「四季物語」第49話

December 07 [Wed], 2011, 22:16
繋いだ手をほどくのは思うよりも簡単だね。
でも、ほどいた手をもう一度繋ぐのは難しいんだね。
浜崎あゆみより月刊恋バナ月号四季物語第話ひかる指輪その4あの日の深夜、暗闇の中でおぼろげな輪郭を浮かび上がらせていた舞の姿。
しーんと静まり返った車内で、小さな舞の身体から吐き出される失意の言霊は、深く俺の心に刻み込まれた。
何かを考えないといけない気になっていたが、もうあれやこれやと物事を考えることすら放棄してしまいそうになる。
舞がビンゴと叫び、そして自嘲気味に笑った。
その音色はとても切なく聞こえた。
思わず言葉に窮し、俺は深く息をく。
もうすぐ桜が咲くであろうこの季節に、ややもすると雪が降り出しそうな冷たさと切なさそして悲しさが余韻として残った。
舞ちゃんから彼に別れを切り出したのは、そんな彼の考えに気付いたからってことうんもうね、薄々は気付いてたんだ。
だんだんと彼の気持ちというか、アタシに対する扱いが粗末になていくのが目に見えて分かった粗末かそれは付き合いが長いことこからくる慣れではなくてお互いに慣れはあったかもしれないけど、やっぱりそういうものとは違ったの違った真剣さが無かった俺はあぁと感慨深げにうなずいた。
結婚の話もそう、真剣に真面目に向き合わないといけないことに限って、彼は逃げていた。
だから、一向に結婚の話が進まなかった。
だって、アタシの家に挨拶に来る日取りまで決めておいて、それを当日にキャンセルするんだもの笑っちゃうよねどうして彼は、そんなにギリギリまで彼女と交際を続けたのだろうか。
このまま交際を続ければ、結婚という選択肢に追い詰められるのは分かっているのに。
舞の話舞たちは、交際を続けて8年目を迎えていた。
彼が舞の両親の元へ挨拶に行く予定を組んでいたがその計画は彼の独断で頓挫し、二人の関係はさらに粗末になっていった。
彼は舞と結婚するもりはなかった。
ただ何となく、交際を続けていた。
確かに、どんな心情であれ交際を続けるのは、個人の自由だ。
実際に、知らないうちにそんな希薄な関係になっているカップルなんて、この世にはたくさん存在する。
長い交際歴や、子どもの存在そんな大義名分を振りかざして、繋がってる人は珍しくない。
好きだから恋人になる好きだから相手との将来を真剣に考えられるそんな気持ちは、どんどん薄れていく。
代わり映えのない日々が、昔に交わした熱き想いも風化させてしまう。
好意の代償を求めるほど愚かなものはない。
舞は、悲しさに心を奪われると同時に怒り心頭になっていた。
彼女は、彼を呼び出し、彼の真意を確かめることにした。
それがい昨日の話あ、日付が変わったから一昨日かお互いの仕事が終わった後に、二人はちょうどお互いの職場から中間地点にあるレストランの駐車場で落ち合った。
彼の車に舞は乗り込んだ。
車内に充満する彼の匂いがとても懐かしく感じて、舞は少し寂しくなった。
そんなことすら懐かしく感じることが、彼との距離を感じさせた。
アタシは彼に聞いた。
あなたは結婚するもりないの彼は何も言わなかったううん、しゃべろうとしなかった無言。
それが舞の問いに対する彼の答えだった。
無という名の拒絶。
まっすぐに前を向いたままの彼の横顔は真剣だった。
きっとね彼も分かってたんだと思う。
自分から別れを切り出せば、必ず二人の関係は終わるだから言い出すのが怖かったんだと思う。
でもヘンだよねもう終わりが見えてるのに予想してるはずなのに覚悟を決めてるはずなのに自分から別れようとするのは怖いんだよそれは舞も同じだった。
トラブルが重なったわけではなく、ましてやケンカをして折り合いがかなくなっ出会いサイトたわけでもない。
ただ単に、二人で歩む将来像に興味がなくなっていた。
ただ、それだけ。
仕事も順調。
趣味も充実。
友人にも恵まれている。
そんな彼のいや二人のライフスタイルにもはや恋人の存在が入り込む余地は残っていなかった。
舞は聞いた。
アタシのことはもう好きじゃないの彼は無言だった。
彼がふかしたタバコから勢いよく煙が吐き出された。
やがてポツポツと雨が降り出し、雨粒がフロントガラスを濡らした。
雨音を聞きながら、舞は決意した。
これ以上苦しむのは嫌だった。
結婚する気がないなら別れましょう、アタシたちしばしの沈黙。
その沈黙に、今まで積み上げてきた8年間の軌跡が重くのしかかった。
初めて会ったときのこと。
初めて二人でデートした夜。
二人で迎えた初めてのクリスマス。
一緒に笑った、あの日。
一緒に行ったディズニーランド。
一緒に行った海外旅行。
そして彼からのプロポーズ。
降り出した雨はよりいっそう激しくなり、フロントガラスを無残に叩きけた。
彼はタバコを灰皿でもみ消し、うむいた。
気まずい沈黙のあと、彼はジャケットのポケットから、おもむろに何かを取り出した。
それは指輪だった。
いもは、彼の指先にはめられている指輪。
二人で買ったペアリングの片割れ。
彼はその指輪を、無言のまま舞に渡した。
ごめんたったひと言。
彼が放った言葉は、たったひと言。
これがすべてだった。
これ以上、何も望む必要なんかない。
舞はグッと泣きそうになるのを堪えて、助手席のドアを開けた。
ここで泣くわけにはいかないそう思ったのあとは勢いだった。
雨の降りしきる中、車を降りて、肌寒い外気に身体をさらした。
ドアを閉める前にクルッと振り向いて、運転席に座る彼を見据えた。
さよなら舞は、そう言い放ち、ドアを閉めた。
彼を乗せた車が去った駐車場で、舞は使い道のなくなった指輪を握りしめたまま呆然と立ち尽くした。
ザアザアと振る冷たい雨が、舞の長い髪を濡らした。
いもだったら雨なんか関係ないのに。
いもだったら雨の中でも踊るのに。
いもだったら踊れるのに。
踊れるわけないじゃん鮮やかなバタフライの羽根が、重い雨に濡れて悲鳴をあげていた。
昨日のことなのに、もうずいぶん昔の出来事のようそう言って舞は、寝返りをうった。
俺は何も言わずに、暗闇の中俺の膝上で反転する舞の小さな身体を見めていた。
彼女の長い髪が、縦横無尽に散った。
でもね彼と別れてすぐは実感が沸かなかったの。
今までも毎日頻繁に会ってたわけじゃないから別れたと言って、実際に目の前からいなくなるわけじゃないからそやなねぇこーゆーのって、後からジワジワ来るものなのかなぁどうだろ自分次第なんちゃうだよねうん、分かってる俺は舞の気持ちが痛いほど分かった。
だから、別れた彼氏の気持ちも汲み取ることができた。
俺は自問する。
二人の恋愛が成就しなかった理由は、単にタイミングの不和本当にそれだけなのかタイミングタイミング言うのは簡単だ。
だけど、本当にそれだけなのかそんな形の見えないものに身を任せて、人は恋愛をするのかそこに意思はないのか自分の意思はないのかもし恋愛するのが、自分の意思であるならばすべてをタイミングなんて言葉で片付けてしまっていいのか俺はさらに自問する。
結婚した人は、全員が全員、タイミングが良かったから結婚できたのかタイミングが良かったから、その人と知り合えたのかタイミングが合わないと、恋愛できないのかいや、違う。
どんな些細な選択肢でも、機会が訪れたとしても、人である限りそこに意思は存在する。
恋愛するのが意思ならば見てこれ、バカでしょ舞が、自分の指先を伸ばして眼前にさらした。
そこには、サイズの大きい指輪がはめられていた。
舞の小さく細い指先には、まったく不釣り合いな、大きな指輪。
彼がはめてた指輪、捨てられなくて自分の指にはめてるのアタシ指輪をそっと掴むぶかぶかなんだよバカだよね笑っちゃうよね舞が膝を折り、ぎゅうと身を縮めた。
恋愛するのが意思ならば恋愛するのが意思ならば今ごろ悲しくなってやんの恋愛を終わらせるのも自分で決めたくせにね意思だ。
第話へ続く最後まで読んでくれた方は、足跡代わりにコメントくれたら嬉しいです。
次回もお楽しみに。
だぜん行かないと行くどこへいて行こうかううん、いいよおいばいばい待てよ待てよ待てったら美夏私のことはもう忘れてね
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