現実逃避

May 17 [Thu], 2007, 15:39
目が覚めたと同時、涙が零れ落ちた。
頬を伝う感覚。
ぼやけた視界。

「アスランが好き。」

どうしよう。
夢の中まで、彼一色だ。





仕事をする彼は、凛としていて隙がない。
指の先まで無駄のない動作。
綺麗だなぁと、ぼんやりと思った。
愛しい。
…切ない。
友達のままで、いられたら良かったのに。
自分の思いだけが、いつの間にか育ってしまっていて。
視界に入るだけで、胸がざわめく。ぎゅってする。
唇が疼く。
触れて欲しいと思う。
抱きしめたい。抱きしめて欲しいと、全身が強請っている。
はしたない。
それなのに。止まらない。
愛して欲しくて。
こんな風に媚びた目で、彼を見たくなんてないのに。

「キラ?」

心配そうな顔。
困ったように眉を寄せて。
それから、どうしたんだ?そういって、困ったように笑った。

すき。

そんな、とんでもないことを言い出してしまいそうで。
唇を引き結ぶ。
ふるふると顔を振る。
なんでもない。
ただ、君が好きなだけで。
口なんて開けなかった。もう、我慢なんて出来ないぐらい、育ってしまっている。

「お前、熱でもあるんじゃないのか?」

目が潤んでる。
そういって、額に触れる手が、優しくて。温かくて。
涙が零れた。

「キラ?」

少し慌てた彼の声に。
あ。
しまった。
心配をかけた。と、焦るココロと。
自分のことで慌ててくれる、そんな彼を見れて、悦ぶココロと。

いやだ。
醜い。

こんなの嫌だ。
こんな風に、君を見たくなんてないのに。
こんなに汚らわしい気持ちで。
だから何も言えない。
大事な友達。
それでいられたら良かったのに。今の自分はこんなにも醜く想っている。
何でも話せた親友だったはずなのに、今は何も言えない。
どうやって距離を取ればいいのか分からない。
だって好き。
こんなにも好き。
大好き。
だから、何も言えない。
怖くて言えない。
受け入れてもらえないのが怖くて怖くて。
そんなことないって、優しい彼なら。きっと、色々受け入れてくれるって、本当は分かっていて。
でもそんな風に期待する自分が醜くて醜くてたまらなくて。
だって好き。
君に欲情してしまうぐらい。

爆発しそうなぐらい、胸の中を占める想い。
壊れてしまいそうなぐらい。
もうダメだ。
壊してしまう。
何を…?
関係を。
君との時間を。
君の思いを。
僕の、願いを。

思った瞬間駆け出していた。
後ろで呼ばれる自分の名前。


呼ばないで。


逃げたい。
もう君に会えない所まで。
本当に会えなくなったら、後悔するに決まってるのに。
そんなことを思う。


「キラっ」

掴まれた、腕。
抱き寄せられるからだ。
少し汗ばんだ、彼の肌。

あったかい。

互いの荒い呼吸。
ああ、やっぱり好き。
追いかけてくれた嬉しさ。
追いかけてくれると、頭のどこかで分かっていた。そんな、自分の狡さ。
本当に汚い。

「どうした?」

驚くぐらい、優しい問いかけだった。
思わず見上げると、至近距離で、彼の顔が、優しく微笑んでいた。

「なんで?」

なんでそんなに。何でそんな風に。
優しくしてくれるの。
どうして、こんなにも酷いことばかりする自分を。
どうしてそんな風に、根気強く。
待ってくれるの。
手を取ってくれるの。
こんなにも、醜い気持ちでいるのに。

本当は。
こんな風に。
優しくなんてして欲しくなくて。
そんなことを望んでなんていなくて。
ただ、君が笑っていてくれればいい。
友達としても。愛しい人という意味でも。
ただ。
友達として君の一番であれば。それはとても嬉しくて。
けれども。それだけで満足しない自分は。
もっともっとと強請ってしまう。
そんな自分が怖くて。だから。
距離が欲しかった。
ただただ。
追いつめないだけの距離が。
優しい君を。悩ませないだけの距離が。
だって、そうじゃないか。
苦しめてしまうって分かってるのに。
優しい君が。本気で真剣に悩んでくれるって分かっているのに。

自分の気持ちだけを優先することなんて出来ない。
思いのまま、全てを預けてしまうことなんて出来ない。
構わないというかもしれないけれど。
けれども。
大切なんだ。
アスラン。君のことが。
大事なんだ。
本当に本当に大事なんだ。
色んな欲を捨て去った先に残る物は。
ただただ大切だってこと。
悩ませたくない。

だって。
仕事に追われる君。
悩ませたくない。
こんな風に、自分勝手な気持ちのせいで。
悩ませたくなんてない。

だって困るでしょう。
親友だと思ってた男から。愛の告白なんて。
困るよね。
でも、大切に思ってくれている分だけ。
親友だと思ってくれている分だけ。
優しい分だけ。
君は苦しんで悩んで。
ただでさえ、いろんな事に悩んでいるのに。
きっときっと、追いつめる。

「キラ?」

「なんでもない。」

「キラ。…最近変だ。」

「どうして?」

追いつめたくない。

「何にもないのに。変なアスラン。」

気丈に振舞えたのは、声だけで。
零れ出す涙。


好き。


そこまで思っているくせに。
隠すことさえ出来ない。この気持ち。
ああ本当に醜い。
汚い。
こうして傷つけて、追いつめているんだ。
思い切りアスランの腕を振り切る。
驚いた彼の声。
思い切り、駆け出す。

「キラ!?」

アスランが好き。
どうしようもなく好き。





ごめんなさい。
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