タイトル未定 

2005年05月09日(月) 19時39分

走り抜けた。
戦っても戦っても終わらない、この戦の時に、逃げても逃げても広がる戦場を。
息を切らす暇も無く、ただ、ただ、今はひたすらに。

負け戦だ。
誰もがそう思っていた。だからこそ逃げていた。
土を蹴る音と、耳元を風が通り過ぎる音だけが響く中、俺は桂の名を呼ぶ。
「ヅラァ」
「なんだ」
桂はこっちを見ずに返事をした。
「気付いていない・・・訳が、無いよなァ?」
俺が問い掛けた瞬間、桂の肩がびくり、と揺れた。
走り続ける横顔が、歪んだのを見た。
「何にだ」
確かに、桂は気付いていたのだ。
それでも気付きたくない、口にしたくない、そういう感じだった。
でも、逃げているばかりじゃ助かるものも助からない。
「このまま敵どもに尻尾見せたまんま逃げていったって、仕方がないって」
「・・・・・・」
「俺よかずっと頭のキレるお前が、気付いていない訳ねェよなァ?」
天人たちはもうすぐ後ろまで来ている。
その最後尾は俺たち。その天人たちを連れてしまっているのも、確実に俺たちだった。
「寧ろこのままだったら俺たちだけじゃない、他の仲間までやられるぜ」
桂は黙って走り続けていた。
「何とか言えよ、皆死んじまうぞ」
「そんなこと・・・!」
絞り出したような掠れた声が、漏れた。
「わかっているんだよ・・・!」
「じゃァ、このままはマズいんじゃねーのか」
「ならば!!」
桂は立ち止まって俺の胸倉に食って掛かった。
俺を少し見上げるその目には、うっすらと涙さえ見える。
「ならば・・・どうしろというんだ・・・!」
こうも弱気な桂など、昔から一緒に居ても見たのは初めてのことだった。
弱音を吐く唇を噛締め、涙を流す目を見開き強い光を見せる。
「生贄」
桂は声が出なかったようだった。
「・・・なに、を・・・?」
「囮って、言った方がいいか」
「なにを言い出すんだ!晋助!!」
俺の服を掴む手の力が一層強くなった。声を荒げて、怒鳴る。

「でも 誰かが行かなきゃ 皆死ぬんだぜ」
「ならば俺が・・・!」
「駄目だ」

攘夷派シリアス祭 一章 

2005年04月25日(月) 20時51分
攘夷派シリアス祭 一章 『タイトル未定』

この企画は週間少年ジャンプにて連載中『銀魂』の攘夷派の作品を募集する祭です。
決められたお題に合わせて作品を募集しています。
作品のジャンルはシリアスオンリーです!
イラスト、小説、漫画、詩のいずれかでお願いします。


お題

001  始まりは、あの日の空。
002  紅く焼けた色が、やけに目に染みた。
003  あの頃の僕たちの笑顔を、僕たちはまだ
004  偽りだとは知らずに居た。
005  それでも、笑っていたかった。
006  奪われた僕たちの空は
007  哀しく雲が流れるだけで
008  蒼く冷めた色が、やけに目に染みた。
009  口にする事さえ、あまりにも
010  虚しすぎる嘆きの言葉を
011  僕たちは、ひとつひとつ、風にのせた。
012  寄り添いあって、共に暮らし
013  自分の存在を知る術など、無く
014  皆の存在だけが、自分の存在であった。
015  ひとの血の温かさよりも、囲炉裏の炎が好きだと
016  
017  
018  
019  
020  

そうして僕らは 

2005年04月12日(火) 20時17分
そうして僕らは、いつまでも願い続けて


空がきれいだと思う(4) 

2005年04月11日(月) 22時01分
「何かいいことでもあったの?」
店が暇で、厨房の掃除をしていた。
おれに話し掛けてきたのは、2つ年上でバイト先の先輩のミサキさんだった。
ミサキさんはフリーターだけど、美大を目指しているらしい。
「なんでですか?」
「だって、なんかニコニコしてたわよ」
そうだったのか、と少し恥ずかしくなって口元に手をやって緩んだ口元を整えた。
「べつに、何があった訳でもないですけど」
「ですけど?」
「今日もいい天気だな、と思って」
やっぱり今日はどこか気が抜けている。普段は気が付かないうちにニヤけてたりしないし、こんなこと他人に言ったりしない。いつもなら何でも無いですよ、で済ませるのに。
「そうね 昨日と違って、陽も暖かい。」
その時に、もうひとつこんなことを言ってしまった理由に気付いた。
そうだ、ミサキさんだから言ったのだ。
「ニコニコもするわね」
おれがこんなことを言ってもミサキさんはおれを笑ったりしない。
いや、笑っているのだけど、この人はいつも笑っている。
おれは時々この人が羨ましいんだ。
いつも何処か人とは違う所を見ていて、信じられないほどに真っ直ぐで。
そして真っ直ぐだからこそ、この人はまるで少女のように笑う。







メモ 

2005年04月08日(金) 21時26分

「あたしね ツヨシくんの手が好きよ」
「手、ですか?」
ミサキさんにバイトの休憩室で一緒になった時に、急に言われた。
おれが不思議そうに聞き返すと、そうよ、と頷いた。
「野菜刻んでる時の包丁持つ手とか押さえる指とかね、盛り付ける時の指とかね、
 あと、オーダーとってる時のペン握ってる手とかが、好きなの。
 なんていうのかな、野性的な中に、繊細さが浮き出てる。
 関節はしっかりしてるのに指はすらっとしてて、彫刻みたいなの。
 言い過ぎかもしれないけど、ひとつの美術品みたいな空気を感じるのね」
無口だと思っていたミサキさんが急にたくさん喋るから、おれは少し圧倒されていた。
それに、内容が内容なだけに、自分のことなのに何故だか関心してしまった。
「よく見てますね」
「あら、そういう意味じゃないのよ」
おれの言葉をどうとったのかは知らないけど、言いたいことはなんとなくわかったから、
わかってますよ、と返した。
それにしても、他人に興味の無さそうなミサキさんが
そこまで真剣におれの手を見てたなんて、意外だった。
自分で自分の手をじっと眺めてみても、やっぱり自分の身体に他人の興味を引くものがあるのかどうかなんてよくわからなかった。
「ミサキさんは手フェチなんですか?」
「わからないけど、偶然目にとまったのが手だったのよ。
 一目見て、あ、描いてみたい!と思ったの」
「モデルですか?」
「あら、やってくれるの?」
おれは女の人からこんなに面と向かってはっきりと褒められたのは、
もしかしたら初めてだったかもしれない。それも手を。
だからなのかわからないけど、おれは気づかない内に暇ですし、とOKしていた。

空がきれいだと思う(3) 

2005年04月07日(木) 21時13分
それからタツヤとおれは大学のことや最近ことの話をした。
二人とも話の途中に寝てしまったみたいで、
朝目が覚めると布団をめちゃくちゃにして二人でタツヤのベッドの上に居た。
今日はバイトだから、9時には出なきゃいけない。時計を見ると、もう8時半過ぎだった。
「タツヤ」
こいつはちょっとやそっとのことじゃ起きないというのは知っていたけど、一応言っていこうと思って話し掛けた。
「おれ、バイト行くからな また来る」
そう言ってタツヤの部屋を出て、階段を下りて居間を通る。
居間にはマキさんが居て、おれの姿を見ると笑いかけてくれた。
「あらツヨシ、はやいのね」
「はい、バイトなので」
マキさんというのはタツヤのお母さんで、すごくキレイな人だ。
お母さんっていうのもおばさんっていうのもやめて。すごく老け込んだ気分になるわ。
私はまだまだ若くいたいの。私は母親だけど、呼び名っていうのは私にとって重要なのよ。
自分が呼ばれる名前で、自分の意識っていうものは随分変わってくるものよ。
そう言っておれもマキさんと呼ばされている。
昔からよく遊びに来ていたおれに優しくしてくれている。
片親のおれにとっては憧れる存在で、親父はよく母さんが生きてたら、あんな人だと言っていた。
だからおれは時々マキさんを本当の母さんみたいに感じることがある。
「バイト、がんばってね」
マキさんは優しく笑っておれを見送ってくれた。
その笑顔は無邪気な少女のようで、本当に若い人だと思った。

夜中にずっと雨が降っていたから、朝になった今は雲がすっかり晴れていて、
もう充分に昇っている太陽の光が水溜りに反射して、キラキラ眩しかった。
風も幾分か弱くなっていて、静かに漂う雨のにおいが気持ち良かった。
今日も、がんばろう。そういう気持ちになれた。とても、自然に。

空がきれいだと思う(2) 

2005年04月07日(木) 11時09分
「そいじゃーはりきって吸ってみよー!」
「は?」
マジでやんの?タツヤはうんうん、とニコニコ笑いながら頷いた。
「幸せになろーよー さー、いってみよー!」
タツヤはハーッ、と大きく息を吸ってから、おれに向かってやってみ!と言った。
こいつと居ると、自分が自分でなくなるような気がする。
どんなにくだらないと思ったことでも、
本当にやってみれば、どんなことでもできるような気分になれた。
おれはさっきタツヤがやっていたように、上を見上げて大きく息を吸い込んだ。
なんか、変じゃない?とおれは言った。ははは、とタツヤは笑っていた。
風が少し強くて嫌だったけど、そのおかげで少し靴が乾いた。

 * * * * *

「あれ?お前ギターなんてやってたっけ?」
タツヤの部屋に入ると、古そうなアコースティックギターが転がってた。
楽譜なんかもちらほら落ちてた。
「いんやー、それオレのじゃないんよ」
「誰の?」
「タカオさぁ」
タカオっていうのは、タツヤの2つ下の弟のことだ。
高校3年生で、今年は受験生。おれ達と同じ大学を受けるらしい。
「へぇー、タカオがギターねぇ」
「なんか、音楽療法士になりたいらしいんよ
 ギターは昔から結構やってたみたいだしねー」
「音楽療法士?そりゃまた・・・」
すごいこと言うな。
タカオはタツヤと違ってしっかり者で、生真面目と言うのだろうか。
そんなタカオがギターなんて、イメージになかった。
「いいんじゃない?デッカい目標でさぁ」
「じゃあ兄弟二人で医療の道に進むんだな なんかすごいな」
「なんかねーすごいよねー
 燃えちゃってるみたいでさ、なんかオレに聴けとか言って、部屋にきたんよ」
おれは散らばってる楽譜を見てみたけど、拍子とコードが手書きで書いてあるだけで、なんだかわからなかった。
「うまいの?タカオ」
「うまいんじゃない?なんかタカオらしいっていうか あったかい感じ?」
「へー じゃあいいんじゃないの」
そう言うと、タツヤが急にへへへ、と笑い出した。
ギターを拾って、でたらめにジャン、と弾いた。
「なんだよ 気持ち悪いな」
「いやぁ、我が弟ながら負けてられんなと思ってね なぁ?」

おれはタツヤに向かってニヤリと笑った。
タツヤはおれのその顔を見て悪い顔、と言った。おれはお前もな、と返した。

メモ 

2005年04月07日(木) 10時05分

「あー、あったまくんなぁ、これ」
「おれ、携帯ってキラいです」
「あたしも」
「こんなちっさい機械に左右されてるおれとかバカみてぇ」
「うん」
「・・・・・・」
「ばかみたいだね」

その日、ミサキさんと触れるだけのキスをした。
はっきり言えばいいのに。ミサキさんは小さく呟いた。
おれのことじゃないですよね?おれがそう聞くと、さあ?わからないわ、と答えた。
どうしてお互いキスをしたのかはわからなかった。
なんとなく、だと思う。
次の日ミサキさんはいつも通りで、おれもいつも通りだった。
あのキスのことは、なかったことになった。


「なぁ空の果てって何処にあるんだと思う?」
「急になに言ってんのお前」
「いや、どこなのかなぁと思ってさぁ」
「どこなんだろーねぇ」
「空見てたらわけわかんなくなってきた
 空見てるときの焦点ってどこに合ってるんだべ、とか
 なんで限りが見えねーんだべ、とか」






空がきれいだと思う 

2005年04月04日(月) 21時05分
今日は、最悪な日だ。
ぱしゃん!と水音を立てて目の前を車が通り過ぎていった。
水は思いの他はねて、昨日買ったばかりのスニーカーにかかった。
その時にやっと、今日は最悪な日だと感じた。
朝起きると酷い寝癖で、おまけに寝違えたようで首が痛くてまわらなかった。
部屋を出て居間に降りると、もう家を出ないと大学に遅刻する時間だったというのに、
外は雨がザァザァと降っていた。
急いで準備して、家を出て、電車に乗って大学に向かう。
いつもならもうラッシュの時間は過ぎてるはずだっていうのに、
まだ混んでて知らないオジサン達にぎゅうぎゅう押されて舌打ちされる。
(おれが悪いわけじゃないのに。)
こんな大人にはならない、とか思いながら大学前の駅で降りた。
もう、最初の授業には出れない時間だった。
家で朝食をとれなかったから丁度いい、と思って食堂でのんびり朝食をとっていたら、
中学からの腐れ縁の会いたくないやつに会ってしまった。
なんだか授業にも集中できなくて上の空で授業を受けて、一日が終わった。
やっと雨が上がっていて良かったと思ったのに、タツヤの家に向かっている途中に、コレだ。

「もう、怒る気もしないや」
「へ?」
はぁぁ、とおれが深いため息をつくと、幸せ逃げるんだぞ、とタツヤがのんきに笑って言った。
それから自分が言ったことでなにか閃いたらしくて、表情をバカみたいに明るくした。
「じゃあさじゃあさ
 おもいきし吸ったら幸せ入ってくるんじゃん?」
「はぁ?」
「だってさ、いっぱい吐いたら逃げるんだから!」
「・・・理屈はわからなくはないけど」
相変わらず、変なやつ。
タツヤは家が隣で、おれが小学生の時にこの町に越してきた時から仲良しだった。
おれより1つ上だけど、全然そんな感じがしない。タツヤは一浪しておれと同時に同じ大学に入った。
その頃からばか明るくて、常に変なこと考えてて、何かに熱中し始めたら誰にも止められない。
結構おかしなやつで、でも面白いことを思いついてはすぐにおれに話してくれる。
おれとは考え方とかだいぶ違うんだけど、一緒に居ると楽しい。

ネバーランド(12) 

2005年03月24日(木) 23時06分

「またこの場所で ふたりで同じ夕焼けを見たいと思ったよ」


桂は、らしくないな、と笑った。
俺はまた、笑うなよ、と言った。

でも、もう俺は泣いていない。


あの頃と同じ夕焼けを見ることは叶わなかったけれど、桂がまた隣に居てくれる。
それだけでいいと感じてしまう俺はエゴイストだろうか。

もう、どうだっていい。

ただ言えることは、
俺はもう、大きくなりたいと泣くだけの子どもじゃない、ということ。

あの頃とは違う俺たちが、あの頃とは違う空に願うことは、多分、あの頃と同じ。


また離れてしまってもいつか、こうして笑い合いたいと、思う。
あの残像はまだ、俺の目から離れようとしない。
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