がん医療費

April 21 [Sat], 2007, 12:38
今朝の朝日新聞に、「医療保険広告『不安あおりかねない』厚労省が指導」との記事が載っていました(こちらです)。

保険会社が高額療養費制度についての説明をせずに保険広告をしていたとしたらそれも確かに問題だけど、この厚労省が言ってること、やっていることも「おかしいじゃないか」と感じたのは私だけでしょうか。

この記事では、がんで手術を受けた時、実際は9万円ですむのに、保険会社の広告では自己負担が30万円のように読める、いうことが問題にされています。「がんなどの重い病気の治療費のうち、大半は公的な健康保険でまかなえることが多いが、多額の自己負担が必要だとの誤解を与えかねない」とあります。

しかし、「がんの治療には多額の自己負担が必要」というのは「誤解」なんでしょうか。

私はがん手術で2回入院していますが、私の経験からしても、手術の時にかかる自己負担額が30万円くらい、そのうちの一部は高額療養費制度でもどってくる、というのは大体そのとおりです(もっとも、私は入院期間は1回目は8日、2回目は10日でしたから、「1ケ月入院」というのは今時の例示としてはどうよ、というのはありますが、細かいことなので、これはおいておきます。また、手術の種類によっても違うとは思いますが、その点も本題ではないので、ここではおいておきます)。

でも、その時の入院費用がものすごく負担感があったか、と言えば、そうではありません。手術というのは人生でそう何度もあることではない大事だし(私は一般からみれば手術が多い方だと思いますが、それでも3回です)、ずっと続く負担ではなく単発のことだし、それでこの程度の負担であれば、それが30万円であろうと9万円であろうと、大変ではあるけど、そう深刻な問題ではないと感ずる人が多いのではないかと思います。

がん治療で、金銭の問題が深刻になるのは、再発後抗がん剤治療に入った段階ではないかと思います。

抗がん剤の薬剤費は非常に高いですよね。健康保険適用がある人でも、イレッサを飲んでいる人は、薬剤費だけで月額6万円の負担と聞いています。乳がんの患者さんで、ウィークリータキソールをやっている方や、ハーセプチンをやっている方もかなりの自己負担だと思います。これに検査費用等を入れると、月額10万円近く、あるいはそれ以上の自己負担がかかっている患者さんはかなりいると思います。

しかも、医師が再発がん患者に口をすっぱくして説明するように、再発がんは基本的に根治はありませんから、薬が効いている限り、この負担は永遠に続きます。1回きりのことではありません。

私のような稀ながんだと、事態はさらに深刻です。私が今検討している抗がん剤治療は、日本でも他のがんでは健康保険適用されているごく普通の抗がん剤であり、世界では、私のがんに一般的に使われている薬です。しかし、日本では、私のがんには健康保険適用はありません。

これを外国の論文にそった量で投与した場合、月額の負担は薬剤費だけで22万以上になります。他の医療機関で健康保険適用がある検査や治療を平行して受けることになりますから、それを合わせると、自己負担額は月額25万円を超えることになると思います。もちろん、健康保険適用がないのですから、高額医療費制度も使えません。

幸か不幸か、私は結構強い貧血があり、私の場合はこの量の投与は無理だと思いますので、金銭的負担も減ることになりますが・・・。

これが、薬が効いている限り永遠に続くということになるのですから、相当な負担です。手術の比ではありません。

再発がん患者がこのような実態におかれ、苦労していることは、厚生労働省は誰よりもよく知っていると思います。そのことは何ら問題と思わず、「がんなどの重い病気の治療費のうち、大半は公的な健康保険でまかなえることが多い」として、保険会社の広告が「多額の自己負担が必要だとの誤解を与えかねない」と厚労省が言うことに、私にはどうしても違和感があるのです。

新薬の早期承認も必要です。
しかし、その前に、日本ですでに他のがんで承認されている抗がん剤は安全性が確認されているのですから、それが他のがんにも効くという報告があった場合、そのがんの治療に使うくらいの医師に対する裁量を認めてほしい。

抗がん剤は毒薬であることは患者が一番よく知っています。効きもしない抗がん剤を投与し続けたいと思う患者は一人もいません。試してみて効果の判定をし、効かなければもう使いません。無駄な薬剤の使い方ではないと思います。



「早期発見・早期治療」

March 21 [Wed], 2007, 13:45
がんの「早期発見・早期治療」キャンペーンが盛んです。

いろいろな病院のHPを見ると、例えば、以下のように書いてあります。
「種類によりますが、がんは早期発見ができれば治る病気です。おおざっぱに言って、がんは発見された時点の大きさで治るかどうか決まります。」
「しかし現在では、早期発見・早期治療でかなり治るようになってきました。」などなど。

よく読むと、「種類によりますが」とか、「『かなり』治る」とか、100%ではないよ、とは書かれているけれども、全体のトーンとしては、「早く見つければ治る」です。「がんは発見された時点の大きさで治るかどうか決まる」っいうんですから。
でも、こういう「早期発見・早期治療」キャンペーンを見ると、私は、いつも、「本当?」と思ってしまいます。

私の治療経過をみていただくとわかりますが(こちらこちら)、私の肉腫は、子宮からの転移ということになっています。

「子宮の摘出組織を取り寄せたが、肉腫の組織はなかったが一部肉腫様の変化を示した部分があったこと、肺の肉腫組織がホルモン感受性が認められたことから、子宮からの転移、との判断になった。子宮の摘出組織から肉腫の組織が認められなかったので、子宮についての病名は、『子宮肉腫』ではなく『子宮筋腫』のままでいい。しかし、肺の方は原発ではなく転移。」「子宮筋腫として子宮全摘術をしたが、もし肉腫だとしても治療方法は同様なので、今までの治療方法に問題はない」という説明でした。

これでいくと、私の肉腫は、ものすごい「早期発見・早期治療」じゃありませんか!摘出した子宮を後から調べても肉腫は出てこなかったが、「目に見えないような小さな肉腫組織ができていてそれが転移した」という話なのですから、「目に見えないような小さな肉腫組織」の段階で「早期発見・早期治療」したのと同じです。それでも、転移したのです!私は、何人もの医師に、「そんなに小さな肉腫でも転移するのですか?」と聞きましたが、皆、「わからない」との返事でした。

このような「目に見えないような小さながん」でも転移することがあるなら、いくら「早期発見・早期治療」しても転移し、治らないってことがあるわけです。

私が、何で今更こんなことにこだわるかと言うと、「早期発見・早期治療」キャンペーンは、進行がんの患者にはものすごく残酷だからです。いろいろな方のブログを読むと、「こんなに大きくなるまで気がつかなかったから転移してしまった。」「健診を受け、もっと早く気づいていたら・・・・。」と進行がんになったのを自分のせいのように感じて後悔されておられる方がたくさんおられるのです。進行がんになっただけでも辛い状況なのに、その上過去を後悔するなんて、とっても辛いことです。私は、過去の自分の病気の経過をどう考えても「こうしておけばよかった・・・」と思うことがないのは幸せです。

でも、私の経験からみると、「もっと早く気づいて」いたら転移しなかったかもしれないが、それでも転移したかもしれない、それは、「神のみぞ知る」ということ、というのが正確なところじゃないかと思うのです。現代の医学では、一体どのくらいの大きさになったら転移能を持つかさえ、全くわかっていないのですから。だから、進行がんの患者さんも、「もっと早く見つけたら」と必要以上に後悔することはないと思います。私のようなケースもあるのですから。

私も、別に「早期発見・早期治療」に反対している訳じゃない。早期発見で治るがんもあるわけですから、早期発見にこしたことはないわけです。そのキャンペーンをやるのもいい。でも、それを強調するあまり、不正確なことを言って、進行がんの患者さんを必要以上に苦しめるのはやめてほしい。
「がんは、早期発見すれば治る病気です」は不正確じゃないですか。せいぜい言えるのは、「がんは、早期発見すれば治ることもある病気です」くらいじゃないですか。

進行がんの患者になって、「この社会は、進行がんの患者にやさしくないなぁ。」と感ずることがたくさんあります。私たちの社会が弱者にやさしくないっていうことの表れなのかもしれない。だから、進行がんの患者として感じたことを書き残しておくことも意味があるかもしれない、そう思って今日の記事を書きました。

ホルモン療法

March 16 [Fri], 2007, 11:08
 私は、今、全身療法としては、ホルモン療法をしています。肉腫のホルモン療法の経験はそう多くないと思いますので、他の患者さんの参考になるかもしれないので、ちょっと詳しく書いておきますね。

 乳がんの患者さんでは、ホルモン療法の有効性が立証され、ホルモン療法をしている患者さんは多いと思います。ホルモン療法とは何かという点については、私は、こちらの記事等を参考にしましたので、関心のある方は、見てください。要するに、ホルモン感受性があるがんは、女性ホルモンを「えさ」にしているので、この「えさ」を絶ってしまえば大きくならない、との考えに基づく治療だと、私は素人的に理解しています。

 私の肉腫は、ホルモン感受性がある(エストロゲンもプロゲステロンも+)ので、同じように女性ホルモンを「えさ」にしており、この「えさ」を絶ってしまえば大きくならない、という可能性があるわけです。もっとも乳がんのように、有効性が科学的に立証されている訳ではないのですが、私のように稀ながんでは、有効性が科学的に立証されている治療はほとんどないので、可能性がある治療法を試すしかありません。科学的に有効性を立証するためには、治験をやってたくさんの患者さんに投与して調べる必要があるわけですが、ただでさえ肉腫の患者は少ないのに、その中でホルモン感受性がある肉腫の患者さんをたくさん集めて治験をするのは、現実的には不可能に近いと思います。

 もっとも、皆考えることは同じで、論文等で肉腫のホルモン療法が有効であった報告等は、最近、少しですが出ています。例えばこちら。昨年のASCOの報告です。投与した患者さんは8人と少ないのですが、ホルモン感受性のある子宮肉腫患者にアロマターゼ阻害薬を投与し、ほとんどの人でかなりの期間、腫瘍の増大を押さえられた、という、私にとっては、大変心強い報告です。

 というわけで、私も、上記の論文のまねをして、抗ホルモン剤の中でも上記の論文と同じ、アロマターゼ阻害薬のフェマーラ(一般名レトロゾール)を飲んでいます。フェマーラの添付文書はこちら

 私は、既に3ケ月肺の腫瘍が増大しないで推移しています(今度3月26日にやるCTで増大していなければ無増大期間は約6月になります)が、ホルモン療法が効いているものと思っています。ちなみに、この間に胃の手術をやっていますが、手術をすると免疫力が下がり腫瘍が増大してしまう危険が大きいとのことですが、それでも腫瘍が増大しなかったのは、本当にうれしいことでした。

 ちなみに、フェマーラは、乳がんの患者さんであれば健康保険が効きますので月数千円の負担ですみますが、私の場合健康保険は効きませんので、月2万円以上の負担があります。稀ながんで患者数が少ないために有効性が立証できておらず、健康保険の恩恵を受けられない、というのは何とかしてほしいです・・・。



 

「スーテント」の早期承認を求める署名のお願い

January 12 [Fri], 2007, 20:30
GIST患者のための情報ページで、「スーテント」の早期承認を求める署名活動をされています。

GISTとは簡単にいうと消化管に主にできる悪性腫瘍で、平滑筋肉腫と似ている組織なのですが、近年C-kit検査で陽性がでるとGISTと分類されることになりました。
つまり、私の平滑筋肉腫はC-kit検査で陰性だったからGISTじゃなかったってことで、平滑筋肉腫と「兄弟」のような腫瘍のようです。

難しい説明は署名用紙に載ってあるのでここでは省いて、スーテントは、PDGFR阻害剤だとのことですが、アメリカではスーテントの臨床試験に平滑筋肉腫患者さんも参加されているし、平滑筋肉腫にも効く可能性のある薬です。GISTさん達は、以前のキュアサルコーマの署名活動にも協力してくださっているとのことです!!

どうか、ブログやホームページをお持ちの皆さん、仲間が多くいらっしゃる皆さん、お力を貸してください。リンクして広めてもらえると嬉しいです。

リンク先は
http://www.geocities.jp/gist_sti571/
署名用紙への直リンクは、
http://homepage3.nifty.com/EUJC/shomei.pdf

よろしくお願いします。
プロフィール
  • ニックネーム:yui
  • 性別:女性
  • 現住所:埼玉県
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52歳女性。家族は夫と長男(23歳)と長女(22歳)ですが、子供達はそれぞれ一人暮らしで今は夫と二人暮らし。自由業で、ずっと共働きでがんばってきました。今は病気の治療が入ることが多く、仕事はたくさんはできませんが、今後もできる限り仕事は続けていきたいと思っています。
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