宮城県仙台市 十割そば会泉中央本店 2017.07 Part.1

September 22 [Fri], 2017, 0:00
Part.1
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【序章】
 2017年7月の下旬は関東甲信地方まで梅雨明けと発表されたが仙台が属する東北と日本海側の新潟、北陸地域には梅雨前線が南や北に位置を変えながらも居座ることが多く天気図上では時々前線が消えて30℃を越える日があっても梅雨明け宣言が為されない儘であった。
 この時季に仙台市の北部となる泉区の中心地域である地下鉄泉中央駅付近に新しいそば店が開業されるとの情報を得た。その名は「十割そば会泉中央本店」だそう。



今回はこの店の訪問記である。

【新規開店】
 「十割そば会」を名乗る店は泉区の北に接する富谷市に「十割そば会富谷本店」が営業していることは以前から承知しており訪問対象に織り込んでいたので多少の事前情報は得ていたが改めて公式HPを見ると宮城県の内外に少なからぬ店舗を構えるチェーン展開が確認できた。それらを列挙すると、「十割そば会 郡山本店」と「十割そば会 須賀川本店」は福島県内の店で宮城県には「十割そば会 富谷本店」に加えて仙台市内に「十割そば会 大野田店」(2016年2月開店)、「十割そば会 仙台吉成店」(2016年11月開店)と今回開店した「十割そば会 泉中央本店」(2017年7月開店)が加わるがその他岩手県に「十割そば会 北上店」(2016年5月開店)と新潟県は「十割そば会 新潟小針店」(2016年11月開店)と昨年以降急速に店舗数を増している。全ての店名に「十割そば会 」が冠されており立地を表す各店の表示は〇〇本店と〇〇店の区別があるがその理由は不明である。
 「十割そば会」の創業地は福島県の「郡山本店」にあるらしく創業者は大手ラーメンチェーン「幸楽苑」元社長の長谷川氏で東北大震災を経験した後にそばチェーン店事業を立ち上げたとの情報に接した。

【余談: 幸楽苑と会津っぽ】
 このサイトでラーメン店に触れるのは完全に余談の領域となるが「幸楽苑」は現在北海道から中国地方の岡山県まで500を越える店舗を展開しており広く知られた存在でその沿革を見ると1954年に会津若松市で「味よし食堂」の開店が創業とされる。その後「幸楽苑」と改称し1980年には本部や工場を郡山市に移す一方でフランチャイズ方式を採り入れて多店舗展開が進められた。1984年には福島県外の1号店となる「仙台市鹿野店」が開店した。当時宮城県内では「幸楽苑」ではなく「会津っぽ」の看板を掲げる店を何店か見掛けていたが後に軒並み「幸楽苑」に変更された憶えがある。
因みに今回訪問した「十割そば会泉中央本店」と同じ沿道の泉中央駅寄りには「幸楽苑泉区役所前店」が営業しており更に駅前の商業施設内に「幸楽苑アリオ仙台泉店」も展開されている。

【十割そば会店舗の特徴】
 公式HPの情報に依ると十割そばに拘り繋ぎや添加物を一切使用しない完全無農薬の蕎麦と水だけの本物十割そばと表記されている。蕎麦の産地に関して福島会津地方産との説があるが公式情報からは確認できない。
更に十割そばと材料構成は強調されているがそばの加工工程を説明する記述も見当たらない。従って以前から述べている様に手打ちの説明が付帯しない大多数のそばは機械加工(機械捏ねや機械製麺)で「十割そば会」の店もこの範疇にありそうに思える。
 同じHPには品書きも公表されている。ファミレス級に多彩な品が取り揃えられているが定石の冷そばを見ると、もりそば\500、天ぷらそば\698、かき揚げそば\598、野菜天そば\658、海鮮天そば\898(いずれも税別)等々十割そばにしては割安な料金に設定されており営業時間は中休みなしで11:00〜21:00となっていーる。
この様な店舗設営の発想は首都圏の駅近くに多数の立ち食い店を展開している「名代富士そば」と共通する方式を感じる。但し駅前立地の「名代富士そば」では利用客の需要動向を踏まえて早朝から深夜まで長時間営業が常態となっている点に相違がある。「名代富士そば」は十割そばではないらしいが一部の店では従来方式の茹で置きそばに変えて押出し製麺機を設置し受注後に押し出したそばを茹でたてで提供しているとか。



 「十割そば会 富谷本店」の存在を知った時点から「十割そば会」のそばは十割で捏ねたそば生地を押出し製麺機から茹で釜に投入する方式で多数のそば食を安価に提供できる方式を採っているのだろう想像していた。

【十割そば会泉中央本店】
 7月下旬の日曜日の昼食時間帯に偶々外食の機会があったので「十割そば会」の店でのそば食が第一候補となったが以前から訪問予定にあった「富谷本店」に赴くか或いは新規開店を知った「泉中央本店」に向かうか迷った末に新規開店の誘い文句と多少の近距離感から「泉中央本店」へ進路を進めることになった。



 泉中央駅の北側に位置する劇場施設イズミティ21から将監(しょうげん)団地や泉パークタウンの住宅街に向かう道の途中で将監へ上る信号分岐を過ぎた直後の右手にモスバーガーのドライブスルーがありガソリンスタンドを挟んだ先に真新しい舗装に駐車区画の白線を施した敷地が見える。
泉中央本店入口看板
入口には「十割そば会泉中央本店」の看板が設置されている。
13:00頃の到着となり真新しい舗装が巡らされた敷地に乗り入れると30台程の区画がありそうだが満車状態で開店直後の盛況が伝わってくる。偶々1区画のみの空き区画に恵まれて車を停めることができたがその後は来場しても駐車できずに去っていく車が何台か見らる程の混雑状況であった。

【店舗の外観】
店舗外観
 敷地の奥に建つ方形平屋の店舗外観は比較的平凡な構造に見えるが軒先に掲げられた白地の看板に十割そば会の大きな文字が目立つ存在となっている。看板の左には開店を祝う花輪が飾られて新店舗を華やかに演出している。
店舗の入口
建物の駐車場側となる看板下の角に入口が設けられておりこのガラス扉を開けて入った内部の右手に更にガラス扉がありその奥が店内の空間である。二重扉構造の風除室空間は外気を遮断して室内空調を維持する役に就いている。
 風除室は元々寒冷地で採用された構造で冬季の室内に侵入する外部冷気の阻止が主要な役割であった筈だが最近は夏期に頻発する35℃を越える酷暑に外気の流入を抑えて室内の空調温度を維持する任務も担っている様に思える。
 風除室から2枚目の扉を開いて入店すると突き当たりの位置にレジカウンターがありその手前の右手壁際に3人程が着座できる待合い用のベンチが設えられている。上の写真で右側の外壁に開口する窓がこの位置に相当する。多数の訪問客が風除室から屋外の駐車場まで入店待ちで溢れる混雑状況に照らせば焼け石に水の貧弱な設えと感じるがこの混雑自体が開店時の一時的な現象であると捉えるなら許容できる設えであろう。

【店内の客席】
 店内の客席はカウンター席とテーブル席に分かれているがそば店では一般的な小上がりと座卓の用意はなく全席がフロア配置となっている。
レジ前に置かれた入店希望のリストに2名と記帳して待機していると20分程経った後に順番がきて案内された先は窓際にある4名着座用のテーブル席であった。恐縮して辺りを見回すと他のテーブルにも2〜3名のグループ客が着いていて混雑時にも拘わらず相席の案内は行っていない様に見受けられた。
 客席への案内と配膳、下膳を担当するフロア係は責任者と覚しき年配の女性の他に若手2名が従業していると見えたがテーブル席からはカウンター席の更に奥で狭い開口の窓越しとなる厨房内の様子は窺うことができず釜場の配置や押し出し製麺機の有無も視認できなかった。

【カウンター席】
カウンター席入口側
店内フロアはレジカウンターと並行するカウンターテーブルが厨房との隔壁に向き合う形で設置されていて
カウンター席奥側
客席奥方向の左手に続いている。カウンター席は長いテーブルに沿って22席が配置されている。
カウンター席が向き合う厨房との隔壁には横長窓と出入口の開口が設けられていて横長窓からは厨房で立ち働く従業員の姿を垣間見ることはできるが厨房内の全容を把握することは難しい。出入口は厨房からカウンター席へ注文された料理を運ぶ為の開口だが白い暖簾の目隠しで内部の様子を伺うことはできない。

【テーブル席】
テーブル席
 カウンター席と通路を挟んだ背中合わせの位置に4人掛けのテーブル席が一列に並びフロアの奥へ8脚が配置されている。テーブルの通路側は2脚の独立した椅子が置かれているが窓側は外壁面に固定設置のベンチシート構造となっている。
卓上のポット
着席すると先ずテーブル上に置かれた同型の二つのポットが目につく。濃色を纏ったポットには「美味しいお冷」、銀色金属光沢の方は「美味しいそば湯」とテープラベルが貼付されている。要するに冷水とそば湯は保温ポットで予め置いておくのでセルフサービスでどうぞ、という方式と思うがわざわざ「美味しい」という形容詞を冠する表示には若干の抵抗を感じる。 美味しいかどうかは味わって感じることで提供者から頭ごなしに言われる筋合いはないと思うからである。そば湯はまだしも冷水を美味しいと言うからには何処ぞの名水を提供しているのであろうと想像することになる。しかし日常的に使用している仙台市の水道水も上質の範疇にあり嘗て訪れた熊ヶ根の水道記念館では来館者にペットボトル詰めの水道水を試飲用に配布しているのでこれを美味しいと表現するのならその通りではある。
箸箱と調味料
二つのポットの後に半分隠れて箸箱が置かれその上のトレイに鰹節醤油や七味、岩塩の調味料と爪楊枝が控えている。
写真はないが箸箱の中は一膳毎に紙製箸袋を被せたリサイクル箸が収められている。最近リサイクル箸を採用する店はよく見掛けるが旅館以外の飲食店で箸袋に入れる手間を掛けたサービスは少数派である。

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宮城県大崎市 せいじん庵 2017.06

September 15 [Fri], 2017, 0:00
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【序章】
 2017年6月下旬の仙台市は平年より遅めの梅雨入りとのことであったが降雨量は僅かで曇り空から薄日が差したり雲の切れ目には強めの日差しもあり空梅雨の気配が感じられた。
諸般の事情の巡り合わせで好天に恵まれ気温が28℃にも達する週末に大崎市岩出山の本格手打ちそば処「せいじん庵」を訪れる機会に恵まれた。
「せいじん庵」は嘗ても訪問経験があり今回は久し振りだが記憶に間違いがなければ3度目の訪問である。

【せいじん庵の位置】
 せいじん庵は宮城県大崎市岩出山上野目(いわでやまかみのめ)の江合川沿いにある。大崎市の中心部古川(平成の大合併によって大崎市になる前は古川市)の街並みで国道R4から西へ分かれるR47を鳴子温泉に向かって15分程進むと岩出山地区(旧岩出山町)に入り左手からR457が合流して国道同士の重複区間となる。この辺りは江合川右岸にある岩出山の市街地を避けて新岩出山大橋で左岸に渡る岩出山バイパスとなり渡河直後の上野目交差点脇に「せいじん庵」と「愉多工房」の案内看板が左折を促している。



愉多工房を目指すならここの左折が最短のルートとなるがせいじん庵に向かう場合はもう一つ先の信号交差点で有備館への案内に従って左折し広い道を進むのが良い。



江合川の右岸市街地へ渡る岩出山大橋の直前に立つそばの幟の誘導に従い左折した先の右手に広い専用駐車場が見え道を挟んだ左手がせいじん庵の店となっている。

【店の外観と店内】
せいじん庵外観
 敷地は道路に面しているが入口は未舗装路を少し入った左手にある。
門構え
小屋根を掛けた門構えの下にせいじん庵の看板を掲げており営業中の証しとなる暖簾が懸けられている。
玄関と風除室
門を潜った先の右手の玄関は明らかに後補と見える風除室に守られていてアルミサッシの引き戸には「網戸にしましたので出入りには十二分にご注意下さい」との掲示があるのは一見何もない様に見える網戸に体当たりする危険への配慮を感じる。網戸の配置はこの時期故の夏仕様で冬季にはガラス戸に入れ替えられて本来の風除室機能を発揮するのであろう。
 玄関に入って靴を脱ぐと「空いている席へどうぞ」と案内される。
玄関から見える奥の客室は板貼り床の間と右手の縁側風の窓際にテーブル席が配置され左奥の畳の間は座卓の和風空間である。
客室風景
窓際のテーブル席に陣取り板床の間越しに奥の座卓席を見る画面の左奥に厨房がありその手前にも客席があがこの位置からは視界の外でその様子は窺えない。

【品書き】
 品書きはラミネート加工したA4用紙4枚を4本のリングで綴じた構造で各テーブルに備えられている。以前の訪問時には1枚紙に品名が書き並べられたものであったと記憶しているが今回は分かり易く各品の写真を掲載した故に多頁の構成に変更されたのであろう。
品書1頁目冷そば
品揃えのトップはざるそば\750でこれに冷ととざるざるそばと辛み大根ざるそば各\950が次ぎ鴨南蛮ざるそば\1050が続く。この店では冷たいそばをざるそばと総称しているが写真にある通り刻み海苔の装飾を載せないもりそば仕様である。
品書2頁目冷そば
見開きの2頁目は天ぷらを添える品々が並ぶ。えび天ざる\1150、穴子大天ざる\1250、穴子小天ざる\1150に穴子小天えびミックスざる\1350は文字通りえび天と穴子小天の合盛りらしい。穴子の天ぷらに大小の区別があるのは珍しい設定である。
2頁目のざるそば系品揃えの末尾に置かれているのは天ざる系とは異なり店名を冠したせいじんざるそば\1150である。これは以前にも紹介している筈だがとろろや山菜、納豆等5種の小鉢それぞれにつゆを注いで各々の風味でそばを味わう方式が珍しく出雲地方の3段重ねわりごそばに相通じる趣向を感じる。店名の「せいじん」を冠する品に店の思い入れを感じるが品書きの扱いから厚い支持があるとは思えない存在である。
品書4頁目温そば
3頁目にはお子様そばセットや持ち帰りそばに単品の天ぷらや飲料が並び次の4頁目は個人的には選択対象外となる温かいそばの品揃えとしてかけそば\750、山菜そば\950、鴨南蛮そば\1050、えび天そば\1150が紹介されている。

【冷たいそば】
 今回は少なからず迷った末に穴子天小ざるそばを選択し同行者はえび天ざるそばを発注した。
そば茶と先付け
間もなく3種の品を載せた先付けの長皿に添えて割り箸と使い捨てのおしぼりが運ばれてテーブル上のポットからそば茶が給仕された。
先付け3種
先付けの長皿には蕨と水菜のお浸しに加えて白蕪にピリ辛の紫蕪の浅漬けを加えた3種盛り。
これを摘みながら暫く待つと注文したそばが運ばれ程なくそば湯の桶も届けられる。
穴子小天ざる
ざる系の冷たいそばは丸皿に敷いた簀の子盛りで
つゆと薬味
つゆを入れた徳利と空の猪口の上に薬味小皿を重ねたセットが大型黒塗りの平盆に並ぶ。薬味は刻み葱と練りわさびの良くある組合せ。

【天ぷら】
穴子小天ぷら
 そばとつゆを載せた平盆の左奥には天ぷらを盛り付けた角皿が控える。穴子小天では写真に写る穴子天ぷらの後に茄子、ピーマン、ズッキーニや葉物野菜など5種程の野菜天が隠れている。小を称する穴子天ぷらは20cmを下らない角皿一杯の大きさがありボリューム感満点である。大になればこの盛り皿から大きくはみ出すのは必至でこの様子は前項の品書きで紹介した2頁目の写真で確認できる。
因みに同行者が選んだえび天ざるを大まかに観察した範囲では穴子の代わりに2尾の海老天が主役で野菜の天ぷらは穴子の場合とほぼ同じ構成に見えた。

【特製そばしお】
 この店では天ぷら用の特製そばしおを用意しており前項の写真画面右上に容器の下半部が写っている。このそばしおは岩塩とそば粉を配合した自家製品と説明があり天ぷら用の調味料として推奨されているので試してみると天ぷら味付けの塩としては一般的な岩塩や柚子塩、抹茶塩等より遥かに塩分濃度が低いのでこんなに振り掛けて大丈夫?と思う位迄多めに掛けて適量となる。

【手打ちそば】
ざるそば
 簀の子敷き皿盛りのそばは薄い褐色を纏った2mm前後の中細麺で
手打ちそば
大きめな褐色のホシを多数鏤め太さにややばらつきを認める手打ちを感じる。
二八そば
箸で掬ってみると柔軟性を感じる二八そばだが外光が透ける半透明感も備えている。

【つゆ】
そばつゆ
 つゆが徳利で供される方式は大歓迎なのだが肝心の役割である二八そばを引き立てる風味が希薄でもの足りない。箸で掬ったそばの下端1/3どころか全てをつゆに潜らせてもその存在が感じられない。
出来の良いつゆは辛みや甘味や出汁の香りなど何らかの特徴がありそばに絡めてもそばと渡り合える程の強い存在を感じるものだがこのつゆではそば食を引き立てるには役不足の残念なものである。
 つゆの不足感を補う為に薬味のわさびをそばに載せてみたがこちらは練りわさびらしく鼻腔粘膜を刺激するだけで甘味を伴う山葵本来の風味には遠くこちらも残念であった。

【そば湯】
そば湯桶
 そば湯は塗り物丸形の湯桶で供され
そば湯
白濁した湯が張られている。
そば湯のスープ
独自の主張が感じられず存在感が薄いつゆであったが猪口に残りのつゆと刻み葱のを全て投入してそば湯を注ぎ恒例行事でそば食を締め括った。

【終章】
 岩出山で手打ちそばを商う「せいじん庵」は以前にも訪問経験がある。今回は土曜日の14:00頃過ぎとなる遅い時間帯の訪問で閉店時間の15:00頃迄客が絶えないのは多くの支持者を擁する人気店の証しであろう。
しかし今後も人気の店を維持する為には特につゆの品質を吟味する必要があると思うのは私だけだろうか。


山形県山形市 そば処 すぎ 2017.06

September 08 [Fri], 2017, 0:00
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【序章】
 以前から山形市内の繁盛そば屋と聞き及んでおり6月に山形方面に遠征した際に訪問の機会を得た「そば処すぎ」の店を紹介する。

【そば処すぎの位置】
 「そば処すぎ」は山形県の主幹国道となっているR13バイパスとR286の交差点から少し南西方向少し離れた位置の住宅街に店を構えている。
仙台方向から向かう場合は山形道か併走するR286を西に進んで笹谷峠を越え関沢ICか山形蔵王IC でR286に降り山形県庁を右に見て進むと立体交差の構造が見えるR13の交差点に達する。



ここを左折してR13 を僅かに南下しr53と交差する小立交差点を左折して県道を東方向に進んだ先で信号機を備えた変則的な線形の五叉路が出現するので最も左の道に折れると僅かな距離の先で「そば処すぎ」の看板に遭遇する。

【そば処すぎの外観】
 店舗の周囲には広い駐車空間が見える。平日13:00頃の訪問で混雑のピークを過ぎたであろうと思う遅めの訪問であったが駐車場は満杯で路上に駐車待ちの車が待機する程の混雑を呈していた。
店舗外観
写真は混雑のピークを過ぎ店内にも空席が出始めた時間帯の撮影で駐車場にも余裕が認められるが駐車場から車が溢れていた到着時は80席あるとHPに紹介されている店内も満席状態で予約ノートに記名して暫く玄関付近で入店を待機することになった。
玄関
「すぎ」の墨文字が鮮やかな白い暖簾を懸けた玄関の右脇には木造りの縁台が設置されて待機客の便を図っているのは如何にも繁盛店らしい設えである。
又玄関引き戸の左壁面に配置された三つの小さな内照式看板の左から「蕎」、「麦」、「処」の三文字が浮かび白暖簾の文字「すぎ」に繋がり店名を誇示する凝った造りを感じるが小屋根の上に掲げられた看板「そば処すぎ」の文字と整合性に欠けるのが少し残念である。玄関前の二つの店名表示は異なっているがその他の情報に依ると蕎麦を平仮名で表記した「そば処すぎ」が正式名称らしいので本稿ではこちらを採用している。

【店内】
 席の準備が整い名前を呼ばれて入った店内は右側に土間フロアのテーブル席で正面奥が厨房、左側は靴を脱いで上がる座敷となっていてテーブル席の厨房側となる奥に案内された。
テーブル席から見える座敷
テーブル席は片側3名の6人掛けが2脚で座敷は2席と4席の座卓が各々2卓ずつ置かれているがこれだけでは公表されている80席には遠く及ばない。この数を補う客席は厨房の奥か或いは2階に用意されているらしく多くの客が出入りしているのだがフロア席からはその様子を窺うことはできない。
駐車場の規模や月曜日にも関わらずに混雑している様子から客席の80に偽りがあるとは思えないのでフロアの視線が届かない奥に50席規模の客席が控えていると推察できる。公式HPには庭の緑が望める座敷や板の間の座卓席の写真が掲載されているのでこれらがその正体であろう。
混雑最中で店内の撮影は憚られたのだが上に掲載した写真は隣席の客が立ち去った僅かな時間帯に唯一撮影できた光景である。

【品書き】
 「そば処すぎ」はその店名が示す通りそばを専門的に商う店だが麦切りとラーメンも提供している。
 麦切りは山形県鶴岡地域(庄内地方)の呼称で原材料の小麦粉と食塩を練り細切りした麺とのことで大雑把に言えばうどんの部類ではあるが讃岐うどんなどの一般概念にあるうどんより細くひやむぎよりは太めでそば(蕎麦切り)と同等の太さに仕上げた麺だなのだとか。
 山形県はラーメンの消費量が国内最大であることは以前から折に触れて述べてきているが主に都市部のそば店ではこの様な事情を反映したものと思われるそばと同時にラーメンも提供する営業方式をよく見掛ける。
板札掲示の品書き
 フロアのテーブル席からは厨房隔壁に掲げられた多数の品書き板札が見えるが価格表示がなく客席テーブルに備えられた実際の品揃えに一致していない。また先に触れたラーメンの品札も見当たらずそばと麦切りに限定されているのである種お飾りの看板であろうか。
品書き(そばと麦切)
 テーブル配置の品書きを見ると冷たいそばが16種、温かいそばは6種が紹介されている。麦切りは冷たいもの11種と温かい品が6種あり更にそばと麦切りの合盛り6種も控える品揃えの多彩さを誇っている。
品書き裏面
更に品書きの裏面には10種をとり揃えるラーメンの他に単品料理と飲料にそばと麦切りのおみやげ品も加わる賑やかな品揃えとなっている。ラーメンのスープ出汁は飛島産トビウオの限定使用と説明されている。
東北地方では馴染みが薄い存在だがトビウオは脂肪分が少なくその煮干しは日本海側から九州方面であごだしとして広く知られている。従って「すぎ」のラーメンはあご出汁のラーメンである。

【余談: 飛島】
 余談になるがトビウオ産地の飛島は山形、秋田県境付近の象潟沖20数キロの日本海に浮かぶ3平方kmに満たない小島で本州との最短距離は秋田県側にあるにも関わらず酒田市に属し山形県唯一の島である。
酒田市から日本海側の国道R7 を北上し県境を越えて象潟付近の海岸線を走ると切り立った岩肌を伴って海上に浮かび上がる台形状の島影を捉えることができる。この光景に初めて遭遇した時はその姿形から蜃気楼ではないだろうかと疑った鮮明な記憶が残っている。



 酒田港からは貨客船が39kmの距離を1時間以上かけて連絡している。島名の由来かと思われるトビウオの産地として知られるばかりでなく多種の水産資源に恵まれこれを目当てに多くの釣り客が訪れる島でもあるらしい。

【摩耶そば】
 飛島への脱線から品書きに話しを戻すと冷たいそばのトップにはもりそば\650とざるそば\700を抑えて摩耶せいろ\850がお奨めの特別枠を付けて配置されている。この他にも摩耶げそ\1100、摩耶かき揚げ\1100、摩耶天ざる\1800等があり各々もりげそ\900、もりかき揚げ\900、天ざる\1600の普通のそばに対応して「摩耶」を冠するそばは+\200の価格差が設定されている。
 摩耶そばとは初めて聞き及んだが公式HPの情報を見ると元は新潟県境に位置する鶴岡市の摩耶山麓で栽培されていた在来品種であり現在は至近の蔵王山麓の開拓地で自家栽培しているとか。「摩耶のすぎそば」と商標登録しているそうでブランド化した独自のそばを誇示している。
摩耶そば畑の掲示
 そばを味わい店を出た後であったが駐車場の隙間から店の外塀に「摩耶そば畑より蔵王山系を望む」と題する大型の掲示を認めた。屋外掲示故に紫外線に晒されて色彩は褪せていたが蔵王山塊の主要峰を背景に従えそばを自家栽培するそば畑の景色に目を引かれた。

【すぎのそば】
 店の勝手を知らない初訪者に突きつけられた多数の品々に何を注文するか大いに悩んだが敢えて摩耶そばを避けてもりげそを選択した。もりげそはもりそばに安価な食材の烏賊げそ天ぷらを添えたもので山形県のそば屋では良く見掛ける品である。
つゆと薬味
注文を通して混雑する店内の様子を観察していると程なく塗り物のつゆ猪口と薬味小皿は2段重ねで漬物小皿を添えて運ばれた。薬味の刻み葱は長葱根本の白葱部と先端青葱部の両者が巧く配合されて少量の下ろし山葵が添えられている。
もりげそ
更に待つとそばとげそ天を1枚板に盛り付けたもりげそとそば湯が供された。
 トレーの役を担う長方形の1枚板はそばをと天ぷらを盛り付ける部分が皿状に彫り下げられておりそばの部分は簀の子が敷かれ天ぷら部分には敷き紙の上にげそ天が配置されている。写真の左下部はつゆ猪口と漬物皿で隠れているがこの部分は円形穴の彫り込みがあり猪口や小皿を嵌め込める珍しい構造となっている。この1枚板のトレーは表面に施した木質系茶色の塗色を纏っているが長年の使い込みで角の部分から塗りが剥離して地肌の白木が露出しておりこの店の歴史を語っている様に見える。
もりそば
「摩耶」を冠しない普通のもりそばは白みが強く僅かに見えるホシも極めて疎らで蕎麦の実の表皮部分の混入を排除した製粉工程を経ている様に見える。
以前この店を検索した際には自家栽培の摩耶そばと異なる普通のそばは北海道産で外二(そば粉10+繋ぎ粉2)配合との情報を見た記憶があるが本稿執筆中の時点でこれは確認ができていない。二八系配合の手打ちそばであることは間違いない筈。
そばの太さ
 製麺されたそばは滑らかな口触りを感じる2mm程の標準的な中細麺に仕上げられている。
そばの相手をするつゆを単独で味わうと辛味を感じるがそばには絡み難くそばの浸け具合が難しい。箸に掬ったそばの下1/3程を浸けるとつゆ味が薄く1/2まで浸けると辛味が勝る難しい組合せである。いろいろ試行した末に1/3程を時間的に長めと感じる4〜5秒浸した後に啜りあげればそばとつゆの程良いバランスが得られることを見出した。
げそ天
 そばと同じ板に載る烏賊げその天ぷらはボリュームがあり濃いめの味付け故実際に食すると見た目以上の存在感がある。つゆに浸したり塩を振り掛ける手間を省く配慮の仕上げであろうがそばの量とのバランスが悪くそば食に専念するとげそ天を持て余し気味になるのが残念である。衣に味付けをしている様だがこの味付けを省いたプレーンな衣で烏賊げその風味を味わえれば十分と思うのは私だけだろうか。
山葵風味でそば
もりそばを食べ進めるとげそ天の濃い味に負けてそばの風味が希薄になるので試しに薬味の山葵下ろしを箸に掬ったそばに載せてみると独特の甘味を感じる上質なものでそばの存在感を強めることができた。
薬味皿の山葵
 日頃からそば自体が旨ければ味を変える薬味は無用の存在と思っているので以前には山葵の品質確認を怠ることが多かった。加えて少なからぬ店の体験で供された山葵は甘味や香りが抜けた鼻を突く辛味だけが取り柄の練りわさびであった。
 因みにそばとは異なるが生魚の刺身を食する場合にも余程の鮮度劣化がなければ山葵の必要を感じない。口から鼻に抜ける山葵(特に練りわさび)の強い刺激は味覚を麻痺させる効果もあるので魚本来の風味が損なわれると思っている。
 本山葵の下ろしと練りわさびでは品質と原価の両面で雲泥の差がありそばに拘る店の姿勢の一端を窺うこともできると考えが及んだので最近は薬味の必要を感じない旨いそばでも少量の山葵を味見することにして上質と感じた場合はその旨を付記する様に心掛けている。

そば湯桶
 そばと僅かな時間差で運ばれたそば湯は角型塗り仕上げの湯桶で供されたが把手の朱塗りが剥げ蓋にもひび割れが見える代物で長年使い込まれた様子に見える。
今回は同伴者と2名で訪問したが遅れて同じテーブルに着いた一人客は同じもりげそを注文していたがそば湯は丸形の湯桶であった。人数によって湯桶の大きさを使い分けているらしい。
そば湯
桶の蓋を開けると黒塗りの内面の底が見えない程の白濁した湯が控えめに張られていた。
混雑する店内で撮影した上の写真は手振れを生じて鑑賞には耐えないが濁りを伴うそば湯の雰囲気を感じて戴ければ幸いである。
そば湯スープ
 そばを食べ終え濃い味付けでボリューム感があるげそ天も平らげて一息ついた後にそば湯を味わう恒例の作法を執り行う。要は残ったそばつゆの風味を楽しむためにそば湯に含まれる茹でそばの風味を加え乍らつゆの辛味を緩和してそば湯のスープに仕立てる。これにほぼ手つかずで残っている刻み葱を浮かべて葱の風味も加えれば完成。辛味を感じるつゆなのでそば湯はやや多めに加えて味の調整を試みる。このスープをゆっくり味わってそば食の余韻を楽しむのがそば湯の作法であると勝手に思い込んでいる。

【終章】
 山形市の中心部の市街地に大規模な駐車場と客席を構えたそば専門店は自家栽培の摩耶そばを独自ブランドとする一方で山形県民が好むラーメンも揃える人気店で平日でも昼食時間帯には入店待ちが生ずる程に盛況を呈していた。


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  • アイコン画像 ニックネーム:芋男爵
  • アイコン画像 性別:男性
  • アイコン画像 誕生日:1949年
  • アイコン画像 現住所:宮城県
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金は無いけど暇はある アフター還暦団塊世代の芋男爵が本拠地仙台から車を駆って東北地方を巡るそば屋と格安温泉宿泊の体験談 実走した道路事情も詳しく紹介
2017年09月
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