私にも伝わってくるようだ。
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