旅人は死なない リシャール・コラス, 堀内ゆかり (訳) (集英社)

February 11 [Sat], 2012, 21:21


著者は18歳の時日本を初めて訪れ日本に恋した。その後パリ大
学で日本語を学び、フランス大使館勤務を経てフランスの化粧品
ブランドの日本支社へ。'85年にシャネル社に入社し、'95年から
はシャネル日本法人代表取締役社長でもある。本書は彼の4冊
目の著書である。

日本で暮らすことを選択する。それはぼくのようにモロッコ南部の
何もない静かな土地――そこでは気づかぬうちにゆっくり時が流
れている――で育った人間にとって逆説である。日本はどこを向
いても雑踏、騒音、喧噪ばかりだ。日本人はみな絶え間なく動き
回り、自然を前にして瞑想する感覚――ぼくはそれを砂漠のベドウ
ィン族から学んだ――を持っていないか、あるいは失ってしまった
のだ。
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そしてぼくは理解したのだった。日本で受けるプレッシャーに屈して
爆発したくなければ、今こそ自分の源流に立ち戻り、空虚や沈黙、
絶対的なものでぼく自身を満タンにすべき時なのだと。
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「そんなふうにひとりで旅するなんて、寂しくないのかい?」この計画
を話した時、日本人の友人は尋ねた。
「まさにそれこそが一人旅の幸せなんだよ。胸が締めつけられるよ
うな寂しさ。自分がどれほどちっぽけで,脆い存在かを感じること
が!」
(「ボワイヤージュ、ボワイヤージュ」より)

冒頭の「ボワイヤージュ、ボワイヤージュ」はモロッコ南部で育った
「ぼく」が慌ただしい日本に住み、猛然と働いた。そしてある時休暇
の必要を感じて、アメリカの荒野の先住民の住まいを訪ねる話である。
本書は時代も国籍も異なる主人公が登場するがいずれも孤独を
求めて、日常から脱出して不思議な旅をする19の短篇から構成
されている。あとがきを読むと、著者の実体験に基づいているもの
が多い。
人の一生を旅に例えることが多い。人は孤独を怖れるとともに孤
独を求めて生きるものなのではなかろうか。

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