End Of Period 【自分自身】 

January 28 [Mon], 2008, 0:08
 焼けた大地。
目の前には横たわる人間の少女と巨大な黒鳥。
その二つに目をやり、また前を見つめる巨大な蛇。
「手間かけさせおって・・・。」
蛇はそうつぶやく。
「ようやく、これで、私の理想とする世界が形作られる・・・。
あの詩のようにはさせない。いや、もう出来ないか!」
蛇の鎌首の真ん中に妖しく光る金色の瞳が、二人を見下ろしていた。

・・・ドクン・・・

「!?」
一瞬だけ、体ごと大きく鼓動した。

・・・ドクン・・・

また、大きく鼓動する。
「・・・なんだ・・・?」
蛇が体を大きくよじる。
「・・・まだ終わりじゃない・・・。」
声が聞こえた。たしかにあの悪魔の声。
「まさか・・・、貴様、まだ生きて・・・!!」
それと同時に、体に激痛が走る。
内側から、内臓を引きずりだされるような痛み。
中から、鋭い刃物で体を刺される感覚。
引き裂かれるような痛みに、蛇はその体をくねらせる。
尾が大地を叩くと同時に大きな地響きが起こる。
「生憎、おれはしつこいんだ・・・。蛇だからな・・・。」
声が大きくなっていく。
「・・・?」
破天荒が顔を上げる。
破天荒の眼には、蛇の体に入るヒビ。
口を大きく開き、舌をビクつかせる蛇の姿が見えた。

・・・ピシッ・・・

ついに蛇の体に亀裂が入る。
「おれの中から消えろ!」
蛇は巨大な尾をやはり、地面に強く叩きつける。
「!!」

体の亀裂で蛇の体が砕け散る。
断末魔の悲鳴にも、笑い声にもとれる声が木霊していた・・・。



 紅い眼が見開かれる。
長い銀色の髪。悪魔の尾。
一人の悪魔がそこに横たわっていた・・・。

End Of Period 【はじまりの詩】 

November 18 [Sun], 2007, 0:01
 神が魔王の手を握り、

 この世の終わりを合唱す。

 竜はイヴの手を引いて、

 二重奏を響かせる。

 イヴは歌えば、竜が舞い、

 竜が舞えば、イヴ歌う。

 戦い終わる、滅びの日、

 イヴは一人残されて、竜の復活一人待つ。

 
 「破天荒さんっ!!」
ビュティの声が響くなか、黒い鳥は地面に叩きつけられる。
羽はビュティを庇い、炎に焼かれていた。
まだくすぶる炎が羽にまとわりついているのが瞳に入る。
「・・・腐っても、アジ・ダハーカってわけか・・・。」
破天荒の顔が苦痛に歪む。
眼を細め、その先に映るのは、ゆらめく巨大な怪物の赤い瞳。
その瞳は、破天荒のほうをチラリと見ると、ビュティに視線を移す。
「女・・・、殺す・・・。それが魔界のため・・・。」
そうつぶやくと、舌がまるで刃のようになり、伸ばす。
「やめろ!!」
破天荒の声と同時に、刃が鋭い音を立て、伸びていく。
ビュッ!という、鈍い音を立てると同時に、ビュティの服を赤く染めた。
腹から背中へ刃は貫通し、怪物はその刃を引いた。
そしてそのまま、ビュティは前に倒れる。
乾いた、地面を赤い液体が染めていった。

 「私、死ぬんだ・・・。」
不思議な感覚だった。前世の私も死んでいたけど、こんなに簡単だったのかなぁ・・・。
痛い・・・なんてものは、もうないなぁ。
そういえば、死ぬときって痛みも感じなくなるんだよね・・・。
なんだか、本当に不思議な感じ。
でも、最後だけでも、へっくんに会いたかったな・・・。
・・・目の前にいるんだっけ・・・。

 ビュティはそのまま眼を閉じる。
破天荒は、その場に固まったまま動かない。
「てめぇ!!」そう声を上げると、体を起こし、思い切り怪物に飛び掛る。
だが、怪物は破天荒を尾でものすごい力でその場に叩きつけた。
「貴様・・・では・・・相手・・・になら・・ん。」
破天荒が顔を上げる。赤い瞳と眼が合う。そして蛇の胸の金色の瞳とも・・・。
「・・・てめぇ、ルシファーか・・・。」
「・・・ご名答・・・、そして貴様も死ぬがいい・・・。」
一気に、尾が振り下ろされた。

 ・・・こんなことで全てが終わるのか・・・?
「誰の声だ・・・?」
・・・お前の「親」とでも言っておこうか・・・。
「ああ、アジ・ダハーカだな・・・。」
・・・お前はこんなところで終わるのか・・・。ようやくあの少女にも会えたのに、このままでは本当に終わってしまうぞ・・・?
「・・・おれは、ビュティをこの手で殺した・・・。いくらルシファーに乗っ取られたからって、その事実は変わらない。」
・・・今からでも遅くはないぞ・・・。
「遅いんだよ。」
・・・詩はまだ始まってもいないのだぞ・・・。
「詩・・・?」
・・・そうだ、詩だ。世界の破滅の詩。お前も聞いたことがあるだろう・・・。
「・・・ああ、よく義父に聞かされたやつか。」
・・・少女はまだ生きているぞ・・・。
闇の中で光を持った、赤い瞳がひときわ大きく見開かれた。

End Of Period 【アジ・ダハーカ】 

November 04 [Sun], 2007, 23:19
 どうして、こんなことになったんだろう・・・。

 胸を刺す痛みが、私を貫く。

 そして、私の血が彼の顔を染めていった。

 だけど、その顔は、血を浴びて、さらにうれしそうに微笑んだ。

 ・・・死ぬってこんな感覚なのかな・・・?

 そして、私の体はそのまま、乾いた大地を赤く染めて落ちていった。

 
 乾いた大地を黒い炎が染め上げる。
そしてその上を行く巨大な影。影はゆっくりと翼を動かし、まるで這うように空を飛ぶ。
口元からは、まだくすぶる煙。
赤く染め上げられた眼、そして巨大な角。
一体の銀髪の黒い蛇がそこにいた。
「・・・女・・・。ここにもいな・・・い。」
蛇の瞳は辺りを見渡し、きびすを返す。
「・・・におい・・・。あのにおい・・・。」
そう何度も言霊のように繰り返す。
蛇の見つめる先には、黒く染め上がった大地、そして血の海が広がっていた。


 「ここが・・・魔界・・・?」
ビュティの言葉に破天荒は黙り込む。
その姿は巨大な烏のような猛禽類。
瞳は乾いた大地を見つめている。
ビュティも眼下に広がる、荒涼とした大地を見る。
「ここにへっくんが・・・?」
「そうだ・・・。おそらく、すぐに見つかることになる。」
破天荒が静かに言った。
「どうやら、奴もお前を探してるようだ・・・。」
そう付け加えた。
「へっくんが・・・。」
ビュティの言葉に破天荒はうなづく。
だが、その後に続いた破天荒の言葉は、

「お前を殺すためにな。」

という一言だった。
「どういうことっ!?」
ビュティが破天荒に聞き返す。
「言葉の通りだ・・・。下を見てみろ。」
そして破天荒が下を向く、それに合わせて、ビュティも。
そこには、何かに焼き尽くされたような焦げた臭いの立ち込める大地。
先には、まだ黒い炎がくすぶっている。
「これは・・・、あいつの炎だ。」
破天荒がビュティのほうを見て、言う。
「何でわかるの?へっくんのだって証拠はないでしょ!?」
「炎は、それぞれ悪魔によって質が一人一人違う・・・。人間の指紋みたいなもんだ。」
その言葉に思わず黙るビュティ。
「・・・この炎は確実にあいつのものだ。あいつの質は他の悪魔に比べたら絶対的な違いがあるからな。」
そう言う間にも、眼下に広がる炎が大きくなっていく。
それを見つめる破天荒の瞳はどこか悲しそうだった。

 「おんな・・・見つけた・・・。」
破天荒とビュティの耳にたどたどしい声が聞こえた。
思わず振り返る破天荒の目の前には、黒い炎が迫っていた。
轟音とともに、炎は二人を包んでいった。

End Of Period 【黒い風】 

October 08 [Mon], 2007, 0:39
 「へっくんの居場所を教えて!」
ビュティが破天荒に迫る。
だが、破天荒は相変わらず、口を閉ざしたまま。
頑なに口を開こうとしない。
ビュティの眼からは大粒の涙が床に落ちては、染みを広げた。
時計の時を刻む音だけがその場に響き渡っていた。
カチ・・・カチ・・・と無常に音を鳴らす時計。
二人の間には、微妙な空気が流れている。
「・・・そんなに、あいつのことが心配なのか・・・?」
破天荒が突然口を開いた。
この空気に耐えられなかったのだろう。
ビュティが涙でくしゃくしゃの顔を上げた。
そして、何も言わず、首を縦に振る。
「・・・そうか。おれたちにはその感覚、わからねぇな・・・。」
一言、破天荒が言った。
「幸せ者だな。あいつは・・・。」
そう言った、破天荒の瞳はどこか悲しそうだった。
ビュティの眼には、いつものように気丈な彼の姿はなかった。
そこにいるのは・・・、悪魔でも何でもない。
・・・ただの人間のように見えた。

 「破天荒さん・・・。」
「何だ?」
ビュティの声に、破天荒が気だるそうに答える。
「破天荒さんは、私たちに「期待してる」って言ってましたよね。それって一体・・・。へっくんがいなくなったことに関係があ・・・」
「大アリだ。」
ビュティの言葉をさえぎるように破天荒が言う。
「これから、天と地を二分する大きな戦争が起こる。人間が起こす戦争とわけが違う。地上を消そうとする悪魔と、地上を創造しなおそうとする天使の戦争だ。」
破天荒が続けた。
「どちらにしろ、地球上の生物に未来はないぜ。どちらもこの地上をリセットするつもりだからな。」
破天荒の口元が意地悪そうに、笑った。
「・・・リセット・・・?」
「そう、リセットだ。つまり、悪魔はこの地上を壊してしまおうと考えてる。だが、天使は地上を壊した後、再びやり直しをしようとしてる。そこで対立が起こってるんだ。」
破天荒がビュティの顔を覗きこみ言う。
「どちらにしろ、私たちはいなくなるってこと・・・?」
ビュティの問いに、破天荒は小さくうなずいた。
「どちらも意見を譲らない。だから、殺し合いが始まったのさ。」
ビュティが黙りこむ。
「天使のほうが優勢だった。だが、おかしかったのはそれからだ。魔界の支配者であるルシファーが、悪魔たちが殺されていくのを、ただ黙って見ていたんだ。何も動こうともせずに。あいつは、それを見ていられなくなったんだ。そして飛び出した。」

 「それで、天使に傷つけられて逃げてきたのね。」
ビュティが一言言った。
「さすがは嬢ちゃん。察しがいいな。」
破天荒がビュティに言う。
「そして、私に出会った・・・。」
まるで自分に言い聞かせるように言うビュティ。
「嬢ちゃん。一つだけ聞いておく。これから先の物語を知りたければ、その命に保証はない。」
破天荒の瞳がピンク髪の少女を映した。
「それでもいいのか・・・?」
破天荒が付け加えて聞く。
「いい。」
ビュティの声が返ってきた。
「そうかい。」
破天荒の口元が歪んだ。
「私はへっくんの居るところに行く!このまま何もしていないなんて嫌。」
言い放つ。

 破天荒の背中から巨大な一対の漆黒の翼が現れる。
そして、腕、飾り羽、くちばし、爪と、その姿は漆黒の猛禽となっていく。
呆気にとられるビュティの前に、その翼を差し出し、
「乗りな。」
と声をかける。
「本当に・・・悪魔なのね・・・。」
ビュティがそう言いながら、その背中に足をかけ、またがった。
「ま。正確には違うけどな。」
破天荒が小さな声で言う。
「いくぜ。嬢ちゃん。」
羽が大きく、広げられた。

End Of Period 【正体】 

October 07 [Sun], 2007, 0:39
 「一つだけ聞かせろ。ルシファー。」
最後の力と声を振り絞る邪王。
「何で、おれと家族を見捨てた?」
邪王の言葉に声が返ってくる。
「お前が危険だとわかったからだ。」
邪王の眼が大きく見開かれる。
「それに、お前は今殺しておかなかれば、後々面倒なことになるのでな。」
邪王の腕が液体の中で動いた。
「じゃあ、他の悪魔たちが天使に殺されていくのを何故黙っていた!?」
声がひときわ大きくなった。
「下級な下僕は必要ないからだ。所詮、天使に殺されるくらいでは、私の手駒にはなりえんよ。」
声は明らかに楽しそうに言った。

 邪王の翼が勢いよく開き、黒い液体を跳ね飛ばした。
だが、肩で息をし、明らかに苦しそうだった。
「まだ、そんな力が残っていたのか。大人しく私の手駒になれば、苦しみはないぞ。」
声はそう言った。
その言葉に、邪王は精一杯の声を上げる。
「そんなことで、お前は仲間を切り捨てたのかっ!!!!?」
咆哮にも似た声が部屋中に響き渡った。
邪王の手の中で、小さな紫の炎が光った。
「うおおおおおおぉぉおお!」
翼を広げ、液体に向かって放つ。
閃光と轟音の響いた後には、何も残っていなかった。
「ほぉ・・・。」
声が感心したように声を上げる。

 「だが、これではどうだ。」
声が背後から聞こえた。
ハッとした、邪王が後ろを振り返ったが、すでに遅かった。
金色の眼と八枚の鳥の羽を持った、白髪の男がそこに立っていた。
刹那、邪王は口をふさがれ、男の右手が邪王の胸を背後から貫いた。
一瞬硬直したが、次の瞬間から、胸の傷口から金色の瞳が顔をのぞかせた。
「これから、お前は私の手駒だ・・・。」
男はそう邪王の耳元で囁いた。
「あの女は邪魔だ、肉片の欠片も残さず、殺せ。」
胸の金色の瞳がニィと意地の悪い笑みを見せた瞬間、
悪魔の咆哮がその場で響き渡った。


 天を巨大な一頭の蛇が駆けていく。
胸には金色の瞳が見え、銀髪。
舌をチロチロと動かしながら、赤い眼が見つめる先には
人間の住む世界が見えていた。
そしてその光景を見た蛇は口元を歪ませた。
巨大な蝙蝠の翼が、大きく広げられ、天を駆ける速度が一段と速くなった。

End Of Period 【魔界】 

October 07 [Sun], 2007, 0:00
 長い銀髪が風になびく。
風になびく度に、その髪はキラキラと光を放った。
そして大きな左右二対の角が髪の間からのぞいた。
蝙蝠のような翼を折りたたみ、黒い装束に身を包んでいる。
その者を見て、下級の悪魔がひざまづいた。
「よくぞご無事で帰られました。ルシファー様も心配しておいでです。」
悪魔の一人が言った。
だが、その者は、それには何も返さず、広い廊下を歩いていく。
その者を見た者は、誰一人残らずひざまづいた。
皆、
「お帰りなさいませ。」「ご無事で何よりです。」
などと言葉を並べる。
だが、やはり無反応で歩く。
長い矢じりの尾と赤い瞳が廊下の暗がりに浮かんでは消えた。

 果てしなく終わりのない廊下が続く。
両脇にはたくさんの扉があったが、その者はどれにも目もくれない。
段々悪魔たちの数も少なくなる。
そしてそれと同時に、廊下を覆う扉の数も少なくなっていく。
その暗闇の中に浮かぶ二つの金色の瞳が見えた。
「よく、帰ったな。」
金色の瞳の主はそう言った。
「帰りたくはなかったが、確かめておきたいことがあった。」
銀髪の悪魔が答える。
「いつから、そのような口をきくようになった?」
金色の瞳の主は明らかに不機嫌そうに聞いた。
「今に始まったことではないだろう。」
銀髪の悪魔はまるでからかうように答えた。
「まぁ、いい。私の部屋に来るがいい。」
その声と共に、金色の瞳が闇に溶けるように消えた。
「言われなくても行くけどな・・・。」
悪魔は口元を緩ませて、そうつぶやいた。

 悪魔は一つの扉で足を止めた。
背後の窓には、永遠に続く、荒廃した大地と紫色に淀んだ空と雲があった。
扉は荘厳で、ひときわ大きかった。
その扉に右手をかける。
ギギギ・・・。
と金属のきしむような音と共に、扉がゆっくりと開く。
悪魔の顔は笑ってはいなかった。
ただ、何かを決意したような瞳で、前を見つめているだけだった。
そして、扉が完全に開いた。

 「おかえり。わたしのかわいい邪王。」
邪王の耳に、あの金色の瞳の主の声が入る。
声のほうへ目をやる邪王。
暗い部屋の中、黒い球体が浮かび上がって、蠢いていた。
そして黒い球体の中には、あの金色の瞳。
「人間界は楽しかったか?」
邪王はその言葉を聞くか聞かないかのうちに動いた。
邪王の右手が黒い球体を貫いた。爪の先にどす黒い液体がこびりつく。
ピシッ・・・。
音を立て、球体はその場で砕け散る。まるでガラスが砕けるように・・・。
「こんなことでくたばるお前じゃないな。ルシファー。」
すると
「よくわかってるね。さすがはわたしのかわいい邪王。」
声は笑いを含んでそう言った。
「かわいそうに。あの金髪の堕天使に何か吹き込まれたのだな。この行動が愚かな行為だということもお前はわかってるはずだろう・・・。」
声は邪王の頭に直接響いてくる。
「これは、おれが決めたことだ。」
邪王は一言、そうつぶやいた。
少し小声で、だが力強い声で。
「そうか・・・。なら、再び元のお前に戻してやろうか。」
その言葉とともに、邪王の爪にこびりついた液体が、まるで意思を持っているかのように動き出す。
「何っ!?」
思わず、液体を落とそうとするが、液体は手、腕と徐々に上ってくる。
そして足元にも同じ液体があった。
とっさに翼を広げ、液体から逃れようとするが、黒い液体が翼までも覆った。
そして、その場に強く叩きつけられる邪王。
必死に立ち上がろうとするが、肩も液体に侵食され、力が入らない。
液体は首、顔、そして口の中に侵入してくる。
「あが・・・。」
もはや、声を出すことすらままならない。
気持ちの悪い感触が、もはや脳の思考までも停止させようとしていた。

End Of Period 【嵐】 

September 26 [Wed], 2007, 22:40
 「じゃあ、お前の兄貴は何なんだ・・・?お前の本当の兄貴なのか?それともアジ=ダハーカなのか?」
ナメ郎の声が、隣いた金髪の少女に向けられる。
少女の目には、破天荒とビュティの姿。
金髪のツインテールが風になびき、少女は何も言わない。
「・・・知ってたよ。お兄ちゃんが血の繋がってないこと。ルシファー様のお気に入りで、まだ子供だからって、私の生まれるずっと前に預けられたって・・・。」
少女は寂しそうに言う。
「でも、私はお兄ちゃんとずっとお兄ちゃんって慕ってきたし、今でも大好き。」
「・・・そうか。」
少女の言葉にナメ郎がうなづいた。
ナメ郎の大きな土色の翼が、ゆっくり動く。
「・・・天使も悪魔もこれからいっぱい死んじゃう。でも、私はそんなの嫌だよ。」
「おれもだ・・・。」
少女の言葉にナメ郎が即答した。
静寂が辺りを支配する。
黒衣に覆われた少女の体はまるで影のようで、ナメ郎とは対照的だった。
ただ、その瞳は寂しそうに眼下に映る、桃色の髪の少女を見つめていた。
「あのお姉ちゃんは、これから大変だね・・・。」
静かに言った。
「だが、お前はあの女に期待してるんだろ。」
ナメ郎がニヤけながらつぶやいた。
「嫉妬してるの。大好きなお兄ちゃんの思い人だもん。嫌いにならないわけない。こんな大事な役割を担ってなかったら、どんな方法をしてでも殺してるわ・・・。」
少女の瞳が一瞬だけ、残虐な光を見せた。
(やっぱり、悪魔なんだな・・・。)
ナメ郎は、少女の様子をただ静かに眺めていた。
「ナメっち。」
「あ?」
ナメ郎は気だるそうに顔をあげた。
「お兄ちゃんはルシファーのところに行ったんだよね。」
少女の瞳がナメ郎に向けられていた。
「・・・それがどうした?」
「これから、大変なものが見れるかもね。」
少女の口元が薄く笑っていた。
「あのお姉ちゃんとお兄ちゃんの”運命”を試すことになるね。」
「何を知ってる・・・?」
ナメ郎は眼下の二人の人物を眺めながら聞く。
「そうだね・・・。」

 ・・・もし、あのお姉ちゃんが本当にイヴ様でなければ、お姉ちゃんはお兄ちゃんの手で殺されることになるよ・・・。

少女はそう言って、無邪気なようでいて、邪悪な横顔をナメ郎に見せた。
「もし、お姉ちゃんが生き残れたら、私はあの二人のお手伝いをする。」

 だって、それが私の存在する理由だもん。
そう付け加えた。
対照的な二人の姿が静寂の中に影を作っていた。

End Of Period 【一人】 

August 11 [Sat], 2007, 23:10
 目の前の光景はビュティが夢に見た光景と同じだった。
「わかっただろう・・・。」
破天荒が言った。
ビュティは大きく瞳を開き、黙ったままだった。
そして破天荒はビュティの前に膝まずく。
「嬢ちゃん・・・いや、あなたこそ、イヴ様の末裔。」
破天荒の背中から黒い羽が一対生えた。
「・・・あなたは・・・。」
ビュティが怯えた声を出す。
「そう、見ての通り。人間じゃないです。そしてその隣にいるそいつも。」
破天荒はそう言うと、ヘッポコ丸のほうへ眼をやる。
「・・・へっくん・・・。」
ヘッポコ丸はその言葉に沈黙する。
「アジ=ダハーカ・・・。いや、魔界では、邪王と呼ばれる、悪魔の眷属だ。」
ヘッポコ丸はその言葉を聞くや、破天荒を睨みつける。
その眼は赤く染まり、思わず、牙をむきだす。
「破天荒・・・。ビュティをこれ以上巻き込むな!これ以上何も教えるな!」
髪を長くし、血走った眼が破天荒は貫く。
思わず寒気を感じる破天荒。
だが、そのような素振りは一切見せない。
「・・・そう興奮するな。ここから先はお前たちが決めればいい。」
静かな口調で破天荒が言った。
その様子をビュティはただただ見ていたが、その瞳はヘッポコ丸の変貌ぶりに怯えていた。
「へっくん・・・。」
ビュティの一言に、ヘッポコ丸は我に返る。
「ビュティ・・・。」

 暗い暗い闇の中。
「イヴの末裔・・・、ついに、こいつが・・・。わたしが探し続けた人間・・・。これも奴のせいだ。邪王・・・。お前がわたしに逆らうなど思っていなかったが、やはり、消しておくべきだな。」
そう言うと、影は目の前にある三人が映った、水晶を握り潰した。
「・・・アジ=ダハーカ。・・・お前は私の下僕だ。自ら愛する、その女を消すように仕向けてやる。」
その言葉とともに、影は立ち上がり、不気味な笑い声を響かせた。

 「とりあえず、時間だ。戻るぞ・・・。」
破天荒の言葉とともに空間が捻じ曲がる。
数秒、不思議な感覚に襲われる。
「破天荒・・・。」
ヘッポコ丸は破天荒の耳に顔を近づけ、何かを話した。
「・・・いいのか・・・。」
ヘッポコ丸は破天荒の問いに大きくうなずく。
空間の捻れが終わると、元の部屋に戻っていた。

 だが、様子が違う。
「・・・へっくんは?」
ヘッポコ丸の姿がなかった。
「どうやら、お前を巻き込みたくないらしい。姿をくらませた。」
破天荒は淡々と言った。
「えっ・・・?」
ビュティは言葉を失った。
「・・・どうして・・・?」
「おれもお前たちには期待してたが、とんだ検討違いだった。」
破天荒もため息を漏らす。
「巻き込むって・・・??何に・・・?」
ビュティは下を見る。
血に染まった包帯がそこに落ちている。
「あいつは、天使に狙われてる、人間界に送ったのは、おれだ。そしてお前に会ったのは偶然。」
破天荒は続ける。
「あいつはいつでも一人だった。仲間を作ろうとせず、乱暴で残虐な魔界の貴公子。いつしか記憶も失った。アジ=ダハーカに心を奪われたんだ・・・。」
「へっくんはどこへ行ったの!?」
「お前に教えるな。と言われてる・・・。」
ビュティは黙り込む。
破天荒は何も言わない。
「もう、あいつは失いたくないんだ・・・。お前という存在を・・・。
これから起こる血なまぐさい戦争で・・・。」
その言葉が部屋全体に木霊した。


End Of Period 【エデン】 

August 11 [Sat], 2007, 0:53
 「欲竜に体を差し出した少年・・・。」
青年の言葉にヘッポコ丸は顔を上げる。
ヘッポコ丸の瞳は怯え、大きな赤い瞳が青年を見つめた。
「どうだ。ずいぶん昔の話だが、自分の存在する意味、思い出したか・・・?」
青年はいたずらに笑みを見せ、ヘッポコ丸に顔を近づける。
「たしか・・・破天荒だっけか・・・?」
ヘッポコ丸は、牙をむき出す。
「何しに来た・・・?」
「別にぃ。お前がその嬢ちゃんを殺しそうになったから、出てきたまでだ。」
「殺す・・・?」
ビュティが思わず声をあげた。
「へっくんが、私を殺すの・・・?」
ビュティの声はわずかに震えている。
破天荒は何も言わない。
「そんなこと・・・するわけないっ!」
ヘッポコ丸が破天荒に言う。乱暴な口調。
「へっくん・・・。」
ビュティがヘッポコ丸を見つめた。

 「教えてやろうか・・・?」
破天荒が二人の様子に口を挟む。
「何をだ・・・。」
破天荒は首から下げた鍵を取り出す。
「お前らの過去。って言っても、何千、何億年前の話だけどな。」
そう言うと、薄笑いを浮かべる。
「おれたちの過去・・・?」
ヘッポコ丸は破天荒に聞く。
破天荒は何も言わず、ただ鍵を二人の前に構える。
「じゃ、また後で会おうぜ。」
破天荒はそう言うと、目の前で鍵を回した。
ヘッポコ丸とビュティの体が大きな白い光に包まれる。

 二人の目の前には一本の木。
そして二人の人物。
その顔は、
「私・・・?」「おれ・・・?」
そう、二人の顔とうり二つ。
二人は何かを話しているが、ヘッポコ丸とビュティには聞こえなかった。
そして、次のシーン。
ビュティの顔の少女は、少年の目の前で倒れていた。
少年は少女の顔を覗きこみ、少女の体の上にはポタポタと雫が落ちていった。
「どうやら、少女のほうが死んだみたいだな・・・。」
「そうだ・・・ね。」
さすがに、自分とうり二つの少女が死んだのだ。ビュティの口数は少ない。
だが、その様子を静かに見守る者がいた。
「・・・ククク、人間はか弱き生き物だなぁ・・・。」
その声に少年が振り返る。
少年の目の前に、四本の角を生やした大蛇が木に巻きついていた。
そして長い、銀色の髪をなびかせ、少年に近づいた。
「お前は・・・。」
「おれか・・・、おれはアジ=ダハーカ・・・。邪竜と呼ばれている者だ・・・。」
アジ=ダハーカは不気味な笑みを浮かべた。
「遠出はしてみるものだな・・・。おれは暴れるのに疲れた・・・。ガキ、この女が死んで、悲しいか?」
アジ=ダハーカの言葉に、少年はうなづく。
「おれもだ・・・。暴れることに何も見出せなくなった。おれは何故ここにいるのか、何故おれは生きることに執着していたのか・・・。」
アジ=ダハーカは、赤い瞳に憂いを帯び、少年を見つめる。
「・・・を生き返らせてくれ!何でもやるっ!」
少年はアジ=ダハーカに言った。
「生き返らせることはできないが、この女をこの姿のまま、転生させることはできる。」
それに答える。
「お前は何をくれる・・・?喰うのはなしだ。人間は喰ってもおいしくない。」
「じゃあ、おれの体をくれてやる。生きることに疲れたなら、おれがその先を生きてやる。」
アジ=ダハーカは少し黙る。
「女にそんなに会いたいのか・・・?」
少年はうなづく。
「契約成立だ!」
アジ=ダハーカは少年に向かい、大きな口を開ける。

 「こういうことか・・・。」
ヘッポコ丸はつぶやく。
「えっ?」
ビュティは聞く。
「あの少年はおれだ。そしておれは今、アジ=ダハーカの永遠の命を生きている・・・。」
「そして私が転生した、あの女の子・・・?」
「そういうことだ。」
二人の後ろで声がした。
二人が振り向くと破天荒が立っていた。

End Of Period 【二人】 

August 04 [Sat], 2007, 23:56
 眼を覚ましたとき、その場には、あの悪魔はいなかった。
隣には、ただ眠る、桃色の髪の少女。
「・・・助かった・・・のか。」
ヘッポコ丸自身、実感がなかった。
天使が追ってきて、その後なんだかわからなくなって、そして結局、あの破天荒とかいう悪魔が出てきて、今に至る。
ヘッポコ丸は桃色の髪を静かに撫でた。
「・・・綺麗な髪だな・・・。」
悪魔では滅多にこんな綺麗な髪をもった者はいない。
「う・・・ん。」
声がした。その声の主は目の前の少女。
少女はゆっくり眼を開け、ヘッポコ丸にその青い瞳を見せた。
しばらくの沈黙。
「・・・へっくん・・・。」
少女は一言つぶやく。
「ビュティ。大丈夫?」
ヘッポコ丸は声をかけ、髪を撫でた。

 「夢を見たの・・・。」
ビュティはそう言った。
ヘッポコ丸は静かに言う。
「へぇ・・・どんな夢。」
ヘッポコ丸にとっては、ビュティが無事だったことが何よりもうれしかった。
いや、うれしかったという感情ではない。
人間に正体がバレなかったことが何よりだった。
「へっくんに似た人と、大きな怪物が出てきたの・・・。」
ヘッポコ丸の心臓が大きく鼓動した。
ビュティは続ける。

 「その大きな怪物とその人が暗いところで話てた。
怪物は大きな蛇みたいなので、真っ赤な眼だったの。
そして。相手は銀髪の男の子・・・。丁度へっくんくらいの・・・。
何度か、聞こえない声で話をした後、男の子は「おれの体をやる。」
そう言った。怪物はそれを聞いて、大きな口を開けて、男の子を飲み込んだんだけど、
怪物は消えちゃって、男の子が残った。
でも、その後、男の子が逆に怪物じみた姿になったの。
まるで、その怪物が男の子の中に入っちゃったみたいに・・・。」

 「や・・・めろ・・・。」
「え・・・?」
ヘッポコ丸がビュティの言葉をさえぎった。
「やめろ!!」
今度は大声で叫ぶ。
ヘッポコ丸はそのまま、頭を抱え、崩れ落ちる。
「その話をするなっ!!!もうやめてくれっ!!」
戸惑ったのはビュティだった。
思わず、言葉が詰まる。
ヘッポコ丸は呼吸を荒くし、震えている。
「へっく・・・」
ビュティの手がヘッポコ丸の肩を掴もうとした時、
「嬢ちゃん。死にたくないなら、触るのはやめておけ。今のそいつは半人間で不安定なんだ。」
ビュティの背後から声がした。
今まで二人きりだったはずの部屋に、突然、長身の青年が現れた。
「誰・・・!?どっから入ったの!?」
「そんなことはどうでもいい。とりあえず、そいつ今は触れるなよ。」
青年はビュティも問いを無視し、ゆっくりとヘッポコ丸に近寄る。
「さすがは、イヴ様の末裔・・・。」
青年は静止したビュティの横を通り過ぎ、うずくまるヘッポコ丸のほうへ歩みを進めた。
「・・・今更人間の頃の記憶がよみがえったのか。アジ=ダハーカ。いや、今は人間か。ヘッポコ丸。
欲竜に体を差し出した少年・・・。」
青年はたしかにそう言った。
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【真説ボーボボ】に萌えを感じる雌。
原作終わっても、まだまだ屁美愛、邪美愛は尽きないぜー!ってことで、まだまだ現役続行中。

ドラゴン、ケモノなどの幻想生物にも萌えを感じる珍しい性質。
悪魔的なものもけっこう好きですvv
極度の角フェチでもあります(エッ?)
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