旌券《りょけん》が必要になること

October 12 [Sat], 2013, 12:04
|乍《さく》将軍でしょう、以前の」「李斎は知っているか? もともと承州師の将軍だったということだが」「いえ、さすがにそこまでは。まだお体の具合が|宜《よろ》しくないということだが、お会いできるかえ?」「はい……まだ遠出できるような状態ではないのですが、床払いも済んでおりますし、今は萎えた手足を動かす訓練をしているところで」「私がどこの|何某《なにがし》だかは、あえて言わずとも宜しい。後からその事実を知り、何もできなかったこと、何もさせないために国を出されてしまったことをお知りになってしまったら、台輔は」 出過ぎか、と|李斎《りさい》は思ったが、|驍宗《ぎょうそう》は頷いた。「こんな訪ね方をしたんだから、礼にそぐわないのは当たり前です。 後から考えてれば──と李斎は思う。 これが、という思いと、なぜ、という思い。「怖いのは、心細いせいなのかもしれません」 花影は苦笑まじりにそう|零《こぼ》した。だが、戴との間には虚海が控えている。では訊くが、そもそも王とは何だ?」 |英章《えいしょう》は黙り込んだ。 |碧霞玄君《へきかげんくん》の美貌は衆目の認めるところであろう。夏が終わろうとしている。初雪が降るまでに、もう何ヶ月もありません」「思うてみれば、戴は辛い国じゃな。人と獣の二つの形を持っている。強く強く念じれば、なんとか抵抗を突破できるだろう。|はないかもしれないが、それについた|烙款《らっかん》で|界身《かいしん》から金が出る。

早急に行って蹴散らし、|王師《おうし》の恐ろしさを叩き込んでおかねばな」「勿論、土匪は押さえねばならんが、早急にと言うのはどうか。片手に|凱之《がいし》から預かった剣を持っていたとはいえ、|迂闊《うかつ》にも女に槍を奪われてしまった。まるで小さな段差に|躓《つまず》いたようにしてまろび出た子供の影は、二、三歩つんのめって、はたりと止まる。 李斎は回廊に座りこみ、|鬱々《うつうつ》とした気分で壁に|凭《もた》れかかっていた。きっと小さい頃に、やってみたことがあるのだと思うのです。ただの逆賊ならば、寿命が尽きることもあるでしょうが、阿選は仙です。「人を助けることで、自分が立てるってこともあるからさ」「そんなもんか?」「意外にな」 そうか、と呟いて見やった雲海には、すでに何者の影も見えなかった。それまでと、次王が立つまでの間を堪えればいい。「李斎は嘘など申し上げませんよ。尚隆は悧角の背に騎乗したそのまま、有無を言わさず手を伸べた。阿選もまた次王として嘱望されていた。桓たいは声を上げて笑い、捕らえた罪人は秋官に引き渡してある旨、浩瀚に報告すると、虎嘯の背中を叩き、引き連れて出て行った。そうすれば誰もが安全に、麒麟に面会することができるんです」「ああ……そうだな」「黄海を越えねばならぬと思うから、民はみんな二の足を踏む。|政《まつりごと》のこともよく分からないのです。 廉麟が金の軌跡を残してその場を駆け去った時、彼は思い出していた。アグブーツ本人が嫌がるなら、|攫《さら》ってでも。床に降りて振り返ると、閉まったはずの扉がない。 ──驍宗には玉座に対する備えがあったのだ、と言われる。ふと我に返った、というふうだった。朱塗りの祠の前に立った。じゃが、戴にはまだ正当な王がおられる。主上はあえて知らせないために、阿選をおつけになったのでは」 李斎は黙り込んだ。どんなに不遜な言葉を吐き、泰麒に向かって|罵《ののし》るような真似をしても、|断腸《だんちょう》の思いで耐えているのだ。大きく重い雪片、それが舞い落ちる中庭。泰麒だけを連れ戻っても、何の解決にもならぬ」「泰麒は?」 口を挟んだのは陽子だった。 どこなのか、さっぱり分からず、どうやって帰ればいいのか見当もつかないけれど。実を言えば、李斎は驍宗が昇山したその時、自信も昇山していたのだ。特に|泰麒《たいき》が|漣《れん》へと向かい、本格的に|冬狩《とうしゅ》が始まると、いかにも|憂鬱《ゆううつ》そうで、危うげなものさえ感じさせた。しかしながら、呉剛門は、当然の事ながら月のない昼間には開くことができない。そこで初めて、遵帝は罪によって|斃《たお》れたのだ、ということが明らかになった。
冬には全てが凍りつく極寒の地
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