マイ・ハート・ビート(ギャレット・フレイマン・ウェア) 

October 31 [Mon], 2005, 16:27
マイ・ハート・ビート(ギャレット・フレイマン・ウェア)

主人公のエレンは14歳。兄の天才肌で何でも出来るリンクとその親友のジェームズをとても大切に思っている。前の学校では社会不適合の烙印を押されてしまった。だから兄の通っている学校に進学するに当たり彼女は努力し普通を装う。父親の過度の期待に苦しみながら、兄との違いを認めない周りに苦しみながら、けれどその原因となった父親も、兄も愛している。
けれど兄とその親友との三人の友好だった関係はあるひ突然崩れる。ジェームズがゲイで、兄とカップルだというのだ。

アメリカのヤングアダルトの翻訳ものですが、とてもすんなり読めました。アメリカと日本の違いに戸惑うことはほとんどなく、少女の心情が丁寧に描かれているので、寄り添うように読むことが出来ます。エレンの悩みはとても普遍的なもので、もしかしたらそれは自分の中で解決していることなのかもしれないけれど、同じように体験し、同じように悩み、成長することが出来たような感覚を持ちました。
親に認められようとするエレンに私は自分を重ねたし、進歩しないジェームズとの恋愛をまるで思い出したような気分になったし、兄との関係を自分に置き換えることも出来ました。最終的にジェームズとエレンは互いに思いやり好きあうのだけれど、それは全面的な幸せとは少し違うものです。少女は成長したし、兄の親友も新しい一歩を踏み出す。関係が変わってゆく中で成長する少女のストーリーはとても新鮮で、なのに古いものであるように思えました。恋愛について、または周囲との関係について、昔はもっと真剣に考えていたなぁと、純粋だったなぁと、思い出させてくれる作品です。

Q&A 

October 09 [Sun], 2005, 21:56
Q&A(恩田陸)


2002年2月11日(祝)午後2時過ぎ、都内郊外の大型商業施設において重大死傷事故発生。死者69名、負傷者116名。未だ事故原因を特定できず――。次々に招喚される大量の被害者、目撃者。しかし食い違う証言。店内のビデオに写っていたもの、人々が嗅いだという異臭、ぬいぐるみを引きずる少女。専門機関の聞き取りというスタイルで物語は始まる。

最初はどきどきするのですが、中盤に差し掛かったあたりから恩田作品にありがちなところが出てきて興ざめします。エンディングもあまり納得のいくものではありません。いきなりの話の転換に読者は置いてけぼり。
それでもゆっくりと分かってゆく物語の核心は恐ろしさを印象として与えます。それが理由なのか、ただそれだけのことで人々は死んだのか、そしてそれからのこと、人が突き進んでしまう道、それはとてもうまく描かれていて、秋の夜長にぴったり、ホラーではないけれど、怖いものが好きな方にはオススメです。

ユージニア 

October 09 [Sun], 2005, 21:37
ユージニア(恩田陸)

ある夏の日、篤志家の青沢家で催された、当主の米寿を祝う席で、 十七人が毒殺される。それは第二の帝銀事件と騒がれマスコミをにぎわすが、ある男の遺書によって、人々の心に疑問を残したまま、一応の解決をみる。
数年後事件に居合わせた少女がその事件について書いた本がベストセラーになり、またその事件は騒がれ始める。そしてそれから十年以上の月日が経った時、人々は語り始める。

Q&Aで試みた手法がふんだんに盛り込まれている作品。こちらは前作よりも読者に優しいです(置いてけぼりにされることがあんまりない)。恩田陸作品に置ける少女の位置がとてもよく表された作品かも。憎しみや悲しみや諦観が入り混じり、映画のようです。

象と耳鳴り 

June 02 [Thu], 2005, 21:55
象と耳鳴り(恩田陸)

象を見るとみみなりがするという老婦人に出会った、退職検事の主人公。彼女の話にひきこまれ考え込む彼に、バーのマスターが言う。しかしそれは、彼女の話とは全く違うものだった。初老のアームチェア・ディクティブが、人間の心理の迷宮、そのずれを指し示す。

さまざまな作品が収録されている短編集ですが、私は給水塔という話が一番好きです。日常に潜むちょっとした違和感から導き出される結論は、とても心地よく、ずっとページをめくっていたいくらいでした。だから少し、物足りなさを感じるのかもしれません。
ちなみにこの主人公は、『六番目の小夜子』の登場人物の関根秋くんのお父さん。関根家総出演について作者はあとがきで語っていますが、ぜひとも実現して欲しいなと読者としては思います。なんとはなしの謎、ミステリ、その中に隠されているものはとても大きいのかもしれません。

木曜組曲 

June 02 [Thu], 2005, 21:40
木曜組曲(恩田陸)

耽美派女流作家、重松時子が薬物死してから4年。彼女と縁の深い5人の女流作家たちは今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴をする。しかし今年は違った。花束と共に届けられた謎のメッセージ、時子は本当に自殺だったのか、この中の5人が殺したのではないのか、作家である彼女達は、一人ずつ仮説を話してゆく。その中で明らかになってゆく互いにも知らなかった真実とは。

恩田陸の作品ですが、飛躍もなく、良質のミステリーです。お互いへ向けられる嫌悪感や嫉妬、汚いとされるものが沢山描かれているというのに、文字を追っていると美しさを見つけます。DVD化もされている作品。

三月は深き紅の淵を 

June 02 [Thu], 2005, 21:32
三月は深き紅の淵を(恩田陸)

コピーをとってはいけない、作者を明かさない、友人に貸す場合はたった一人だけで、それも一晩だけ。厳しすぎるように思われる、さまざまな条件をつけられた「三月は深き紅の淵に」という本は読書愛好家の中で、長きに渡って憧れとなっていた。会社員の主人公は読書が好きという理由だけでその本を探す集まりに招かれるのだが…。他三篇の四部作。

私は最初の話に一番引き込まれました。コピー禁止、友達に貸すのは一人だけだし一晩だけしか貸しちゃいけない。そんないろいろな条件をつけられた本はどんなすばらしい話が詰まっているのか、読んでいるだけでもどきどきします。一章は大人の遊びという感を受けましたが、二章は人間の絶望、物語は物語として生まれてくるのであって人の手で作られるものではないという考えにはあっと言わされました。最終章は不思議としか言いようがないし、もしかしたら手抜きとも言われるかもしれません。けれど本に対する、物語に対する人間の欲が描かれたこの本は、お勧めです。

劫尽童女 

June 02 [Thu], 2005, 21:25
劫尽童女(恩田陸)

SF小説。謎の組織ZOOを離反し、逃げ回る博士、そして博士から研究のすべてをつぎ込まれて生まれた少女の逃亡と戦いの物語。

一体ZOOとは何なのか、これは結構重要な問題なのに、最後には捨て置かれています。これでいいのかなぁと微妙に不安を感じながら読んでいたのですが、これはむしろ、遺伝子操作されたいわば仲間のいない人間、『本当に世界に一人ぼっちの人間』を描いているのではないか、そう思います。成長するにしたがって生まれる孤独感や、人のやさしさに対する戸惑い、何もかも終わったあとに自分がすべきことは一体なんだったのか、生まれた意味は? 少女は何度も考え、地雷撤去に動き出します。
最後の雨のシーン、少女が消え去ってしまう時が一番目に浮かぶ情景です。

麦の海に沈む果実 

June 02 [Thu], 2005, 21:18
麦の海に沈む果実(恩田陸)

三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。そこに理瀬はよりによって、説明もなしに二月最後の日に訪れてしまう。校長は美しい女性でありそして紳士的な男性で、完璧を求めジェンダーをさまよっている。大物政治家や俳優の落としだね達が集まるおかしな雰囲気の学校。理瀬はどうしてここに来てしまったのか、自分に向けられる奇異の目に戸惑いながら、ひとつずつなぞを解いてゆく。

冒頭から中盤にかけては全寮制に対する私達一般のあこがれを体現しています。何も知らない少女が特別扱いされ、謎に迫ってゆくのははらはらしてページをめくる手が止まりませんでした。問題は終わり方なのですが、これは好き嫌いがある小説だと思います。悪く言えば陳腐な驚きがありますが、何分唐突な終わり方なので読者は突き放された感じです。

ネバーランド 

June 02 [Thu], 2005, 21:10
ネバーランド(恩田陸)

恩田陸の作品では一番好きな小説です。冬の休暇に寮に残った男子生徒たちの物語。いつも大人数で過ごしているのに冬の閉じ込められたようなところに友人ばかりが集うので、少しずつ見えてくる綻びや、それに伴っておこる諍いが少年特有の甘さとともに描かれていて、とてもよく出来ています。描写がすばらしかったし、終わり方もさわやかで、青春小説としてとてもよく出来ているんじゃないでしょうか。

以前ジャニーズでドラマ化されましたが、そちらとは比べ物にならないくらい良質の作品です。雪の風景など、どちらかというと映画を見ている気分になります。

パレード 

May 26 [Thu], 2005, 23:08
パレード(川上弘美)

昔の話をしてください。とセンセイが言うのでツキコさんはとつとつと話し始める。昔自分についていた二人の天狗のこと。

センセイの鞄の番外編のような位置にある作品。短編というより掌編です。私としては別にこれを読まなくてもよいのではないかと思います。ツキコさんが話すことはセンセイの鞄には似つかわしくないような気がするのです。これ単独で読むのならばよいでしょうが、連続して読むのはちょっと…。けれど、まだ彼らが存在していると思えてよかった。
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