Google流「いいサービスの作り方」 

October 03 [Wed], 2007, 19:42
次から次へと新しいサービスを生み出し続けるグーグル。グーグルが追い求めるサービスや機能が次のWebサービスのトレンドになる可能性は大いにある。「パーソナライズド検索」や「ガジェット」もそのうちの1つだ。

 今回、グーグル アソシエイツプロダクトマネージャであるブラッド・エリス氏に日本におけるiGoogleやGoogleガジェットについて開発の様子や今後の展開について聞いた。こうしたサービスから、多くのユーザーに利用してもらえる「いいサービスの作り方」を探る。
グーグル アソシエイツ プロダクトマネージャ ブラッド・エリス氏

 「大学在学中から日本語を勉強し始めた」というエリス氏。留学経験などを通じて、日本への興味が強くなり、「できれば日本の文化や知識と技術的なノウハウを生かして、何か仕事ができないかとずっと考えていました」という。

 2004年に大学を卒業したエリス氏は、京都でデジタルアートに関する仕事に取り組んだ。技術と伝統文化やアートを統合させて何か面白いものを作るという試みを1年ほど続けたという。

 その後、アメリカに戻り、Webアプリケーションの開発を1年半行ったが、2007年春にグーグル日本法人に転職。現在はiGoogleやGoogleガジェットといったサービスのプロダクトマネジメントをしている。
■iGoogleの開発舞台裏

 iGoogle とは、それまで「Googleパーソナライズドホーム」として提供していたパーソナライズドサービスを、2007年5月に名称を改めたもの。ユーザーの志向に合わせて、表示させるコンテンツやサービスをカスタマイズできる。GoogleガジェットはGoogle DesktopやiGoogleで動作するミニWebアプリケーション。天気情報や時計、カレンダーといったものから、鉄道の乗り換え案内やゲームなどさまざまものが提供されている。

 こうしたガジェットは、企業が自社サービスをガジェットとして提供する場合もあれば、個人が自ら欲しいと思うものを開発する場合もある。エリス氏はこうした日本におけるガジェット開発の普及や利用促進のため、Google ガジェットAPIの解説やiGoogleガジェットコンテストなどのイベント運営について、バックエンドのシステムの部分から、情報発信などといったことにも携わっているという。

 また、開発者やユーザーの動向を見ながら、サービスの改善も行う。測定したログから、ユーザーがどのくらいサービスを利用しているか、Webサイトのユーザーインターフェイスの変更や機能追加に対して、どのような変化があったのかを見ているという

 「それぞれのデータに優先度を付けて、定期的にという形ではなく、事あるごとにできるだけ早く見ていくということですね。それが多くのユーザーの意見をまとめる一番いい方法だと考えています」とエリス氏。開発者やユーザーから直接話を聞くこともあるという。 

 「日本の開発者の人たちと話をして、リクエストを聞き、ユーザーの傾向を見て、いまあるiGoogleやガジェットを改善するためにどうしたらいいかをまとめて、アメリカのエンジニアとコミュニケーションしながら、日々サービスの改善を行っています」

 例えば、日本では携帯電話などのモバイル機器への対応に力を入れているという。また、ちょっとしたところだと天気予報の情報を詳細に盛り込むなどの工夫がされているという。こうした改善は日本独自のものもあれば、iGoogleというサービス全体で行われることもある。

 では、その開発を行うチームの構成として、どのような体制を取っているのだろうか。

 「プロジェクトによっても違うのですが、iGoogleの場合はコアチームが本社にありますし、もちろん日本にもエンジニアがいます。ただ、コアチームで日本向けに機能の改善を行っても、時差の関係で遅れることがあります。そういう場合は直接アメリカに行くこともありますが、最近では、コアチームの中に日本のリクエストに対応するエンジニアをアサインするケースもあります。その場合、エンジニアはコアチームの一員としての業務を行う一方で、日本からのリクエストを基にした機能の改善をコアチームと連携しながら行います」(エリス氏)

■開発者とユーザー双方に使いやすい工夫を

 「GoogleガジェットとiGoogleのシステムが成り立っているのは、グーグルのエンジニアだけじゃなく、質のいいガジェットを作る開発者の皆さんと、使ってくれるユーザーの皆さんの協力のおかげ」

 エリス氏がこう話すように、iGoogleやGoogleガジェットには開発者が開発しやすい環境と、ユーザーが使いやすい工夫が盛り込まれている。

 例えば、Googleガジェットエディタやライブラリの提供を行っているほか、画像やFlashをグーグル側でキャッシュすることでガジェットの表示が短縮される機能を設けている。ガジェットのレスポンスの速さは利用するユーザーの側から見ても重要だ。

 「ガジェット開発者とユーザーの間にグーグルが入ることによって、より簡単にガジェットを開発することができたり、利用できるようになると考えています。開発者の方には、面白くて、格好良くて、速いガジェットを作ってほしいと思いますし、ユーザーの方はガジェットだけでなく、iGoogleをどんどん使ってほしいですね」とエリス氏も期待を寄せている。
■いいサービスを作り出すコツ

 次々とサービスを開発するグーグルだが、いい製品やサービスを開発するコツのようなものはあるのだろうか。エリス氏は次のように話す

 「美術の話ですが、絵画を描く人にとって最も必要なことは、『見る才能』だといわれています。対象を見て、大切なところや構成が理解できなければ絵は描けません。それと似ていると思います。いくらコードが書けても、いくらプロジェクトマネジメントがうまくても、最初に製品やサービスを見て、そこに何が欠けているのか、あるいは何がいらないのか、そういったことを見る目がなければいけないと思います」

 つまり、作ろうとしているサービスの本質を見抜く力が必要になるということだ。また、いいサービスを開発するには、自分が開発者でありつつユーザーであるという視点も重要だという。

 「例えば、国際電話をかけるときに『何番を押せばいいのか分からない』という場合、ユーザーは『自分が悪い』と思うかもしれません。しかしそうではなくて、使い方が分かりにくいのはユーザーのせいではなく、やはりその製品やサービスの問題だと気付きました。ユーザーが製品やサービスをどのように使うのか考えて、さらに実際に使っているところを見て、ユーザーに使いやすい形に改善していくことが、いい製品やサービスを作るポイントだと思います」

 ユーザーが使いやすいサービスを追及することは非常に重要な要素だ。しかし、対象となるユーザーを考えるとき、そのユーザーがパワーユーザーなのか、あるいは初心者なのかによって必要とする機能や見せ方は変化するのではないだろうか。幅広いユーザーがサービスを利用するグーグルでは、そういった多くのユーザーニーズに対応するのは大変なことではないだろうか。

 「Gmailを見ると分かりやすいのですが、Gmailでは、マウスを操作して、どこをクリックすればいいのか、初心者にとっても分かりやすくデザインされています。しかし、パワーユーザーであればキーボードショートカットで操作することもできます。そういうふうに初心者とパワーユーザー両方に対応できるインターフェイスを備えています。そしてパワーユーザーでもユーザーインターフェイスが簡単であれば、その使い勝手を喜んでくれます」
■iGoogleとGoogleガジェットのこれから

 日本でのiGoogleやGoogleガジェットの展開について、「今後も、開発者との交流を軸にしながら、システムを作っていきたいと考えています」というエリス氏。また、現在提供されている、自分が集めたガジェットや自分で作成したタブを友達に送る機能など、iGoogleを使ったユーザー間のコミュニケーション促進を考えているという。「せっかく集めたガジェットを1人だけで使うのはもったいないので、人に教えてあげられることを考えています」

 さらに、パーソナライゼーションという部分にもこれまでと同様に注力する。iGoogleではタブを新しく作る際、タブの名前を「Recommendations」とするとユーザーの検索履歴から関連するガジェットを持ってきてくれるといった機能もあるという。

 「ユーザーがもっと簡単に自分に合った情報が見られるようにと考えています。実際にユーザーに『何が欲しいですか』と聞いても、欲しいものが分からない場合もあります。それを探ってユーザーに紹介したいと思います」

 幅広いユーザーにとっての使いやすさ。それがグーグルのサービスにおける数ある重要な要素の1つであることは間違いない。Webサービス、あるいはソフトウェア開発は、開発者自身が「自分が必要だから」という理由で始まることもある。自分にとって使いやすいだけでなく、ほかの人にとっても使いやすさを追求すること、それが「いいサービス」「いい製品」を目指すうえで1つの鍵になるだろう。

ユーザビリティを常に考えていないと、進歩はできませんよね~
P R
2007年10月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
カテゴリアーカイブ