が了承《りょうしょ

August 11 [Tue], 2015, 18:41

  そしてそのとおりになった。
  「食べた?」
  「食べた」
  キノは満足そうに答えながら、建物の前に止めたエルメスに戻ってきた。
  「誰か、いた?」
  「誰も」
  キノは短くそう言って、エルメスに跨《またが》った。そして辺《あた》りを見回した。
  太い舗装《ほそう》道路が一本あり、その両脇《りょうわき》に平屋の建物がいくつも建っていた。今キノが出てきた建物には『レストラン』と看板が出ていた。
  通りには広い歩道もあり、街灯と街路樹が規則的に並んでいた。少し先に十字路があって、信号機もある。道はまっすぐ進んでいる。その先は、森だ。緑しか見えない。
  後ろには先ほどくぐってきた城壁が見えて、その左右の先はぼやけて見えなかった。ここから見るだけでも、この町は大変に広く、そしてひたすら真っ平らだということが分かる。
  「誰もいないで料理が出てきたの?」
  「ああ。全《すべ》て機械がやってくれた。おいしかった」
  「変な町」
  それより少し前、キノとエルメスが町に入ると、そこには誰一人いなかった。町は立派《りっぱ》で、通りもよく整備されている。しかし人間の姿がどこにも見えない。
  すると一台の車が走ってきて、キノとエルメスの前で止まった。ドアが開いて、その中から誰も出てこなかった。代わりにまた機械が出てきて、入国歓迎の挨拶《あいさつ》をひとしきり述べた後、町の地図を差し出してきた。キノが受け取ると、ドアを閉めながら車は去っていった。
  キノはとりあえず、何か食堂がないか探した。やがて近くにレストランを見つけ、一人で入っていったがやはり誰もいなかった。しかし店内は広く、きれいに掃除されていた。
  キノを出迎えたのは車椅子《くるまいす》にコンピューターを載せて腕をつけたような機械で、そいつが注文を取った。キノはスパゲッティによく似た食べ物と、何の肉か分からないステーキと、見たこともない色のフルーツを頼んだ。しばらくするとやはり機械によって料理が運ばれて、キノはそれを食べた。機械にお金を払った。
  猛烈に安かった。
  そして、機械に見送られて店を出た。
  キノは近くにあった案内板で、エルメスの燃料を補給できるところを探し、走ってそこまで行った。相変わらず誰《だれ》も見かけない。途中で走っている車を見つけて追いついてみたら、無人の清掃車だった。誰もいない燃料ステーションで、キノはエルメスに燃料を入れた。ただ同然の値段だった。
  今度はホテルを探す。そして行ってみると、そこには誰もいなかった。
  豪奢《ごうしゃ》なホテルは外も中もきれいに掃除され、ホールの大理石は輝いていた。フロントには機械が鎮座《ちんざ》し、全《すべ》ての仕事をテキパキとこなしていく。値段はやはり、安かった。
  キノはエルメスを押しながら部屋に入った。今までキノが見たことがない、とてつもなく豪華《ごうか》な部屋だった。キノは案内役の機械に、本当にこの部屋でいいのか、ランクを間違えていないのか、ボクは王様ではないけどそのことを知っているのか、後で大金を請求されても絶対に払えないう》してくれるのか、何度も何度も確認した。
  「びんぼーしょー」
  エルメスがぼそっと言った。
  キノは、意味なく広いバスルームでシャワーを浴びて、下着と肌着を香えた。自分で服を洗おうとして、ホテルに洗濯サービスがあることに気がつき、頼んでみた。やはり機械が取りに釆て、明日《あす》の朝にはできあがると言って去っていった。
  キノとエルメスは、もらった地図を絨毯《じゅうたん》の上に最大に広げて見た。
  今いるホテルは、入ってきた町の入り口からすぐ近くの、『東ゲート・ショッピング街』と書かれたエリアにある。円形の町は広く、先ほどキノ達が走ったのはほんの端《はし》っこだけにすぎなかった。
  町の中央部には『中枢《ちゅうすう》・政治エリア』と書かれた円形のエリアがあり、薄い赤で塗られていた。南にはかなり大きな湖が水色で書いてあった。他《ほか》には茶色に塗られた、『工場、研究所』エリアが町の北のはずれにあった。
  そして、それら以外は全て、薄緑色《うすみどりいろ》で塗られた『居住エリア』だった。それは町の面積の半分以上になる。
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