柔道の事故死、突出して多いのはなぜ 学校関係者の隠蔽体質も一因(J-CASTニュース)

June 16 [Wed], 2010, 11:56
 2012年度から中学校で柔道などの武道が必修化される。一方、直近27年間で中高生らが柔道の部活動と授業で110人死亡し、他競技と比べ「突出して多い」との指摘もある。柔道事故で子どもを亡くすなどした家族らが今10年春に被害者団体をつくり、再発防止に向けた活動を始めている。

 明日6月16日、全日本柔道連盟(財団法人)は理事会などを開き、「安全指導プロジェクト」発足の承認について協議する。約30人のチームを立ち上げ、都道府県の関係者と連携しながら「今まで以上」の安全指導を徹底する計画だ。

■シンポジウムに柔道、医療、教育関係者ら

 この計画は、6月13日に東京都内であったシンポジウムで柔道連盟関係者が明らかにした。このシンポは、柔道の事故で子どもが亡くなったり障害を負ったりした家族らが10年3月に設立した「全国柔道事故被害者の会」が開いた。柔道関係者や医療、教育、行政関係者ら約150人が参加した。シンポ直前の10年5月にも、大分県の高校で柔道の合宿中に男子生徒が相手に投げられて死亡する事故があった。

 1983年から2010年6月1日までに、授業や部活動で中高生110人が死亡した――愛知教育大の内田良講師(教育社会学)は、シンポの中でこう発表した。内田講師の事例研究によると、例えば中学の部活動での死亡事故発生確率(10万人あたり、1998年度〜2007年度)は、「2.259」で、次に多いのは野球とバスケットボールの「0.287」だ。突出して柔道の数字が大きいことが分かる。高校の部活でも、柔道とラグビーが「圧倒的に高い」としている。

 同被害者の会会長で、04年に息子が脳障害を負う事故にあった小林泰彦さん(63)に話を聞くと、「関係者と協力しながら、とにかく2度と事故が起きないようにしたい」と話した。

 小林会長によると、シンポの中で被害者家族の1人が海外の事例を発表した。日本より柔道人口が数倍も多いとされるフランスや英米、カナダの柔道連盟や医療関係者に話を聞いたところ、最近複数年でいずれも練習中の子どもの死者はゼロだったという。カナダでは1990年代に死者が2人出たが、その後事故を徹底的に分析し対応策をまとめた結果、その後は死者ゼロが続いている、とも報告した。

■「もっと安全に取り組めるはずだ」

 柔道連盟や文部科学省などは、柔道の安全指導のマニュアルはすでに作っている。安全講習会も頻繁に行われている。小林会長は、「日本はなぜゼロにできないのか」と訴える。また、日本に欠けているのは、事故原因の分析だと指摘する。学校で起きた事故は、学校や教育委員会が情報を隠そうとする傾向が強いと感じており、情報開示の徹底を図る必要があると訴えている。

 それでも小林会長は、「柔道は素晴らしい競技」と言い切る。「危険だから止めるべきだ」ではなく、「もっと安全に柔道に取り組めるはずだ」との思いだという。

 シンポに参加したある柔道関係者は、被害者家族の話を聞き、「柔道への個人的な恨みはあるだろうに、そこを抑えて柔道界を巻き込んで再発防止に取り組もうという姿勢に感動した」と話した。

 日本柔道連盟に取材すると、13日のシンポへは担当者2人が出席したという。「被害者のご家族の気持ちへの理解を深めながら、安全対策をさらに徹底していきたい」としている。


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