ミリオンダラー・ベイビー
June 10 [Fri], 2005, 17:30

今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞。
ボクシングに全てを賭けるマギーに「ボーイズ・ドント・クライ」でもアカデミー主演女優賞を受賞したヒラリー・スワンク。
老トレーナー、フランキーに監督・製作・音楽も担当するクリント・イーストウッド。
そして、2人を静かに見守るスクラップを名優モーガン・フリーマンが演じている。
アカデミー賞を受賞するのも当然ですね。
ストーリー、演技、映像、音楽、どれも派手ではありませんが深い味わいに満ちていて、少しも無駄がなく、これ以上は望めないと断言出来る出来。
これは間違いなく傑作と言える作品です。
「ミスティック・リバー」のショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンの3人による静かにぶつかり合うような演技も素晴らしいものでしたが、この作品のヒラリー・スワンク、クリント・イーストウッド、モーガン・フリーマンの演技はとにかく深い。
自分が何をどう演ずるべきか悟りきっているかのような、自然で無駄の無い演技でした。
クリント・イーストウッドとモーガン・フリーマンの、年輪を重ねた人間の味わいを醸し出す引きの演技も勿論素晴らしかったですが、やはり特筆すべきはヒラリー・スワンクでしょう。
表情、台詞、目線、そして全て代役なしで挑んだボクシング・シーンまで、内に強い意志を秘めるマギーという1人の女性を完璧に表現していました。
フランキーとスクラップもそうですが、特にこのマギー役はヒラリー・スワンク以外有り得ない。
そう思わせるほど素晴らしい輝きを放っていました。
ヒラリー・スワンクの演技力は完全に同世代の女優の中でもずば抜けていますね。
「ビバヒル」時代からのファンとしては彼女の成長はほんとに嬉しいです。
お互いの傷を舐め合う事なく、自立した1人の人間同士としてお互いを認め合い、支え合うマギーとフランキー。
そして、2人を温かく、そして静かに見守るスクラップ。
血は繋がっていなくとも、3人は家族以外の何ものでもありませんでした。
後半、物語はマギーのサクセス・ストーリーから一転し、家族、愛、絆、誇り、再生、そして生と死をマギーとフランキーの心の交流の中に静かに描き出していきます。
病室で語り合う2人。
そして、あまりに辛すぎる別れ。
「モ・クシュラ」の意味が心に突き刺さり、涙が止まりませんでした。
最後の決断は賛否両論分かれるところだと思いますが、僕にはマギーの気持ちが痛いほど分かります。
生きる事の意味を観る者にそっと問いかけ、生涯忘れないであろう感動を心に刻み込む傑作。

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