出会い 

November 26 [Sun], 2006, 1:53

憧れの中学校の制服。
袖を通してワクワクした。

これからどんなことが待っているのだろう。
どんな出会いがあるんだろう。

先輩に恋をしたりするんだろうか。
私はどんな人を好みとしているんだろうか。

何も知らない。
これから起こることなんて。
このときの私には想像できるはずもなかった。

ただ、期待という文字を背負って私は校門をくぐった。

病気 

November 26 [Sun], 2006, 1:57

ワクワクしていたはずなのに、しょっぱなから病気で入院した。
情けない気持ちでいっぱいだった。

その前から、鬱陶しいくらいに干渉してくる教師がいた。
最初はうざいくらいにしか思ってなかった。
偽善ぶるのもいい加減にして欲しかったし、その当時の私は干渉なんか望んでなかった。

そいつはお構いなしに、私の拒否する領域に入ってきた。
それでただ一言
「大丈夫?」と聞いた。

大人たちが次々と聞いていく、私の体調不良の原因を探らなかった。
そのときのあの人の表情はまだ忘れられない。
私ははじめて、このとき泣いた。

やっぱり黙って、静かにその場所にいてくれた。
私の頭を撫でるあの人の手が、暖かくて嬉しかった。

サン 

November 26 [Sun], 2006, 9:30

それから、私は入院をした。
小さな世界に閉じ込められた気分になった。
ただ、その当時家が嫌いだった私にとってそこは心地のいいものだった。
点滴や、検査、ただそれらを繰り返した。
看護士のお決まりの台詞の「ちょっと痛いけど我慢してね?」は、毎回ちょっとどころじゃなくてすごく痛かった。
毎回内出血をしていた。

白いベッドに横たわって、静かに色々な事を考えた。
同室の隣のベッドの子の担任の先生がその子のお見舞いに来ていた。
あまりに暇なベッドの上で、あの人が来ればいいのに。そう思った。
ただ、呆然と。担任でもなんでもないのに。
心配を、してくれているだろうか。
覚えていてくれてるんだろうか。
小さく、そんなことを思った。


入院生活は思った通り、見た通り暇な生活だった。
別に身体はさして重たい病気ってわけじゃなかったから、日常生活が病院に移っただけ程度だったから。
そんなとき、検査入院でやってきた同い年の男の子。
石田君に出会った。

 

November 26 [Sun], 2006, 9:43

石田君はこれまた不思議な少年だった。
13歳っぽい幼さを残していて、綺麗な顔立ちをしていた。
今、思い返してみると彼と過ごした日数は実質3日なのだ。
なのに一ヶ月も、何ヶ月も過ごしたような気が今でもしている。
13歳といえば、女を意味もなく拒む可愛い時期なのだが、同じ病棟という同郷(?)のよしみや暇が拍車をかけて簡単に打ち解けて仲良くなった。
何をして遊んだかは、ぼんやりとしか思い出せない。
そりゃ、もうだいぶ前の話だからしっかり覚えているほうが変なのだけど。
確かかくれんぼや、夏休みの課題をして過ごした。
夏休みの課題といえど、名前だけのようなもので気を回した先生達が「無理をしなくてやらなくてもいい」という免罪符付きのものだった。
それでも私は英語が"好き"だったから、英語だけはやっていた。
そのときの好きは得意という意味の好きで、この意味はのちのち変わってくる。
中1といえば、『egg』とか『bus』とか『I can〜』とかそんな程度。
あんなん覚えたって何の特にもならないことはよく分かってたし、この発音じゃ現地じゃ絶対に通じないって思った。
なのに、コツコツやった。ほんとに中1というもんは不思議だ。

話は戻って石田君の病室にはよく遊びに行った。
今は多分自殺防止のために開かないだろうけど、その当時病棟の窓なんか簡単に開いた。
ベランダらしきところに簡単に出入り出来たため、よく消灯後なんかに石田君の病室に遊びに行った。
おいおい、13歳で夜這いかよ、みたいな印象を受けるがあちらは4人部屋。こちらも4人部屋。
簡単に言うとどちらかの部屋で8人で遊んでいたんだ。
4人いたくせに、覚えているのは石田君だけ。
あとは誰がいたんだっけか。
看護士さんに見つからないようにこっそりと(多分見逃してくれてた気がする)子供たちはたわいもない遊びを繰り返した。・・・・・多分。

退院 

November 27 [Mon], 2006, 0:07
聞けば石田君には彼女がいるそうだ。
まあ納得。綺麗な顔だし、可愛いし。ああ、男の子に可愛いという表現は変なのかもしれない。
どちらが言い出したかは覚えてないけど、住所を交換した。
ここで終わればいいのに。
つながりを持ちたいものなのだ、多分。中学生というものは。

石田君の退院日が決まった。
小児科というものは、線が引かれていて入院患者はそこから出れない。
なんて閉鎖的なんだ、と毎回不満をもらしていた気がする。
なんでだろう。少し、寂しかった。
声をもう少し聞いていたかった。
もっと遊びたかった。

あの人の影が少し薄れた。
多分、これが私の今までで最初で最後の常識に法った恋愛だったのだと後から思う。

これから先がどぶのような恋愛なんてこと、このときの私は知る由もなかった。

退院2 

November 27 [Mon], 2006, 0:12
石田君との文通は続いた。
内容はこれもまたおぼろげであんまり覚えてないけれど、来るたびに嬉しかったことは覚えてる。
まずい病院食も少しは美味しく感じるってもんだ。
恋って言えばいいのか、好きという気持ちは自覚すると止まらない。
これって不思議。

だから好きだ、と伝えた。石田君に。
なんて純粋なんだろう、いまさらながらに自分の青さに恥ずかしさを覚える。
今なら真顔で言えるだろうか、そんな言葉。
確か彼は「うん」とだけ、答えた。
私は彼の、彼女になった。
少し、誇らしげに思えた。


9月になった。
私が入院して2ヶ月経った。
そろそろ退院の日が近づいてきていたんだ。
久しぶりの学校は全然変わってなかった。
まあ、変わった事と言えば私を見る目くらい。
そりゃいきなりいなくなったんだから、不審がるわな。

あの教師にも会った。
だけど別に何も変わりはしない。
あの前のような暖かな空気はなくなったのかもしれない。
友達が「この子、彼氏いるんだよー」と余分なことを言っていた。
余分と思える時点で、私が気にしていることくらい明確だった。
何故か知られたくなかったんだ、この人には。

何を思ったんだろうか。
幼い私も、今の私も、あの笑顔の裏の気持ちは読めはしない。
寂しいと思ってくれたんだろうか。
少しでも嫉妬した?
でもそんな疑問も、体育祭という慌しい行事の中に消えていった。

色々を忘れかけて、落ち着きを取り戻したある秋の日。
あの人と会った。
偶然かどうかなんて覚えてない。
交わした言葉は一個だけ
「授業、ついていけてる?」
「あんまり」
「休日に見て、あげようか?」
顔が、あげれなかった。
嬉しいって、うんって素直にいえなかった。
それでもあの人はうんと言う私を待ってくれていた。

ヒトのいない空間 

November 29 [Wed], 2006, 21:52

日曜は自然と一緒にいるようになった。
当たり前に、一緒にいた。
土曜までは退屈だった。私が独占できないから。
それはまだ恋愛感情じゃなかった。
ただ、構ってくれるのが嬉しかった。
私みたいなのに、構ってくれるのがただ嬉しかった。
ひいきをされていると、陰口を叩かれたことも少なからずあった。
そんな噂すら嬉しく感じた。言うなら、言えばいいと思った。
私は特別でいたかったのだから。

勉強会とは名ばかりで、たくさんの話をした。
あまり何を話したか細かいことは覚えてない。
だけど、いつもそれは暖かいのだ。
私が落ち込んでいるときは何故か分かっていたし、私もいつしか相手が考えていることを漠然と分かるようになった。
花の話、天気の話。給食の話。
私の話。親の話。学校の話。友達の話。
多分こんなことを話した。

大体、日曜は校内を散歩した。
つまらない裏庭も、ぱっと色を与えたように見えた。
たとえるなら雑草が四葉のクローバーのように見えるのだ。
未だにそれは不思議だった。
それで、もうひとつ不思議なことは見上げる空はいつも夕焼けが近づいてその色はとてもとても暖かだった
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私は恋をした。
一生分の恋をした。



わすれない。
一生、わすれない。

大切すぎる思い出を拙い文章で、残していこうと想いました。

※人物名は全て仮名です※
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