ひっそりと 

April 06 [Sun], 2008, 11:07
upしていなかった小話を
実はパソコンが一度壊れてしまい、ネスケ等のツールも起動不可能になってしまったためこちらにupします。
新生活に幸多くあれ。




パラリとかすかな音をたてて繰られる雑誌のページには、いつも彼女が見ているファンシーで女の子らしいグッズはひとつも見当たらない。彼女の何より大切な恋人が彼女と同様にそのような類のものを好んでいるならいざ知らず、彼はむしろそれを敬遠する傾向にあるからだ。つまり、黒と銀で大方が埋め尽くされたその本の中の彼女に選ばれるであろう「何か」は、彼女から彼へ送られるプレゼントになる。まだ彼女は迷っているようだったが、それもそのはずそれは彼への誕生日プレゼントだからだ。恋人同士の二人にとって一大イベントである。迷いに迷うだろう。恋する女としては気合を入れずにはいられない。







彼女のいる夜、いない夜








「誕生日プレゼント、何がいい?」

リノアは首を傾げ、持っていた雑誌をスコールの視界に入れた。カードの整理をしていたスコールはちらりとそれに視線を向けた後、小さく呟く。

「いらない。」
「そういう時は、君がいれば何もいらないんだよ?ハニー!……ぐらい言ってよね。」

しかしスコールの答えは予想通りだったらしく、リノアはまたもや雑誌を前に頭を抱え始めた。悶々とただ悩むだけの行動が元来大嫌いな彼女は耐えられなくなって彼に直接聞いたものの、不毛だったと思い知る。ページが起こす微かな風が額にかかった前髪を優しく揺らした。リノアが自然にため息を付くと、スコールは一旦手を止めて彼女の手の中の雑誌を覗き込んだ。

「……」
「どーよ?」

リノアが広げたページにはドッグイヤーと開き癖がある。ほとんどものに興味というものを持たないスコールが興味を持つものは簡単に挙げてたった三つ。シルバーアクセサリー、カード、そしてもちろんリノア。開いたページにはとりあえずシルバーアクセサリーの新作が紹介されている。しかし彼にとってはピンと来るものではなかったらしく、どういったものかと眉根を寄せている。リノアはそれを感じ取り、軽く首を振った後に違うページを開いた。そこには様々な形のカードホルダーが載っている。アルバム型のものや、今現在スコールが所有している本当にただのケース、オブジェの様な形の凝ったものが目の前に広がる。リノアはついとそれらに指を滑らせると言った。

「スコール、これ欲しいでしょ?」

指差されたものはアルバム型のものだ。レベルごとやカードタイプごとに整理でき、「お気に入りカードページ」や「レアカードページ」等のコレクション的要素が豊富である。丁度カードの整理を行っていたスコールは、これが今手元にあったら便利だという意識は確かにあった。お見通しだと笑うと、リノアは困ったように微笑み返した。

「ん〜……スコールこれ欲しいだろうなって思うものはあるんだけど、何より私がピンと来ないんだよね。私がスコールに一番あげたいものって ないかなぁ。だってスコールはこれ自分で買えちゃうじゃんね。私だからこそあげられるものあげたいんだよ。」
「気持ちは分からないでもないが、無茶だろう。それらしいものはもう全部もらった。」
「ですよねぇ。」

リノアは雑誌を胸に抱いてベッドを転がり、うんうん唸った。スコールも続いて横になり、転がってきたリノアを受け止めた。片腕に彼女を抱き ながら、もう片方の手で電灯の光を遮るように自分の目を隠す。リノアは小さな頭をスコールの胸に押し付けると小さく問う。

「疲れた?」
「ああ、なんだか目が疲れた。」
「延々カードばっかり見てるからだよ。目悪くなったらSeeD失格なんだから。」

優しく彼の首に唇を落としながら、リノアはそれでも頭から誕生日プレゼントのことが離れなかった。



自分にしかあげられないもの、なんだろう。思いつくものはもう全部あげてしまった。
自分しか持ち得ない自分の心は乱暴なまでに根こそぎ、彼に半ば奪われてしまった。
生々しくいえば、体に関しても最初と呼べるものは全て彼にあげた。
自分の体は今まではもちろん、これからも一生彼しか知らないままだ。
心も体も彼のものなのに、まだ自分にしかあげられないものは残っているのか。



「私だけのものは全部あげちゃったんだよ。スコールがそう望んでくれたから。私の過去も未来もスコールのものだもん。」
「ああ、ありがたく思っている。」

拗ねたような言い方に少し噴出しそうになったスコールだが、とりあえず心からの礼をいって彼女の艶やかな髪に指を走らせる。リノアは目を閉じてまた考え始める。

何だろう。ものを欲しがらないスコールが欲しがっているもの。






「ママ先生。スコールの誕生日プレゼントってもう決めました?」
「ええ。カードホルダーをあげるわ。アルバムタイプのね。」

内心被らなくてよかったと胸を撫で下ろしながら、リノアはティースプーンでぐるりとミルクティーを掻き混ぜた。美しい白のリボンがティーカップの中で踊り、溶けていく。イデアは微笑んでお茶請けのクッキーをテーブルに置きながら、自分も腰掛けた。

「それで、リノアは何をあげるのかしら?秘密?」

リノアは苦笑しながらイデアを見上げると小さな声で言った。

「それがまだ決まってないんですよ。」
「焦らなくてもいいわ。彼のために、と考えてあげることもプレゼントのうちだものね。」

イデアは紅茶を一口飲んでリノアの頭を優しく撫でた。彼女の付けている上品な香水の匂いがとても心地よく感じる。リノアはうっとりと目を閉じた。

「ふふ。小さな頃のスコールも、頭を撫でるとよくそうやって笑ってくれたわ。」
「今とは違って、可愛かったんでしょうね〜。」

その言葉にイデアは口元を押さえて笑うと、そうねと言う。

「よく眠る前に頭を撫でてくれとねだったものだったわ。甘えん坊で寂しがり屋で、エルがいなくなってしまってからは特に……ね。自分の枕をギュッと抱きしめて泣きながら眠ったものだったわ。私はそれが可愛そうで見ていられなかった。」







「改めまして、スコールくん……誕生日おめでとう!はいこれ、プレゼントだよ。」

8月23日の夜、彼は当日の朝に任務から帰ってきたために27日の夜は二人一緒にいられなかった。幸運にもそれほど厳しい規律の付く任務ではなかったため、リノアは電話で最初のおめでとうをスコールに言えたのだが。当日の夜にはセルフィプロデュースの小さなしかしにぎやかなパーティーが行われ、ごく親しい者だけだが暖かな空気の中で落ち着いて皆が彼を祝うことが出来た。そんなパーティーもお開きを向かえ、二人は今スコールの部屋にいた。リノアからうけとったプレゼントの包みは、傾けるとさらさらという音がした。スタイリッシュな青と白のストライプ柄の包み紙に紺のリボンがグルグルと巻きつけられてある。開けてもいいよ、と声がかかったので、スコールはそっと包みを開け始めた。ここ近年、プレゼントの包みを開けるときに鼓動が早まったことはなかった。しかしスコールは今、幼い頃のようにプレゼントの中身が気になって仕方が無い自分に戸惑っていた。焦ってしまっては格好が悪いと、ついつい破いてしまいそうな包み紙をゆっくりと剥がしていく。リノアが悩みに悩んで自分のために選んでくれたプレゼントに期待が高まる。
そしてそれはさらさらと音をたててスコールの目の前に現れた。

「枕?」
「うん。」

涼しげなパウダービーズの詰まった濃紺色の枕だった。裏には金字で小さな刺繍が上品にしてある。

「一応ブランドものなんだよ。……てまあ、そんなことは気にしなくてもいいんだけどね。夜にスコールが寂しいときは、それを抱きしめて眠ってね。私と二人でいる夜はスコールはそれで、私はスコールの腕枕でって眠ろう?二人くっついてもあんまり暑くないようにパウダービーズ使用だから。いろいろ考えたけど、私だけがスコールにあげられるものはやっぱり私しか無いみたいなんだ。それで今回は私を常にスコールのものにしておくきっかけに枕を選んだの。いかが?」

スコールは少し顔を赤く染めて何かを小さく呟いた。そして彼女を抱き寄せてもう一度彼女の耳元に囁く。
いくら彼女からもらった枕でも、彼女のいない寂しい夜に彼女の代わりになりはしないのだろう。
むしろ余計に寂しくなってしまうかもしれない。
だけどこれは彼女が自分のことを思っている証でもある。
たまには寂しい夜だと気取ってこれを抱きしめ、側にいない彼女のことを思う夜もあっていいのかもしれない。
二人一緒に眠る夜には、眠る彼女にその夜考えたことを話すのもいいかもしれない。


おやすみなさい。夢でもどうか、会えますように。





END

ごめんなさいなこと 

July 11 [Tue], 2006, 2:13
申し訳ありません。


IMYは2006年7月11日深夜2時をもちまして無期限休業とさせていただきます。


本当にすみません。
閉鎖も考えたのですがこんないい加減なサイトでもご感想を下さる方がいるもので、閉鎖と
いう形よりもこのまま駄文を放置し、少しでも長く楽しんでいただけたらと思う所存です。
赤っ恥かいても、それも自分のしたことの報いです。
言ったことをやらない子になってしまいました。うん。すみません。
企画も短編も中途半端で、私が目指していた世界観を反映できなくなりつつあります。
いや!そんなの!こんな作品で妥協するくらいなら駄目野郎でもいいから休業するわ!
わがままヤマミです。お叱りは拍手やメールフォームをご使用ください。

またいつか、というかぼちぼち書いていこうと思います。
だって大好きなんだもん。

IMYを今までありがとうございました。

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