【落乱】暑い夏と熱い気持ち【タカ→←久々?】

July 17 [Tue], 2012, 18:02

暑い。
こんな暑い日に俺の先輩は、
黙々とわけのわからないことを記帳している。
その後ろを流れる黒い髪が、酷く輝いて見えた。




『暑い夏と熱い気持ち』




「先輩。俺、先輩の事好きだよ」

頭の後ろで手を組んで、仕事なんて全くやる気がない俺は、壁に背中をつけて火薬の入ったツボの上に座る。
こめかみを流れる汗が少し気持ち悪いけど、へらっと笑って目の前で火薬の整理と記帳をする先輩にその言葉を投げ掛けた。
我ながら突発的だなぁと思ったけど、いつの間にか声に出した言葉。
でも先輩は顔色一つ変えることなく、記帳する手を休めずに言い放つ。

「はいはい。お前はいつもそれだな。女口説く練習なら他でやれ」

そこまで言うと先輩は顔を上げて振り返り、俺の顔を呆れたように見て付け加えた。
その真っ直ぐな瞳が此方に向けられて、少しだけ胸の中がくすぐったかった。
同時に、汗一つ流してない先輩を見て、暑くないのかな?などと考えた。

「それに髪結いだったらそれだけでモテるんじゃねぇの?」

そういわれて、俺は「…そうだね」と言って苦笑することしかできなかった。
それを聞いて先輩は、「すんなり受け入れる辺り、なんかムカつくなぁ…」とか
ボソボソ呟いてまた記帳する手を動かした。

建物の中なのにムシムシとする。
頭がボーっとするのは、その所為。
でも、胸のところが熱いのは、違う気がした。


俺は先輩が好きだよ。

でも
それをちゃんと
伝える事ができない。
いつも先輩に軽くあしらわれる。

それは
俺が本気で先輩を好きだと言ってないから。

ねぇ先輩

「先輩」
「何だよ」

俺ね

「俺が天邪鬼だって知ってた?」

嘘つきなんだ。

「ふーん。知らない」

でもね、今のは

「ホントだよ。俺天邪鬼なんだ」

紛れもない事実。

そうすると、先輩は綺麗な文字を書き出す手を止めた。
落としていた目を上げてこっちを振り返り、さっきより不機嫌そうに俺と目を合わせた。

「…何が言いたい訳?本当は俺が嫌いなんだってこと??」

俺は苦笑して、あぐらをかいた自分の足を頭の後ろで組んでいた手でおさえた。
少し前に顔を出すようにすると、汗がまた少しこめかみを伝う。

「俺さ、真剣に人を好きになった事ないんだ。
だからわかんない。でも、先輩は…」

汗が気持ち悪い。
でも、それ以上に心臓が・・・苦しい。
何を言おうとしたのかもわからずに、先輩の顔だけを見ている。
言葉に詰まっていると、先輩は痺を切らしたように、少しだけ口先を尖らせて聞いてきた。

「なんだよ…」
「…まだ、内緒かな」
「意味わかんねぇ…」

そういって、先輩はふてくされ、また記帳する手を動かした。

「先輩」
「なんだよ。仕事しろ」

厳しい事言ってても、ちゃんと俺の話を聞いてくれてる事が嬉しい。
だから、俺はまた笑って言葉を繋げる。

「これからも先輩に告白していい?」
「練習に付き合わされるのは御免だね」

先輩は俺の目を見ない。
うんざりするように零す言葉に俺は苦笑して、新たな言葉を投げかける。
先輩の動揺した顔が、見たくなって・・・。

「練習じゃなかったら、ちゃんと聞いてくれた?」
「どうだろうな」

先輩の表情は変わらない。
綺麗な漆黒の髪が伝う後姿しか見えなくても、それくらいのことはわかった。
少しの間が出来る。
先輩の肩越しに見える綺麗な文字は崩れることなく、少しの同様もないまま書き綴られる。
だから、負けじと意地になって声を出そうとすると、
急に横の出入り口に誰かが立って声をかけてきた。

「タカ丸さん」
「え?」

吃驚して見てみれば、そこには同じ学年の平滝夜叉丸が立っていた。
滝夜叉丸を見れば汗が薄っすらと額に浮かんでいるのに、
先輩を見ても首筋にすら汗がない。
別に汗っかきではないのに、何で俺はこんなに汗をかいてるのかな?などと考えた。

「さっき土井先生と会ったんですが、呼んで来てくれと頼まれたので来ました。
職員室にいるそうですよ。
職員室の場所がわからないようでしたら、この滝夜叉丸が案内します」

何故か誇らしげな滝夜叉丸を見て俺は少し困った。
どうしてか、この場を離れたくなかった。
先輩に、話しかけていたかった。
何でそんなこと思うのかわからない。
ただ、なんとなく。
本当になんとなく、そう思ったんだ。

「あ、うん。わかった。じゃあ、お願い。
ごめん、先輩。俺ちょっと抜けるね」

考えていることとは別の言葉を滝夜叉丸に返す。
少し胸がきゅぅって締め付けられたけど、そんなのバレたくないから
へらっとまた笑って先輩に目をやった。
先輩はやっぱりこっちを見ず、汗も掻かずに記帳し続けるだけだった。
そんな先輩に苦笑して、俺は滝夜叉丸に
「じゃ、行こっか」と言って後をついて歩いた。


+ + +


だんだんと足音が遠ざかっていく。
滝夜叉丸とタカ丸の気配が消えると、兵助は脱力したように床に自分の頬をつけた。
ベタっと床に付けた頬は冷たいが、顔や身体は火が噴き出るように熱い。
一気に汗が流れていく。
首筋を伝う汗が気持ち悪い。

「何なんだよ、アイツ…」

同級生から「お前は振り回されるようなヤツだ」とは言われるけど、
後輩に振り回されるのは少し面白くない。
しかもあの


斉藤タカ丸。


「だぁ〜もう…!」

わけがわからなくなって、兵助は声をあげた。
大の字になって天井を見つめる。
背中を伝っていた汗と服がくっついて気持ち悪いけど、
床はひんやりとして気持ち良い。
脇にある窓から、外の日差しが僅かに差し込む。
何処かで忍たまたちが遊んでいる声が聞こえる。
きっと一年だろうなと、どうでもいいことを考える。
横になったまま出入口に目をやるため上を見る。
さっきまで斉藤が座っていた火薬の入ったツボがポツンと脇に置いてある。
火薬が入っているツボの上に無遠慮にも座るなんて、なんて無神経なヤツだろうと思う。
ずっとそのツボを見ていると、さっきの疑問が気になりだしてきた。

本気で「好き」と言われたら、俺はどうするんだろうか。
そんなの言われた事ない。
しかも、同性からなんて。
だから、わかるはずない。
面倒くさいと思いながらも、アイツの相手をしている事が嫌でもない。
それってどうなんだと、時々考える。
答えが出るはずもないのに、思考を一生懸命フル回転させて、ふっと止めた。

その時はその時なのかもしれない。
第一まだ本気で「好きだ」などと、言われていないのだから。

「早く、言ってくれればいいのに……」

ポツリと自分の呟く声が耳に届いて、自分の唇に触れる。


紛れもなく、今、自分の声がした。
自分の唇が動いた。

呆気に取られていると、そのうち無性に恥ずかしくなって顔が熱くなる。


『これからも先輩に告白していい?』

さっきのアイツの言葉が耳から離れない。

『俺天邪鬼なんだ』

アイツの気持ちがわからない。

『練習じゃなかったら、ちゃんと聞いてくれた?』

真剣な声が、耳にこだまする。

『俺先輩の事好きだよ』


いつか

いつか本気で。


「もう…、わけわかんね……」

さっきのわけのわからない自分の言葉は、
きっと夏の暑さの所為で頭がおかしくなってしまったから出た言葉なのだ。
そう自分に言い聞かせて、兵助はひんやりとする床にべったりと熱くなった頬をつけて
自分の顔を腕で覆い隠した。
胸が熱いけど、そんなこと自覚したくなかった。

「あー・・・、顔が熱い・・・・・・・」

自分自身を誤魔化すために出した兵助の声は、
じりじりと暑い夏の日差しの中に溶けていった。



―FIN―

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