大阪湾に浮かぶ影 

2004年10月03日(日) 0時12分
その日の大阪湾は穏やかだった。その事はBISTRO-Beehiveにはなんら関係ない。
当然大阪湾に浮かぶ影も全く関係ない。
タイトルなんてそんなものだ…瑣吝はテーブルに開いた雑誌を閉じた。
ヒロトが愛読しているヤクザ小説の連載は、この度バイオレンス過ぎて唐突に最終回を迎えたようだ。
瑣吝はそのおざなりな最終回だけを読み、┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ〜と溜息をついた。
店内はまだ開店前の静けさで厨房ではヒロトが何者かと戦っていた。
従業員控え室ではあんずが緊縛され、てんこは静かにヒゲメイクを始めた。
各々が各々スタイルで開店前のリラックスをしている。

じきにオープンの時間。
瑣吝はこの時間静かに一人で店内にいるのが好きだった。
人が入る前の店内は虚空感が漂い 人を拒絶する雰囲気をかもし出している。
それがひとたび看板を表に出すと、途端に人を集めよう店内の何もかもがキラキラと輝きだす。
その賑やかさに嘘はないのだけれど、虚飾という言葉が似合わなくも無い。
そのジレンマを持つ微妙な時間は瑣吝には心地良かった。
「さてと…そろそろオープン時間か…」
瑣吝は従業員控え室にあんずの緊縛を解きに向かった。

開店BISTRO-Beehive 

2004年10月01日(金) 17時20分
10月1日…とうとう瑣吝の夢
BISTRO-Beehiveが出発する日が来た。

「やっとオープンするんだわ…私の店が…」

オーナーの瑣吝-さお-は、感慨深げに まだ真新しくひんやりとしたテーブルを撫でた。
開店前日までの慌しさが嘘のように静まり返る店内。
店内は、設計からディスプレイに至るまで、瑣吝のこだわりで埋め尽くされていた。
けして目新しいものは無いが、それでも自分で必死に作り上げたそのささやかな城を、瑣吝はとても気に入っていた。
もうあと数時間でこの店は誰もが自由に出入りできる空間となる。
まだ新しく馴染みの無いこの店にどれだけの客が来てくれるだろうか…。
どれだけのお客様を楽しませる事が出来るだろうか…。
瑣吝は椅子を正し、店内を視線で一周した。
「よろしくね…」瑣吝は誰に言うとでもなく呟いて、唇だけで微笑んだ。

+++

「さてと…もうすぐオープンよ( ̄‥ ̄)=3 フン」
瑣吝は従業員控え室に顔を出す。
ウエイトレスのあんずが真っ白なエプロンをつけながら瑣吝に向き直った。
「あ、オーナー…おはようございます(^▽^)」
あんずがにっこりと微笑む。
その奥ではこの店の看板バーテンダーてんてんが、静かに雑誌に視線を落としていた。
「あ…瑣吝、おはよう」
瑣吝の登場に、のんびりと気がついたてんてんがチラリと振り返り挨拶する。
「おはよ」
瑣吝はちょっと困った顔でてんてんに微笑んだ。
「あ、その顔…なんかしやがったな?」
目ざとくてんてんがツッコミを入れる。
「さっきグラスを一つ割ったなんて秘密よ(汗」
「Σ(゚д゚lll)ガーン またやりやがったのねっ!!あれは全部私が一から…」
てんてんが小言をはじめたところでガタッと椅子が床を擦る音が聞こえた。
「ん?」
瑣吝とてんてんが同時に振り返ると、そこには腰を両手で押さえながら
床に倒れこむように蹲るあんずがいた。
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