23 コップ酒

February 25 [Fri], 2011, 16:27

面接試験時、身元保証人が、本土にいないことを指摘され、保証人ではなく、本人を信用して欲しいと要請。
採用は無理かと思いながらも寒い中、郵便受けの前で待ち続け、採用通知を受けた時の喜びは、天にも昇る思いでした。
そして、辛かった過去を振り返り、いつもはパンの耳をふやかして食べる、食器代わりのコップ酒、ひとりでしみじみ飲み乾しました。
別れの杯を交わした、父の顔が、はっきり浮かんできます。
後戻りは、できない!
前へ、進むしかない!

22.1 就職

February 25 [Fri], 2011, 16:26

夕食の時間がなく、15分間の休憩時間に食堂へ走ります。
食堂のおばさんが、私の駆け込みを知っていて、食事を用意してあり、それを胃袋に流し込み、寮へ帰ると12時、このリズムが続きました。
休みの日は、街頭テレビを見るのが唯一の楽しみ。
どんなに辛くても、魔法の箱の中味は、必ず解明しよう、と自分に言い聞かせ、無事卒業。
何んとしても、テレビの仕事に就きたい。
この一途な夢は、現在の番組制作技術プロダクション、(株)東通(現、八峯テレビ)に入社し、実現しました。

22 教訓

February 25 [Fri], 2011, 16:25

人は、過酷などん底生活の中、己の体につけた傷跡や心に染み込んだ教訓は、生涯忘れられません。
今でも辛い時は、傷跡を見、あの時の痛かった事、情熱をぶつけて頑張っていた時のことを思い出しながら過ごしており、以後、どのような試練が襲いかかろうとも耐えていける、という自信がついたのは、大きな財産になりました。
都内は交通渋滞で、定刻に会社へ戻れません。
神田の会社から、蒲田のテレビ専門学校まで、駅の改札やホームを一目散に、走りまくります。
1分1分が大事で、ドロボウが、逃げ、走りまくっているように見えた事でしょう。

21.1 指が腐る?

February 25 [Fri], 2011, 12:21

毎日、鈴や亜鉛のインゴットを満載し、配達周りの力仕事でしたが、運転手は、荷物には何一つ手をつけず、栄養不足と、睡眠不足の体には、過酷な仕事でした。
過労のためなのだろうか。腰がふらつき、ときどき目まいが襲います。
作業中、荷物に指をはさみ、潰してしまいましたが、病院へ行く金もなく、休めば食べていけません。
潰れた指を手袋で隠し、なにげない様子で、翌日も働き続け、あまりの痛さに、指が腐るのではないかと、心配でしたが、いつの間にか治りました。

21 初任給

February 25 [Fri], 2011, 12:20

上京時、父はやっとの思いで、1万7千円のお金を用意してくれました。
当時は、高校卒業の初任給が、1万7千円くらいでしたので、1カ月以内に底をつくのは、目に見えており、急いで働かなければ、夜学は続行出来ません。
早速、翌日から職探し。
皿洗いや組み立て配線工、自転車での配達など経験しましたが、日給が5百円程度と安く、生計を維持するには無理がありました。
そこで、日給8百円で、なんとか生活可能な、トラックの助手の仕事を見つけ、会社の寮へ入れてもらいました。

20.1 命の源

February 25 [Fri], 2011, 12:19

やっぱりどんな事があっても、参考書だけは、今後、売るようなことはしないようにしよう。
仕方ないので、今日は朝から食パン1個で、1日中過ごす。腹の虫がグーグーなっている。
ペンさえも、いつもと違い、ふらふら千鳥足、残る2日間の我慢だ。明日の仕事は元気でいこう。12時記す」
ひかるにとって、パンの耳は、本当の命の源で、どれ程ありがたいと思ったことか。
1日をパン1個で過ごした日が、どれほどあったのだろうか。
絶えるかもしれない、命の恐怖に、何かを残したい、毎日の行動を記録し、自分を励まし、耐えたのです。
そして、生命力の強さ、偉大さをつくづく痛感させられました。

20 古本屋

February 25 [Fri], 2011, 12:17

現在の飽食時代、パンの耳で過ごす事など、考えられないかも知れませんが、日記に、昭和40年当時の状況を見ることができます。
「3月29日、月曜日、今日は朝から会社は休み、給料日は目の前だけど、どうしても金が不足。
しかたないので、電子工学、図解パルス工学、電気論の3冊、2000円相当を古本屋に売りに行った。
売りたくない気持ちは山々、そうかと言って、飯を食べずに過ごすわけにもいかず、ある一軒の古本屋円に入り、買ってくれと頼むと、今はその本ありますから、とのことで、この本屋を出る。
この場になって、自分ではよく分からない程の、本に対する未練が出てきて、そのまま帰ることにした。

19.1 鼓動との葛藤

February 25 [Fri], 2011, 5:22

身も心も一心同体、体全体で苦しんでいるはずが、孤独、寂しさ、辛さは、精神だけの問題にすぎず、鼓動は平常通り、淡々と打ち続ける。
ひかるにとっては、生まれて初めての悟りで、自分の精神が、いかにひ弱いのか、情けなくなりました。
強い心が欲しい・・
よーし、生きのびて見せる!
自分にとって、後戻りは出来ない。
辛くても前へ進むしかない。
こう心に固く誓いました。
以後、生涯、精神と鼓動の葛藤が続くように成ったのです。

19 何んだ、これは!

February 25 [Fri], 2011, 5:21

父が、やっとの思いで作ってくれたお金、周りの反対を、黙って押し切ってくれた事、あの拗ね顔を思い出すと、おめおめと島へ戻る訳にもいかず、自分自身が情けなく、疲れ果てたある日、一人で天井を見つめ、孤独をかみしめながら、何気なく、手を胸に当ててみました。
「何んだ、これは!」
思わず、声が出ました。
これだけ辛い思いをし、悲しんでいるはずなのに、鼓動は平常通り、何事もなく、すがすがしい響で脈を打っていたのです。

18 孤独

February 25 [Fri], 2011, 5:20

更に初めての冬は、心身共に堪えました。
常夏育ち、冬用の衣類はなく、敷布や毛布も有りません。
畳の上に、掛け布団1枚で寝る始末。
安アパートのため、隙間風は自由に往来、明け方はとても寒くて、眠れません。
少しでも体温を逃さないよう、膝を抱え込み、体の表面積を最小限にし、ガタガタ震えているだけ。
猫の気持ちがよく分かりました。
今考えると、栄養状態は極度に悪く、凍死寸前の状態だったのです。
食べ物が欲しい・・。
着るものが欲しい・・。
誰か話し相手が欲しい・・。
頼る人が、一人でもいてくれれば・・・
お金はみるみる底をついて行き、孤独、辛さに、このまま生き続けられるのだろうか?
不安のどん底に、陥りました。
P R
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